世界観警察

架空の世界を護るために

寺田功治 バリトンリサイタル - レビュー

 こんばんは、茅野です。

わたくしは健康優良児であることが売り(?)なのですが、先日珍しく発熱しました(平熱+1.6度くらい)。

「冷房入れてるのに、なんか暑いなー。……、もしかして?」と思って試しに測ってみたら発覚したので、単純に良くも悪くもにぶいのだと思います、はい。

「なんか暑い」くらいしか自覚症状がなかったのですが、コロナも増えているといいますし、良い口実だと思って可能な限り無為に時間を溶かしてみました。たまにはこういう、読書や執筆などの趣味も含め、ほんとうに何もしない日! ってのもいいですね。

 

 発熱の前に、寺田功治さんのリサイタルにお邪魔していました。そんな「無為の日」などを挟んだので、レビューを書くのがすっかり遅れちゃいましたが! 9月24日、日曜日のマチネです。

↑ 気付けて良かった。ちなみに、Twitter 経由です(ツイ廃なので)。Twitter は偉大なのでイーロンは改悪をやめろ。

 

 以前、黒澤麻美先生のリサイタルのゲスト枠でオネーギンを歌ってらして、「いいな!」と思ったので二回戦です。まさかこんなに早く二回戦ができるとは思いませんでしたが。有り難や。『オネーギン』はなんぼ演ってもいいですからね。

↑ 以前のレビュー。無駄に長いくせに語彙力はない。

 

 小規模なリサイタルなので、運営にメールをして、チケットと振込用紙をを郵送で送って貰うスタイル。非常にアナログですが、今年に入って三回目(!)なので慣れました。

 メールのやり取りが驚くほどフレンドリーで(エクスクラメーションマークが一度に6個付いていたり、諸々)、何か人違いをしていないか……? 公式がお友達宛てのテンションのメールで来ることある……? と不安になりましたが、特に問題はなく。よかった。

いや、わたくしは別にビジネスマナーとかそんなに気にしませんけど(自分もできている自信皆無ですし)、こう、実際に変化球で来ると驚くものだな……とは思いましたね。

 

 今回は、少し遅くなりましたが、備忘録として、こちらの雑感を書いておきます。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

出演者

バリトン:寺田功治
ピアノ:篠宮久徳

 

雑感

 会場は池袋の自由学園明日館で、初めて参りました。

細い道を何度も曲がり、Google マップが無ければ辿り着けなかったかも(現代人並感)。

 

 教会のような長椅子ですが、意外とふわふわなクッションが敷いてあって座り心地がいいです。入ると、凄く木の香りがします。

結構余裕を持って来たのに、既に大分席が埋まっていて、大盛況。もう少し大きいハコでもよかったかもしれません。いつも以上に年齢層高めで、漏れなく浮く若者の図。

今日は空けていませんでしたが、2階席もあるようですね。

↑ 終演後に会場の写真を撮ってみました。素敵。

 

 プログラムは前半歌曲、後半オペラです。大体リサイタルってこの形式なんですかね。

前半30分、休憩15分、後半45分程度(アンコール含む)。やはり、ゲスト無しのリサイタルだと、これくらいの配分になりますかね。

 

 前半の歌曲は、フランスもの、イタリアもの、ロシアもの、ドイツもの、日本もの×2 の、地域・言語に囚われない大盤振る舞い。

後半も、仏、伊、露ですね。ここでロシアものを多く入れてくれるのは個人的には嬉しいところ。

 

 字幕がない代わり、一曲ずつご本人が解説を入れてくれます。

THE・バリトンな声に反して(?)、喋り方が意外と可愛らしくて、ギャップ萌え(?)。

風邪を召したばかりだそうですが、全くそうとは見えず。歌手の喉は強し。

 

 お話曰く、デュパルクは生涯で100曲以上の歌曲を書いたものの、精神障害で自ら燃やしてしまい、残っているのは20曲程度なのだとか。

お、音楽界のニコライ・ゴーゴリ……!(?)。

 

 言語に囚われず、いい声してますね! 改めて聴いてみると、ほんとうに声域がバリトン域に合致しているんだなと思いました。そして、そのことをご本人がよく自覚されている。声によく合った選曲が上手い。

言語、どれが合うんでしょうね。わたしはフランス語、ロシア語(と、勿論日本語)としかご縁がないので、ちょっと贔屓が出てしまいそうで、客観的なご意見を伺いたいところ。どの言語も卒なく歌ってらして流石。

歌詞が迷子という程でも無いものの、超明瞭という程でも無いですね。ロシア語、声質によく合っていると思いますが……。

 

 低音は比較的弱めなのですが、今回のラインナップは『聖なる僧院の門の脇に』『おお愛せよ、お前が愛しうる限り』『落葉松』の最初の音が低く、この最初の一音から引き込めるともっとドラマティックになりそうだな、と感じました。

 

 『落葉松』(これで「からまつ」って読むんですね……日本語難しすぎる……)では、「濡れる」が多用されて、「る」で伸ばすの珍しいな〜と思いつつ。母音「ウ」系とはいえ、イタリア語の piu とかとはまた違いますよね。

そして、伴奏がお洒落。

 

 

 後半戦です。

闘牛士の歌』ではまさかの舞台後方からの登場。小会場ならではですね~、自由度が高い。

顔の向きによる声の飛び方の変化を身を以て体感できます。ほんとうに横って音飛ばないんだな……。

サビ(サビ?)で手拍子が入ったのが最悪ですね。それバレエでもめちゃくちゃ怒られますよ。誰が主導したんだ。妖怪「飴パリパリ」と共に絶滅させよう。

 

 次にモーツァルト2曲。

 ドン・ジョヴァンニは驚くほど声が合いますね! これはハマり役なのでは。

 フィガロは、もう少し表情を付けてもいいかもしれませんね(最初のレチ部分とか)。好き嫌い別れますが、オペラは歌曲よりも多少崩し気味でも良いかと思います。

 しっかし、『セヴィリア』にせよ『結婚』にせよ、フィガロは大変そうだな~と改めて思いますね。早口も多いですし。低音になる Il resto nol dico のところはあと一歩。

 

 さて、我らがオネーギンさんな訳ですが……。

一回退場したので、 Вы мне писали ですし、登場からやるのかなーと思ったら、はちみつお湯いのちのみずを取りに行っただけでした。思わせぶり!

 

 解説では、毎回「エフネギー」と言っていて、出た! ネギ族!(?)と複雑な心境に。某芸監も「ネギ族」でゲンナリした思い出。

そんなに「エフゲニー」って言いづらいなら、原語のように「イェヴゲーニイ」と言えばいいのに、といつも思います。

 そもそも、原語とは大分異なる「エフゲニー」という表記は、原語の発音に慣れない日本人向けの慣習的表記だと認識しているのですが、「エフゲニー」を(オンの方に引っ張られるのもあるのか)、「エフネギー」と言い間違う人が多発するようでは、寧ろ邪魔では? と思います。

 『オネーギン』の面倒臭いオタクは、必ず最初に「原語では本来イェヴゲーニイと発音する」という話をしますし、表記の問題は今後も課題として残りますね。

 

 また、解説では「二重唱が一番好き」で、特に「幸福は手を伸ばせば届いたのに( Счастье было так возможно, так близко )」のところが好き、と仰っていましたね。

確かにここはめちゃくちゃいい歌詞で、人気も高いと思いますが、ターニャはともかく、オネーギンさんは言うだろうか? と割と思ったりもします。

 また、「日本では上演機会が少ない」ということ、「特に二重唱は良かったら調べて聴いてみてください」と仰っていましたね。それな!

 

 ここまでは一切楽譜無しで進んでいた当リサイタルですが、今回から楽譜が登場。4月は暗譜だったのに!?

まあロシア語は難しいですからね。曲数もありますしね。

 

 さて、肝心のアリアの方ですが、かなりテンポが速いです。前回もこんなに速かったっけ? と思いつつ、サラサラ流れるように聞こえたのはそれが原因だったかー、と再認識したり。

 確かに、最後に話し掛けた時もご本人仰ってましたけど、オネーギンのアリアは「お説教」であって、溢れんばかりのパッションを熱烈に歌い上げるような曲ではありません。主人公のアリアらしからぬアリアであることは否めません。

しかし、強調すべき部分とか、感情を乗せて欲しい部分とかって、幾つかありますよね。一番人気は、やっぱり Я вас люблю любовью брата, Иль, может быть, еще нежней! のところでしょうか。

 声は素晴らしいし、声質もオネーギン役にとても合っていると思うので、感情が乗ると更に良くなるだろうにな~~と感じました。

最後は前回同様、上げる派。

 

 伴奏はピアノで、ターニャの登場もないので、ターニャが歌う部分はピアノが担当しますが、まさかの左手オクターヴ。ソプラノなのに!? でもアレンジがお洒落だったので万事 OK です。

 

 お次はピアノソロ。

カタカナで書くとクープランと間違えられることでお馴染みの(?)プーランクさん。アルファベットだと間違えようがないんですけどねえ、カタカナだと並べ替えになりますからね……。

 ピアノの篠宮さんが解説入れて下さいました。彼も4月のコンサートで伴奏を担当していたので、2回目の拝聴です。

 個人的には、プーランクは合唱曲(賛美歌の類い)が好きで、ピアノ曲は全然知らなかったのですが、静かで綺麗な曲ですね! THE・フランスのピアノ小曲という感じ。

副題は『エディット・ピアフを讃えて』で、調べたところ元ネタは『枯葉(Les Feuilles mortes)』という曲のようですね。「死んだ葉」(直訳)で「枯葉」なの、洒落てますよね。

↑ 仏語科の出身なのに、エディット・ピアフについて全然詳しくないことは内緒だ。選択必修で人生について軽く攫い、数曲聴いたことはあります。

 『オネーギン』の後に『枯葉』とくると、チャイコフスキーの『10月』なんかを思い出しちゃいますが(※バレエ版の第2幕のレンスキーの Va. の曲)。オタク特有のこじつけ。

 ここでは、それまでそこまで気にならなかった椅子の軋みや、客席でけたたましく着信音が鳴るなど、雑音に悩まされました。勿体ない~……。

 当たり前すぎて失礼まであるんですけど、やはりプロは違うなあと思いましたね。最近は歌手や指揮者が伴奏を弾いて下さるのを耳にする機会も多かったのですが、(それが悪いとは言わないけれど)、もう全然違う。小品だけやるピアノ・リサイタルとかあったら、忍び込みたいですね。

 

 最後は『仮面舞踏会』。レールモントフじゃない方

『仮面舞踏会』といえば、『オネーギン』ばりに我らがディミトリー・ホロストフスキー様を想起すると思うのですが、その印象が強いためか、レナートには少し軽いか……? と思いました。ホロ様はちょいと重めなので……。

 確かに体力と精神力がいる曲なんだろうな~! とはひしひしと感じました。最後にこれを持ってくるのがまた凄い。

 11月に、まさかの原典版をやるそうです。え、普通に気になる……。超レアなので、ご関心ある方は是非!

↑ 過去にどれくらい上演されているんだろうこれ……。

 

 アンコールは3曲。多い!

英語の曲を入れるのは慣習なんでしょうか。更に言語が増える!

ぶっつけ本番でやったという曲もあり、しかも仕上がりがよくて、ビックリです。何って伴奏が凄い。そんなこと可能なんだ……プロ怖……。

 

 司会という程ではないものの、主催の方が何度もマイクを握り、アナウンスを務めて下さっていました。寺田さんとはお付き合いが長いようで、かなり距離感が近い(?)ご様子。

 いやしかし、コンクールでのお衣装が「余りにもちんちくりん」だったって。言い方よ。逆に気になる

 こちらの主催団体と寺田さんの縁は、ヘラルドの会の藤沼先生が繋いで下さったのだとか。ロシア関係じゃん!!

↑ 最近更新が止まっているのが寂しいところ。

 オネーギン役がハマる和製バリトンは希少なので、是非ともこれからもロシアものいっぱい歌っていって欲しいですね~。

 

 最後、寺田さんが客席出入り口の方まで出てきて下さったので、「是非とも今度『オネーギン』全幕演って下さい」と圧を掛け嘆願してきました。演奏会形式でいいので。宜しくお願いします。また黒澤先生とやってほしい。

 

 簡単にはなりましたが、こんなところでしょうか!

こんなにも早く『オネーギン』再演して貰えるとは思わず、とても嬉しかったです。でも、もう少し早めに広報出して貰えると助かります……、1ヶ月切っていたので……。

まあ基本的にわたくしは『オネーギン』鑑賞を最優先にスケジューリングしているので、問題ありませんが……(脳筋)。

 また聴けるのを楽しみにしています。

 

最後に

 通読ありがとうございました。5000字強。

 

 『オネーギン』といえばですよ、NBS がやってくれました、我らがアスミク・グリゴリアン様の来日コンサートで、どちらのプログラムにも『オネーギン』と『スペード』が!! 大盤振る舞いか!?

↑ プログラム最高すぎてひっくり返りました。流石我らがグリゴリアン様。彼女のターニャが生で聴けるなんて最高すぎる。行きたい。

いや~~~、楽しみが増えてしまいました。早くも来年5月が待ち遠しいですね!

 

 次の記事は映画レビューにしようかな、と考えています。既に溜まっています。レビューは早めに消化したい……。なんとかします。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。