こんにちは、茅野です。
最近オタ活を愉しみすぎている気がします。最高の推しを持てて幸せなオタクですね。
さて、今回は短い体験談を。わたしの趣味の研究対象推しロシア帝国皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィチ殿下のリサーチをしていたら、なんと、彼の帆船の模型があることを突き止めました。
来゛た゛ァ………………⛵ pic.twitter.com/1r4Lk8QMjr
— 茅野 (@a_mon_avis84) May 16, 2022
今届いたばかりで、手つかずの状態です。
しかし、届くまで紆余曲折があり、充分に物語性があると判断したので、今回は入手の経緯について書いてみたいと思います。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
ウーヴァレン、現る
我らがニコライ・アレクサンドロヴィチ皇太子殿下は、類い稀な才能に恵まれながらも、残念ながら早逝してしまったお方。従って、あまり知名度は高くなく、日本語や英語で調べても、なかなか情報は集まりませんので、ロシア語で調査を進めてゆく必要があります。
というわけで、いつも通り彼についてリサーチを掛けていると、とあるロシアのサイトに行き当たりました。
↑ 「殿下の船……だと……?」。
殿下が生きた19世紀中頃は、蒸気船が台頭した頃で、当時は帆船も蒸気船も双方使用されていました。
外洋に出たり、長旅に出る際は蒸気船を用いており、殿下はよくアレクサンドル・ネフスキー号、シュタンダルト号などの蒸気帆船に搭乗しています。
↑ 1863年頃のアレクサンドル・ネフスキー号。国外査察旅行の際に用いられた他、彼がフランスで客死した際、ロシアに遺体を運搬したのも同船でした。
また、彼は己の船を二隻所有していました。流石皇太子殿下、所有物のレベルが違う。
一隻は、彼の愛称がそのまま船名となった「ニクサ」号で、中型の帆船です。
↑ 「ニクサ」は「水の妖精」の意。
彼が9歳の頃、イギリスで製造された船です。
そしてもう一隻が、小型の帆船「ウーヴァレン」。
↑ 白黒写真しか残っていないため、塗装するにも色がわからない……。お手本では白と赤になっていますが。何か情報はないか探してみたいと思います。
「ウーヴァレン(Увалень)」は、ロシア語で「のろま」の意味。相当機動力が悪かったのでしょうか……。
とはいえ、語幹の Увал- は、海事用語にもあり、動詞 Увалить, Уваливать は「航路を逸らせる」の意、名詞 Увальность は「帆船の偏転性」を意味するため、その辺りも関係しているものと推測できます。
「ウーヴァレン」は、殿下が19歳の頃、帆船の操縦技術を習得するために建造された練習船。帝都サンクトペテルブルクから、フィンランド湾~バルト海の方まで航行することが多かったようです。
名は体を表すと申しましょうか、「水の妖精」の愛称を持つ殿下は水や海が好きでした。ロマノフ家の直系にしては珍しく、陸軍よりも海軍贔屓でしたし、好きなスポーツは水泳で、船での航行は川・海、蒸気船・帆船・ボート等、場所や船種を問わず好みました。
島嶼の神話では、「冥界は海の向こうにある」という信仰が各地で見られますが、殿下に関して興味深いエピソードがあります。
少々暗い話にはなりますが、殿下は最期に意識障害に陥り、しばしば譫妄状態(外部からの反応に鈍くなり、錯覚や幻覚に囚われてしまう脳の異常な状態)になります。その際、死の間際の最後の譫妄では、彼は自分が船を指揮しているという譫妄に囚われたようで、その船こそウーヴァレンだったのではないか、という指摘も存在します。
結局、前述のように、死後彼の遺体は船によって祖国へ搬送されることを考えると、なんとも運命的です。
「ロシアのメーカーとはいえ、何故そんなウーヴァレンなどというマイナーな練習船を!? 」と非常に衝撃を受けました。しかも、この制作元の falconet さん、まだ販売商品数が6件しかありません。その中に普通ウーヴァレンを入れるか!? え、なに、同担……(?)。
お値段は 9700 ルーブルで、記事執筆現在のレートで 19,598.33 円。送料を含めても2万円強です。これは買うしかない!!!
しかし、ご承知のように、現在のロシアはというと……。
初のロシア語メール実践講座
製造元 falconet さんは、サイトを英語表記にもできるのですが、筆者は英語もロシア語もあんまりできないので、であればロシア語で書いてみるか! と頑張ってみることに。
ロシア語で、お問い合わせメールを書いてみました。
[ 日本からの注文 ]
こんにちは。
貴社の商品を日本から購入したいと思い、注文をしたのですが、現在の情勢の変化により、クレジットカードでの支払いが拒否されています。
どうしたらいいですか? 現在は国外からの注文は難しいのでしょうか。
宜しくお願いします。
初めてロシア語でメールを書いたので、めちゃくちゃ緊張しました。
翌日、ショップの方から返答が。曰く、
こんにちは!
ロシア語で書いて下さってありがとうございます :)
この問いに関して調査したところ、SWIFTを経由しての送金を受け付けることが可能です。もしこの方法での送金が可能であれば、詳細をお送りします。
商品はロシア郵便をご利用頂けますが、現在の物流の混乱により、到着が大幅に遅れています。
また、日本国内からもご購入頂けます。
最初に「ロシア語で書いてよかった~~」って心底思いましたね。甲斐あり!
「その SWIFT から制裁を……あれ……?」と色々考えつつも調べてみると、手数料も高いですし、やっぱり色々厄介だなということがわかりました。
物流の混乱、ですよね……、と思いつつ。
最後に、「日本からも購入可能な」サイトのリンクを貼って下さっており、開いてみると、もう普通に日本のサイトで買えるんですね。
↑ ふつうに日本語でビックリした。
ここでフラグ回収。わたくし、前述のように、ロシア語でしか検索をしていないのですね。
帆船模型をよく作る方には有名なサイトなのでしょうが、帆船模型が作りたかったというわけではなく、わたくしは「歴史政治学のリサーチをしていたらたまたま研究対象の船を見つけてしまい大興奮をしてしまったオタク」でしかないので、そもそも日本のサイトにも取り扱いがあるなどという発想が全く欠けていたのでした。はずかし!
それにしても、よく日本でも……。「ウーヴァレン」、国内で作ったことある方いらっしゃるのかな……、お話伺いたい。あなたのウーヴァレンはどこから?
日本から失礼した話
というわけで返信を書きます。日本語にすると、
迅速且つ丁寧な対応をありがとうございます!
日本のサイトでも買えることを存じ上げませんでした。教えて下さってありがとうございます。
調査の結果、こちらのサイトで購入する方が簡単だということがわかったので、こちらで注文と支払いを済ませました。
従って、申し訳ないのですが、わたしの注文(注文番号✕✕✕✕)をキャンセルして頂くことは可能ですか。お手数お掛けします。
と、ここまでは普通に書きました。こんな情勢下でなければ、ふつうに決済できたのに! おのれプーチンめ……。
しっかし、「他サイトで買ったので、キャンセルしたいです」って、それだけ書くのもなんだかなあ……と思い、一点気になったことを、蛮勇にも、日本から失礼してみることに!
注文とは関係の無い、大変些細なことなのですが、「ウーヴァレン」の商品説明に関してです。
1862年、皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィチは、「9歳」と表記されていますが、実際には「19歳」です。
彼が9歳の頃、即ち1852年には、「ニクサ」という別の船が彼に与えられているはずです。わたしはこの船にも関心があります。
もしわたしの方が間違っていたらごめんなさい!
日本から失礼するゾォォォ!!!
実績解除: ロシアの企業に推しの説明に関する間違いを指摘する。
商品説明には、「ウーヴァレンは1862年、9歳の皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィチの為に建造された」という記述があるのですが、そこに関してです。
殿下は1843年生まれなので、1862年には19歳です。その点に関して、実は見つけたときからずっとモヤモヤしていたので、この際言ってしまえ! と行動に出てみました。
ドキドキしながら返信を待っていると……。
↑ 勝手に掲載するのも如何なものかと思い、こちらから送信したものだけ掲載していましたが、ちょっと嬉しすぎたので一行だけ掲載。
はい、仰る通りです。間違いの指摘をありがとうございました。あなたのロシア史への熱意を大変嬉しく思います。
ほ、褒められた……。確かに、熱意だけはある……とおもう……。書いて良かった……。
最後に、改めて感謝と、殿下(と彼の船)に関心がある旨をもう一度強調したメールを書いて、やりとりを終了しました。たぶん日本のオタク面倒くさ……と思われてると思います。スミマセン。
いやでも、是非、今後「アレクサンドル・ネフスキー」や「ニクサ」も作って頂きたいので……。少なくとも日本に需要が一件あるので……、宜しくお願い致します。
今後の展望
現在、手元に「ウーヴァレン」のキットが届きました。
わたくしは、高校時代に『アーマード・コア』にハマっていたので(そう! 世にも珍しい現役JKレイヴン/リンクスだったのだ!)、プラモデルや模型作成の経験は同作品のもののみ。ちなみに、ステイシスやハングドマンを作っていました。
↑ 初めてのプラモデル。いつ見ても美しきステイシス……。爪先の尖りたまらん(痛い)。
帆船模型は完全に初めてで、帆船に関しても、模型に関しても知識がゼロに等しいため、今後、ゆっくり勉強しながら組み立ててゆきたいと思います。
基本的には、「完成品が欲しい」「組み立てる行為自体を楽しみたい」という欲求よりも、「自分の手で創り上げることで、殿下が好み、操縦した船の構造を把握したい」という知識欲がベースになっているので、頭を使いながら取り組めたらと思います。
従って、完成は暫く先になると思いますので、気長に見守って頂けたらと思います! 経験者様からのアドバイス、大歓迎です。宜しくお願いします。
最後に
通読ありがとうございました! 4500字強です。
まさかこんなことになろうとは。わたしが一番驚いています。
しっかし、殿下が海や船が好きだったということは前々から存じていたにも関わらず、余りにもご縁がなかった分野すぎて、勉強が全く捗っていなかったので、ここで一気に知識を付けるチャンスを得られて大変嬉しいです!
falconet 様、丁寧な対応のみならず、素敵な商品をありがとうございます。制裁が解除された暁には、皆様も是非本店からご購入くださいませ。
それでは、今回はここでお開きとしたいと思います。また別記事でお目に掛かれれば幸いです。