世界観警察

架空の世界を護るために

新国立劇場『ボリス・ゴドゥノフ』オペラトークについて

 こんばんは、茅野です。

いつの間にやら11月というのだから驚きです。新シーズンが始まってからは特に、時間の経過が速い。

 

 さて、いよいよ新国立は『ボリス・ゴドゥノフ』ですよ。我らがロシアオペラです。
今回は『ボリス・ゴドゥノフ』のオペラトークに、現地参戦して参りました。

↑ オンラインでも観られます。是非。

 

 このオペラトークの試み、好きですし有り難いです。『オネーギン』の際も、当然現地参戦しておりました。

↑ 『夜鳴き鶯 / イオランタ』の時は京都に出張していたので(旅日記)、オンラインで。

 

 ところで、わたくしが新国立劇場のファンであることもあり、別所で「オペラトーク」という語を使ったら、わたくしの記事の方が上に来る事態となってしまい、なにか申し訳なく思ったり……。

↑ この記事群です。身に余ることに、大変にバズりまして……。

検索汚染になっていなければよいのですが。

 

 今回は、折角現地まで行ったので、備忘目的で、簡単に纏めておきたいと思います。

 

 それでは、お付き合いの程よろしくお願い致します。

 

 

雑感

 豪華な面々で開催された今回。尺が幾らあっても足りなそうなところ、我らが大野先生が上手く纏めていました。

 

 早速どうでもよいことなのですが、「偽(ぎ)ディミートリー」ではなく、「偽(にせ)ディミートリー」かと思ってました。発音するときに「ギ」だと、漢字が思い浮かばなくてややこしくないですか?

亀山先生も最初「にせ」と言いかけていたので、一般的にはこちらの方が使われているような気が。どうなんでしょう。皆様はどちら派ですか。

 

 最早カリスマ的存在となった亀山先生。研究会のわたくしの先輩の一人が、名古屋外語大の方でして、「亀山先生の授業を取ったけど、初回の授業からノリノリでロシアオペラ流してた。先生が一番楽しそうだった。」というご報告を受けております。わたくしも授業で『オネーギン』が観たい。

 しかし、『ボリス』はドストエフスキーではなくプーシキンの戯曲なのだから、ドストエフスキーではなくプーシキンの話をメインにして欲しかったな、と感じるのはわたくしだけでしょうか。

自分の好きな専門の話の方が盛り上がるし、ついその話をしたくなってしまう気持ちも、同じ(?)オタクとしては大変共感致しますが……。

或いは、プーシキンよりもドストエフスキーの方が「人気」だし、「知名度も高い」から、そちらの方が興行的な成功になるとか。かなしい。

それとも、日本にはプーシキンについて専門的に研究されている方が少ない、とか。それもあるかもしれません。なるか……わたしが……(無謀)。


 歌唱に関して。

二重唱に関しては、割と「あ、そこ!?」という選曲である気が。いやしかし、『ボリス』からの抜粋って確かに難しい気が致します。どこ抜こう、ってなりますねこれ。

 ホワイエで歌うの、大変だろうなと毎度思います。割と容赦無い。カヴァーの方の歌唱も聴ける良い機会なんですけれどもね。

『ボリス』、中音であるが故に音程取るの難しそうだよなあ、という場がいくつかあるのですが、二重唱は正にそういう場であった気が致します。

乳母の方の目力凄まじかった。

 

 聖愚者、めちゃくちゃよかったです。ホワイエであそこまで響くのは素晴らしい。

響くテノールでありながら、ロシアオペラには是非とも欲しい、ほの暗さも持ち合わせていて、とても良いです。期待が高まる。

強いて言えば、役どころ的には、もう少し情けない(?)感じでも良いかも。『オネーギン』のムッシュー・トリケがめちゃくちゃイケボだった時の感覚というか……(伝わって欲しい)。レンスキー(『ボリス』ならグリゴーリー)やりなよ、みたいな……。

 

 ボリスは、息の抜き方が結構特徴的だなと感じました。最初は完全に聖愚者に押し負けているな……と感じましたが、段々調子を上げていった様子。

ボリスのモノローグ、良いですよね……。まあ、ボリスの見せ場から選出するなら勿論そうでしょうとも思いますが、ボリスの歌唱であればやはりここ。

上に立つ者の苦悩の歌、大変好きです。『ドン・カルロ』のフィリッポ2世のモノローグ(アリア)も同じ理由で好きなのですが、同志がいらっしゃれば嬉しいです。

↑ 歌詞も泣けるし、旋律が余りにも良すぎる。弦が官能的すぎる。

 タイトルロールであれば、もう少し迫力や豊かな響きが欲しいところですが、ホワイエだし、まだ何とも言えませんね。舞台上での動きに期待です。

 

 リトアニアに関して、この間の記事でも酷いこと書いてしまって()、ちゃんとお勉強しておきます。本当に。はい。

↑ いやほんとに反省しておりまして、今積読になっていた19世紀のリトアニアの農民についての資料を読み始めたのですが、何か入口を間違えたような気がしています。悲惨すぎる。

 

 この間、このような題の記事を見かけ、懸念に思っておりました。

 別に、『ボリス』を見ればロシアの独裁者(この場合、主に現大統領プーチンを指すのだろう)を理解できる、というわけでもないと思います。更に言えば、ボリスとプーチンを重ねて見るのは、ある程度は構わないと言うより致し方ないと思いますが、重ねて見すぎるのは危険だと考えます。

 今回のオペラトークでは、そのような安易な説明には終始させないという強い意志を感じて、大変気持ちが良かったです。

 尤も、最初の方は、ゲストお二人が、新国に『ボリス』をやって欲しいのか、欲しくないのか、どっちなんだというような感じもしましたけれども(欧州などと日本ではロシアへの認識が異なり、前者では今はロシアオペラを自粛することが主、というような流れだったので)。

↑ この情勢下でも、鋼の意志でロシアオペラをやる劇場は世界にもあります。この間はサンフランシスコでも『オネーギン』を上演していました。評判は芳しくないようですが……。

 

 一点、『オネーギン』の頃から思っていましたが、大野さん、言い間違いが多くないですか? 伝わっていれば構わないのですが、今回のものは結構致命的だった気が。一度ピーメンのことをシュイスキーと仰っており、こういう場では訂正を掛けるのは難しいので、お気を付けてくれ~! と思いつつ。『オネーギン』の時は一回「エウネギ」って仰ってたぞ。略しすぎ。葱。

 

 ボリュームたっぷり、大満足のオペラトークで御座いました。現地参戦して良かったです。

 

最後に

 通読ありがとうございました。3500字ほど。

 

 いよいよ来ますよ。ドキドキですね、色々な意味で。
そして実は、この記事を書いている間に、Twitter で企画されていたゲネプロ抽選に当選致しました! お邪魔してこようと思います!

↑ 『オネーギン』のバックステージツアーに当選しなかった哀しみをここで晴らしていくスタイル。

 同じ日にオマーンに関する講演会があり、本当はそちらに行こうと思っていたのですが、泣く泣く断念。抽選に当たったら『ボリス』、当たらなければオマーンと、慈悲深く慈愛あまねき神に委ねることにしましたが、神はロシアオペラを観るようにと仰せのようです。

研究会では国際政治を学び、特にアラビア語圏に力を入れていたので、そちらも楽しみにしていたのですが……。

↑ UTCMESさん、好きです。普段は常連。

ご関心ある方は是非。

 

 また、席は初日を取っていたのですか、なんとアフタートークが開催されるということで……。

今回、ほんとうに企画が盛り沢山で嬉しいですね! 気合いが入っている。何故? 有難いですが……。

25 周年だから? この時期にロシアオペラだから? コロナの規制が緩和されてきたから? 単に大野芸監のお気に入り演目であるとか??(だとしたら嬉しい)……、謎です。

 

 情勢が情勢なので、強く主張しづらくなってしまったのが心苦しく、歯痒いのですが、新国でロシアオペラを沢山上演して頂けると大変嬉しいので、可能な限り支援したいですね。

 

 それでは、『ボリス』上演の成功を祈願しつつ、今回はここでお開きと致します。ありがとうございました。