世界観警察

架空の世界を護るために

METライブビューイング2012『エルナーニ』 - レビュー

 おはようございます、茅野です。

昨日まで、WOWOW で『ユーリディシー』が再放送されていたようです。

↑ MET の新作オペラだと、『チャンピオン』と並んで二大推し上演。大好き。

わたしが激推ししているので、関心を持ってくださる読者さんも多いのですが、WOWOW は契約していないよ~って方も同じく多いので、またアンコールで取り上げられたら嬉しいですね。

 

 さて、先日は MET ライブビューイングのアンコール上映から『エルナーニ』にお邪魔しました。2012年のもののようです(既に12年前!?)。

↑ 見て、このキャスト。バケモン。

 今シーズンは、『アマゾンのフロレンシア』だけおかわりしましたが、更に過去のシーズンからのものは、今回の『エルナーニ』のみです。

 

 今回も備忘がてら、こちらの雑感を簡単に記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

↑ タイトルロールが写ってないじゃないのよ、いいのかそれは。ホロ様はカッコイイけども。

 

 

キャスト

エルナーニ:マルチェッロ・ジョルダーニ
エルヴィーラ:アンジェラ・ミード
ドン・カルロ:ディミトリ・ホヴォロストフスキー
シルヴァ:フェルッチオ・フルラネット
指揮:マルコ・アルミリアート
演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ

 

雑感

 『エルナーニ』といえば、「三大荒唐無稽オペラ」の一角として悪名高い(?)、意味不明な筋書きでお馴染みです。

広報には「ユゴーヴェルディの最強タッグ♡」みたいな書かれ方をしていますが、これには原作者ユゴー先生も大変お怒りであったとか。原作者怒らすの一番いかんっていつも言ってる。

 

 わたしはストーリー重視のオタクですから、「なんかストーリーが意味不明らしい」ということで『エルナーニ』は敬遠していたのですが、今シーズンはそれでも『運命の力』に入門しましたし、何よりもこの上演はキャストがバグっておられる。

どんなにストーリーが滅茶苦茶でも、キャストの暴力でゴリ押すというミスター・ピーターの漢気を感じました。

 

 アンコール上演って人の入りはどんなもんなんだろう、と思いましたが、それなりに入っていました。みんな何目当てなんだろう。やっぱりホロ様?

 

 案内役はディドナートさん。今シーズンは『デッドマン・ウォーキング』を主演されていました。過去のアンコールでは、先日別のライビュで拝見したラドヴァノフスキー様との『ノルマ』なども拝見しました。

かよわくも見える愛らしい容姿に反し、低音も強いメゾソプラノで、プライベートでは髪型をソフトモヒカンにしていたり、色々パンキッシュな方です。これがギャップ萌えか。

 

 今回は1983年初演の歴史ある演出とのこと。いいよ、そういうクラシカルなの大好きです。

 

 それでは本編。

 

第1幕

 第1場はかなり舞台を狭めに組んであります。クラシックな演出いいなあ(2回目)。

歌手たちのお衣装は、肖像画とかでよく見るような、THE・中世スタイル。襟は控えめだけれども。

 

 先日 ROH のライブビューイングを観てきたばかりなので、必然的に比べてしまいます。結論として、わたしの意見では、やはり MET の方が音響がいいと思います。

ROH が劇場の響きをそのまま拾うナチュラルな音響だとしたら、MET は映画音楽のように、映画館に適した音響作りをしているように感じます。

だからこそ、実際に劇場で聴くのと違いが大きいのは MET の方なんだろうな。行くか〜、ニューヨーク……。行ったことないんだよなあ(それこそ、目的が MET くらいしかなく。推しも行ったことないし……)

 

 タイトルロールのジョルダーニさん。

癖の少ないイタリアンテノールで、「イタリアの王道テノール」といえばこのような声! という感じが逆に特徴。好き嫌いが分かれづらいだろうし、勧めやすい歌手です。

 実は、この方、わたしの元祖贔屓テノールです。来日公演でカヴァラドッシを歌っていたのですが、ブッ飛びました。生で聴くとめっっちゃめちゃよかったのです。初めて『オネーギン』に絡まないで推せる歌手来たな……と思いました。

 しかしですね、2019年に56歳で亡くなってしまいまして……。おい、何故だ。わたしの好きな人間すぐに死ぬ。神と人間の好みが似ているのかもしれない。非常に困ります。

 

 相変わらず声量が凄いです。うんうん、正にストレートなイタオペの主人公。これでいいよ。

最初からアリアがあります。ヴェルディって鬼? エンジン掛かりきらない最序盤、大変そうです。インタビューでも「ヴェルディテノールが嫌いなの?」とか言われていましたが、正にそんな感じがします。

 

 舞台転換時、カメラが凄い上の方まで登っていってびっくりしました。幕の最上部まで行きましたよ。どうやって撮っているんだろう。

 

 2場では出拍手が。オペラでは珍しいですね。

 

 ヒロイン・エルヴィーラ。主演級では紅一点です。このソプラノ・テノールバリトン・バスという男声重視な組み合わせ、意外とレアかも?

 またも三拍子アリアです。わかりやすくズンチャッチャ~しています。

 彼女も恐ろしく響きます。特典映像曰く、21歳で歌を始めて、一気に上り詰めたシンデレラタイプらしいです。完全に生まれ持った才能があるタイプだ。

ヴィブラートが高速且つ幅広で、ここまで来ると最早サイレンのよう。息も長すぎる……怖い……。

 

 我らがホロ様のご登場。うおっ顔が良い。知ってたけど。ホロ様に関しては幾らでも容姿を褒めて良いというのはロシアオペラ界の常識ですからね(?)。ワーグナー風のベレー帽が似合います。

 オペラファンでホロ様を知らない人はいないと思いますが、弊ブログの読者さんは結構入門者さんも多いので、改めてご紹介をしておきます。

 我らがディミトリー・ホロストフスキー御大は、「オネーギンを演じる為に生まれてきた」とさえ評される、オネーギン役を最大のはまり役とするロシアオペラ界の希望。美しい銀髪がトレードマークの、シベリア出身の名バリトンです。一時期「アニメ作品などでロシア人キャラが銀髪にされがちなのってなんでなの?」という話が盛り上がっていましたが、ホロ様のせいでは?

 愛称は「ディーマ」ですが、カリスマ性が凄まじいスター歌手なので、日本人ファンは「ホロ様」と呼ぶことが多いです。わたしもヴラドはヴラドって呼ぶけど、ホロ様をディーマとは呼びづらいので、まあつまりそういうことである

 わたしは『オネーギン』からオペラに入門したため、「オネーギンといえばホロ様、ホロ様といえばオネーギン」みたいな認知だったので、「『オネーギン』ファン以外にも大人気」と知ったときは、なんだか複雑な気持ちになったものですが独占欲◎。誰からも評価の高いバリトンです。

 しかし、2017年に55歳で亡くなってしまい……。いや、あの、わたしの好きな人間なんですぐ死ぬ?パート2なんですけども。よく覚えてますけども、ホロ様の訃報があったのは大学1年の時の水曜日で、その日通学中に電車の中でニュース観てショックで1限サボったもんね。

 亡くなって既に7年が経ちますが(なっ7年!??!)、今でもファンが多い歌手です。今回の『エルナーニ』は、主演が2人も既に亡くなっているという、恐ろしい上演です。わたしにとっては「贔屓テノールと贔屓バリトン、夢の共演!」なのに、何故かその2人だけ亡くなってるんだけど、どういうこと? ほんと困ります。

 ホロ様は無論声量もあるし、深い、低めの、力強いバリトンでありますが、何よりも特徴的なのは、それでいて何か輝かしいことです。内側から発光するような煌めきがあります。バリトンでこのような煌めきを持つのは希有であり、その評価を唯一無二のものにしていると思います。聴けば絶対わたしの言いたいことわかりますから!

↑ オネーギンの声帯はホロ様だって義務教育で習った。まあホロ様=オネーギンならそりゃ怪ラブレターだって書くよ! わたしも間違いなく一番聴いた/観たオネーギンであり、最も慣れ親しんだ歌声です。この頃は特に容姿もカッコイイし、カーセン演出だし、名盤。

 

 ホロ様なら、バスが主要キャラとして居る演目の王様役でもハマります。ちゃんと貫禄がある。なんかオネーギンよりグレーミンいけそうまであります(?)。でもホロ様がオネーギンやるからこそいいんだよなあ。先程の動画を聴いてそう思ったでしょ?

 

 みんな王に刃を向けたり、貴様呼ばわりしているのヤバいだろ、と思ったら、ホロ様が何者なのか知らない設定だったんですね。まあ「王様だから何しても良い」っていう考えも宜しくないんですが。

 

 バリトンって大体いつもフラれる役回りですけど(オネーギン然り)、ホロ様をフる奴があるか?? ってなりませんか? そこ説得力皆無なんですけど。しかも相手は王様だぜ?

しかし、正規ルートのお相手はジョルダーニさんか〜……。彼では、いつものように「そんなでくのぼうテノール辞めてバリトン/バスにしておきなさい!」とか言えないじゃないか。こ、これはなんとも悩ましい乙女ゲームだ……(?)。

 

 シルヴァはフルラネットさん。今回ほんとにキャストとんでもないな? 何その豪華乙女ゲーム。みんな、どうする??(?)。

 「この雪のような白髪頭に〜」という歌詞に、老いているという表現なのはわかるのですが、「ホロ様の方が白いけどな?」とか思ってしまいました。罠過ぎる。

ホロ様は若い頃から地毛がメタリックな銀製品のような銀髪なんですけど(爆イケすぎる)、壮年期からは正に雪のような純白ヘアーになり、こちらも素敵なのです。

 ホロ様という低音に強い最強バリトンがいる中で、更に低音で支え、ちゃんと老人らしさも、貫禄も備えていて良かったです。彼はホロ様とは『ドン・カルロ』でも共演していますし、『オネーギン』もやってくれたらよかったのに。グレーミン歌いなんですよね~。

 

 「国王陛下だったとは!」と言われた時のホロ様がニヤッニヤしていてこっちもニヤニヤしました。演技面としても素晴らしいですし、可愛いし。

 

 「人民に愛される人は世界にも愛されます」、いいセリフだ。文脈思いっきり帝国主義だけど。

 

 1幕後にはミードさんのドキュメンタリーが。あの最早サイレンな2音のトリルは特別に練習した結果のものだったようです。道理で。

映像では、Casta Diva を歌っていました。ほんと良いアリアですよね、大好きです。

 「(MET の)舞台に立つと大スターの顔が浮かぶ。気が散るわ!」という発言には笑いました。まあ、そうなんでしょうけど!

 

 休憩は15分と長め。2幕短いのにな。

 

第2幕

 2幕前の特典映像はミスター・ピーターから。この頃は全部口頭で説明してくれていたんですね。噛まずにスラスラ説明していて、アナウンサー顔負けである。しかし、インタビューなどではカンペを見ながら噛み噛みだったりすることもあるので、こういう時はやはりしっかり練習しているのだろうな。

 ライブビューイングは、西はバンクーバー、東は東京までとのこと。いきなり東京が出てきてビックリしました。今でもそうなのかな?

 2012-13シーズンのご紹介がありました。途中から全員は追えなくなりましたけど、ネトレプコ、ポレンザーニ、クヴィエチェン、ガランチャ……と、知っている人しか出てこない! 歌手に詳しくないわたしでも9割以上知ってる。怖い。正に大スターなイツメンたち。

まあ、10年くらい前って、個人的には一番映像で観ていたかもしれないです。逆に、今旬の人の方がわからなかったりして。

 

 キーンリーサイドさん主演の『テンペスト』、凄い衣装でちょっと気になります。彼も良いオネーギン歌いですからねえ。それこそアンコールでやってくれないかな。

フランチェスカ・ダ・リミニ』も気になる。オペラ化していたの、知りませんでした。26年振りの再演とのこと。ジョルダーニさんも出るらしい。こちらもアンコールして欲しい。

 

 ホロ様とフルラネットさんにインタビュー。ホロ様のお子さんマクシム君とニーナちゃん同伴! ホロ様のご両親がモスクワで観ているそうな。ご両親モスクワなんですね。

ホロ様が亡くなられたとき、特に下のニーナちゃんは10歳くらいのはずですし、大丈夫だろうか……と、12年後に観ているからこその緊張感が客席を襲う!

ディドナートさんがロシア語の発音綺麗で笑いました。ロシアオペラ歌いましょうね〜。

 

 ホロ様、英語を喋ると意外と声高めに感じますね。高い方とは思わないけど、歌声と比べると高く感じます。

フルラネットさんが喋っている間、明らかに手持ち無沙汰にしていて笑いました。全くチャーミングなお人だな! 容姿・人柄・歌唱力と三拍子揃っておられる。

 インタビューの時のマイクの質は、明らかに今の方がいいですね。音を拾い切れていなくて、ちょっと聞き取りづらい。

 

 次いで合唱指揮のパランボさんにインタビュー。この方、何年 MET で合唱指揮やっているんだ!? やはり魔術師なのか? しかし、ちょっと若い!

 次はロシアオペラ『ホヴァーンシチナ』をやるそうです。よりにもよって! 合唱の規模は最大クラスとのこと。ですよね(結末に目を背けながら)。

 演出家とは演技面については然程話さず、必要以上に介入しない主義だそうで。これ殆ど偏見ですけど、パランボさんって必殺仕事人タイプっぽいよね。

 今回の『エルナーニ』は、リズミカルで歌い出しが急だったりして、特に男性は大変らしい。特に後半聴いていて、そうだろうなと思いました。

 そういえば、今回は指揮者へのインタビューはないですね。珍しい。

 

 さて、本編です。

 序盤から特徴的な響き方をしているので、バンダというか、舞台裏に小編成なオケがいそうだな、と思ったら、3・4幕の舞台転換で映されて、案の定でした。

 

 エルナーニのアリアはまたも三拍子。ヴェルディ先生は今回はそういう方向性で行くと決めたらしい。

 

 それで、問題は筋書きですよ。

老シルヴァが、急にいい人(?)に。ど、どうした急に。エルナーニを匿うらしい。1幕であんなに揉めていたのに!? 何があったし、そうはならんやろ。

 1幕はまあ普通にオペラにはありがちな筋だな、という感じでしたが、2幕から崩れ始めました。これが「三大荒唐無稽オペラ」か……。

 

 ポケットから剥き出しの短剣が出てくるエルヴィーラヤバくないですか? せめて鞘付けた方がいいよ。ドレス破けるよ? 特に設定上中世なんだし、裂けたら普通に事案だよ?

 

 ホロ様、王様似合うなあ(2回目)。無論声に関しての感想ですが、キンキラキンな中世王様ファッションも着こなしていて凄い。わたしにも「陛下」って呼ばせてください。合唱に紛れるか……(無理)。

エルナーニ』はほんとうにバリトンに貫禄がないと無理なんだな、と思いました。その意味で、ホロ様はカルロ5世役はハマり役な気がします。あのフルラネットさんと並んでもちゃんと王様。幾らお芝居の中とはいえ、好きな人を「陛下」と呼べるのは幸福なことではないか? ←好きな人間が「殿下」で死んでるオタク

 

 シルヴァの訴えをガン無視して指輪を弄っている陛下。やだ~尊大。でも中世の王様っぽい(褒めてる?)。

 

 エルナーニが「決闘なんて!」と言い出します。 いや、なんて? あんた1幕では寧ろ「決闘だ!」とかイキってたやろがい。なんなんだ。流石荒唐無稽オペラ、1幕と2幕でキャラ崩壊が凄いぞ! これ二次創作だったら「エアプ?」って言われるレベルですよ。

 この時の、シルヴァの合いの手的な叫びがよかったです。盛り上がる。

 

 意味不明なことに、何故かエルナーニとシルヴァが協力関係になり、国王に楯突くことになります。え、なんで? 敵の敵は味方なのかもしれないけど、それにしても変でしょ。

全く納得しきれないまま、2幕は完。

 

 ジョルダーニさんとミードさんにインタビュー。ホロ様が乱入してきて、「頑張れメキシコ!」とだけ言って去りました。なんの文脈だろう? 2012年……? 思い当たる方は教えてください。

 先日 ROH でも拝見した、ラドヴァノフスキー様の病欠降板で当日ジャンプ・インして大ブレイクしたというミードさん。あのラドヴァノフスキー様の代役というプレッシャー、更に当日に! というのだから凄まじい胆力です。MET で輝くにはそれくらいの地力がないと無理なのかもしれない。

 ジョルダーニさん曰く、「ヴェルディヴェリズモの先駆けではなく、ベルカントそのもの」。母国語でも大変とのことです。歌だけ聴いていると、流石イタリア人! という感じがするんですけどねえ……。努力の上に成り立っているそうです。

 

 休憩時間を示す、「残り10分」が日本語表示でした。これ初めて見たかも。カウントダウンになったらいつもの英語になりましたが。昔は仕様がちょっと違ったのかな?

 

第3、4幕

 舞台さんにインタビュー。転換では、35人の女性が3分で衣装替えするとの由。しかも正装。舞台転換より時間がかかるとのこと。でしょうね! 寧ろ3分でできるの凄すぎる。

 

 3幕は「青銅の騎士」なセット。カルロ(カール)大帝なのかな?

3幕は特に同じヴェルディの『ドン・カルロ』を彷彿とさせますね。ここも、マクヴィカー演出の『ドン・カルロ』みたいなセットです。あれも好きです。

 

 殆ど主演4人で回す『エルナーニ』ですが、ごく稀に端役も歌います。しかし、主演4人とそれ以外では、可哀想なくらい差が歴然としています。だってこの化け物キャストヤバいですもん。4人の独壇場(4人もいるけど)。

 

 ホロ様陛下のアリア。こ~れは Bravo 必須ですね。実際飛んでましたし。ここまでセーブしていた訳では全くないのに、更にめっっちゃ響きます。こわい。

この辺り、音楽も『ドン・カルロ』風ですよね。チェロの伴奏で歌うところ、旋律好きです。

 ホロ様って、オネーギンを歌うときはいつも怒気をはらんでいるような、ちょっと厳めしい一本調子な面があるのですが(そういう解釈なんだと思う)、ヴェルディだと結構感情が乗る気がします。

 

 陛下が剣の柄の先で先帝の像の台座を3回強く叩き、「カルロ5世だ!」と神聖ローマ皇帝即位を宣言します。何その演出、カッコよすぎ。忠誠宣誓しなきゃ……。

 

 シルヴァの制止で合唱が pp になるのがちょっと面白かったです。シルヴァは指揮者だった……? 今回インタビューがないのもあって、指揮者アルミリアートさんの陰が薄いのが気の毒

 

 反逆者の「平民は牢獄へ、貴族は打ち首」になるらしいです。流石中世、物騒!……と思いつつ、貴族の方が罰が重いのって、近代オタクからすると不思議な感じがします。

しかし、語弊を恐れず言えば、貴族の方が「悪事の親玉」になるわけだから、その方が健全ですよね?

その後この王令は撤回され、恩赦されます。自分の命を奪おうとした民にもこの態度。陛下、寛大! 

 

 相変わらずエルナーニのキャラが崩壊しています。何がしたいのかわからん。殺したいのか殺して欲しいのかハッキリしろ! 今こそ決闘だろ!!

 

 「愛の花ミルテを墓地の糸杉に」というセリフがあり、興味深いです。簡単に調べてみると、神話の時代からこれらの植物にはこのようなイメージがあったようですね。ちなみに推しCPに於きましては愛の花バラ墓地のオレンジの花に変わります

 

 シルヴァはエルナーニに、剣と毒のどちらで死にたいか選ばせます。何その選択肢、『ロミオとジュリエット』か?

 一方のヒロイン・エルヴィーラは、シルヴァに対し「あなたを待つ死を私が早めてやる!」と絶叫。強すぎる。

 この最後の三重唱も三拍子でした。三拍子大好き『エルナーニ』。

……ところで、ここでシルヴァを殺せば物語的には円満解決では? 普通のオペラだったらそうするよね? どうしてそうならない? 諦めるの早すぎない?

 

 結局剣を選んだエルナーニは、自害します。こういう時、なんで舞台芸術ではお腹を刺すんだろう。もっと楽に一発で死ねそうなところ沢山ありますよね? まあ、即死したら歌えないのはそうなんでしょうけど……。

 エルナーニはエルヴィーラに「生きてくれ」と言いますが、彼女も後を追ってもう自らの腹を刺してますがな。あーあ、もう全てが滅茶苦茶だよ。

 死ぬ前の演技も上手いなあ~ジョルダーニさん。まあイタリアの王道テノールなら毎回最後は死ぬと思うので(語弊)、手慣れていらっしゃるのでしょう。

 復讐したのに全然喜ばないシルヴァ。エルナーニといい、あんたも何がしたいねん。フルラネットさんが名バス且つ演技もお上手なのでなんとなくそれっぽくなっているだけで、全然キャラ崩壊だからね?

 折角ホロ様陛下が慈悲を与えて見逃してくれたというのに、結局心中なんかして、何をしてる……。3幕に見せ場が多いとはいえ、4幕は陛下出番無しで寂しかったです。

 

 カーテンコール。

ホロ様登場で、最前列真ん中の特等席のおばあさまが Bravo 絶叫。観客ながら迫力あります。気持ちはわかる。

また、「Bonjour Paris」と書かれたうちわの人が抜かれていました。遠征勢かな。

 そういえば、今回はバレエのように幕ごとに幕前に出てくるスタイルでしたね。

この頃は、今よりもカーテンコールの映像が長いですね。

 

 

 こんなところでしょうか?

予想通り、「荒唐無稽ストーリーを化け物キャストで吹っ飛ばす!」というような公演でした。演出や美術も大がかりで素敵だったので、ストーリーがこんなにも荒唐無稽なのに、満足感が凄まじいです(贔屓歌手が2人もいるというのはそうなんだけど)

オペラ初心者さんにも、「名歌手が揃って全力を出すとこうなるんだぞ!」というのが体感できて、お勧めできる上演だと思いました。ストーリーのことは考えなくて OK です、はい。わたしもわかんなかったし。三大荒唐無稽オペラだし。

 それだけに、このキャストでの再演が絶対に望めないというのはとても寂しいことだな、と改めて感じてしまいました。だからこそ、このようにアンコールなどで取り上げて貰えるのは有り難いですね。またやって欲しい!

 以上です!

 

最後に

 通読ありがとうございました。9500字ほどです。『オネーギン』でもないというのに……。レビュー記事は3000字くらいに纏めたいなといつも思っているのに……。

 

 MET ライビュアンコール、終わってしまいましたね~。今期はあまり通わなかったとはいえ、寂しいです。

来シーズンは演目が保守的で、ちょっと残念です。どれくらい通うか迷うところですが、トップバッターの『ホフマン物語』は演目としては好きではないものの、ベルナイムさん主演、モーリー様ご出演とのことで、キャスト目当てで行こうかな、と思っています。

ベルナイム先生のフランスものは外れませんが、特にホフマン役は非常に評価が高いので、その点楽しみです。レンスキーも歌ってね!! ロシア語だけど!!

 

 次回どうするかはちょっと未定です。何か単発を挟むかもしれません。

連載も続きを書きたいんですけどね~。引用の選定は終わりましたが、まだ訳も書いてないし……。ちょっとお待ちください。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。