お久しぶりです、茅野です。
久々にレビューを溜めてしまいました。というのも、わたしは健康優良児であることだけが取り柄なのに、遂にこれをやらかしまして。
↑ 大人数が集まる場でプチパンデミックに遭遇した疑惑が濃厚(わたしを含め4人陽性)。
家人もやらかしてまして(十中八九わたしが移したすまない)、暫くプチ夏休みしてました。体調不良時ってアウトプットする気力失せますからね。なかなか怠さが抜けなくて、確かにこれは厄介な流行病ですね~。
最近流行っているようですし、皆様もお気をつけください。
というわけで大分経ってしまいましたが、先月末は新国立劇場オペラ研修所の『サマー・リサイタル2024』にお邪魔しました。7月25日、初日の回です。
『トスカ』の際にチラシを貰って、「『オネーギン』がある!?! 聞いてないぞ!!」となりまして、急遽取りました。
プログラムは全部公開されておらず、結局行ってみるまでわからないスタイル。今回は『オネーギン』は先に記載があったから良かったですが、サプライズ枠に組まれると困るよ〜。おい聞いているか NBS、プログラムを発表する前に席を売るなって言ってるんだよ。
わたしは『オネーギン』目当てなので、主にこちらの雑感を、時間も経ってしまいましたし極簡単に書いて参りたいと思います。他のプログラムに関しては有識者にお任せします。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
出演
大竹悠生、冨永春菜、長尾渓一郎、野口真瑚、松浦宗梧、後藤真菜美、谷菜々子、中尾奎吾、渡邊美沙季、有吉琴美、小野田佳祐、島袋萌香、牧羽裕子、矢澤遼
指揮:キャスリーン・ケリー
ピアノ:石野真穂、髙田絢子
ヴァイオリン:増田加寿子
雑感
今回は少し出が遅れまして、『魔笛』を逃しました大変申し訳ない。幕間にご挨拶した三島先生曰く、前半は『魔笛』が一番よかったそうなので、やっちまった〜〜。まあ少なくとも『オネーギン』がトップバッターでなくてよかった……。
小劇場でガラを聴くのは初めてです。オペラ・バレエだけ追っていると、小劇場に行く機会ってほぼないですからね。『イオランタ』ぶりです。今回もまた『イオランタ』あるけど。『イオランタ』のオタクみたいになっている。まあこちらもチャイコフスキーだけれども。
座席は後方中央でした。
その他の演目
先に、チャイコフスキー作品以外から、もう本当にざっくりとメモを残しておきます。
流石研修所、クオリティ高いです。オペラパレスの人たちより踊れるし。
字幕は上に出ます。フォントの使い分けで人を表していて、わかりやすくて良いなと思いました。大劇場はこれやらないのかな。
前半はドイツ語プログラム、後半は多言語のようです。
ドイツ語とはご縁がないので何ともわかりませんが、ちゃんとドイツ語っぽいなと思いました(小学生以下の感想)。
白眉は英語歌唱であり、皆様英語の発音がとてつもなく綺麗である。別に英語って特別歌いやすい言語でもないと思いますし、義務教育で触れる分観客が一番批判しやすい言語であるにも関わらず、英語歌唱が一番良かったです。凄い。MVP は『スリー・ディセンバーズ』組に。
逆に『アフリカの女』は何語なのかわからないレベルでちょっと困惑。わたし一応仏語専攻だったんだけどな。
ジウッセピーニはちりめんヴィブラート気味なのが気になりました。アントネッリはよくその体勢で歌えるな……。
『若草物語』はオペラ化していたことを初めて知りました。英文学好きの友人に教えてあげよう。
英語であることもあってか、所々ミュージカルっぽさを感じますね。最後は現代聖歌っぽい終わり方で、とても美しかったです。
毎回の幕間の効果音も良い味を出していますね。『こうもり』はシャンパンを開ける音。
アイゼンシュタインが凄い格好で歌っていました。ファルケもいいですね、これくらいの音域が歌いやすいのでしょう。
前述のようにドイツ語がわからないので、 ваше здоровье! だけ聞き取れたぞ!
小劇場のオケピは女性でも立つと頭が出るくらいの高さの模様。でもちゃんとオケピがあるの良いですね。
『イオランタ』
さて、主眼は勿論『オネーギン』ですが、同じチャイコフスキー作品ですから、『イオランタ』に関しても少しだけ書いておきましょう。
小劇場『イオランタ』好きすぎませんか? いや、いいですけど……。研修所のそのちょっとマイナーどころを攻める選択がとても好きですから。前もこんな感じの演出だった気がしますが、うろ覚えです。
ロシア語の発音指導はヴィタリ氏。あなたはもっと自分でオネーギン歌ってください。
始まりはアリアの前から。まあ『イオランタ』抜き出して歌うってなったらここになりますよね。
ロシアオペラにしては声が軽い印象は受けました。しかしまあ、王女だしこれくらいでもいいのかも? イオランタは他のヒロインに比べたら軽めでいい気もします。
また、もうちょっとローテンポでもいいかもな~とは思いました。
ж の発音が綺麗だと思います。у はもうちょっとハッキリだとベター。ヨーロッパの言語に慣れていると逆に抜けますよね。わたしもスペルミスは у や о などの母音を抜かすことが多いという話は前もした気がする。
イオランタのアリアってなんというか終わり方がスッキリしない曲ですよね。一曲だけ取り出すと特に。「そこで終わる?」となります。
『オネーギン』
出た! エウゲニ!! エウゲニ表記やめろ!! エヴゲーニイで頼む!! せめてエフゲニー!!(出オチ)。
そうだった……ここは新国立劇場だった……と思い出させられました。
パンフレットでは「タチヤーナ」表記でしたが、字幕では「タチアナ」表記。トリケが書いた? Brillez, toujours, belle Tatiana! 「タチヤーナ」で統一しよう。
パンフレットでは、どこをやるのか不明瞭で、内容的に「手紙」もやるのかと思いきや、1幕3場のみでした。「手紙」は作中でも最大の見せ場の一つなので、「手紙やらんのかーい」と思いつつ、まあ時間ないか……。
ちなみにパンフレットはそれぞれ出演者が書いているそうで。なるほど、「研修所」。作品への理解も深められて宜しい試みかと思います。
「1820年頃」という断定しない表記も評価高いですし、特に大きな問題はないかと。強いて言うなら、「苺を摘む~」という点に関して、正確には「ベリー類」の方が良いと思います。このシーンの季節は夏ですし、恐らく苺ではなく、ラズベリー等だと思われます。日本語には「ベリー」に相当する適切な訳語がないので、表現が難しいですよね。今からでも何か語が欲しい。
というわけで、実際には1幕3場の女声合唱の最後のほうから。
合唱のバランスが極めて悪いです。内声が強いのかな。ソプラノはどこかへ飛んで行きました。まあ少人数の合唱ってバランス悪くなりがちではありますが……。
ターニャはかなりロシア語怪しめです。出番が少ないとはいえ。
1幕3場は Здесь он, Что подумал он!.. Что скажет он?... など、最後 он で韻を踏むことが多いですが、だからこそ流すのではなく、もっと「韻踏んでますよ~」と明瞭にアピールして欲しいところ。
Боже が「ずぇ」になっちゃったり、 я が「ぃや」になっちゃうのも勿体ない。前者はイオランタは良かったんだけれども。
все ближе や и как больно はもうちょっと明瞭でもよいですね。
また、ターニャは彼女には音域が低い気もします。もっと高い方がお得意なのでは? と思いました。ロシアオペラのヒロインですからね……。
出番が少ないとはいえ……という印象を受けました。
一方のオネーギン、入りは良いなと思いました。チャラ男感強めの解釈で来ました。「ダンディ」って難しいよな……ダンディて何だよプーシキン御大……って現代の研究者もよく言ってます。それで通じると思わないで欲しい。
オネーギンのアリアは、語末が尻切れトンボになるバリトンが続出しますが、今回もそのような時があります。 искренность мила はもうちょっと伸ばして欲しいかも。
アリアの入りの Когда はもっと明瞭だと嬉しいです。
То верно б, кроме вас одной, Невесты не искал иной. は一息でいったのお見事です。
その後の душа моя でちょっと加速。
一番大事な(?) брата, は明瞭に! ロシア語わからない客層にも「あ、brother か」ってなると思いますし!
люблю は発音難しいですよね! わかるよ! でも大事なんだ! なんでこんなに頻出する単語が発音難しいんだロシア語!(※英語の love に相当。動詞、一人称単数)。
歌詞のブレがある箇所ですが、2回とも сильней でした。「兄としての優しい愛」ではなく、「強い愛」で愛してくれるらしい。告白を断っているとは思えない情熱的なオネーギンさんである。
ここの歌詞のブレについての詳細が知りたいのですが、また直筆のメモ漁らないといけないのかな~……。詳細ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。
最後は下げる派です。高音も出そうな感じしましたが、そちらの方が響くと判断したのでしょう。ピアノも下がっていて、そこ下げるんだ、と思いつつ。ピアノ伴奏で聴く機会ってあんまりないので、その点も楽しかったです。
声はいいと思います! オネーギンとしても似合うと思う。というか、オネーギンって他のキャラクターに比べてあまり声質を選ばないと思います。「こんなのオネーギンじゃないよ~!」とはあまりなりづらいキャラクター。あんまり軽すぎたり、重すぎたりするとどうかとは思いますが、平均的なバリトンは大体歌えるのではないでしょうか。技術的に難しいところも少ないですし。ロシア語はネックかもしれませんが……。だからバリトンはみんなもっとオネーギン歌えばよいと思う。
演技もお上手ですし、歌にも表情がついたらもっといいですね。尤も、オネーギンのアリアって表情がつけづらいことで有名で、単調になりがちなので、アリアだけで判断するのはどうか、という気もしつつ。変に色つけすぎると情緒不安定みたいになりますし。
とはいえ、オペラには歌詞がありますから、その歌詞に対応する色がついたら更によくなると思います。
やはりオネーギンのアリアの後は拍手なし。メモ書いてたら間に合わなかったゴメンね。
やはりオネーギンのアリアの後の拍手は義務教育で習わせた方が良い。
また、最後はお手紙を返しちゃう演出。原作みたいに大事に持っておきなよ!
バレエ・クランコ版といいい、どうして舞台上のオネーギンはターニャの手紙を粗末に扱うのか。3幕の伏線自分で折ってどうするんだよ~! と常に原作のことを想ってしまうのは原作厨がゆえか。いやしかし『オネーギン』を名乗る以上は原作に依拠してほしいですねえ……。
幕間には、三島先生にご挨拶できました! 嬉しい!!有識者とご一緒できるの、大変心強いです。
↑ 三島先生のレビュー。読もう。
書くの遅くて申し訳ない……。またご一緒できたらとても嬉しいです!
こんなところでしょうか。来シーズンはロシアものがありませんが(大野芸監?? マニフェストは???)、研修所が取り上げてくれて嬉しいですね。もっと盛大に広報してもいいのよ。
研修所公演はいつもクオリティが高く、原石の宝庫なので、今度は本公演でもロシアものやって貰えたら嬉しいですね。またちょっとマイナーどころを突く選曲を期待しています。
最後に
通読ありがとうございました。簡単に5000字ほど。
前述の通りレビューを貯めてしまっているのでね! 一気に消化したいところ。き、気が重い……(レビューを書くことに苦手意識がある)。しかし消化しないと次に進めないので、なんとかしたいところです。はい。期待せずお待ちください。
それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。