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METライブビューイング2024『ホフマン物語』 - レビュー

 おはようございます、茅野です。

先週は『オネーギン』ラッシュでしたので、今週は可能な限り省エネで生きることを目標に生活しています。

 

 さて、今シーズンもやって参りました、METライブビューイング! というわけで先日はトップバッター、『ホフマン物語』にお邪魔しました。

 しかし、「ベンジャマン」表記キモいと思いませんか!? なんだその英語読みとフランス語読みのハイブリッドは……。変だと思わなかったのか!?

最近は漸く「バンジャマン・ベルナイム」で表記が統一されつつあるのに……。

 

 今回は備忘がてらこちらの雑感を簡単に記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

キャスト

ホフマン:バンジャマン・ベルナイム
ミューズ/ニクラウス:ヴァシリーサ・ベルジャンスカヤ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:クリスチャン・ヴァン・ホーン
オランピア:エリン・モーリー
アントニア/ステラ:プレティ・イェンデ
ジュリエッタクレモンティーヌ・マルゲーヌ
指揮:マルコ・アルミリアート
演出:バーレット・シャー

 

雑感

 わたしは結構東劇に通っているほうだと思いますが、今まで来た中で一番席が埋まっていました。『ホフマン』、人気なのか……? それともシーズン開幕だから? それとも歌手目当てか……? 皆様の動機がきになるところです。

 

 今回の司会はテノールのベンジャミン・ブリスさん。彼はアメリカ人だから「ベンジャミン」でいい……はず。ベルナイムさんはフランス人なので「バンジャマン」で頼みます。ダブル・B。

 

 指揮のアルミリアートさんは今公演で丁度METでの指揮が500回目(!)だそうです。偉業すぎる。

 

 さて、『ホフマン物語』ですが、正直に言って好きな演目ではありません。音楽は名旋律に富んでいて、聴く分には美しいと思いますが、無駄に冗長なところがあるし、何よりストーリーが受け付けないからです。以前にもこんなことを書いていました。

 音楽はともかく、正直に言って、『ホフマン物語』は脚本が好きではありません。
確かに、「ホフマン作品のいい所取り」という面はあるのですが、何よりも作品の主人公をリストラして、作家本人に置き換えてしまうというのは、作家本人にも、作品に対してもリスペクトが足らんのではないでしょうか。
 考えてもみてください、『オネーギン』に於いて、オネーギンがリストラされて、プーシキンにされたらどうですか。間違いなく、プシュキニストは憤死しますよ(まあ、原作だとオネーギンはプーシキンの友人という設定なので、それは流石に無いでしょうが)。そもそもプーシキンあんなキャラじゃないし……、それはホフマンも然りです。

新国立劇場『ホフマン物語』2024/02/23 - レビュー

 ちなみに新国立劇場のバレエ版は、完全にオペラが踏襲されていて、オペラ『ホフマン』ファンには勧められる内容でした(ところで新国バレエ、はやいところあのレイシストをなんとかしてくれ)

 

 それでも何故『ホフマン』に行ったかというと、主演がベルナイムさん、オランピアがモーリー様だからです。完全に歌手目当てで行きました。演目を重視するわたしにしては珍しいことです。

 ベルナイムさんは来年1月に来日し、我らがヴラジーミル・レンスキーの名アリア『青春は遠く過ぎ去り』を歌う予定です。彼の十八番はフランスオペラですが、レンスキーも絶品なので、是非とも聴いてくださいまし。

↑ 回し者ではありませんが、二日ともレンスキーやってくれるのが嬉しすぎた。

 エリン・モーリー様は、わたしの愛する『ユーリディシー』の主演を務めていらしたソプラノです。彼女は軽やかな声をお持ちなので、ロシアオペラでお目に掛かることはなさそうですが、素敵な歌手です。

↑ 個人的にMET新作オペラ2トップ。もう片方は『チャンピオン』。

 

 今回改めて思ったのは、やっぱり『ホフマン』は事前知識が必須だよな、ということです。荒唐無稽とまでは言わないまでも、何も知らずに観たらよくわからなくなりそう。

↑ オペラファン向け原作セット。光文社さん、こういうところはセールスが上手い。

 また、『ホフマン』には多数の版があるので、どの版でやるのかな(全然詳しくないけど……)、という問題もあります。その辺りも複雑さに輪を掛けていますよね。

 

 それでは本編。

 

第1幕

 前述のように、『ホフマン』は好きではないと言いつつ、CDも持っているし、新国のオペラ公演にも行ったことがあります。

Les Contes D'hoffmann

Les Contes D'hoffmann

Amazon

↑ CD(mp3)を買うならこれがお勧め。なんだこの化け物キャスト……。

 生で観たのはその新国の1回のみです。

 最初のミューズの時点で、知っている曲なのに知らない曲だと思いました。歌手が違うとこんなに違うんだ~という、当たり前なことを考えさせられました。申し訳ないけれど、それくらい違った。やっぱりMET強しと思うと同時に、新国大丈夫か? とも思いました。

 

 ついこの間も来日されていたヴァン・ホーンさんは4つの悪役。本当に悪役似合いすぎる! なんだかんだ、複雑なことは何もなく、どシンプルに「悪役です!!」って感じの役は『ホフマン』のこの役が一番かもしれない。

 ステッキ回すのが上手すぎます。プロ?

リンドルフの時点で笑うのが上手いです。これはミラクル博士の期待が高まります。オペラの悪役は高笑いしてなんぼ!

 

 プロローグは合唱が大活躍。最初キーあってんのかと不安に思うくらいすっごい歌いづらそうな歌です。

 

 ホフマンの見せ場・クラインザック。結構テヌート多めな印象を受けました。

 ベルナイム先生は、もうフランス語でさえあれば何を歌っても優勝! というくらい、フランス語歌唱に於いては他の追随を許さない歌手ですので、フランスオペラである『ホフマン』も十八番の一つ。

 しかし個人的には、先シーズンの『ロミオとジュリエット』の方がお似合いであるように感じました。ご本人もインタビューで「ロマンティックなヒーローの方がレパートリーが多い、ホフマンは少し重たい」と仰っていましたし。わたしもロマンティックなヒーローの方が声質に合っていると思います。次のライビュ、ウェルテルかデ・グリューでお願いします!!! あっ勿論レンスキーでも可。

 彼のフランス語はめちゃくちゃ綺麗なので、クラインザックのような早口な歌も華麗に歌いこなしますが、発音が綺麗であるからこそ、あまり歌詞の詰まっていない、ゆったりした曲の方が聴かせるな、と感じました。

 また、ベルナイム先生は弱音が凄く綺麗なのですが、元々繊細で柔らかい声をお持ちなこともあり、一方でMETのような大劇場で高音でffになると少し張り上げる傾向があるように感じ、他の歌手と比較しても結構喉に負担が大きそうな印象を受けるので、ちょっと心配です。喉壊さないでね。

↑ なんか所々ちょっと無理してる感ないです? きのせい?

 わたしは別に彼の古参ファンという訳では全然ないのですが、大ヒットする前から発見してはいましたし、最初は全幕ではなくコンサートの映像から知ったので、「演技もできる人だったんだ~!」という嬉しい驚きがあります。助かる。やっぱりオペラ歌手やバレエダンサーはある程度演技もできるべきなんだよ(ドラマティックラヴァー並感)。

 この間までインタビューで「僕はテノールの赤ちゃんだった(j'étais un bébé ténor)」とか珍発言していたのに……。赤ちゃんはMETでタイトルロールやらんから……、大出世すぎる。おめでとうございます!

 

 オランピアは複数体いる演出。トウシューズで登場し、バレエダンサーが担当していました。

しかし、オランピアは一体でよくないですか? 特別感がないというか、「ゆうてワン・オブ・ゼムやんけ!」みたいな気持ちになりません?

 

 目玉からめっちゃ液が垂れているのがグロテスクです。『ルチア』のようなスプラッタシーンがないにも関わらず、高確率でホラーな演出にされることでお馴染みの『ホフマン物語』。まあ、実際原作の『砂男』はホラーだからなあ……。

 後ろで中国風のドラゴンがくるくる回っています。美術インタビューで「おもちゃのような~」と言及されていました。

 群舞・合唱の持つ傘は目玉の柄。怖いて!(2回目)。

 

 オランピアにビンタされるホフマンに笑いました。ほんと、この作品、実際の E. T. A. ホフマンは草葉の陰でどう思っていらっしゃるんだろうか。原作厨、心配です。

 

 みんな大好きオランピアのクプレ。

1回目はシンプルに歌い、繰り返しの二回目はppから始め、装飾音でハイG(!)まで上げました。ひぇ~! そこまで行くと凄い通り越して恐怖なんですけど。

モーリー様、元から好きでしたが、改めてバケモンだなと……。今まで観た演目では、「THE・コロラトゥーラ!」というような高音の曲は聴いたことがなかったので、「これが……METのコロラトゥーラか……!」とおののいてしまいました。

 しかも、オランピアは結構演技要素強いですからね。特にこの演出では、あのトンチキなお衣装でこの超絶技巧ですよ。こわいよ。

 ホフマンもビビっておりました。「凄い声域だ!」「なんて声だ!」。いやほんとな。

 

 これはバレエの時も書いていた気がしますが、悪魔はすぐに紙を破ります。オネーギンの適性があるよ! と言いたいところですが、バスなんだよな~。グレーミンは悪役じゃないしな~。いやまあ、それはそれとして絶対グレーミンはハマるんですけど。

 

 舞台から落ちそうになるオランピア。これもある意味で怖い演出だ!

そこで思いましたが、METは物凄く舞台に傾斜がありそうですね……。ボリとどっちがあるのかな……。

あれだけ動きながら高音歌うの、エグすぎです。

 

 

 ベルナイムさんにインタビュー。

「ホフマンはソプラノにとっての椿姫に近い役」らしい……です。……え、これ例えとして伝わってます? わたし、わかりそうであんまりわからなかったんですけど! そう……なのか??

 今回も、「フランス語のみならず、イタリア語も、ロシア語も」と言ってくれました。ドイツ語ではなくここでロシア語が採用されたのは、来年1月にレンスキーを歌ってくれるからですか? そうですか? そうですよね??

 ホフマンについては、「主人公っぽくない」「歌い甲斐がある役」と仰っていました。そうでしょうね。

 また、パリ・オリンピックについても言及がありました。「生まれた地の近くで~」と生粋のパリジャンをアピール。トム・クルーズに会ったそうです。

 

 モーリー様はインタビューではなく、映像でした。素晴らしいピアニストでもあるとの由。実際、弾きながら歌っていて、「その曲、そんな何か別のことしながら歌える歌ではないんですけど……」になりました。

 オランピアのクプレについて、「コロラトゥーラの見せ場を模倣して組み合わせたもの」と説明。確かに。「リズムが一定で精密」「全てスタッカート」「ウンパッパというリズムがサーカスっぽい」「半音階的」と仰っていました。

 背中のネジは、プロンプターが隠し持っているそうです。あそこそんなスペースの余裕あります!? 回すのは難しいらしい。実演してくださいました。

 「最初はヨチヨチ歩きの赤子だが、彼女は学習ロボットで、2回目はもっと技巧的に歌おうとして、オーバーヒートする」との由。

ハイGまで行く三連符は、「素敵だったのでデセイ(デュセ)から盗んだ」とのこと。いや、盗もうと思って盗めるものじゃないんですが……、強すぎる……。

 

第2幕

 休憩を挟んで、インタビューから。

 

 指揮のアルミリアーニさん。500回記念、おめでとうございます! トスカニーニですら480回なのに! とのこと。いやいずれにせよ怖いわ。

「『ホフマン』はあと一歩で『パルシファル』などの傑作になれたのに」とのこと。やっぱり、指揮者ですらそう思うのですね。確かに、『ホフマン』は一流になりきれていないというか、主に冗長さとストーリーの弱さの面で、惜しさがありますよね、『ホフマン』オタクには怒られるかもしれませんが。

 オッフェンバックは初演を観るまで作品の価値を認めなかったが、このバージョンが最も完成版に近いとのこと。

 

 美術チームにもインタビュー。こちらの演出は、METではかなりのロングランです。

1920年代に読み替え、退廃的な雰囲気を作り出したとのこと。1幕部分はカーニバルを参考にしたそうです。彼らは不道徳な実験をしていたのかもしれないから、それを踏まえて更に「オペラだから大胆に、壮大に」と仰っていました。大スペクタクル!

 ホフマンは常に同じ衣装であることも重要だと仰っていました。ベルナイム先生、お似合いです。

 

 ヴァン・ホーンさんにインタビュー。

彼の解釈では、この役は独立した悪魔ではなく、「ホフマンの疑心暗鬼、彼の一部」のように捉えているのだそうです。面白い解釈だ! とても良いと思います。

METでもよく悪役を歌ってらして、大抵がハマり役です。バリトンやバスの歌手は、ノリッノリで悪役をやってくださる方が多く、一方でインタビューでは誠実で、なんかもうそれだけで推せそうになります。危険だ……。

 ベルナイムさんともよく共演し、善・悪の二項対立を演じているそう。声の相性としても悪くないのではないでしょうか。

 

 

 それでは本編、第2幕。

 イェンデさんは声質がアントニアにめちゃくちゃ合っています。「それだ~!」と思った。軽めのリリコで、汎用性高そうな軽やかな声です。

ちゃんと舞台でお目に掛かるのは初めてでしたが、よくネイディーン・シエラ様とデュエットを歌っている印象です。声の相性がいいのかな。

 アントニアと傾向が似ていることもあり、『椿姫』とかシンプルに合いそうだな~と思ったら案の定めちゃめちゃ歌っていた。だよね。

 

 2幕に関しては、ホフマンはとばっちりすぎますよね。ニクラウスも口を塞ごうとしていたのに、あーあ、というところです。相変わらずppがめちゃくちゃ綺麗である。

薬の瓶をカンカン鳴らすミラクル博士、煽ります。

 

 『ホフマン』物語で最も美しい曲の一つがこの2幕終盤の三重唱です。

プロローグの時点で悪役的高笑いが上手かったホーン先生、勿論この三重唱でも炸裂。あの「アッハッハッハッハァ!」がないと満足できないので、不発だと困ります。満足です、ありがとうございました。

 そう、『ホフマン』、音楽的には凄く美しいんですよね……。もうちょい脚本と尺がどうにかならんかったのか、という気がしますが、名旋律の宝庫です。惜しい……。

 

 

 イェンデさんのインタビュー。

「感情的に飲み込まれるギリギリのラインを狙う」とのこと。こういうエモーショナルな役柄は、心理的にも演じるの大変そうですよね。

前年、お母様を亡くされて更に感情移入が進んだそうで……、RIP。そしてそんなソプラノには是非『ユーリディシー』を……。正に、ブリスさんが仰ったように、「乗り越えるための」演目だと思うので。

 

 そして、大ニュース。我らがパランボ大先生が今期で引退されたそうで!! それがこの上演で最も衝撃的だったことかもしれません。パランボ先生のこと不死身だと思っていました(?)。お辞めになる日なんて来るんだ。

 実際、17年間合唱指揮をやっておられたそうです。そうだよな、わたしパランボさん以外の人見たことないもん。いや、長年大変お疲れ様で御座いました。

 そして新しく合唱指揮に就任したのは、フランクフルトから来た若手、ミハイルさん。お話の内容は当たり障りがなく、今後の活躍に期待です。

 

 METライビュ、次回は新作『グラウンデッド』。主演のエミリー・ダンジェロ様がいらっしゃいました。相変わらずイケメン過ぎる~! 『サンドリヨン』のプリンス・チャーミングを筆頭に、METのズボン役といえば彼女です。『グラウンデッド』、ダンジェロ様のPVの時点で勝ち確定みたいなところある。

 今作はダンジェロ様の当て書きなのだそうです。オペラの作曲というのは、常人には全く不可能な謎の偉業であるため、当て書きしてもらえるというのは歌手にとって何にも代えがたい僥倖であります。流石だ……、まあでもダンジェロ様に当て書きしたいという気持ちはわかる。

 ところで、この時のMET、『ホフマン物語』と『グラウンデッド』でマチソワしてるんですか? きもちわる……(褒めてる)。これだから世界最強のオペラハウスは……。

 

第3幕

 休憩を挟みまして、ニクラウスとジュリエッタにインタビューです。

まだ登場していないキャラクターのインタビューが先に来るのは珍しいですが、ジュリエッタは終幕にしか出ないので、致し方ないですね。

 

 ベルジャンスカヤさんは今作がMETデビューとのことです。ニクラウスって結構大役なので、いきなりの大抜擢になります。

お名前やお顔立ちからしてロシア系かな……と思ったら案の定でした。スタヴローポリのご出身だそうです。

 であれば、やはり『オネーギン』を歌っているかな……と思って調べたら(ロシアの歌手は漏れなく『オネーギン』を歌っていると思っている狂信者)、なんと、オリガではなくタチヤーナを歌っていました! メゾソプラノじゃなかったんかい!

曰く、元々ソプラノだったのがメゾに転向し、今はどちらも歌うようで。「バロックから、ビゼーベルカントまで」とレパートリーが広いというのは、そういう意味だったのか!

 軽く拝聴しましたが、ターニャよりニクラウスの方が合っていると思いました。ニクラウスは上手いと思いましたが、ターニャというかロシアオペラをやるにはヴィブラートがちりめんすぎる傾向があり、たまたま調子が悪かったのか、低音は得意なはずなのに響かず、高音はパワープレイに走っていたので、ターニャをやるにはもう少し研鑽が必要と見えます。まだお若いですし、ターニャでもオリガでもいいので、応援しております。

 

 ジュリエッタ役のマルゲーヌさんは物凄く貫禄がありました。お衣装が凄いというのもあるのですが、この堂々たる態度たるや、正にスターというところ。

このジュリエッタを含め、カルメンやデリラなど、つよっっつよなファム・ファタルがお得意の様子です。いやこれは墜ちますよ。

カルメンより出番が少ないし、しっかり悪役なので、ジュリエッタ役はお好きなんだそうです、お茶目だ。「悪役は楽しい」とのことでしたが、実際めちゃめちゃ楽しそうでした! 次が出番ということもあって、既に割と役に入り込んでいそうでした。

 

 

 というわけで本編です。

下手側にジュリエッタとニクラウスがおり、上手側ではマクミランのようなエロティックなバレエが展開されています。わたしこれ『Mayerling』で観た。

 

 『ホフマン』の中でも屈指の名旋律、『舟歌』。

メゾソプラノのデュエットは珍しい」というお話がありましたが、ジュリエッタはソプラノが演じることが多い役であるように思います。『ホフマン』には色々な版があるので、わたしは詳しくありませんが、今回はメゾ用になっています。

 しかし、メゾ×メゾの二重唱ってめちゃよくないですか? もっと流行らせよう。ロシアオペラクラスタは、重たいのがすきなのだ。というか、全幕で聴くと『舟歌』めっちゃ短いですね。丸っきり同じでいいのでそのままもう一回くらい繰り返して欲しい。足りない。アンコール!

 一方でホフマンは、「この歌は僕の趣味じゃない」とセリフを続けます。ほんとか!? 屈指の名曲だぞ!? 全オペラの女声デュエットでもトップ5に入るぞ!?

 

 ダペルトゥットのアリアも決まりましたね。やっぱりバスはこういうゆったりと低音聴かせる曲がいいよな~。それでいて最後の高音も良かったです。悪役が上手いと舞台がほんとうに引き締まるんだよな~。

 

 ジュリエッタ、ちょっと似合いすぎています。鼓膜にガンガン響きます。パワーが凄い! フィクションの悪女最高~! ファム・ファタルよ、永遠なれ。

 「気持ちの支えになるものを置いていって」、という極めつけのセリフがまたいいですよね。現実的には影を取るのは不可能なので……、やっぱり髪の毛とか?

 

 『RJ』に引き続き、殺陣をやってくれるベルナイム先生。そんなに強そうには見えませんが、毎回勝ちます。ワルな顔もできるんだね~! それでいて情けない役も似合います。喜ばしい!

『オネーギン』では銃使えますので、是非とも宜しくお願いします。あなたは死ぬ役ですが……。

 

 それにしても、セリフパートを入れてくれているのもいいですね。ベルナイム先生は最早歌じゃなくてもうフランス語喋ってるだけでも充分素敵だからな。ずるい。

↑ 普通にフランス語喋ってるだけのベルナイム先生。フランス語字幕付きの動画を選んでみました。シモン・ボッカネグラやバレエがお好きらしいです。前者は意外な回答。

 

 最後にオランピアやアントニアも再登場。大団円……ではありませんが、エピローグらしくなります。最後の歌詞からしても、オランピア・アントニア・ジュリエッタは同一の歌手が歌うべきだと思うのですが、でも求められる声質が全然違うんですよね~……。『ホフマン』、本当に難儀な作品だ……。

長い『ホフマン物語』ですが、ニクラウスとホフマンがしっかり締めてくださいました。

 

 

 カーテンコールでは、お花を投げられて急いで取りに戻るモーリー様が素敵でした。一方、アルミリアーニさんはナイスキャッチ。

 

 こんなところでしょうか! 歌手目当てで参りましたが、充分満足できる内容でした。ベルナイムさんだけは最ハマり役というわけではない気がしましたが、他は豪華キャストな上に皆声質と役がよく合っていたように思います。

METで愛されるロングラン演出ですし、一度くらい観ておくことをお勧めします。

 

 また、今回も観劇にお付き合いいただいた相互さんにも大感謝を。いつも本当にありがとうございます!

 以上!

 

最後に

 通読ありがとうございました。9000字も書いてしまった。何故?

 

 METの次回作、『グラウンデッド』は観に行きたいと思っています!

今シーズンは古典が多いですが、『トスカ』や『アイーダ』あたりは一応行っておこうかな~。それにしても、アイーダ役のブルーさん、お衣装似合いすぎじゃありませんか? ちょっと楽しみ。

 

 次回の記事ですが、またレビューを書こうかな、と思っています! ここ最近はレビューばっかりですね。連載の続きも翻訳は大体終わっているので、書き上げちゃいたいのですが。ともかく、暫くお待ちくださいませー。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。