こんにちは、茅野です。
安全保障理事会の常任理事国でもある大国が隣国に侵攻。とんでもない情勢になって参りました。毎晩国連中継を観ています。国連本部はニューヨークにあり、時差が開いているので、必然的に寝不足に。
まさか緊急特別総会(Emergency Special Session)をリアルタイムで観るなんて日が来ようとは……。
ロシア(プーチン政権)によるウクライナ侵攻。わたくしは研究会で国際政治を勉強していたので、政治的な観点からも関心があります。特に、「イラクによるクウェート侵攻」については9ヶ月かけて研究し、全国規模の場で講演する機会にも恵まれました。今回の事象では、このクウェート侵攻が比較対象として挙がることも多いですが、個人的にもこの比較検討は興味深く思っています。
また、ご承知の通り、わたくしは普段19世紀のロシア帝国を愛でることを生き甲斐としているので、地域的にも関心があります。今回の侵攻で、人命のみならず、歴史的遺産も失われつつあり、毎日青ざめてニュースを見ています……。
まず、如何なる理由があろうと、主権国家への侵攻は断じて許されることではありません。一方で、不当なロシア人・ロシア文化差別(キャンセルカルチャー)に対しても強い懸念を持っています。
その上で、能無しのわたくしにできることは何だろう、と考えました。ロシアとウクライナに跨がる芸術作品について発信するくらいしか……と思い当たり、であれば、勿論『オネーギン』から。
というわけで今回は、バレエ版『オネーギン』第1幕第1場のフィナーレ、「農奴の躍り」のピアノ譜を作成しました。
それではお付き合いの程宜しくお願い致します。
「農奴の躍り」のピアノ譜を作成する
まずは動画を出しておきます。
↑ 冒頭にノイズが入ってしまったのですが、気にしないで下さい……。
クランコ版『オネーギン』第1幕第1場のフィナーレ、「農奴の踊り」ですが、こちらの元となった曲は、チャイコフスキーのオペラ『ウンディーナ』及び『チェレヴィチキ』です。
↑ 『オネーギン』の元曲解説記事。その他の曲についてはこちらから。
前奏部分が『ウンディーナ』、19小節目(Allegro commodo.~)が『チェレヴィチキ』です。
『チェレヴィチキ』の原作はゴーゴリの『ディカーニカ近郷夜話』の一篇ですが、作家ニコライ・ゴーゴリは現ウクライナ(当時はロシア帝国領)出身。丁度良いのではないかと思い、今回はこちらのピアノ譜を書いてみることに。
しかし、書き始めてから気付いたのですが、こちらの曲、副題が「ロシアの躍り」……なんですよね……。名曲ですが、「流石に今回のコンセプト(ロシアとウクライナに跨がる楽曲)に反するのではないか……どうなんだ……」ということで、『チェレヴィチキ』の別曲もこれから書こうかな、と考えております。
『チェレヴィチキ』部分はスコア譜を元に、忠実にアレンジしています。原曲に無い音は一音も入れていません。難易度的にも、概ね満足の出来です。
一方冒頭の『ウンディーナ』部分は半音ずつ上昇する箇所が不協和音っぽくなってしまい、苦戦しました……。
譜面は pdf でご用意も可能ではあるのですが、例によって『オネーギン』は著作権管理が物凄く厳しいので自粛しております。ご了承くださいませ。
最後に
通読ありがとうございました。
日本でのロシアオペラの上演も増えてきて、バレエ版『オネーギン』もここ数年何度も取り上げられ、と幸先が良いように感じていたのですが、何故このような事態に。一刻も早い停戦を願ってやみません。
短いですが、今回はこれにてお開きと致します。また次記事でお目に掛かれれば幸いです。