こんばんは、茅野です。
今回は簡単な体験談を。
先日、音楽評論家の平岡拓也先生と銀座で一日ご一緒させて頂く機会がありました。
平岡大先生( @takupon68 )と一日中ご一緒させて頂く名誉を得ました!💪👑
— 茅野 (@a_mon_avis84) June 4, 2022
念願の葉巻入門も果たすなど🚬🙏 pic.twitter.com/pv7nHY1QyK
↑ めちゃめちゃ楽しかったです!! ありがとうございました。
午後、「是非とも葉巻にチャレンジしてみたい」と打ち明けてみたところ、シガーバーを案内して下さり、念願の葉巻デビューを果たしました!
紙巻き煙草や電子煙草には必要以上の関心がないのですが、当方、19世紀のオタクゆえ、当時一般的に愛好されていた葉巻やパイプには興味津々(※紙巻き煙草が登場するのは19世紀中頃)。
趣味の研究対象推しが葉巻派ということもあり、特に葉巻には関心を寄せていました。こういうものは自分でやってみて確かめるに限ります。
しかし、ミリしらの門外漢にはハードルが高い! ということで、経験者にご教授頂けて大変助かりました!
というわけで今回は、はじめての葉巻体験について一筆やりたいと思います。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
銘柄
興味はあったものの、何をどう調べれば良いかすらわからないような門外漢だったので、銘柄も特に知識はなし。
店員さんに「初めてなのですが、お勧めはどれですか」とド直球に尋ねたところ、ダビドフ(Davidoff)の「Grand Cru No.5」を推薦されたので、素直に従いました。
↑ 箱買い時の木箱がお洒落。
短めで、匂い、味も軽くマイルド。確かに初心者向けなのだろうと感じました。ドミニカ製とのこと。
葉巻の値段はピンキリで、わたくしが訪れた店舗では 1500 ~ 40000 円程度の物が揃っておりましたが、こちらは2000円強で、手に取りやすいお値段です。
手に取った時、「 Davidoff って、ロシア系の姓をフランス風に表記しているな……」と考えておりましたが、出身は帝政ロシア(現ウクライナ)のダビドフ家が、フランス語圏のジュネーヴに移り住み、そこで開業したのだそうです。創業1911年。
帝政ロシアの文化を愛好しているオタクとしても、良いスタートだったのではないかと思います!
吸い方
シガーバーで吸う場合、必要な物も全てお店が用意して下さいます。飲み物(今回は珈琲)と葉巻を注文すると、用具を持ってきて下さいました。
最初に、吸い口の方を、専用の鋏で切り落とします。
↑ 上の丸まっている方が吸い口。親指側の平な方が火を付ける方。
鋏は開くと先が円形になるもので、初めて見たので驚きました。
↑ 写真取り忘れた無能なのですが、こんな感じです。最初に見るとビックリする。
現代は便利な世の中になったもので、火を付ける際はバーナーを用います。
今回お借りしたのは拳銃のような形のもので、これまた厨二心を擽ります。
↑ 平岡さんが撮って下さいました。
コツは中心の方を重点的に炙ることなのだとか。火傷に注意。
最初は紙巻き煙草と同じように、強く吸い込んで風を送り、火を付けます。
「葉巻は肺まで入れない」と言いますが、事実、軽く呼吸を繰り返すだけで味わえます。
基本的に灰がボロボロ落ちるようなこともなく、先が炭化してきたら、灰皿で切るように押しつけ、灰を落とします。
「蝋燭の芯」の謎
しかしわたくし、何故葉巻に関心を持ったといって、19世紀のオタクであるが故。19世紀にバーナーが存在するはずもなく、当時はどのように火を付けていたのか気になり始めます。
前述の「趣味の研究対象」こと、ニコライ・アレクサンドロヴィチ皇太子殿下の資料の中に、殿下が将軍のパイプに火を付ける描写があります。過去に記事でも引用しました。
↑ 以前連載していた「限界同担列伝」シリーズ、全七回です。同担の奇行を纏めた、とにかく笑える内容になっているので、お時間あるときによかったら。
ここで、殿下が火を付ける際に用いているのが ≪ горящий фитиль ≫ なる謎の物体です。
辞書で引いてみると、「導火線」「火縄」「蝋燭の芯」……などと出てきて、ニュアンスはなんとなく伝わるものの、「明らかに何か違う……」と思わざるを得ません。
この度、めでたく≪ горящий фитиль ≫ の謎が解けました! 解説して参ります!
各お席のテーブルの上に置いてある、お洒落なランプ。飾りかと思いきや、なんとこちらにも意味があったのです。
↑ 洒落たローテーブルに置かれた単なる照明かと思いきや……。
お隣にある謎の棒の束。一本取り出してみます。
↑ 薄くて軽い木の板。
もうおわかりかもしれません。こちらをランプに近づけると……。
↑ マッチのような形で機能する!
そう! つまり、この謎の木の板の先に火を付け、マッチのような形でパイプや葉巻に点火していたわけですね!
この「謎の木の板」、ロシア語では ≪ горящий фитиль ≫ ですが、日本語(というより英語)では、「シガーマッチ」「シガースティック」「シガーストリップ」などと呼ばれているようです。
また、調べてみたところ、杉製が一般的なようです。火を点けると、「もう煙草は要らないのでは……?」と思ってしまうほど、木の良い香りがします。地域によって異なるのでしょうか? 気になってきました、是非ともリサーチ走りたいですね!
こちらで火を点ける場合、燃え代はマッチよりも長いですが、薄い木の板なので、火が迫ってくるスピードは結構速いです。火傷にご注意ください。
最後に
通読お疲れ様でございました! 3000字ほどです。
いや~、時代考証が実践できるって素晴らしいですね。やっぱり自分で体験するのが一番ですから。後は銘柄や、当時使われていた用具など、もう少し丹念にリサーチを重ねて行こうと思います。
殿下は、優れた感性の持ち主で、匂いだけで他人が紙巻き煙草を吸ったのか、葉巻を吸ったのかわかったと言います。
わたし自身があまり紙巻き煙草を吸わないこと、今回が初めての葉巻だったこと、そして銘柄としても初心者向けのものだったこともあって、個人的には匂いでの差異などはあまり感じられませんでした。味や匂いの違いがわかる人間になりたい。修行します。
紙巻き煙草は、一時期 Montepaz 社の Ark Royal シリーズ「 Wild Card 」を吸っていました。珍しい珈琲フレイヴァーのもので、巻紙も洒落ています。
↑ 巻き紙、黒より茶色の方が格好良かったとおもうのですが、わたしだけでしょうか。
今回珈琲を頂きながら葉巻に初挑戦したのですが、珈琲と煙草の相性がいいなあと感じるのは、 Wild Card の影響もあるかもしれません。
昨今は喫煙に対する取り締まりが厳しくなっていますが、近代を考える上で、煙草が果たした役割は大きいもの。健康被害は重々承知ですし、取り締まる方向性にも疑問はないものの、一方で、文化を絶やさないということの重要性も改めて感じました。
お勧めの銘柄や、知識を付ける上で参考になる資料等御座いましたら、気軽に教えて頂けるととても嬉しいです。
それでは、今回はこれでお開きと致します。お付き合いありがとうございました!