世界観警察

架空の世界を護るために

シュツットガルトバレエ団『オネーギン』2024/11/04 - レビュー

 おはようございます、茅野です。

今週は生活リズムが滅茶苦茶です。しかしこの記事を書き上げたら、そろそろなんとかしてゆかねばと思います。熱狂の夜はそろそろ終焉の時間です。

 

 さて、先日もシュトゥットガルト・バレエ団来日公演『オネーギン』にお邪魔しました。3回目の11月4日マチネ回、千秋楽でございます。

 

 一昨日、昨日のレビューはこちらからどうぞ。

↑ それぞれ字数5桁乗っていて長いですが。

↑ ファクトチェックもやりました。プーシキンは「浅く」ないよ。

 

 もう終わってしまうとは……、3日間って短いですね……。もっとやってくれてもいいのよ。次は来日いつになるんでしょうか! また『オネーギン』やって欲しいんですけど!! 宜しくお願いします。

 

 今回も備忘がてらこちらの雑感を記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

キャスト

エヴゲーニー・オネーギン:マルティ・パイジャ
タチヤーナ・ラーリナ:ロシオ・アレマン
ヴラジーミル・レンスキー:ヘンリック・エリクソン
オリガ・ラーリナ:ヴェロニカ・ヴェルテリッチ
グレーミン公爵:クリーメンス・フルーリッヒ
プラスコーヴィヤ・ラーリナ:ソニア・サンティアゴ
フィリピエヴナ:マグダレナ・ジンギレフスカ
指揮:ヴォルフガング・ハインツ
管弦楽東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

雑感

 今日も4階中央から。見やすくて良いですね。

ところで、オペラグラスを新調することも検討しているのですが、お勧めのものがあったら是非とも教えてください。宜しくお願いします。

 

 今日もやはり5分押しました。まあ、マチネだし、『オネーギン』は短いのでそんなに問題はないかと思いますが。

 

 今日は主要キャスト全員全幕で観るのは初めてだったので、批評というより、備忘を目的に、「この時はこうしていた」ということをメインで書こうと思います。

 それでは本編。

 

第1幕1場

 今更ですが、プラスコーヴィヤママ、動き柔らかいですよね。シュトゥットガルトが来日するときは、いつも彼女がラーリナ夫人を演じていると思いますが、「コミカルなおばちゃま」ではなく、「在りし日のお嬢様」という感じです。

 

 今日のターニャは、本を読む姿勢が良いです。寝そべりながらも状態を起こし、綺麗に反っています。バレエっぽい。

 

 昨日よりオリガの動きは硬め。パキパキ動きます。ポーズなどもかなりビタッと止めてくれるタイプ。お嬢様感や、天真爛漫さというより、快活さ、溌剌とした感じが前面に出たオリガの役作りでした。

 オディールとか似合いそうかも。是非観てみたいですね。

 

 腕を振らずに小走りで登場するレンスキー。

後述しますが、今思えばこの辺りも緊張から来るものだったのかもしれません。確かにちょっとぎこちなかったかもしれない。

 

 オネーギンの登場。

今日は拍手がありました。最終日ということもあってか、客席もやる気入ってそうでしたね……。全く人のこと言えませんが、肩の力は抜こう。演奏中に音を出すのを辞めよう。

 

 ターニャに腕を貸した後、右手を前に出すオネーギン。話しかけるマイムともまた違って……、これはどういう意味合いの右手なんだろうな? ちょっと解釈が難しかったです。よくわからなかった。

 

 レンスキーは希望に溢れたうら若き青年という役作りできました。幕間にお会いした相互さん曰く、「わんこ系」。確かに。

レンスキーとオリガはティーンエイジャー同士のカップルで、レンスキーが3歳くらい年上だと考えられるのですが、既にオリガの尻に敷かれていそうだった。

 ソロよりもサポートが上手い印象を受けました。とても自然。

 

 今回の来日公演では、毎日幕間ごとに有識の相互さん二人と意見交換をしていました(二人とも大好きです、ありがとうございます!)。そこで、口を揃えて言及されていたのは、「レンスキー、緊張している?」ということです。

特に、PDDで、飛んでくるオリガを抱き留めるとき、舞台中央で不自然に硬直し、とても不安そうな顔をしていたという意見があって、わたしはそこにあまり注目していなかったので、面白いなあと思って拝聴していました!

 わたしは今回エリクソンさんを拝見するのは初めてでしたし、ダンサーさんが緊張しているか否かを判断するほどの観察眼がありません。「そうか、ダンサーさんだって緊張し、パフォーマンスに影響するよな……」という当然のことを思い出させられました。

 今思えば、「確かにこの時は緊張していたのかも?」と思う点が幾つかあって、興味深かったです。見分けられるよう鍛えます。

 

 今日は全体的にオケが遅れ気味な傾向がありました。ダンサーが合わせられていないのではなく、変な減速があります。

 オケに関しては、昨日の方が圧倒的によかったですね。初日、「これはちょっと……」となり、2日目、「やればできるんじゃん(ペットとホルン以外)」となったのに、3日目は初日クオリティに戻ってしまいました。何故。トラの数が違うのかな?

 ところで、真横にブラおじが出現してビビりました。わたしは結構劇場通いしていますが、こんなに近くにブラおじがいたのは初めてだった。真横だと迫力ありますね。暫く鼓膜に残った。

 

 ターニャは今日、渋々オネーギンに本を見せていました。あんまり彼に見せたくなさそうな演技をしていました。実際、最新解釈フォーゲル御大と異なり、パイジャさんは彼女の本を見てフッと笑っていました。リチャードソンに理解のないオネーギンだったファクトチェックでも書きましたが、ゲーテだったらオネーギンはここでバカにしないと思うよ)

 

 オネーギンを見ても急いで視線をそらすターニャ。あまりオネーギンを見ない、内側に篭もるタイプのタチヤーナですね。

 

 オネーギンの Va.。

パイジャさんは、オネーギンをやるには少し体格が細い気がします。別にオネーギンはムキムキキャラではありませんが(それはそれで違う……)、少しレンスキーっぽいかも。レンスキーやってらしたしね。

 凄く言い方がよくないですが、前日・前々日が看板キャスト・フォーゲル御大だったので、あまり期待しすぎないようにしていたのですが、予想以上に、解釈は凄く良いです。ヴァリエーションの解釈に関して言えば、フォーゲル御大よりも好みかも。

 アラベスクでピタッと止まるのが大変綺麗です。第一主題3回目の回転3回目(誤字ではない)はアン・オーで。

 ターニャが入る前、必ず「どうぞ」とマイムするのも丁寧でよいと思います。慌てたように急いでターニャの腕を取るのも、この振付に合っていると思います。

 

 群舞にレンスキー×オリガが入ってすぐの時、2人が四歩ステップを踏むところがありますけど、オリガはそこでドゥミ・プリエを入れていたのが印象的でした。

 それにしても改めて、男性群舞はシュトゥットガルトが一番ですよ、本当に。農奴だ!(※褒めています)。

 しかしペットはマジで反省してください。今日は自信なくなったのか無駄に音小さいし。

 

第1幕2場

 幕間演技パート。ターニャのパドヴレがとてもゆっくりだったのが印象的でした。上体の姿勢がいいです。それが彼女の特徴の一つなのかも。左手を胸に当て、大分後になってから右腕を差し出します。

一方のオネーギンは、上手側ではなく、中央を過ぎてから振り替えって立ち止まっていました。色々観比べてみると、このオネーギンが立ち止まったり振り返ったりする位置は結構違いがありそう。

 

 手紙を書く前、ベッドから立ち上がり、舞台中央で立ち止まって、一度鏡をチラ見してから燭台を手に取ります。この演技、とてもいいですね。

フィリピエヴナが来てからも結構手紙書いてました。読まれるぞ!!

 

 初日のバデネスさんのコミカルな演技が素晴らしかった寝たふりシーンですが、今日は2回とも左腕を下にして(我々に背中を見せるようにして)寝たふりをしていました。ここはやはりコミカルに振ってくれた方が良いと思います。

 机で寝落ちるまでの演技は優雅で長め、最後はガクッと腕が落ちるタイプでした。

 

 ターニャは全体的に感情の発露が控えめです。おしとやかで、悪くはないのですが、「あなたは私の守護天使なの!?」「他の人なんて有り得ません! この人だわ!!」とか書くようなパッショネスガールには見えません。

 バレエファンには、アレマンさんのターニャの方が解釈に合い、バデネスさんのターニャは元気すぎるように感じる傾向があるようです。確かに、後者は彼女自身の気質もあって、結構溌剌としたターニャになっています。

しかし、原作やオペラのタチヤーナに慣れている身からすると、寧ろ感情の発露が乏しいターニャの方が不安になります。ターニャ、限界強火夢女ですからね……。

バレエファンは、『ジゼル』1幕などでか弱い少女ヒロインを見慣れているので、こちらのイメージに引っ張られて解釈する人が多いようです。

 この差は今回初めて気が付いたことで、大変興味深いですね。

 

 鏡の中のオネーギンはゆっくり歩くし動きます。今更ですし話も前後しますが、シュトゥットガルトだと、鏡のオネーギンが去るとき、照明落とさないんですよね。オネーギンが勝手に下手側に移動することでいなくなります。

ボリショイなどだと、照明が落ちて消えるのですが。個人的には、こちらの方がわかりやすいかな、という気がします。鏡内の照明は落としても言い気がする。

 

 オネーギンは表情は笑顔ですが、もっと現実世界と動きに変化があってもいい気がします。タチヤーナも然りです。

 

 片手抱き込みサポートは2回とも成功。でも右手で行き先示すのはなかったですね。これが正統というわけではないのかな?

 

 例のタチヤーナを待つポーズは取ってくれました。やったー! 流行らせましょう。

 

 身長差があまりないペアなので、「鏡」は大丈夫かな~と思いましたが、3回目の背中を反らすリフトが一瞬危なかったものの、思ったよりは大丈夫だった。

 

 起きた後、タチヤーナは頬を押さえて「きゃ~」ってしてました。可愛い。

最後は左手で喉が詰まったかのように触っていて、それもいいけど、もう少し下げて(胸辺りに手を置いて)もいいかな~とは思いました。

 

第2幕1場

 休憩を挟んで第2幕。

 

 ナタ・ワルツ。

レンスキーとオリガは結構盛大に群舞に衝突していました。怪我はないように!

 レンスキーは「捕まえた!」とする時がめちゃめちゃ笑顔で可愛かったです。なるほど、わんこ系。

 群舞に握手される時も、ぶんぶん腕振られていました。昨日より握手されてた。コミカルだった。

 

 今日もオネーギンは真っ直ぐ歩いてきました。目指すとところが明白なオネーギン。舞台が狭いとあんまりウロウロしないのかもしれないですね。

 今日もしっかりターニャの背中を押して、自分から引き離していました。テーブル付近に着いてから手袋を脱ぐのは昨日・一昨日と同じ。

 

 これ一昨日から思っていましたが、たまにオケ一拍多いところがありませんか? バレエの『オネーギン』はスコア譜が出ていないので、正確な所はわかりませんが、売られているCDと異なっており、ダンサーも少し驚いて詰まっているように見えました。

 

 恋文破り。

まずは会釈。手紙を返そうとするのは一回だけでした。その分、最初から少し強めです。最初から大分イラついておられる。

 破られた後、その破られた手紙をそれでも渡そうとするターニャ! なんてことを! それは初めて見た。この時の悲しそうな表情よ……。原則的に、冷酷なオネーギン×儚げなターニャという解釈のペアですね。シュトゥットガルトでは王道的な解釈だと思います。

 

 グレーミンに挨拶する前に、両袖、裾を整えるオネーギン。自然な身嗜みチェック、良いと思います。相手は仲の良い親戚とはいえ、将軍で公爵ですからね。

 

 1回目のカードゲームの際、レンスキーに何かを囁くオリガ。この時点では仲睦まじそうなんだけどなあ。

しかし、オリガは明確にオネーギンと一緒にいる時の方が楽しそうです。残酷だ……。

 オネーギンも、レンスキーにかなり盛大に体当たりします。悪意強め。

 

 ポルカでのオネーギンとタチヤーナの距離は遠めでした。昨日はキスしそうなくらいベッタリくっついてましたけど。

 

 ターニャのVa.では、三日間とも地団駄控えめでした。ここは女性のVa.でほとんど唯一思いっきり足音を響かせてもいい数少ない名所(?)なのに、勿体ない(?)。

オネーギンは、一度ターニャをチラ見してから台パンします。今日は全体的にオネーギンの悪意が強いぞ!

 

 これは初日にも言及しましたが、通常、オネーギンの動きは、一度舞台中央まで歩いてイライラした素振りを見せる、恐らく帰ろうと考えている→手袋を忘れたことに気が付いて取りに行く→いざ帰ろうとしたらレンスキーとオリガが仲よさそうにしていて、再びちょっかいを掛けてやろうと思いつく→5拍子のワルツへ、という流れです。

しかし、今回パイジャさんのオネーギンはいきなり手袋を持って帰ろうとしました。それはわたしも初めて見ました。少し音楽が余っていたように感じたので、この基本の流れは変えなくてよさそうかも。

 

 5拍子のワルツ内でもターニング・ポイントとなる、オネーギンがオリガの首を触るシーン。首を触られる時、コール・ドもレンスキーもオネーギンも、最初からオリガに近すぎるのが少し気になりました。もう少し舞台を広く使って欲しい。

 

 レンスキーはビンタ1回目で漸くエンジンが掛かった感じがします。つまり、ここにきて緊張が解けてきたのでしょう。オネーギンのほっぺたにやる気スイッチがあったのかもしれません。この辺りから急に演技が濃くなり始めました。良いことではあるけど、お、遅いよ~!

一回ビンタした後、レンスキーは一度「自分は一体何をしたのか」と、手元を見ます。一方、ビンタされた頬を触るオネーギン。

 2場の振りが先に少し登場する姉妹とレンスキーの3人の踊りの間、オネーギンが棒立ちすぎるのが気になりました。彼らを見ているのは良いけど、「気をつけ」体勢は辞めよう。全体的に「気をつけ」が多かった気がする。

 

 手袋を拾う前、「やれやれ」とため息をつくオネーギン。どちらかというと、反省しているというより呆れている解釈と見ました。

 

第2幕2場

 幕間演技パート。

フォーゲル御大も然りでしたが、パイジャさんも銃をあんまり見せてこないですよね。ここでオネーギンが銃を持っているということを知らなければ、気付かないレベルかもしれません。

 ところで、『オネーギン』当時の銃は、銃口を下に向けると普通に弾丸がポロリしてしまうことがあるので、銃口は下に向けて持たないのが鉄則です。レンスキーがそうして銃を撃てないなら演出上構いませんが、オネーギンの銃が機能しなかったら、展開上ちょっと困ります。 

 フォーゲル御大のように顔は覆わず、身体を90度に曲げていました。

 

 レンスキーのVa.。漸くエンジンが掛かったレンスキー君。端正な踊りでした。

片膝立ちになる場面ではかなり思いっきり崩れ落ちます。反り→突っ伏す時間もかなりたっぷりと取り、感情の発露は強め。これを1幕からやってくれたら尚良かった!

 

 姉妹達の登場。

先日、リマさんのレンスキー(※個人的にめちゃくちゃ気に入っている)を観た時、彼はこの時終始辛そうで泣きそうで、「彼女たちが来たことによって決心が揺らいでしまいそう」「オリガがここに来てくれるということは、決闘などしなくても、まだ希望はあったのではないか」「彼女たちに自分の悲惨な最期を見られたくない」という気持ちを表現しているのかな、と感じました。

 一方で、シュトゥットガルトのレンスキーは、3人とも、ここの場面では強い拒絶をしています。「来るな!」という断固拒否、というか。

このように、姉妹を強い気持ちを持って帰したいレンスキーって、何を考えているのかな、と考えながら観ていました。

原作やオペラでは、姉妹は決闘に立ち会いません(当時の価値観では、女性が立ち会うなど以ての外です)。この点はバレエオリジナルです。従って、他からはヒントを得られませんから、ここでレンスキー役のダンサーさんに全てを表現して貰うしかありません。

 意外と決闘、やる気満々なんですかね? オネーギンにも勝つ気があったりして。それともやっぱり、好きな人の前で殺されるのはイヤなのかなあ。……なんかそういう特殊性癖の人はいそうではあるけど……(?)。タナトフィリアってやつですか?

 皆様はどうお考えになりますか?

 

 月に向かって天を仰ぐ例のポーズでは、ドゥミ・プリエ入り。まあドゥミくらい……なら……? いやでもやはり要らんとは思うんだけど……、個人的には……!

 シュトゥットガルトのレンスキーはプリエ入り率が高いので、本家の振付としては、入れるのが正統なんでしょうね。クランコに何故ここにプリエを入れたのかめちゃくちゃ訊きたい。なんで?

 

 最後は肩が震えているレンスキー。ほんとうにビンタくらいから急に演技が濃くなりました。変なところで覚醒したな?? もう一回1幕やってみる?

 

 オネーギンの登場。オネーギンのレンスキーにはねのけられた手がタチヤーナにヒットしているように見えました。大丈夫でしたでしょうか。

 『オネーギン』って、物語としては「玉突き型事故」とも言うべきものです。まず、オネーギンが政治的不自由から余計者になる→タチヤーナに恋される→断る→それなのにレンスキーに無理に彼女の家に行かされる→苛ついてちょっかいを掛けて決闘沙汰に……という流れで、誰か一人が物凄く悪いとかという話ではありません。ちょっとしたすれ違いが、大きなうねりを生んでしまう、というストーリーです。

まず、オネーギンが余計者にならなかったり、ターニャが彼に恋したりしなければ、レンスキーも死ぬことはなかったでしょう。

 メタ的に、そのようなことを考えていました。直接的には全然関係ないけど、暗喩としては機能していた気がする(?)。

 

 姉妹のリフトのタイミングはもうちょっと揃うと綺麗かもしれません。或いは逆に、ガッツリずらしちゃうか。中途半端だとちょっと気になるのだよな。

 ビンタはフリだけで、太腿叩きもありませんでした。フォーゲル御大のパーカッションもビックリの破裂音を継承して欲しいとも思いつつ、まああれ絶対痛いと思うので、やらなくても大丈夫です。素敵な太腿を大切にしてください。

 

 昨日・一昨日は、中幕の木立にオネーギンが隠れてしまっていたのですが、今日は位置取り完璧でした!! ありがとうございます! 見えたよ~!!

あの木立の隙間、意外と狭いんだな! ということを今回初めて感じました。

 

 決闘後、タチヤーナに見つめられて絶望するオネーギン。パイジャさんは、頭を抱えた後、左足から出ているのが印象的でした。ここ意外と分かれるポイントなんですけど、8割くらいは右足から出している気がするので、少数派だと思います。

 

第3幕1場

 休憩を挟みまして第3幕。

 

 最初のポロネーズでは、女性達がお尻を振るような(そんな下品ではないけど)振付があるのですが、今日が一番お尻を振っていた気がする。最後だからやる気を出したのかな? 今日はそれこそ『椿姫』への布石を感じるような、コケティッシュな印象を受けました。

 それはそれで良いと思うのですが、2幕の対比としては、3幕はエレガントさにもっと振ったほうが良いかも。

 

 今日のオネーギンとグレーミンは少し雰囲気が似ていませんか? 今回の関係性、従兄弟じゃない?(※オネーギンとグレーミンは「親戚」という設定だが、どれほど濃い血縁関係なのかは言明がない)。

 

 グレーミンとのPDD。

 オネーギンは今日も女性に席を譲っていました! 最近のシュトゥットガルトで流行の解釈なのでしょうか、これはこれでとても良いと思います。

でも円盤を確認したら、2017年のフォーゲル御大はやはり別に譲ろうとしていなかったんですよね。そうだよね? 今回初めて観た、と思いましたもの。いつから変わった?

↑ 円盤。一家に一枚あると便利です。

 

 オネーギンがタチヤーナに気付く瞬間は、基本的には、第一主題の変奏時の最高音です。

↑ ここ。

 しかし、今日は1-2小節遅かったですね。ここをズラしてくる人は初めて見ました。ここ、音楽的にも最も盛り上がる箇所の一つで目立つので……。

 この時、PDDの方ではグレーミンがターニャの片足を掴んで開脚させますが、殆ど足全てが地面に付きそうでした。もしかしてこのペア、コンテとかお得意だったりしますか?

 

 グレーミンとのPDDに、オネーギンがどれほど介入してくるかはかなりダンサーさんによって異なります。遠慮気味にしているオネーギンもいれば、「俺がタイトルロールだぞ!」とばかりに自己主張してくるオネーギンもいます。パイジャさんは完全に前者で、「オネーギンどこ行った?」という感じでした。

 これは彼の影が薄いとかではなく、柱の陰とか、照明の当たらない後方に隠れてしまって、物理的に見えないんですよね。おーい、どうして隠れてるの。前においで。一緒にターニャを観察しよう。

 タチヤーナを見ている時間も短く、まだ回想の世界から戻ってこられていないように見えます。

 

 今日の3幕ターニャは優雅さが強め。解釈はバデネスさんより個人的には好みです。

アームスが少し硬いと感じることがありますが、細くて綺麗だなとも思います。

 

 再会したときのオネーギンはちょっと俯き気味。ターニャはあまり動揺を見せず、毅然としています。

 それにしても、ホルンが酷すぎ! そう、ペットとホルンが酷いと、ここが最悪なんですよね、知っていました。どうにかしてください。

 

第3幕2場

 幕間演技パート。

今回は、銃を下から上げて照準を合わせていました。レンスキーと揃えていると考えられます。しかし、実際の決闘では上から下に下げて照準を合わせていたことをわたしは覚えているぞ。

 フォーゲル御大といい、実際の決闘と回想の決闘で、やり方を変える演技が今シュトゥットガルトで流行っているのでしょうか?

 

 その後走り去る速さに驚きました。オネーギン、足速っ。健康そう(※原作では、この場面に相当する場面で「肺病病みのように窶れ」てしまう)。

 

 グレーミンがタチヤーナの手にキスするとき、オケが合っていないのが気になりました。

これは「ダンサーとオケが」ではなく、「オケの中の楽器同士が」です。ハチャメチャだった。

 

 グレーミンがタチヤーナの頭をぎゅっ……っと抱き締めていたのが素敵でした。惚れそう(?)。三日間の中で、最も愛情を感じるグレーミンでした。最後にはターニャの右手、左手、片方ずつにキスしていました。

 我らが殿下の文献で、彼は親しい人にはいつも指一本一本にキスするって書かれていて、「えっなにそれ可愛い~」ってなっていたんですけど、同じように、このグレーミンもいつも片手ずつキスしているんだろうな……と思いました。19世紀あるあるなのかな? 流行らそう。

 

 それに応え、ターニャもしっかりとグレーミンを引っ張って引き寄せ、キスさえします。この辺りの様子から、アレマンさんのターニャは、オネーギンよりもグレーミンの方がずっと好きであるように感じました。

 それはそれで一つの解釈としては良いとは思うんですけど、バデネスさんといい、オネーギンとの間で揺れなさすぎじゃない!? この作品、タイトルなんだっけ!? みんなオネーギンのこと嫌いなの!?

 

 1場同様、登場時からオネーギンは俯きがちです。こっち向いて~、或いはターニャのこと見て~。

 

 「手紙」。

全体的に、昨日よりもテンポが速いですね。テンポが速いのと遅いの、どちらが良いとか簡単であるとかは一概に言えないと思いますが、まあ彼らにとっても適性スピードであったのかなと思います。違和感はなかったです。

 

 中盤、上手前でオネーギンがターニャに腕を差し出し、手を繋いで二人で反る振りがありますが、この時のオネーギンの手の差し出し方が乱暴なのが気になりました。また、サビ(?)終盤、首筋に2回キスするのも情熱的でした。

 全力さを演出しようとしているのはわかるのですが、3幕2場のオネーギンはそれと同時に丁寧さも担保しないと、「不法侵入して強姦しにきたヤベー奴」みたいに見えかねないので、注意が必要です。

このバランスがね! オネーギン役の表現の難しいところだよね。それはとてもよくわかります。

 

 昨日・一昨日は、サビで減速したのですが、寧ろ今日は加速しました。やはりダンサーによって曲のテンポも大分違うんだなあという発見があって面白かったです。

 

 サビでは、相変わらずオネーギンがターニャを支える腕を出すのが遅く、腕をだらんと垂らしたままなのですが、フォーゲル御大よりも差し出すタイミングが遅く、ターニャが倒れる時間が長めです。これターニャ結構怖いのでは? 今更か。

 

 その後、オネーギンは結構口元を押さえるようになるのですが、これって結構珍しいですよね。ターニャが「手紙」の最中に口元を押さえて動揺する演技をすることは結構あるのですが、それオネーギンがやるんか~いとは思いました。いいけど。なんかあざとかった。

 

 地面に寝そべっての大ジャンプ前は、ターニャはアン・オーで待機している時間がとても長かったです。「こここんなに長かったっけ?」ってくらい妙に長かった。

 

 「鏡」でもやってくれていた、飛び込んでくるターニャを待っている時のオネーギンのポーズ、「手紙」の方でもやってくれました。ありがとう! これ流行らせようね。

 しかし、リフトは確かに少し危なっかしそうにも見えますね。

 

 恋文破り。

破られた手紙をバッと投げ捨てます。これもフォーゲル御大と近い演技ですね。最近のシュトゥットガルトの流行なのでしょうか。

 

 タチヤーナの最後のポーズは、大きく反って腕を背中よりも後ろに回すようにしてパー派でした。

 

 

 こんなところでしょうか? 総評としましては、全員、方向性は間違っていないと思います。「いや、その解釈はないでしょ」ということは全くなく、役作りとして正しいと感じました。全員平均点を超えます。

 一方で、全員演技が薄味気味で、ドラマティックとしては弱いな、と感じてしまう側面もありました。もうちょっと感情の波が欲しいところではあります。特にタチヤーナは、技術はあるものの、何を考えているのかがあまり伝わらず、特に2幕は影が薄かった印象があります(まあターニャってオペラでも2幕は影薄いんですけど)。

 個人的には、なんとなく、オペラの初演時の『オネーギン』ってこんな感じだったのかな、と思いました。全員若々しく、「今がピークではなく、伸び代があるな」という感じ。その意味で、チャイコフスキーが目指した『オネーギン』上演のイメージには近いのであろうと感じました。

 オネーギン役は、タチヤーナに一目惚れされることからも、スペクタクルとしての観点からも、一般的にカリスマ性を備えていた方がよいと考えられています。その考えにはわたしも同意するのですが、一方で、今日は良い意味でオネーギンにカリスマ性があり"すぎなかった"ことにより、ペチョーリン風ではなく、「一般的な紳士であるオネーギン」に落ち着いており、これはこれで「オネーギンらしい」かな、という風にも感じました。

 

 最後に纏めてになってしましましたが、開演前・幕間・終演後にご挨拶等してくださった皆様、ありがとうございました! 皆様のおかげで、上演中以外も毎日大変楽しい時間を過ごせました。心から感謝しています。

劇場にはいらっしゃったはずなのにご挨拶できなかった方もいたので、次は皆様にもっとご挨拶回りするぞ……! 宜しくお願いします!! お気軽にお声がけください。

 

 今回の来日公演は、直前でのキャストの降板もあり、主催側・出演者側は大変であったろうと思います。お疲れ様でした、ありがとうございました。

看板キャストの公演が2回あり、特に2回目は上質な上演で、楽しめました。3日目のフレッシュなキャストも興味深く、見比べるのは大変楽しかったです。

 個人的には、2日目のオリガのイオネスクさんの細かい演技が結構好きで、正直「オリガとグレーミンはある程度誰でもよくない?」と思っていたのですが、彼女のオリガは頭一つ抜けた印象を受けました。

 また、個人的には、『オネーギン』を上演する上で一番優れている群舞はシュトゥットガルトバレエ団だと確信しており、流石に本家本元であるだけあります。農奴とコミカルなキャラクターダンスを真剣にやってくれるのが強いです。今回はカンパニーでの来日だったので、なんなら群舞が一番楽しみまでありました。

 また次の来日公演でもお待ちしております! 『オネーギン』持ってきてくださいね!!

 以上!!

 

最後に

 通読お疲れ様で御座いました! 1万2000字です。結局5桁は乗る。パンフレットの記事を別にしておいて良かったなと思いました。

 いや~、流石に疲れました。しかし、取り敢えず全て脱稿できてよかったです。次の公演までにレビュー書くのも間に合いましたし……。何よりです。

 

 わたしは『椿姫』の席はとっていないので、わたしにとっての祭りは終了です。お腹いっぱいです。満足しました。

『椿姫』にも行かれる方は楽しんでください。皆様のレビューもお待ちしております。というか、『オネーギン』の感想を送りつけてください。

 

 次の記事は今のところ未定です。まだ暫く『オネーギン』を観ていたい気分ですが、オペラ界の我らがレンスキーである、ベルナイム先生の『ホフマン物語』が迫っておりますので、間に合わなかったらこちらのレビューが先になるかも。

↑ 皆様も是非! ベルナイム先生のフランスオペラはとんでもないぞ。

 今回、劇場でベルナイムの来日コンサートの席を売っていましたが、皆様是非お越しくださいね。わたしも両日行きますのでね。両日ともレンスキーを歌いますから当然です。

彼のレンスキーは絶品ですからね、オペラのレンスキーも愛でてください、宜しくお願いします。

↑ 劇場でぼくと握手!!

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。