世界観警察

架空の世界を護るために

『世界バレエフェスティバル』Aプログラム2024/07/31 - レビュー

 こんばんは、茅野です。

レビューマラソンを走っています。バレエ多めです。

↑ 前回の記事はこちらから。

 バレエばっかり観ているとオペラ観たくなるんですよね。何かいいのないかな。MET アンコールの『エルナーニ』は行くか迷っています。ホロ様にジョルダーニ氏でしょ? 勝ち確定演出入っているのでは?

 

 さて、というわけで続けてレビュー記事になります。先日は『世界バレエフェスAプログラムにお邪魔しました。初日、7月31日ソワレの回です。

↑ 「2021」になってるんだけど体裁大丈夫そう?

 

 今年のバレエフェスは、Bプログラムに『オネーギン』がありましたので、Bプロだけ席を取っていました。わたしは何よりも『オネーギン』のオタクですから、この演目のないAプロはまあ良かろうと。

しかし急遽、直前になってぶっ込んできやがりまして……。

大体これのせい

 「な、なんてことしやがる……」と思いながら席を取りました。マジでこれだけの為に取ったと言って全く過言ではない。まだ U25 が使えて幸いでした。流石にそれだけのためにフェスのお値段を出すのは、ちょっと……。

 

 今回は、備忘がてら、時間も経ってしまいましたし極々簡単にこちらの雑感を記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

出演

・「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ(ジョン・クランコ振付)
マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィゲレド

・「クオリア」(ウェイン・マクレガー振付)
ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク

・「アウル・フォールズ」(セバスチャン・クロボーグ振付)
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン

・「くるみ割り人形」(ジャン=クリストフ・マイヨー振付)
オリガ・スミルノワ
ヴィクター・カイシェタ

・「アン・ソル」(ジェローム・ロビンズ振付)
ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン

・「ハロー」(ジョン・ノイマイヤー振付)
菅井円加
アレクサンドル・トルーシュ

・「マノン」より第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ(ケネス・マクミラン振付)
サラ・ラム
ウィリアム・ブレイスウェル

・「ル・パルク」(アンジュラン・プレルジョカージュ振付)
オニール八菜
ジェルマン・ルーヴェ

・「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン振付)
永久メイ
キム・キミン

・「3つのグノシエンヌ」(ハンス・ファン・マーネン振付)
オリガ・スミルノワ
ユーゴ・マルシャン

・「スペードの女王」(ローラン・プティ振付)
マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ

・「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」(クリストファー・ウィールドン振付)
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

世界初演 「空に浮かぶクジラの影」(ヨースト・フルーエンレイツ振付)
ジル・ロマン
小林十市

・「アフター・ザ・レイン」(クリストファー・ウィールドン振付)
アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

・「シナトラ組曲」(トワイラ・サープ振付)
ディアナ・ヴィシニョーワ
マルセロ・ゴメス

・「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ(ジョン・ノイマイヤー振付)
エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル

・「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ振付)
マリアネラ・ヌニェス
ワディム・ムンタギロフ

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:菊池洋子
チェロ:長明康郎

 

雑感

 バレエフェスは、長時間且つ高額ながら、世界のトップダンサーを一気に観られる、楽しいイベントですよね。東京で開催して貰えて有り難く思います。

 一方で、わたしは舞台人のプライベートは可能な限り知りたくなく(彼らが適切な労働環境に身を置き、舞台上で輝いていれば鑑賞者はそれで全く満足なのだ)、彼らの SNS なども見たくない派閥に属しているので、一部のファンがやれ「山手線に乗ってた」だのやれ「レストランで見かけた」などの目撃情報などで盛り上がっている様子に恐ろしくゲンナリしてしまいます。プライベートの尊重とか肖像権とかの概念ないんか……、やっていること文春と同じでは……。

 個人的には出待ちも嫌いで、お疲れだろうし早く休ませてあげなよ、と思ってしまいます。最近の舞台人は皆優しく、「ファンサービス」として許容してくださるんでしょうけど、わたしは好みませんね。どうせやるなら、アイドルの握手会じゃないですが、ちゃんとお給料が出る環境で適切な機会を設ければいいのに。

 ……とまあ、色々な意味で疲れるイベントでもあります。

 

 プログラムはAとBで二種類ありますが、わたしの周囲のみならず、全体的にもBプログラムの方が人気の様子。わたし自身、最初はBプロしか席を取っていませんでしたし、然もありなんというところ。やはり現代物が多いのがネックとなったか。

 

 今回は2階L側で御座いました。U25 が唯一残っていた日でもありますが、なかなかの良席にお通しされてビックリです。

 

スペードの女王

 先に目玉の話だけしておきます。

わたしはあまりバレエ団とかダンサー個人には関心が無いため、箱推しという程ではないものの、バレエ団で一番観ていたのはやはりボリショイであります。わたしは帝政ロシアのオタクで、当団にはこの時代を舞台としたレパートリーが多いことや、ダイナミックで表現力に重きを置いたスタイルが好きだからです。

 しかし侵攻を機にご縁も薄く……。実際、所謂Z発言をする所属ダンサーもいたりして、なんとも難しい立場になっていました。

 

 オペラ界では、侵攻初期の頃に大々的なロシア人アーティストキャンセルが起き、しかし国籍だけで判断するのは不味かろうということで巻き返しが起き、今は明らかに体制寄りではない人は普通に起用されている、という状況ですイスラエル人ではあんまりキャンセル起きないところが西洋のダブスタなんだよなあ

 一方バレエダンサーは、殆どの場合バレエ団に所属する形になります。ダンサー各々の主義主張はどうあれ、ボリショイ劇場はロシア政府との関わりが強いことで有名で、団は政府から多大な資金援助を受けていますし、ウクライナ侵攻にも加担しています。

 加担というのは、軍人に対する慰安公演を行っていることで、公式サイトには、

Большой уже неоднократно поддерживал военнослужащих, принимающих участие в специальной военной операции. 

ボリショイは既に何度も特別軍事作戦ウクライナ侵攻のこと)に携わる軍勤務者を支援してきた。

В поддержку военнослужащих

とかドハッキリ書いちゃっています。

 バレエ団に属している以上は、このような出張公演に於いてもボリショイに金銭が渡っているはずですし、それっていうのはそのまま侵攻の肯定に繋がるよな、と思ったり……。ボリショイが侵攻支援の姿勢を示せば示すほど、スミルノワ様の態度の素晴らしさが際立つのである(勿論、全員がいきなり国外に飛べるわけではないことは留意が必要だけれども)。

……と、ここまで書いて何で席買っちゃったんだ……と猛烈に自己嫌悪に陥っているわけですが。これはもう完全に「だから席買いませんでした!」の流れだったでしょ。しかも目的が正にボリショイっていう。はあ……なんでこんな地域好きになったかねえ……。

 

 以前、東フィルがプレトニョフ御大を呼んだときは、あちらもロシア大使館後援でしたが、アンコールに「侵攻批判とも取れる曲目を演奏する」というアクロバティックな業を用いてロシア大使が激怒したことで話題になりました。

「大使館後援」とハッキリ書かれていても、ポーズだけでもこれくらいのことがあれば行きやすいんですけれども。

↑ 行きました。神回だった。

 

 従って、「ボリショイの2人を呼びます」というお知らせを見たとき、「なんてことしやがる」と思いました。しかも演目がプーシキン原作の『スペードの女王』っていうね。ほんとうになんてことしやがる。

更に言えば、追加キャストなので、激烈に侵攻反対の人も既に席を買ってしまっているという。これ仮に戦略だとしたら相当あくどいですよ(十中八九交渉長引いただけなんだろうけど)。

 フリーで活躍している人が多いオペラよりも、団所属という意味でセンシティヴなバレエなのに、その辺りの観念がガバガバなのはどうなのだ。まあ、元からゲルギー親分率いるマリインカからも呼んでいる時点で……というところではあるんだけれども。今更か……。

侵攻に強く反対するダンサーも呼んでいるのだから、運営も頭Zというわけではなく、純粋に度し難いほどのノンポリなのであろう。……と、この辺りも純粋に楽しめないポイントですよね。

 

 さて、それでも席を買ってしまった倫理観が欠如したわたしなわけですが。懺悔。

わたしはバレエファンというよりも『オネーギン』のオタクであるため、わたしにとって理想の歌手/ダンサーとは、必然的に「最もオネーギンの登場人物の役を演じるのが上手い人」ということになります。

というわけで、暫定「わたしのオネーギン」はディミトリー・ホロストフスキー(オペラ)、ヴラディスラフ・ラントラートフ(バレエ)、「わたしのタチヤーナ」はアンナ・ネチャーエヴァ(オペラ)、ディアナ・ヴィシニョーワ(バレエ)ということになります。

図らずも全員ロシア人になってしまった(ちなみに出身地はクラスノヤルスク、モスクワ、サラトフ、ペテルブルクとバラバラなのだけど)。やはり義務教育でプーシキンを習う勢は強い……。今回、理想のオネーギンもタチヤーナもいるのに両方『オネーギン』やらないの有り得なくない? の気持ちを隠せない限界オタク。

 

 ……という次第でして、わたしはラントラートフ氏のオネーギンが滅法好きであると。Сомненья нет: увы! 以下略。わたしは基本『オネーギン』という演目にしか興味がないですし、追っかけファン等ではありませんが、まあ贔屓と申し上げてもよいのではないかと。

観て頂ければわかりますから置いておきます。

↑ 1幕の Va. 。意志はあるが厭世的でミステリアス、これぞ正にプーシキンが描いたエヴゲーニー・オネーギンだ! 観客全員ターニャになるんじゃ。今はもう「推し」という語はこの人以外には使わないんだけれど、3年前はまだワードチョイスのスタンスがブレブレだった。はずかしい。

↑ 「手紙」。最初に観た『オネーギン』がこれなのに、これでしか満足できない身体にさせられてしまって終了した。最初に「正解」を教えてくれてありがとう……。10年かけて沢山オネーギンを観ても、未だにこれを越えるものに出会えていない。余程のことがない限り越えられないと思う。

 原作ファンは同意してくれると思うのですが、凄く原作っぽい解釈で演じてくれていますよね。実際に本人もインタビューでそのようなことを言っていて、「まあ、だよね」となりました。そんなの観たらすぐわかるよ。しかしそれをしっかり感じられるのは表現力の賜物です。

「クランコの振り付けたオネーギン」はシュトゥットガルトが正道なのかもしれませんが、「オネーギン」というキャラクターを原作の通り浮かび上がらせているのはやはり彼の解釈じゃないのかなあ。

 彼は文学が原作のドラマティックが十八番で、よく原作を読み込んでいるのがわかりますし、実際に『オネーギン』以外でも原作厨からの支持が厚いダンサーさんだな、と思いますね。アルマンとかヴォランドも上手いよ。

 

 それで、『スペードの女王』ですよ。こちらは原作はロシアの詩聖プーシキン、オペラ化したのは大作曲家チャイコフスキーと、『オネーギン』と同じ「ロシア芸術黄金タッグ」であります。もうロシア文学・ロシアオペラファンなら知らぬ者はいないという名作ですよ。

バレエ化はクランコ、……ではなく、幾つかあります。有名なのは、今回上演されたプティ版、そして最近初演された新制作ポソホフ版などがあります。

 プティ版は円盤化されているので、お持ちの方も多いのではないでしょうか。

↑ 無論わたしも持っています。全然観込んではないですけど。

 こちらの版は、まあ良くも悪くもローラン・プティと申しますか、フランスのエスプリが効きすぎていてロシア臭ゼロという、国外製ロシア文学翻案作品いつものパターンです。プーシキン消滅しました。わたしはもっとロシアの匂いを感じたい。こんなにロシア臭しないならわざわざロシア文学使わなくてよくね? と思ってしまう。

 

 一方のポソホフ版、こちらはオペラ版の音楽もしっかり使われていて、且つストーリーは原作寄りのようで、原作厨もニッコリの仕上がりになっていると見えます。流石本国製だ!(※ロシアは文学原作厨が多い上に火力が強く、特にプシュキニストは最恐である)。

 特に、わたしの大大大好きな2幕2場序曲がそのまま使われているというのがアドすぎます。わたくし、この曲がチャイコフスキーの書いた音楽の中でもトップレベルに好きなのです。ゲルマンの緊張し跳ねる鼓動を表すかのようなヴィオラ、忍び足のようなコントラバス、美しいペテルブルクの夜を象徴するような美麗なストリングスのメロディ! 情景が音楽に落とし込まれていて正にオペラ的でいて、非常に美しい!

↑ なんて美しい曲だろう! 同意頂けます? 2幕2場序曲がバレエ化するなんて!! こんなことが起こるとは思ってもみなかった。振付も良い。最高。

 折角ボリショイが『スペード』をやるなら、こちらが観たいよなあ……。

ちなみにラントラートフ氏はゲルマン役のセカンドキャスト。あんなにオネーギン役が上手い人がゲルマンもやるなんてそりゃあ成功するでしょうて……。しかも来日の直前まで踊っていたという。2幕2場序曲のソロだけでいいから日本でも踊ってくれ~~。この振付似合いそうじゃない?

 

 今回訝っていたのは、「何版をやるか」、です。

勿論、アナウンスではプティ版となっていましたが、わたしの勘違いでなければ、ラントラートフ氏はプティ版はレパートリーにないはず。一方で、アレクサンドロワ氏もポソホフ版がレパートリーにないわけです。従って、いずれにせよどちらかはイチから役を仕込んでくるのではないか……という疑惑が。

 結局、アナウンス通りプティ版でしたが、バレエ公演は普段クレジットのミスが多いこともあって、音楽が鳴るまで何が上演されるのかドキドキでした。

ということはつまりなんだ、彼は今回のためにわざわざプティ版仕込んできたのか。恐ろしいな! 何してんの?

 

 プティ版の面白いところは、18世紀の回想シーンの比重が大きい点です。

ポソホフ版のヒロインは順当にリーザなのですが、プティ版でのヒロイン(?)はなんと老齢の伯爵夫人。白髪のウィッグを被って踊ります。

しかしまあ~……アレクサンドロワ姐様はどう考えてもリーザってキャラじゃないからなあ……、仮にポソホフ版をやるとしても、リーザは似合わないでしょ~……とは思っていました。我々はラドヴァノフスキー様でこのようなハマり役の問題は検討済みなのである。

↑ オペラのリーザは、ジゼルのように恋していた相手の男(ゲルマン)に裏切られ、冬の川に身を投げて死んでしまう役どころ。ラドヴァノフスキー様大好きですし、動画でも超上手いですけど、彼女の声は不幸なリーザには強すぎるって! 絶対ターニャの方が似合うから歌って欲しい。寧ろゲルマンを殺して川に死体投げ捨てられそうなリーザ。

 

 というわけで姐様は伯爵夫人役ですが、なるほど、よくお似合いになる! 夫人の不敵な感じがよく出ています。やっぱり姐様はこっちだよね。白髪メイクに黒のドレスも、老女というよりディズニー映画のクルエラのようで、カッコよくハマっています。これはパリの社交界を席巻してらっしゃるわ~。

あまりバレエのテクニックを見せる役ではありませんが、表現力を重視するボリショイには合うのかもしれないですね。

 レヴェランスも役のままのタイプで楽しかったです。モスクワの味がしました。なんだかんだと言って結局、モスクワの味は美味いのである。くやしい! 早く終戦しろバカ政府!

 

 ゲルマン。ラントラートフ氏は表現力があるので、演技的な難易度の高いイロモノ枠の役が一番似合うんですけど、元々はダンスール・ノーブルで王子様もできちゃう、かなりの万能型。しかし線が細めなので(『オネーギン』を初演した11年前より大分腕太くなったな……とは思いますけど)、軍人役だけは似合う印象がありませんでした。

本人は大舞台で初めて主役を踊ったフィリップ役(『パリの炎』)が好きらしいのですが、フィリップなら他にも上手い人いっぱいいるし……とか思いますし。

 いやしかし、肋骨服、似合うじゃないですか。着てるの初めて観ましたけど。ゲルマンは軍人といえども工兵だし、振付もアクロバティックさを重視しないし、そこまでムキムキじゃなくてもいいのかも。

 一瞬足を滑らせたのが怖かったですが、初めて(?)にして申し分ない仕上がり。プティ版はドラマティックというほど演技を重視しないですが、折角なら全幕で観たいですね。特にこのシーンが見せ場なわけですし、もっと感情を乗せられるはずだ。ポソホフ版もやって欲しい。2幕2場序曲踊って欲しい(n回目)。

 

 全体的に、演技パートが多くて「バレエらしいバレエ」という感じでもないので、ガラでわざわざ選ぶかな? という演目であるとは感じました。

しかしまあ、ポソホフ版が上演されている今は特にプティ版はレアですし(日本でも初演なんじゃないかな?)、一応生で観られてよかったですね。

次はポソホフ版全幕で宜しくお願いします。セットなんか凄い豪華で今の日本の財力では絶対無理な気がしますが。終戦したらモスクワ行こうねえ……。

 このペアに関しては以上!

 

第1部

 わたしはバレエに詳しくないですし、お目当てに関しては前述しましたので、その他の演目に関しては猛スピードで駆け抜けます。他は有識者さんにお任せした。

それでは行きます。

 

 『白鳥の湖』。

溜めるところは溜める印象です。パートナーリングがちょっと甘い……というか、あんまり本調子ではないように見受けられます。初日だからかな?

 オディールは爪先が綺麗ですし、動きが軽いです。オディールの Va. はアレンジか? というくらい低音が聞こえない。ヴァイオリン、ホルンが崩壊しています。

 振付はクランコらしさが出ています。過去に1度観ましたが、結末に度肝を抜かれました。また全幕観たいですね~。

 王子はトゥール・アン・レールの回転が足りずに変なところで着地しがちなのがちょっと気になりました。これから良くなっていくのであろう。

 

 『クオリア』。

現代物の録音です。ナグディ氏は足が伸びる伸びる。それ筋痛めないか? みたいな勢いでバカバカ足を開くし、骨折れるだろ、みたいな奇怪な体勢が続きます。非常に技巧的で、今回のフェスで一番アクロバティックな演目だったかも。

 この間ライブビューイングでやった『白鳥』よりずっといいですね。現代物の方がお得意なのかな?

↑ 『白鳥』のレビュー。こちらも上演のコンプライアンス類についてぐちぐち書いていた。バレエ界、そういうの本当にダメなのかもしれない。

 

 『アウル・フォールズ』。

出・全力疾走。Aプロでは、何故か全力疾走する演目が多いです。走るのがトレンド。

こちらも録音ですね。一昔前のゲーム音楽みたいなピコピコ音サウンド。かなりの音量且つ主張の激しい曲で、正直音楽が邪魔で全然集中できなかった……。

 あまり技巧的なことはしないタイプの現代物。先ほどの『クオリア』とは対照的です。シムキン氏はBプロの『ドン・キ』に全振りと見える。

 最後のあれは、ボールではなくリンゴであろうか……? 舞台上にリンゴ出すの、流行っているのか……?

 

 『くるみ割り人形』。

スミルノワ様はクララやらマーシャやらというキャラではなかろうに、と思ったら大分ネオ・クラシックで大人向けで美しめの感じの振付で来ました。なるほど、これは似合う!

 マイヨー振付らしいです。初めて観ました。ボリショイをよく観ていた層としては、スミルノワ×マイヨーといえばビアンカ役なんだけれども、今はもう違うんだね……という寂しさ。彼女の厳格な態度は素晴らしいですが、元ボリショイウォッチャーとしてはやはり寂しいです。わたしは彼女のタチヤーナを観て育ったのだ。全部帝国主義とアホ政府が悪い。

 以前も書きましたが、わたしはオーリャ様の良さは背中だと思っているのだけれども、相変わらず流石の背中でした。やはり背中だった。凄まじい。ロングドレスで背中空いてるのも良いです。大変ステキ。

 こちらの振付でも結構走ります(本日2回目)。『ル・パルク』並みにキスしよる。ご馳走様でした。

 

 『アン・ソル』。

今回はミスなのか、毎度幕前に表示されるクレジットなし。このようなミスは、Bプロも含め今回だけでした。翌日からはちゃんと表示されたかな。

パリ・オペラ座はこういうの本当に好きだよねー」というお手本みたいな演目です。ゆったりとしたアダージオ、シンプルなお衣装、ネオ・クラシック。いつも通り。

振付もクラシックから逸脱しない現代物です。

 

第2部

 休憩を挟みまして第二部。この時点で結構疲れている。

 

 『ハロー』。

チェロは舞台上で弾いているのにどこか機械音っぽいです。スピーカーを使っているのかな?

音楽も振りも正に「現代物」という感じの現代物。難解です。

衝撃的なことに、ピアニストがダンサーに揺さぶられる(!)シーンがあるのですが、そのまま弾き続けていて凄いです。ピアニストが一番凄い説ある。

 菅井さんは驚異的なバランス力を誇ります。バーでやるようなものを堂々とセンターでこなします。カッコイイ。

 

 『マノン』。

美男美女揃いのバレエ界の中でも屈指の天使であるサラ・ラム様のマノン。マノンは原作が小説であるだけに、様々な解釈が成り立つヒロインですが、「悪意を知らず純真無垢、しかしそれこそが魅力となって本人も知らないうちに男を破滅に導く」という解釈である彼女のマノンこそが「正解」だとわたしは確信しています。フランス語科でファム・ファタル文学講義の評定 AA だったわたしが言うのだ、信じて下さい。その「正解」を生で観られて嬉しいです。やはり、原作通りの解釈は説得力が凄い。

 以前のフェスでは死角となって見えませんでしたが、今回はL側なのでちゃんと上手側の書机が見えます。よかった。

 ブレイスウェルさんはやはりウブな青年役が一番似合うのではないかと思いました。若くて、元気いっぱいで、世間知らずで、情熱的な……。幸いにして、バレエの男性役にはそのような役が沢山あるので、どんどん物にしていって欲しいですね。

 ガラであることもあってか、それでもサラ様はやや感情抑えめ。やはりガラでドラマティックをやるのって、演者側も観客側も感情乗りづらいし、難しいのだろうな~ということを改めて感じました。全幕で観たい。

 どうでもいいですが、ここまでの演目の中で『マノン』が一番手元見やすかったです。照明明るいのかな。

 

 『ル・パルク』。

今回のフェス、圧倒的『ル・パルク』率。まさかのA・B・ガラ全部でやるという。人気すぎる。全ペア『オネーギン』踊れ(無茶ぶり)。

わたしはフルで観たことがなく、ガラで毎回誰かしらがやっているイメージです。あとパリオペが特に好きなイメージ。いつもの……以上に感想なし。

 

 『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』。

 古典だからか(?)、出拍手がありました。今回はこちらと『ドン・キ』くらいか。

最後のポーズが少し怪しかったですが、アントレは基本的に二人とも優等生的な踊り。

 キミンさんの Va. が今回の公演で圧倒的に一番盛り上がっていました(例外枠『ドン・キ』は同等くらい)。前回のバレエフェスもそうでしたね。もう彼が全部一人で踊った方がフロア盛り上がるんじゃないかまである。

彼はパリっとした動きが特徴的なので、あんまりワガノワっぽくないな~と思ったりするものですが、最近のワガノワ事情はよくわかりません。

 永久さんの Va. は安定感があります。音の取り方が予想とはちょっとズレていて、結構意外な印象を受けました。

 

第3部

 『3つのグノシエンヌ』。

Bプロには出ないからか、スミルノワ様続投。大活躍ですね。確かに彼女はパリオペの現代物とは相性いいと思いました! アリな組み合わせですね。ネオクラ得意そうですし。

それこそ、ボリショイ時代というよりワガノワ時代のメソッドなのかなあ、と思われる動きでした。

 

 『マーキュリアル・マヌーヴァーズ』。

メロディを取るトランペットが完全に終了していました。そのインパクトが強すぎて記憶飛びました。メモ書きに「トランペットだめかも」しか書いてなかった。すみません。

 ウィールドンの現代物です。いっぱいマネージュしていた気がします。

 

 『空に浮かぶクジラの影』。

 世界初演との由。英語のナレーションが入るのですが、ユダヤ人の話をしていましたか? リスニングテストすぎる。詳細ご存じの方がいたら教えてください。

英語の語りと歌を背景に、現代物です。計っていないですが、圧倒的に上演時間が長かったと思う。他の組の2-3倍あるように感じました。

 物語性があるようですが、前提知識が無いとなかなか難しかったです。

登場する風船は白→赤→黒→白。最後オケピに落としていたけど、ちゃんと回収しましたか?

 全力疾走好きだね(本日3回目)。どんだけ走るんだ。最後はオケピに足を垂らすように座ります。オケピがある劇場で、オケピを使わない前提という、変わった振付である。

 

第4部

 Aプロはなんと第4部まであります。長すぎる。

 

 『アフター・ザ・レイン』。

出 Bravi。今回のみでした。熱烈なファンがいらっしゃると見える。まあ、このペアならね……。静謐な現代ものです。キャストが好きな人には良いのだろう。

 

 『シナトラ組曲』。

「わたしのターニャ」ことヴィシ様。好きです(突然の告白)。

彼女が現代ものに力を入れているのは知っていたけど、まさかポワントでも裸足でもなくハイヒールで来るとは。バレエというより、ほぼ完全に社交ダンス風です。

普通にとてもカッコよかったですが、タチヤーナを踊ってくれ。頼む。できればヴラドと組んでくれ。なんでもします。

 

 『椿姫』。

無音の中、いきなり咳き込む演技から始めるの大変そうだ……。ガラでドラマティックをやることの難しさを『マノン』ぶりに感じました。

秋に『オネーギン』を踊ってくださるシュトゥットガルトのペアです。しかし、アルマンの方がカリスマ的だと『椿姫』では相性が悪いかも。『オネーギン』では丁度いいですれどもね。アルマンの方がオム・ファタルに見えます。マノンとファタル度で勝負だ! 実際、ファム/オム・ファタル決定戦みたいなのやったら楽しそう

 バデネス氏はイタズラっぽいお嬢さんな解釈です。妖艶というよりも、コケティッシュ感が強め。まあパリの高級娼婦っぽさはあります。

 髪を下ろしたフォーゲル先生は WBD オネーギンぶり。あちら、神回でしたからね……、このペアで全幕を観られることを心待ちにしていました。勿論、来日『オネーギン』は全通分席買ってありますから。楽しみです!

 フォーゲル先生は、アルマンにしては優雅な解釈で、「貴族と娼婦」という階級差を感じる残酷な『椿姫』でした。

 

 『ドン・キホーテ』。

「バレエフェスは『ドン・キ』よければ全てよし」とはよく言ったものである。出拍手2回目、最初からフロア熱狂状態です。

 バジル、お衣装がキラキラです。ここまでキラキラなの珍しくないですか?

流石のネラ様、圧倒的バランスです。これだよこれ。フェッテはシングルが多めですが、それこそがネラ様の「基礎こそ美しい」という理念がよく見えて素晴らしいのです。アクロバティックだけが技巧的なのではない、シンプルだからこそテクニックが際立つのである。素晴らしい。キトリの Va. も、テンポ遅めでしっかり見せつけてくれます。それでいいよ。

 金管は最後だから頑張ったのか、よくなりました。『ドン・キ』よければ全てよし。

 

 以上です!!

 

最後に

 通読ありがとうございました。なんと1万2000字……。

無駄に長くなってしまいました。3000字くらいで終えたかったんだけどな……大したこと書いてないし……。

 

 次回は同じく『世界バレエフェス』のBプロ編になる予定です。メモ書きは既に打ち込んであるので、清書してさっさと脱稿したいところ。応援ください。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。