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架空の世界を護るために

新国立劇場『ホフマン物語』初日 - レビュー

 こんばんは、茅野です。

最近、我らが最愛の『エヴゲーニー・オネーギン』界隈が盛り上がりを見せており、いつのまにやらオタク歴8年目(!?)に突入していたわたくしとしても驚くばかりでございます。自分のオタク歴にも驚いております。

何をしても許される蛮勇若者キャラ」でやってきたのに、意外とオタク歴長くなってきてません……? このままでは単なる老害になっちまう。よりよいオタクを目指し精進致します、はい。

 

 そんなキャラクター性を払拭せぬまま、蛮勇にも、「オペラ座ル・グラン・ガラ」公式様に一言申し上げたところ、ほんとうに『オネーギン』を演るとか仰るし……。そんなことある?

取り敢えず B プロ買いましたよ席……。連覇するべきなのか考え中です。全幕なら勿論通いますが、ガラだからな……。

 

 と、いつまでも『オネーギン』について語りたいところですが、今回は別の演目についてです。

先日は新国立劇場のオペラ『ホフマン物語』にお邪魔していました。3月17日、初日の回です。

 久々にソワレ公演に赴いた気が致します。普段はマチネの方が多いですね。

劇場内とホワイエの寒暖差がかなりありますね。皆様体調にはお気を付けて下さい。

 

 今回はこちらの公演のごく簡単な雑感を。それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します。

 

 

キャスト

ホフマン:レオナルド・カパルボ
ニクラウス:小林由佳
オランピア:安井陽子
アントニア:木下美穂子
ジュリエッタ大隅智佳子
リンドルフ / コッペリウス / ミラクル博士 / ダペルトゥット:エギルス・シリンス
アンドレ / コシュニーユ / フランツ / ピティキナッチョ:青地英幸
指揮:マルコ・レトーニャ
合唱:新国立劇場合唱団
演奏:東京交響楽団
演出:フィリップ・アルロー

 

雑感

 『ホフマン物語』、劇場で観るのは初めてです。新国ではよく演っているなあとは思いつつ。再演5回目(!)だそうで……、ロングランだ……。

 しっかし、この演目、長いですよね。事実、30分休憩が2回、という驚異のタイムテーブルでした。ワーグナーでも大体25分なのに。

 

 今回も安定の U25 席。恐ろしいことに、そろそろ期限が怖くなってくる頃なのですが、「Under(未満)」という名前ながら、本当は「25歳下」なのですよね? 合っていますか?

 席は 1階後方ド真ん中で、安席なのに S 席相当をばら撒いて下さる新国様の懐の深さにはいつもながら感動で御座います。が、案の定客席ガラガラでもありました。

 当劇場は国立ですから、お国のご意向に従って動いているわけですけれども、「コロナなど無かった(`・ω・)キリッ」という謎の愚策方針により、色々と対策の "緩和" が進んでおります。

「Bravo/a/i/e!」の叫びも解禁され、真後ろから叫ばれてびっくりする客の図。

それは良いとしても、外国籍と思しきお隣団体客お姉さま方が上演中にマスク無しで喋る喋る。どこへ、どこへ去ったのか治安。

 

 『ホフマン物語』は、原則的には喜劇に分類して宜しい作品かと思いますが、こちらの演出では終始舞台が暗く、ソワレ公演だと少々眠気を誘います。

同劇場で上演していた、プティ版バレエ『コッペリア』とそこまでお揃いにしなくてもよいのに。

↑ レビュー記事。こちらも色合いが暗めです。

 第2幕の『星の王子さま』感あるプラネタリウム風の背景や、第4幕のゴンドラは綺麗ですけどねえ。

 

 お衣装もかなり奇抜で、ポップさとグロテスクさを折衷しております。目玉スカート怖いよ!!

↑ そんなデカい眼球、どこに嵌めるんですかね。自由の女神制作中?

よく見ると青~緑にグラデーションしていてカワイi……ってそんなわけあるかーい。

 

 一番良かったのは順当にタイトルロールです。フランスオペラを歌い慣れていらっしゃる……という印象を受けました。正に主役級テノール、それもフランス風で軽く明るめ、というところで、声質もよく合っています。

ところが、キャスト紹介を読む限りでは、メインはイタリアものだそうで(まあ、オペラ歌手のメインは十中八九イタリアかドイツかに二分されるわけですが)

YouTube で検索して軽く聴いてみたのですが、やっぱりカヴァラドッシやマントヴァ公爵にはちょっと軽すぎますね。ホフマン、実はトップクラスに嵌まり役だったのでは? ナイスキャスティング。

 適当に感想サーチしていると、「凄いイケメン」という意見が多かったのですが、後方席だとお顔立ちまでは(オペラグラス構えても)よくわからなかったですね。残念。

 しっかし、『ホフマン物語』って、毎回思うわけですが、 E. T. A. ホフマン本人的にはどうなんでしょうねこの脚本。わたくしは実在の人物を、こう……フィクションで捏ねくり回す行為は原則的に好きではないので、もや……っとしたものを感じます。

 

 お衣装がド派手なオランピア

↑ 圧倒的存在感。なにより、デカい。

 『ホフマン物語』の中では、オランピアのクプレが一番耳馴染みがあります。演技も必須だし、技巧的で、音楽も愛らしくて素敵ですよね。

 1番とでも申しましょうか、最初の方では、音程がかなり不安定で、「大丈夫か!?」と危ぶみましたが、繰り返しに入ってからは軌道に乗った様子。カデンツァも意欲的且つ技巧的で、超高音でも声量が凄まじく、多大なる拍手を受けての幕となりました。

 

 いやしかし、改めて、フランス歌曲は難しいのだなあ、と思い知らされましたね。

ニクラウスもアントニアもジュリエッタも、皆様声はいいのですけど、日本語訛りが顕著で……。勿論、日本語訛りなわけですから、歌詞が聞き取りづらいということは全くなくて、寧ろ同じく日本語を母語とするわたし共には聞き易いまであるくらいなのですが、しかし「フランス語では……無いなあ……」と感じてしまいます。

中低音、要は地声に近いと殊更目立ちますね。高音は声の美しさが勝ちます。

 フランス語、発音難しいですよね。それはとてもわかります(※実はフランス専攻)。身に染みてわかります。わかる……んだけれども!

 それもあってか、歌手は男性陣の方が安定していた印象を受けました。悪役4役も良かったです。個人的には、もっとワルそうでも良いとは思いましたが。

 

 オケは、新国の常ですが、初日はまだ多少手探り状態で、千秋楽に向けてブラッシュアップしてゆくのだろうな、というところ。それがわかっているのに毎度初日に赴いている……ってこれ前も書いたような気がしますが。

 第3幕といい、「舟歌」といい、『ホフマン物語』は弦楽アンサンブルとフルートが綺麗ですよね。今回、アンサンブルはすっっごく綺麗でした。良いソロ奏者さんが揃っていらっしゃる。酔えた。ありがとうございます。

というか、個人的には「舟歌」というジャンルそのものが割と好きで……。シンプルな繰り返しが心地よい、ホモ・サピエンス舟歌のリズムを心地よく感じるようにできている。

 

 『ホフマン物語』は、E. T. A. ホフマンの作品のそれぞれ最もドラマティックなシーンを繋ぎ合わせている、謂わば「いいところ取り」の構成なのにも関わらず、冗長に感じるのは何故でしょうか。物語が断片的で、登場人物に全く感情移入できないが故であろうか。

 実際、作品自体が長い、というのもあるんですけれども。曲を一曲ずつ取り出すと、「良い曲だなあ」としみじみ感じるのですが、全幕で上演した際の面白みというのは、浅学なわたくしには未だにちょっとよくわかっていません。

版が違えばまた何か発見があったりするのでしょうか。

 

最後に

 通読ありがとうございました! 4000字ほど。

 

 この辺りにも書いているのですが、来シーズンは新国立劇場でも我らが最愛の『エヴゲーニー・オネーギン』が再来してしまいます。どうする、……どうする!?

 どうしても「手紙の場」の扇風機を絶対に直して欲しいので、劇場の方(※オタクを拗らせすぎて知己を得た)にも直談判しました。投書や Twitter などでの書き込みも効果があるという言質を得たので、皆様是非ともご協力の程宜しくお願い致します。

皆様だって、雑音がガーゴー鳴り響いている中でのターニャのアリア、イヤでしょう? イヤですよね??

 

 オペラの方は、個人的には是非とも行きたい演目が多く、嬉しかったのですが、一方のバレエのラインナップはあまりパッとせず。

強いて言えば、『ホフマン物語』をバレエの方でもやるとか……、新国立劇場よ、どんだけホフマンが好きなんだ!?

 バレエの方は観たことがないので、行くならこちらかなあ……などと思っております。またバレエを観る頻度が減りそうだな……。頼むから『オネーギン』やってくれー。

 

 『アイーダ』は席の売れ行きが非常によく、U25 は出そうもないので保留中。5年前に一度観ているし、蹴ってもよいかなあ……、折角だし観たいのですが。

リゴレット』はあまり得意な作品ではないので、次の新国オペラは『サロメ』になるかもしれません。遠い~……。何か映像でも観ていようかなあ……。

お勧めの公演が御座いましたら是非とも教えて下さい。

 

 それでは、今回はお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。