こんばんは、茅野です。
バレエ観劇ラッシュです。わたしはここ数年はオペラを観る頻度の方が高いので、週に2度も3度もバレエを観るとは。帰ってから動画も観ている。ちょっと観すぎだと思う。いいけど。
↑ この記事を脱稿してすぐに初台へ。
というわけで続きまして先日は、新国立劇場のバレエ『アラジン』にお邪魔しました。6月15日ソワレの回で御座います。
シーズン終わりが近づいて参りました。ダンサーや歌手の皆様には素敵なヴァカンスをお過ごし頂きたいですが、客としては寂しいことです。日本の酷暑を観劇なしにどうやって耐えろと。ゲントフテに疎開するしか……。
今回も備忘がてら、こちらの自分用備忘録、雑感を記して参ります。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します。
キャスト
アラジン:奥村康祐(福岡雄大)
プリンセス:米沢唯(小野絢子)
ランプの精ジーン:井澤駿
魔術師マグリブ人:中家正博
指揮:冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:カール・デイヴィス
雑感
バレエ『アラジン』は完全に初見で、内容についてはミリしらです。振付はともかく、ストーリーについては不安の方が大きかったのが本音です。
というのも、わたくし実は大学での第3外国語選択がアラビア語で、某エジプト美女(これだけでわかる人には誰かわかると思う……)に文法と会話を習っていました。
わたしは彼女のことがとても好きですが、一方で彼女は大層意見の強い人で、「ディズニー映画の『アラジン』はアラブへの理解が弱すぎる」と怒り心頭で、個人的には『アラジン』と言えばその印象が一番強かったからです。
ストーリーや考証に関しては、まあ彼女は今回も激怒案件だろうなあ……とは思いました。
ちなみに彼女は「ドストエフスキーを原語で読みたい」と言って趣味でロシア語を勉強しており、わたしが「『現代の英雄』が好きだ」と言ったら、今度は「レールモントフはムスリム差別主義者だ、ペチョーリンはベーラをばかにしている」とか散々に言われてひっくり返ってしまいました。
今回は4階下手側。U25 も出ていたので迷いましたが、こちらの方がキャストが良かろうと推薦を貰ったので。まさかこんなことになろうとは思いませんでしたが(後述)。
第1幕
それでは本編です。
最初は紗幕に渦を描いてランプを強調。バレエには言語が登場しないので、強調はしすぎるくらいで丁度良いです。
あの形状のオイルランプ、現代人にはカレー容器にしか見えませんが、一度火を灯して使ってみたいですね。
売店はオレンジ屋、水タバコ屋とお見受けします。ブルトゥカールはパレスチナ産やレバノン産が有名ですからOK。水タバコは実はそこまで歴史があるわけでもないので(諸説ありますが、16-7世紀頃に定着か)、設定された時代によってはどうかな? というところです。
アラジンは継ぎだらけの青ズボンに赤帽子(フェズ)と、ディズニー映画を意識したお衣装。先生落ち着いて。やっぱりディズニーの影響力って凄いんだなあ……と実感させられますね。
彼がフェズを被っているということは、舞台は19世紀なのか……? きっとそんなわけはないので、やはり突っ込まざるを得ないことに。
最早『アラジン』で考証を走ったら負けな気さえしますが、考証班はそんなのお構いなしで容赦なく走ります。宜しくお願いします。
壺の踊り。壺めちゃくちゃ軽そうで笑いました。まあ重いの持っていたら踊れないだろうけども!
でもアラジンが中身(水?)を飲んでいるから、中身は入っている設定なんだろうな。筋力お化けなお姉様方だ。
風の群舞は、振付からして柔らかさを強調していてわかりやすいですね。
人数がいるとはいえ、女性複数で男性をリフトしているのも凄いです。最近は女性が男性をリフトするのが流行りなのか。ジェンダーロールの反転は個人的に好きなので、望むところです。
プリンセスのいる満月(太陽……?)の中にもばみりがあってちょっと笑いました。自分の席からめちゃくちゃよく見えまして。まあ必要なのはそうなんだけど。
オニキスとパール組、よかったですね。最初お衣装からして盗賊か何かかと思ったけど。動きがパキッとしています。まあ、パールなら、もうちょっと柔らかくていいのかもしれませんが、振付が元からこれですからね。中東(特に湾岸)は天然真珠で有名ですし、よいのではないでしょうか。
ゴールドとシルバーは振りが複雑で、サファイアはクラシカル、言ってしまえば無難な印象。エメラルドは最後のポーズが面白くていいですね。
ルビーは PdD では勢い余ったところもありましたが、コーダはリフトがお見事。普通にクオリティ高いですね。
ダイヤモンドは動きが硬質で、やりたいことがよく伝わってよかったです。
アラジンは踊る時はいいんですが、演技パートになると背中が丸まりがちに見えるのがちょっと勿体ないなと思いました。
回転系のパがお得意なようにお見受けしますが、丁度頑張っている時に照明から外れるのが可哀想。そういう演出なんだったら申し訳ないけど、照明頑張って。
アラジンが宝石の間をくぐって行く時のフォーメーションが洒落ていて素敵でした。
パンフレットを読むまで全然わからなかったんですが、アラジンにお衣装似てる人はお母様なのか。
まさかの洗濯板が登場して笑いました。バレエで洗濯板初めて見た。考証走らせてください。
アラジン家は格子から光が漏れていてオシャレです。 ほんとうに貧乏なのかっていうくらい綺麗。
ランプは磨くとしっかり光り輝きます。今回は小道具も凝っていますね。
バレエで宙吊りになるのは久しぶりに観たかもしれません。他に何がありましたっけ。『シルフィード』、『ジゼル』、男性が対象なら『イワン雷帝』くらいか……? 有識者諸賢、補足宜しくお願いします。
こういうのもたまにはいいですね。事故にはお気をつけて。
最後は邦楽みたいな曲だな、と思ったら中国風なわけですね。五音音階だ。
最後まで観て気が付きましたが、中国風の曲で締めなきゃいけないみたいなルールでもあるのか。
第2幕
休憩を挟みまして第2幕。
第2幕は初っぱなから浴場です。ハマームですね。照明が美しいです。
タオル風のお衣装は流石に初めて見ました。バレエのお衣装、何でもありかもしれん。
布に隠れて早着替えも。お見事です。
プリンセスは、腕が指先までしっかり伸びるのが美しいですし、後ろ向きにパドヴレするときの背中が綺麗だなと思って観ていました。
今思うと、体幹が凄いんだろうな。もうサポートとか要らないんだろうな、というくらい、一人で飛ぶし一人で回ります。
いやしかし、覗きはまずい。殿下のストーカーですら寝室までしか立ち入らないのに……(記録がないだけで浴室まで立ち入っている可能性はなくもないけど……)。
幾ら自分のことが好きであろうと、幾らお金持ちのイケメンだろうと(しかもそれは魔法によるものだし)、覗きをやる男に惚れるのはちょっと趣味が悪すぎるのでは!?
この振付・演出では特に、プリンセスがアラジンに惚れる要素が全くわからない。誰か教えてくれ。
そもそも、アラビア語で考えれば、「アラジン」は正確にはアラー・アッ=ディーン、(リエゾンして、発音は「アラーウッディーン」)になるわけで、意味は「宗教(イスラームを指す)の偉大さ」。つまり、この名前は明らかにムスリムの名前ですよね。
聖典クルアーンには、「女性は家族以外には身体の美しい所を隠すべし」という神の言葉が記されているわけで、そこからヒジャブとかが生まれたわけじゃないですか。そこら辺はどうなってるんですか。戒律守って。
国教の戒律を守れない男にお姫様が嫁ぐの、イヤだよ~……(誰目線?)。
ちなみに、「ジーン(ジン)」はアラビア語で「妖怪、魔神」のような意味。総称です。
ジンは本当に幅広いカテゴリなので、一体のジンをそのまま「ジン」と呼ぶことは、例えるなら、1匹のピカチュウに「ピカチュウ!」と呼びかけるというより、「ポケモン!」と呼びかけるようなイメージです。或いは、我々が名前ではなく「人類!」と呼ばれる、みたいな。雑すぎる。
また、「マグリブ人」という役名ですが、これもどうかというところ。
「マグリブ」とは、アラビア語で「日の没するところ」、転じて「西」という意味があります。日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙無きや。
定冠詞を付けて「アル=マグリブ」とすると、アラビア語での「モロッコ」、国名になります。つまり、この役名は「モロッコ人」という意味に。
「モロッコ人」という名前のキャラクターが悪役というのも、頂けないですね。普通にモロッコに失礼じゃないですか。我々だって、「日本人」という名前のキャラクターが一人だけ悪役だったら、なんかイヤでしょ。
ジンにせよマグリブ人にせよ、どうせバレエは言語がないのだし、適当な固有名詞くらい付けてあげればよかったのに。それだけで変えられる心象があるのに、勿体ないなと思います。
アラジンがプリンセスに投げた果物は、ザクロかと思いましたが、リンゴ!
ザクロだったら考証的にも全く問題なかったのに、リンゴは、ちょっと……。中東ではリンゴ育たないよ……。輸入品? だいぶ高級品なのでは……。
今回は偽物でしたが、通い勢曰く、福岡アラジンは本物のリンゴを齧るらしいです。いいけど、それお衣装汚れないんか?
王宮の場。
幾何学模様の照明が大層綺麗です。今回舞台装置類は本当に凝っていますね。
まず、この時代まともな裁判なんてあるんか? ロシアでは殿下の時代にすらないんだぜ? シャリーア法廷……ってコト? 時代考証走らせてください。
死刑は斬首刑のようですが、首切りモーションがスイカ割りにしか見えない問題。
シャリーア法では、姦通罪は石打刑か鞭打刑なんですけど、これらはハッド刑ですから、当時(ってそもそもいつ?)でも同じはずなんですよね。でも、ストーキングと覗きは姦通ではないよな……、どういう罪になるのか、わたし、気になります。あ、不敬罪っていうのもアリ?
斬首刑って、位が高い人にやる「高貴な死刑」のイメージなんですが。「高貴な死刑」って凄い字面だし、意味不明ですが、歴史を学んだことがある人ならわかってくれるはず。これも時代考証走らせて下さい。
ジーンは背筋までしっかり描き込まれた特殊メイク仕様。ムキムキいいですね。
新国はあんまりムキムキ系(わたしは「乗馬パンツ腿」と呼んでいる)のダンサーさんいないですよね。それらを必要とする演目もあまり持っていなかったりするのかな。でも似合います。
PdD もいいですね。振付は、複雑なリフトなどは20世紀風ですが、概ね普通にクラシックです。
ダンサーさんはそれぞれ持ち味やチャームポイントを持っていますが、プリンセス役の米沢さんの魅力は、上体の引き上げにあるのかな、と今回観て思いました。テクニックに富んだ方ですが、その由来は上体が上がっているからバランスの安定感があるのかな、と見受けました。
PdDもジーンを含めた群舞も、曲が長い。この演目、意外と体力勝負なのでは?
コール・ドのでんぐり返しがアクロバティック。近現代バレエならではですね。
いやしかし、管はどうしたことだ。トランペット頑張れ。コケまくりだぞ。東フィルなら大丈夫かと思っていたのに。まだ二日目だから? 指揮者さんが変わったから?
レヴェランスは手を合わせて挨拶していますが……、待て待て、あなた方ムスリム・ムスリマの設定ですよね!? それじゃ仏教徒だよ!
19世紀~20世紀初頭辺りに作られたバレエ作品では、インド・パキスタン~中東~南東欧辺りをごちゃ混ぜにした、カオスな「エスニック」「オリエンタル」シーンが多いですが、これはまあ時代が時代なので致し方ない側面はあります。
しかし、21世紀でそれはちょっとマズいのではないか? 寧ろそれを修正していくのが21世紀の役目であるはずなのに、何故助長させているんだ。
バレエ……そういうところだぞ……の気持ちになりました。主語がデカくて申し訳ないけど。考証がめちゃくちゃどころか、文化盗用とか色々言われても知らんぞ……。
なんかいきなり獅子舞が始まった……。
パンフレット曰く、「ライオン・ダンス」との由。そ、そうか……。
瞬きヤバいですね。睫毛バっチバチです。マツエク系獅子舞。お洒落さんですが、たてがみ生えてるから雄なのかな?
ちなみに、「アラブってライオンいるの?!」 と思って調べたら、絶滅したらしいです。だよね。
最後、中の人出てきちゃうんかい! 『明るい小川』の犬といい、バレエの着ぐるみ類、中の人バレしがち問題。いいのか。いいならいいけど。
終幕は意外と静かです。
第3幕
休憩を挟んで第3幕。
随分押しているなあ、これは降板があるかも……と思っていたら、案の定でした。
米沢唯さんが2幕の途中から体調不良で、降板。3幕から小野絢子さん、福岡雄大さんペアに変更。更に15分押すとのアナウンスがありました。
これは! 所謂「オポライス・マジック」、ですね! (知らない人向け:MET でオペラ『ラ・ボエーム』を上演する際、ヒロインのミミ役の歌手が急病で降板。総裁がダメ元で前日に『蝶々夫人』のタイトルロールを歌ったソプラノ、クリスティーネ・オポライスにアプローチした所、打ち上げで朝まで飲み会をしていたにも関わらず快諾、別の役で連日主役、徹夜且つぶっつけ本番で名演だった、という伝説からついた通称名)。
実際に「マジック」に遭遇するのは初めてで、動揺と衝撃が。ちなみに弊贔屓ダンサーも「マジック」経験者。客席で観ていたら急に呼び出され、休憩時間押したのは5分だけで、衣装だけ着けてメイクもなしにいきなり2幕からジークフリートを踊ったとか。バケモンか?
2幕では体調不良など全く感じさせなかったので、流石と言えます。重大な怪我ではないようで、不幸中の幸いですが、心配ですね。
結局、21時10分からの開始でしたので、計25分押した計算になりますね。ソワレですし、これはなかなか。途中で帰っちゃった人もそれなりにいましたし。
改めて、バレエにはカバーキャストとかいないんだもんな……と思い知らされました。ペアの相性もあるから、変わるならペアごとになるしなあ……。
ところで、新国『オネーギン』でタイトルロールが降板したら、ザレーツキー役はどうするつもりだったんだ?
結果として、お客としては、見比べが発生し、ある意味で「お得」な公演と言うこともできるかもしれません。重大な怪我ではないからこそ言えることですが……。
「こんなに変わるか!」というほど、役作りが大分違って驚きました。
米沢プリンセスは天真爛漫でパキッとした動きだったのに対し、小野プリンセスは優雅で滑らかな印象。新国は、看板プリマにこのようなタイプの違う二人を揃えられていていいですね。
奥村アラジンが愛嬌あるトリックスター的な感じだったのに対し、福岡アラジンは勇敢な主人公像。
しかし、小野&福岡ペアを観て思ったのは、「ああ、結局 "バレエの王道" っていうのはこれなんだな」ということです。こういう、"儚く可憐なお姫様 & 勇敢且つノーブルな王子様" の役柄があくまで正統なんだな、と痛感させられてしまいました。
それは、何も米沢&奥村ペアが悪いという話ではなく、またこの演目に限った話でもなくて、もっと壮大な話なのですが、結局、数多くの作品があり、ストーリーや役柄があるにも関わらず、有名な大半の作品の主人公カップルがこのようなペアリングであるのが問題だと感じた、ということです。主人公を担える役柄の幅が狭いんです。
バレエのヒロインとは、要はガムザッティではなくニキヤであり、エギナではなくフリーギアで、「儚く美しい」から離れてしまうと、急に主人公を担うことは難しくなります。もっと溌剌としたキャラクターや、気の強いキャラクターが主人公となる作品が増えて良いし、頻繁に上演されていいし、人気になっていいと思います。男性のキャラクター造形にも同じことが言えます。
見比べが発生したことで、このことを再認識させられ、なんというか、少し切なくなったりしました。あらゆるキャラクター造形に主人公役のチャンスが与えられていて欲しいよ。
まあ、この演目に関しては、プリンセスは溌剌としていていいし、アラジンはトリックスターでいいんですけど。
窓から飛び降りる演出を観て、「え、次『トスカ』だが?!」になりました。今回は死にませんが(『トスカ』観たことない人向け:最後にヒロインが投身自○します)。流行り?
あ、『トスカ』は席買いました。プッチーニの演目の中で一番好きだし、新国が持っているオペラ演出の中でも一番好きかもしれません。クラシカル且つスタンダードで写実的。良いです。
↑ オペラ入門者にもお勧め! 悲劇に耐性があれば。
場面が変わって、アラビア書道風の美術が登場。
アラビア書道は読解に技術が必要なので、わたしも読めませんが……。وو など、特に意味のなさそうな文字列に見受けられます。
アラビア書道は、クルアーンを美しく書く為に生まれた美術ですが、特に内容はクルアーンっぽくないように見受けました。
上手下の ببا (かな?)はエジプトの地名ですし、概ねちゃんとしたアリフバーターを書いてはいるものの、特に意味をなす文字列ではないのかな。求む、有識者。
眠り薬を盛られたマグリブ人の杯のすっ飛ばし方が凄いです。綺麗に上手袖にストライク。これには大谷○平氏もビックリであろう(知らんけど)。
この間も、眠り薬を盛るバレエを観たばっかりな気がする……これも流行なのか……? と思いつつ。
ところで、現実には、眠り薬よりも毒薬のほうがずっと生成や入手が容易なように感じるのですが(倫理や法はともかく。毒薬と大仰に言っても、身近なもので代用できますから)、舞台芸術だと眠り薬ってよく出てきますよね。原材料なんなんだろ。
アラジンの代名詞・空飛ぶ絨毯は迫りで動かすのかと思ったら、左右にも動いてビックリしました。すげー。どうなってるんだろう。今回ほんとうに舞台装置見事ですね。
ジーンは3幕でもよいです。絶好調。ピルエットが綺麗。主役の降板というアクシデントに見舞われたにも関わらず、動揺もなくしっかり自分の役目を果たしていて好印象です。
そして最後に、獅子舞ならぬ龍踊りが。パンフレット曰く、「ドラゴン・ダンス」。英語にするだけで、なんだろう、この…………。
『アラジン』は元ネタが中国であることもあって、その要素も出そうという試みなんでしょうね。色々とカオスである。
パンフレットに関して。
ビントレー氏が原作について「権力・富と愛についての物語だからです。(中略)この二つは両立しません。」と仰っているようですが、オタクなので、「えっ……、するが……???」になりました。権力も富も愛も両立すること、全然あるからね。
今回は違いますが、あと「完璧な人はいない」みたいな言説とか、困るんですよね。そんなにわたしに布教されたいか?? するが?? 覚悟してください。
今回も、上演前後に相互さんにお付き合い頂けて、幸せでした!
わたしもわたしで意見の強い鑑賞者ですから、意見の合うバレエファンに巡り会えて嬉しい限りです。テンションが上がるとノンストップ布教マンになるので、適宜止めてくださいお手数おかけします。また宜しくお願いします!!
こんなところでしょうか!
考証班からすると、正直めちゃくちゃすぎるし、ツッコミどころが多すぎます。
また、嘆かわしいのは、この作品に対する感想で、「どう見てもアラブ」みたいな発言が多く見受けられることで、「いや、どう見たってトルコでしょ」「それはペルシャの文化です……」と訂正しまくりたくなる気持ちもしばしば湧きます。わからないのは仕方ないけれど、間違いを堂々と発言することは、「日本と中国と韓国って何が違うの?」とか言われても文句は言えないってことだぞ、という自覚を持ちましょうね。
わたしは、前述のように、第三外国語としてアラビア語を履修していた他、国際政治の研究会でもアラビア語圏を担当していて、散ッ々「アラブとトルコとイランを混同するな、中東は政治学上の用語であって地理学上の分類ではない」みたいな話を書いたり話したりしてきたので、ここら辺を混同されると、こう、大層ムズムズしてくるものでして。
今回は、それどころか、中国やインドなどの要素もグチャグチャに入り乱れているし、時代の設定も不明瞭なので、もうどこからツッコんだらいいのやら案件です。たすけてください。
上演としては、主演の交代劇という珍しい事象に遭遇しつつ、全幕を通して高水準であったと思います。
ストーリーや考証は滅茶苦茶すぎますが、スペクタクルとしては見応えがあるし、良い公演だったのではないでしょうか。
以上です!
最後に
通読ありがとうございました。9000字ほど。いつも通り長いです。
文化盗用の問題は難しいですね。わたしだって、アラブやロシアの文化が大好きですから、こうやって調べたり書いたりしているわけで、「お前は日本人なんだからそんなことやるな」とか言われたら困ります。
現地の文化をしっかりと理解し、リスペクトを持って、人々に納得して貰える作品を創って頂きたいものです。ディズニーの『アラジン』にブチ切れ散らかす我が師を横目に。
次回ですが、またバレエのレビューになります。レビューは溜めたくないのですが、溜めてしまいました。もう観てきちゃったので書かざるを得ません。レビュー以外の記事も書かせてください……と懇願しつつ。
そちらでもお付き合い頂けたら嬉しいですね。
それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。