遅くなりましたが、皆様明けましておめでとうございます、茅野です。
地震に航空事故に火災にと、とんだ年明けになってしまいましたね……。被害が最小限に抑えられることを祈るばかりです。
後は上り坂一方になると信じましょう。
さて、今回も続けてデンマーク遠征旅日記シリーズ、第6回目になります。
↑ 旅の概要記事はこちらから。
今回は旅日記部分は控えめで、メインはオペラの公演評です。
この旅で2回目の、Det Konglige Thatre (以後 KGL)のオペラ『エヴゲーニー・オネーギン』にお邪魔しました!
↑ オシャレな公式サイト。
同公演1回目の雑感の方はこちらからどうぞ。
これから某『オネーギン』ラッシュが来ますからね、先発として KGL の方を。
大分時間が空いてしまいましたが、今回は備忘がてらこちらの雑感を記して参ります。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
↑ 合唱の皆さん。
キャスト
エヴゲーニー・オネーギン:イェンス・ソンダーガード
タチヤーナ・ラーリナ:ソフィー・エルカー・イェンセン
ヴラジーミル・レンスキー:ヤコブ・スコウ・アンデルセン
オリガ・ラーリナ:アストリッド・ノルドスタッド
グレーミン:アルチョム・ワスネツォフ
ラーリナ夫人:ハンネ・フィッシャー
フィリピエヴナ:ヨハネ・ボック
指揮:マリー・ジャコー
演奏:デンマーク王立管弦楽団
演出:ローラン・ペリー
前回までのあらすじ
前回までのあらすじ!
コペンハーゲンに到着した夜、我らが『オネーギン』を観るべくオペラハウスへ向かうバスに乗ったら、何故かバスが路線を大きく外れて車内は大混乱!
結局、雨の中知らない道を15分間全力疾走して、なんとか間に合わせたのであった! 波乱万丈な幕開け!
尚、その日は U30 貸切日で、「オペラも初めて、劇場も初めて」というフレッシュな層に混じり、恐らくその場で一番『オネーギン』を観ている謎の日本人役を全うしたのであった!
159年越しのストーキング聖地巡礼に勤しみ、時は流れ旅の3日目の夕刻!
初日のことがあり不安だったわたしは、早めにオペラハウスのあるクリスチャニア地域のカフェ ESPRESSO HOUSE で、デンマーク語旅会話を華麗にこなしつつ、初日に買った『オネーギン』のパンフレットを読み耽っていたのであった!
今回に続く!
劇場までの道のり
……そんなわけで、クリスチャニアからバスに乗ります。歩いても行ける距離だったのですが、どうせ賃料はコペンハーゲンカードで無料だし、バスを克服しないまま帰国する訳にはいかん! と思い、リベンジマッチ。
バス停で10分弱待ったのですが(寒かった)、バス停が完全にホームレス(と思しき方々)の溜まり場に……。彼らが延々瓶ビールを回し飲みしていて、何かされたわけではないけど流石にちょっとそわそわしてしまうバス待機民。
やはりクリスチャニアは、コペンハーゲン中心部とはかなり貧富の差を感じます。
バスに乗り込み、混んでいたので乗車してすぐの前の方に立っていたら、フロントガラスから景色がよく見えました。
途中から、「あ~、ここ一昨日走ったな」な道に。つまり、今回は正しく走ってくれているというわけですね(※一昨日なら、そもそもあのバス停にバスは来なかったはずです)。
今回は無事オペラハウスに到着。綺麗にライトアップされた道を通って、現代的なキラキラオペラハウスに入場します。
オペラハウス探検
今回はしっかり早めに着けたので、劇場内を暫し探索。
まずは、入り口前の動画広告から。まあ、取り敢えず、撮るよね。
一般通過おじさんがいますが、オペラハウス入口の E. O. 広報です pic.twitter.com/Nv5ZwSOH3K
— 茅野 (@a_mon_avis84) 2023年11月3日
↑ 明らかに動画撮ってるやん! それくらい察してくれよ~! とワガママなことを思うツーリスト。
めっちゃオシャレですよね。日本はお役所仕事的にわざとか? わざとなのか? ってくらいダサい広告作るのあれなんなんだ。
続いてホワイエ。
↑ 謎の三連ミラーボール。
↑ 結構近くまで接近できますが、デッッカいです。
ホワイエにて、無料でプレトークを行っており、事前に予習することが可能です。
……しかし勿論デンマーク語!! 辛うじて、『オネーギン』関連の固有名詞その他は聞き取れますが、流石に現地の早口長文リスニングは厳しい!
2階で行っているのですが、話者の近くに人が無造作に立ち止まり、完全に道を塞いでしまう事態に。お手洗いや客席にも繋がる道なので、流石にちょっと邪魔。
プレトークを毎公演行うという試み自体は素晴らしいのですが、スペースに関してはもっと何かやりようがあるのではないかと感じました。
そして劇場内です。
↑ 2階L側からの眺め。
↑ 3階R側からの眺め。
やっぱりかなり現代的ですし、劇場は割とこぢんまりしていますよね。これが東京とコペンハーゲンの人口の差なのだろうか。しかし、オペラを観る層はコペンハーゲンの方が広いんじゃないのか、どうなんだ。
今回のわたしの席は1階中央です。折角の遠征なんだし、良い席取るか~と思いまして。というわけで階段を降ります。
U30 デーよりも席の埋まりは緩やかで、席は取りやすかったです。しかしそう考えると、いくら安価とはいえ、凄いなコペンハーゲンの若者……。デンマークのオペラ界の未来は明るい……。
雑感
さて、それでは雑感です。初日よりは音楽的な話がしたい。
第1幕
第1場
序曲です。とても休符が目立ちます。そこ休符あったっけ? ってところもキッチリ止まります。
↑ 例えば、こんな具合。
この効果で、丁寧というか、重々しいというか、というような雰囲気が出ます。歌がないところは、全体的にこのような処置が目立ちました。
やはり女声が強いですね、四重唱のバランスも良いです。この公演では、全体的に女性の方が好調のような気がしました。
合唱は、相変わらずオケとズレるのが直らず。勿体ない。新国合唱団、何故バイニュをやらない、何故だ、何故だ、それを省くのは冒涜だ。
オリガのアリオーゾは、物凄くハードに動き回っているのに、声が全くブレず、素晴らしいです。オリガは「歌手」じゃなくて「歌手=女優」さん、でしたね。2幕のダンスも上手いし……。
レンスキーのアリオーゾの途中、オネーギンさんとターニャ組に切り替わるところがあるじゃないですか。
この時、かなりの高速で回るターンテーブルの後方の方を二人が歩くことで、「しっかり歩いているのに同じ場所にいる」というのを実現しているのですが(よく考えたなあ)、ここの演出めちゃくちゃ良いんですよね。
背の高いオネーギンさんは、ターニャに質問するものの、あまり彼女の方を見ずに、一人で大股で歩いて行ってしまう。一方ターニャは、その後を、恥ずかしげに俯きがちに、一生懸命ちょこまかと半ば小走りにくっついていく、という!
オネーギンさんはもっと彼女をエスコートするなどの「紳士感」があってもいいかもしれませんが、しかしオネーギンさんはターニャに無関心で、一方ターニャの方は彼に恋している、というのが物凄くよく伝わる演出です。素敵だ……。
これは初日にも感じましたし、言ってもどうしようもないことなのですが、オネーギン・タチヤーナ・レンスキー・オリガの歌手がちゃんと若いと、『オネーギン』の登場人物はみんな若いんだ、ということを再認識させられます。
これはどちらかというと特にバレエ版に顕著なのですが、何故か広報は『オネーギン』を「大人向け作品」にカテゴライズしたがる傾向があるのですが、全く以てそんなことはありません。
『オネーギン』の登場人物は皆若く、これは若者たちの物語なのです。KGL の公演を通して、そのことを改めて感じさせられましたし、チャイコフスキーが最初に小劇場で学生たちをキャスティングしたのは「正解」だったんだな、と思いました。
前述のように、KGL は首都の国立劇場にしてはこぢんまりしていますし、大劇場で観る『オネーギン』とはまた違った良さがあるな……と思いました。とてもよかった。
第2場
手紙です。初日同様、卒が無い印象です。
" Души неопытной волненья " の Ду-ши がレガートに繋がった上で、後者の高音が(ずるずる引き摺る感じではなく)最初から綺麗に出ていたのがとても気持ちよかったです。
ターニャにしては声が軽めな方なので、 " Ты в сновиденьях мне являлся, " からの四行が一番合っていると思います。弱音が柔らかく響き、本当に「10代の乙女!」という感じがする。
" умоляю, умоляю! " と二回続けるところで、意外にも1回目の -яю, にタメがあります。こういうパターンはレアな気がします。
ロシア語のディクションも充分だと思うし(まあ、ガチ勢が聴けば「母語ではないな」とはわかると思いますが)、手紙に関してはかなり満足度高いです!
一方、オーボエとホルンがなかなか厳しいので、「守護天使」前のソロが割と悲惨なことに。
↑ 全人類が好きなとこ(主語デカ)。
ちょっとちょっと、ターニャが頑張ってるんだから君たちも頑張って!?
" А я-то!? " の後、フィリピエヴナ登場前に、ターニャが物思いに耽るように、チェロのソロで『手紙』の旋律が繰り返されるじゃないですか。
↑ ここも全人類好きポイント(以下略)。
ここ、すっごく綺麗でしたが、もう少しヴィブラートの「ちりめん感」を減らしてもいいかな~と思いました。
1幕2場の終幕、ここの演出が、もう最高〜〜に良いです。
『手紙』の冒頭の旋律が流れ始めたあたりでターニャが後ろの壁の方を向きます。
↑ ここから。
すると、壁がゆっくり倒れることで床に変わって道ができます。
↑ この壁が後方へ倒れることによって、舞台奥へ続く道が出現するのです。
その道の向こうに、オネーギンがいるんですよ!! ご対面です。
ターニャは後ろ(オネーギンさんの方)を向いているし、オネーギンさんの表情は照明の関係でよく見えないのですが、それがいい。凄く良い。めちゃくちゃ物語性があります。
ここでの音楽もまた合わさって良くてね! 最後のクレッシェンドをかなりしっかり入れてくれていて、2人が向き合うくらいで一番盛り上がる(楽譜でいうと ff に入る辺り)んですよ、最高か?? 完全にわかっていらっしゃる。今回の公演で、手紙からここの流れが一番酔えました。
第3場
続きまして、第3場です。
合唱が残念なのは変わらず。ラインダンスみたいなのは可愛いです。
先ほどの素敵演出で顔を見せたオネーギンさん。全然悪くはないのですが、ターニャの「手紙」が良かっただけに、もう一押しが欲しいところです。
後に、復習がてら、YouTube で彼の歌を少し聴いてみたのですが(非常に残念ながら『オネーギン』は上がっていません)、デンマーク語 / フランス語と、ロシア語 / ドイツ語で、ガラッと雰囲気が変わるんですよね! これは面白いな、と思いました。ロシア語とデンマーク語の歌をそれぞれ別に聴いたら、同じ人だとは思わないかも。
デンマーク語やフランス語の歌を聴くと、柔らかくて比較的軽めのバリトンに聞こえるのですが、ロシア語だとかなり重く聞こえます。不思議だ……、オールラウンダーなのか?!(?)
従って、動画で聴いて「オネーギンっぽくないな?」と思っても、実際にオネーギン役をやっていると、結構ハマっていたりします(ちなみに、上がっているものだと、一番近いのは『さまよえるオランダ人』かも)。
どうでもいいのですが、スカルピアがレパートリーにあるらしく(それは似合うのだろうか?)、過去の『トスカ』公演のポスターを見つけたのですが、めちゃくちゃ面白いので見てください。
↑ 色々良すぎないか?wwww
ソンダーガードさん(デンマーク語発音では、強いてカタカナにするなら、多くの子音がすっぽ抜けて「スーゴン」とか「スーナゴー」さんと聞こえます、これだからデンマーク語発音は意味不明である)は、スカルピア役をやるにはハンサムすぎる気がしますが、それにしても体勢が良い感じにキモいし(※褒めています)、何よりトスカのガチで嫌がっている表情が良すぎる。首の後ろにナイフを構えているのも殺意高くて素敵!(※褒めています)。
以上、おもしろ余談でした。
幕間の出逢い
今回の幕間は、ホワイエに出てスマホでメモ(↑の原型)を書いていました。
書いていると、近くで妙に耳に馴染む声が。
- Давай поговорим с этой девочкой!(あの女の子に話し掛けてみましょうよ!)
あれ? なんだか随分聞き取りやすいデンマークg……いやロシア語だこれ!?
ロシア語を話す美女2人組「(わたしの肩を叩きながら)Hi!」
わたし「 этой девочкой(あの女の子) ってわたしのことだったんですか!?!」←思わず日本語
そう、まさかの、コペンハーゲンの劇場でロシア美女に声を掛けられたのである! 「よりにもよって」すぎる人選ではあるまいか? 本当にわたしで良いのか? 見るからに変なぼっちツーリストだけど??
っていうかそもそも、わたしは девочка(英語でいう girl )なのか? わたしはあなたたちがわたしのことを девочка って言ったの、地味~にわかってるんだぜ? この語って主に未成年に使うんじゃないの? なんか……なんかこう怒られたりしない?
日本ではいつも実年齢+5くらいに思われているのですが、デンマークに来てから実年齢-10くらいに見られていないか?
曰く、ツーショットを綺麗に撮ってくれる人を探していた模様。ははーん、しかしジャップといえど、わたしは別に機械強くないぜ? と思いつつ、美女のスマホを借り受けます。
結局、なんか色々指示を出されて4ポーズくらい撮らされました。専属カメラマン茅野。
折角わたしを選んでくれたのですし(ロシアオタクシンパシーを感じたのかもしれない)、普通に " Вы из России? (ロシアから来たんですか?)" とか訊いてみようかと思って、 Вы(ヴィ / あなたたち) ... まで言って一時停止。
そう、ここでフラグ回収。夕方、喫茶店でデンマーク語会話に成功し、「積極的にデンマーク語を使ってみよう!」というマインドセットになっていたのが仇になります。
「ヴィ(Вы)」は、ロシア語では「あなたたち(二人称複数、または敬語の二人称単数)」を意味しますが、デンマーク語で「ヴィ(Vi)」と言ったら、「私たち(一人称複数)」を意味するのです!
「Вы...(あれ待って、Vi って "私たち" じゃ……)」となり、混乱。「(デンマーク語だったら、» Kommer I fra Rusland ? « で良いんだけどな……、でもこの人たち、英語で話しかけてきたってことは、デンマーク語じゃ通じないだろうし……)」などと余計なことまで考え始め、更に混乱。
デンマークを旅するにあたって、頭の中で混ざらないように、1ヶ月強に渡って意図的にロシア語など他の言語の勉強をサボり、デンマーク語(特にリスニングとスピーキング)ばかり短期集中で詰め込んでいたのですが、そのせいで他の言語が咄嗟に出て来ず、焦りも募って頭の中を巡るのはデンマーク語ばかり。
いや、デンマークでロシア語会話が発生するとか聞いてないし??? なんだこの状況??
いいですか、同志オタクよ、いくらロシア人男性×デンマーク人女性のカップリングを推していたって、ロシア語とデンマーク語を頭の中で混ぜるのは厳禁ですよ。
元から、ロシア語に関しては19世紀の文献が読めればそれでよかったので、会話の練習は殆ど全くしていなかったのも宜しくなかった(残念ながら、彼らと言葉を交わす機会は絶対にないので)。
あ~~~悔しいので、いつ急に ロシア語 / デンマーク語で話しかけられてもそれぞれ即座にスマートに対応できる、言語つよつよ девочка になるぞ! と誓ったのでありました。
ちなみに、「女の子」 девочка(デーヴァチカ)は、デンマーク語だと pige(ピーィ)と言います。全然違いますね。だから混ぜるな。
第2幕
第1場
自席に戻ってきて、「…………、……いや、ロシアオペラを観てるんだから、やっぱり即座にロシア語出て来なきゃダメだろ! いきなり話しかけられて半ばパニックになっていたとはいえ、そんな初歩の初歩くらいはせめて!」と自己嫌悪しつつ、第2幕の始まりです。あんまり宜しくない幕開けだ! 集中したい。
相変わらず、コティヨンがめちゃくちゃ良いです。主要歌手陣(Ты не танцуешь, Ленский? なレンスキーを除く)も合唱も、ダンス上手すぎです(合唱はもう少し歌も頑張って欲しい)。
トリケも初日同様、寧ろ難しそうな、声をひっくり返したりして、ネタに極振り。こちらは客層の問題で、初日の方がウケていた印象です。
2幕1場最大の見せ場の一つ、" В вашем доме "。この演出では、レンスキーがちょっと常軌を逸しているくらいに激昂するのですが、ここで明確に空気が変わることが示されていて、効果的だと思います。
この日も、" В вашем доме " が始まると空気が一瞬で冷え切って、とても良かったです。
ここでのレンスキーは、もう少し言葉を大切にした方が更に効果的な気もしますが、重唱の全員が皆それぞれ演技も含めて及第点です。
2幕1場は、初日とあまり印象は変わりませんでした。初日の方が、あのコティヨンの振り付けに圧倒され、客席の盛り上がりもよかったので、印象深かったように思います。
第2場
間髪入れずに第2場です!
レンスキーは、初日の方が多少調子が良かったように感じます。テノールは特にコンディション大事だからね……。
レンスキーのアリアです。
最後が母音で終わり、特に長く伸ばす箇所( " ~ златые дни? " など)は、もう少しディミニュエンドと終わり方を意識した方が良いように思います。多少尻切れトンボ気味で、勇ましさも感じさせる歌い方ですが、レンスキーのアリアはもう少ししんみりしていても良いので……。
初日も今回も、" Скажи, придешь ли, дева красоты, " の入りが早すぎます。そこはもっと溜めて良いどころか、それだとちょっとフライング。
同じことが、最後の方の " Куда, куда ~" にも言えます。もっと自己中心的に歌っても大丈夫ですよ!
レンスキーのアリアは、殆どのフレーズがアウフタクトで始まるので、寧ろそちらでつんのめる人は少なくないのですが、こちらは完璧なので、不思議です。何故この最初の入りの方で早まるんだ、待ってくれ、それだと君の人生みたいだ。
二重唱は、比較的オネーギンさん優勢。この演出というか配役というか、なんというか、物語に説得力があるのが良いですね……。
" Не засмеяться ль нам, пока ~" の辺りはもう少し減速してもいいかも。
というかいっつも思うんですけど、この辺り歌詞詰め込みすぎじゃないですか? ль とかほぼ消滅していて、聞き取れた試しないんですけど。そのための ли じゃなくてль なんだな、って理解しています。まあ、『オネーギン』は全体的に歌詞詰め込みすぎの傾向ありますけど……。
第3幕
第1場
ポロネーズです。トランペット! 一回ひっくり返ったぞ! ファイト!!
相変わらず謎ダンスがとてつもなくダサいです! 2幕のオシャレさは куда, куда 状態なんですが?? 幕間に会ったロシア美女たちに怒られるんじゃないのこれ? 大丈夫??
毎度美味しいところ取りでお馴染みのグレーミンさん。本公演唯一のロシア勢で、安定感も抜群です。
勿論、大変良いのですが(というか、グレーミンのアリアは「良いことが前提」なので、毎回書くことがなくて困る)、彼はまだまだ上を目指せそう、というか、もっと響かせられそうだと感じました。なんでしょう、KGL ってそこまでガツンと響く音響じゃないので(最新の劇場だし、恐らく意図的なんだと思いますが)、サントリーホール系で歌ったらひっくり返るタイプだ……という感じ。
相変わらず、最後の " И жизнь, и молодость, и счастье! " のタメが半端なかったのですが(体感1分くらい経ったような気さえするタメ具合)、今回はフライング拍手は起こりませんでした。よかった、コペンハーゲンでも年配の客層はみんな『オネーギン』観たことあるっぽい。っていうか、日本人にはあんまり信じて貰えないんですけど、『オネーギン』って言うほどマイナー演目じゃないし……?
やはり一昨日の公演では、事前に『オネーギン』観たことあったのはわたしくらいだったんだろうか……。
オネーギンさんのアリオーゾ。
" Вкушу волшебный яд желаний, " から、歌詞が違うように感じたのですが、気のせいでしょうか。ここは「手紙」と同じ旋律 / 歌詞ですし、例えば初演版では歌詞が違うなどというようにも思えないのですが……(この後がエコセーズカットの初演版なので、違うバージョンなのかなと調べてみたのですが、有力な情報は得られませんでした、求む有識者)。
まあ、わたしの気のせいなら気のせいでいいんですが……。
第2場
3幕2場序曲ですが、最初の弦のピチカートの後など、やはり休符が丁寧な演奏だな、と感じました。
二重唱です。
相変わらずターニャのロシア語が大幅に崩れますね、何なんでしょうかこの現象。「手紙」とかは全然違和感ないんだけどなあ。
先ほどのアリオーゾの中盤から変に感じたのも、同じ理由だったりして?
ターニャは、みんな大好きキーフレーズ、" Счастье было так возможно, " の前の " Ах! " を完全に後ろ向きで歌うのですが、全くそうとは聞こえないほど強いです。本当にどうなっているんだ。
ここ、楽譜では一応 p 指定なのですが、彼女のここはとても強いです。でもそれが合っているので、万事問題ありません。
これは不思議な効果ですが、何故かここのターニャのロシア語は崩れるので、単なる感嘆で、且つ綺麗に高音が響くここは特に美しく聞こえるのかもしれません。
一方でオネーギンさんの方は、恐らく一番大変であろうここの早口ロシア語を頑張っていました。毎回思うけど、" Все, все, что выразить бы мог! " は流石に無茶すぎ、チャイコフスキー御大ってばヤンチャなことしよる。
バリトン、この二重唱をしっかり歌いきるならもうロシア語は何でもいけるまである(過言)。
最後のタチヤーナは、" Навек прощай! " 派だったと思います、ここメモ取っていなかったので、間違っていたら申し訳ない。
エコセーズはカットでしたが、オネーギンの最後の台詞はみんな大好き "Позор, тоска ... " の方です。ここ、初演版はチャイコフスキー自身が「バカバカしい台詞」と言っていて、まあ正直否定できないですからね、こちらの方がずっとよいです。
演出上あんまり落ちぶれていない(?)、まだカッコいい感じのオネーギンさんが惨めに嘆き、キッチリ締めてくれました。とても良かったです!
こんなところでしょうか!!
合唱など、今ひとつである部分があるのは否めないですし、演出もこじんまりと纏まっているので、言ってしまえば少し地味で、多少好き嫌いがあるかなという感じもします。
一方で、「『オネーギン』はミニマルな、若者の物語なんだ」ということを改めて再認識したりして、この作品の魅力を新たに知ったような気もします。
まあ、とても正直に書いてしまえば、「わざわざ国外遠征してまで観る価値のあるものなのか?」という問いがあったときに、歴戦のオペラファン相手なら特に勧めません。でも、1オネーギンオタクとしては、新しい発見があって、楽しいオペラ鑑賞でした!
以上!!
最後に
通読ありがとうございました! 余談も多かったですが、やはり『オネーギン』の記事は五桁! いつもの!! 長々とお付き合い頂き、重ねてありがとうございます。
暫くはオペラのレビューが続きそうです。観劇ラッシュです。怖すぎます。
下手したら『オネーギン』5連チャン(!)かな、と思ったのですが、その前に MET ライブビューイングに行けたらいいなと思っております。期待せずお待ちくださいませ。
冗談抜きに、「観て、書く、観て、書く」を毎日続けていかないと間に合いません。どういうスケジュールなんだ、ふざけているのか。
なんとか溜めないように頑張りたいと思います。
旅日記の続きは、その後になるかな、と思います。4日目・(実質的に)コペンハーゲン最終日を書く予定です。こちらも気長にお待ちくださいませ。
それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。
↑ 続きを書きました! こちらからどうぞ。