世界観警察

架空の世界を護るために

シュツットガルトバレエ団『オネーギン』2024/11/03 - レビュー

 おはようございます、茅野です。

『オネーギン』ラッシュ継続であります。今回の上演では、限界オタクによる「原作を読め」という圧力啓蒙活動も功を奏しているのか、またフォーゲル御大の新しい解釈が原作により近くなったこともあってか、オネーギンを一方的に「クズ」と断じる言説が減ってきたように思います。喜ばしいことです。原作読もうね。

↑ 最も手に取りやすい岩波版。ロシア語の原文が如何に優れているかについてはこちらなどを参照のこと。

 

 本日もシュトゥットガルトバレエ団来日公演の『オネーギン』にお邪魔しました。2回目、11月3日マチネ回で御座います。

 

 昨日、初日のレビューはこちらからどうぞ。

↑ 初日からカッ飛ばして1万5000字強書いた。

 皆様も感想書いて送りつけてくださいね!!!!

 

 今回も備忘がてらこちらの雑感を記して参ります。

それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

 

 

キャスト

エヴゲーニー・オネーギン:フリーデマン・フォーゲル
タチヤーナ・ラーリナ:エリサ・バデネス
ヴラジーミル・レンスキー:アドナイ・ソレアス・ダ・シルヴァ
オリガ・ラーリナ:ディアナ・イオネスク
グレーミン公爵:ファビオ・アドリシオ
プラスコーヴィヤ・ラーリナ:ソニア・サンティアゴ
フィリピエヴナ:マグダレナ・ジンギレフスカ
指揮:ヴォルフガング・ハインツ
管弦楽東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

雑感

 今回も4階中央で。観やすくて助かります。昨日が満席だったとは思えないほど空席が目立ちました。

 

 今回は急なキャスト変更で、タマシュ・ディートリヒ監督がご挨拶に立ちました。まさかの主演が2人とも降板ということで、主演2人が昨日と全く同じキャストに。

主演予定だったお二人の健康を祈りつつ、色々なキャストを観比べたかったような、人気看板キャストが2回観られてお得なような、昨日既に1万5000書いたので、これ以上他のこと書けるだろうかという不安やら、複雑な心境でした。

 

 芸監のお話になった内容はまあ定型文という感じでしたが、この時は wonderful orchestra という発言に「どこがやねん」とか思っていました。

 

 芸監の登壇があったこともあり、今日も5分強押しての開始となりました。

 

 特に主演二人・群舞・オケは昨日と同じキャストなので、昨日と大体同じであるところは割愛します。昨日のレビューをご参照ください。

 それでは本編。 

 

第1幕1場

 今日はオリガ以外のキャストを皆1回以上観たことがあったので、オリガに一番注目していました。

 オリガ、最初にターニャを呼ぶときめちゃめちゃ優しそうで素敵でした。新国!! 見習って!!

本を取り上げる時も、「だってお姉ちゃん全然構ってくれないんだも~ん」というような末娘感満載で可愛かったです。

 

 ターニャはポルカの前、群舞から走って逃げるように上手後方のベンチへ。そんなに急がなくても間に合うよ~と思いつつ。バデネスさんのターニャは動きが機敏ですよね。

 

 ポルカ

オリガは動きが大きく華やかで、幸せそうです。ポーズではピタッと止まってくれるし、ジャンプも軽やかで、とても高評価。シンプルに愛らしいし。

投げキッスは昨日と同じくらいの軽い感じでした。投げキッスください!!!

 ポルカの後、「楽しかった~、でもちょっと疲れたかも~」というような伸びをするのも素敵でした。オリガが演技細かいのって珍しい気がします。とても良いと思います。

 

 今日はオネーギン登場時も拍手なし。やはり戦犯は斜め後ろのサクラであったか……。ドラマティックはそれでいいのだよ……。

 

 レンスキーのVa.。めちゃくちゃ回ります。5回転+3回転とかそんなのばっかりだった。独楽も驚いていると思います。

第2幕でも思いましたが、回転技お得意なんだろうな、とお見受けします。

 実際、2018年に観たときにも、

技量的にも、回転技が強いのか、安定感がありました。

と書いていたので、変わらずバランスに優れているのだろうと思います。

 

 PDD。

今日も上手前のコール・ド二人にオリガが合図を送っていました。本家シュトゥットガルトでは、ここはこういう解釈だったのか。勉強になります。

 身長差があまりないせいか、アン・オーで片手を繋いで回すところが何回か大変そうでした。特に初回は結構危なっかしかった。

 サポート付きのジュテなども少しバランスが崩れ、パートナーリングはもっと改善の余地がありそう。低身長レンスキー、流行っているのか?

 PDDの最後、オリガの手に頬を寄せるレンスキーはとても幸せそうでした。

 オリガの解釈も面白くて、まだ「おむつを脱いだばかりの」天真爛漫な少女なのに、PDDの直前には、今後の展開を予想しているかのように、少し憂いを見せたりします。確かに『舟歌』は短調だけれども、どういう解釈なんだろう。気になる~。

 

 オネーギン組。

随分歩いてくるのがゆっくりだな……と思っていたのですが、これは劇場の舞台の広さに依存する要素だな……! と思い至りました。ボリショイのヒストリカルステージなどでは舞台が広すぎるので、オネーギン歩くのめっちゃ速いですもん。そんなスピードで歩かれたらそりゃターニャついて行かれんって。

 今回のフォーゲル御大のオネーギンはちゃんとタチヤーナをしっかり待ってエスコートしてくれます。

 本を見てもオネーギンは笑いません。リチャードソンに理解のあるオネーギン。

 

 これは昨日も指摘しましたが、彼のオネーギンの解釈は大きく変わりました。

以前は、なんというか、「頭も顔もいいし人気者だけど、ちょっとイジメっ子気質なクラスの一軍男子エヴゲーニー君(16)」って感じでしたが、昨日・今日では成長し、「ノーブルでジェントルなオネーギンさん(22)」に進化。

 個人的には、「エヴゲーニー君(16)」はフォーゲル御大にしかない独自の味があって、これはこれで結構好きだったのですが、今回の方が原作準拠で、原作ファンとしては入り込みやすい役作りになっています。え~、フォーゲル御大の最新解釈、わたしは好きかも!

 

 アダージオの時も、表面的な愛想笑いではありましょうが、ちゃんと優しく微笑んでくれます。そう! オネーギンは体裁を繕える男だから!! そんな冷血ではないから!

 Va. で、4歩進む振りの後、オーボエがコケましたが、チェロは昨日と比べ格段によくなったと思います。

 

 ここで一旦オケの話をしておきますが、昨日と比べ、明確に改善しました。勿論、オペララヴァーにはお叱りを受ける点がありましょうが(特にペットとホルン)、昨日はなんだったのかというくらい、よくなりました。これであればわたしは及第点かと思います。なんだ、やればできんじゃん。

 でもホルンとペットは頑張りましょう。1幕最後でもコケてたし。

 

 昨日も「真に農奴のことを考えてくれているのはオネーギンのほうなのに」という話をしましたが、今日も改めて感じました。

 そもそも、オネーギンが地元の貴族たちに嫌われているのは、彼が自分の領地の農奴の境遇を改善したからです。

 当時と現在では経済のシステムが全く違うので、あくまで例えですが、わかりやすく現代風に例えれば、「この地域の地主たちは全員時給200円で農奴をこき使っていたのに、急に越してきたオネーギンは、彼らを哀れみ、自分の領地の農奴の時給を1500円まで引き上げた」というようなイメージです。そんなことをすれば、他の領地の農奴たちは、「オネーギン領の農奴は凄く待遇がいいのに、どうして自分たちはこんなに搾取されなきゃいけないんだ!」って怒りますよね。

 オネーギンは、原作によれば、経済学が得意なインテリゲンツィヤで、自分の領土の改革を上手く進めました。しかしだからこそ、ラーリナ夫人を初めとする近所の地主達は、勝手にそんなことをしたオネーギンのことが許せないのです。一揆が起こる蓋然性が高まりますし、譲歩してオネーギン側に合わせれば、自分の収入が減りますからね。

 オペラやバレエではこのことが全く伝わらないので、オネーギンへのヘイトが溜まりがちです。寧ろ、原作ファンとしては、オネーギンには適切な形で幸せになって貰いたいと思ってしまうんだけどな……、殿下、なんとかしてください!

 フォーゲル御大の最新解釈のオネーギン像は、こちらの「賢く優しいオネーギン」像に寄っているからこそ、このように感じるのだろうな、と思いました。

 

第1幕2場

 幕間演技パート。

上手から下手へ進むとき、後ろを振り返りながら歩くオネーギン。既に振り返るべき過去があるというのか。

 

 1幕2場では、タチヤーナの演技が昨日と少し違いました。

まず、今日は頬杖が片手だけでした。それから、フィリピエヴナに寝ているか確認される時、1回目は昨日と同じく「直立不動」体勢、2回目は右肩を下にして寝るふりをしていました。

 コミカル感は昨日の方が強く、そちらの方が好みだったかも。

 

 オクサーナのアリア А на белой шее~の部分(旋律としてはシー↘ミファソラシー↗と音階で上がっていく)から急にppになるのがわざとらしすぎますね。もうちょっと加減してほしい。

 シュトルツェ御大って本当に天才だなあと思うのですが、『オネーギン』でライトモティーフとして使われるオペラや歌曲の歌詞は、バレエの情景とリンクしていることが多いです。

 タチヤーナの恋心のモティーフとして現れるオクサーナのアリアの主題の歌詞が、タチヤーナと重なると切なくて! 彼女はオネーギンを想う時、鏡を見たり手紙を書きながら、このように歌っているわけです。

Какая дурнашка; Ах! кто, кто её полюбит, Ах! кто приголубит?
Кто меня такую, Кто приласкает, Кто приголубит?
なんて醜い娘なの、ああ! 誰が、誰が彼女を愛してくれるの、ああ! 誰が可愛がってくれるの?
誰がこんな私を愛してくれるの、誰が優しく抱き締めてくれるの、誰が愛してくれるの?

 「わたしだ!!!!」と言いたいところです(誰だよ)。

 

 昨日も思いましたが、鏡越しのキスが大分長めです。

 

 「鏡」

鏡の完成度は昨日よりも今日の方が高かったですね! それでもまだWBDの時の方が良かった気もしますが、これなら満足できます。

 サポートを外してターニャのバランスを魅せる際も、昨日よりもパッと手を離して「いってこーい!」ってしてましたし、昨日指摘した例のポーズで待っていてくれました。

 昨日、行き先を右手で示していないという話をしていましたが、今日確認したら、右手で脇をサポートして、両手を使っていたからですね。

ここのサポートは難易度が高く、片手で抱き込むのは技量が要ります。しかしフォーゲル御大はここの抱き込みサポートもとてもお上手だった印象があるので、今回は大事を取っているということでしょうか。控えキャストももういなさそうだし……。

 

 一方で、ここは夢の世界の中なのに、二人とも平時との演じ分けが弱く感じられるかもしれないな、とは思いました。

 これは、ターニャの方では、バデネスさんのターニャは割と「夢見る夢子」成分が強く、平時でもオネーギンを見ては笑顔でいることが、演じ分けの要素を減らしていると考えられます。

 夢の中でも、オペラの歌詞のように「陶酔」しているのではなく、あくまで「うれしい! たのしい!! しあわせ!!!」というオーラを解き放っています。

お手紙の内容も、И суждено совсем иное?.. (それとも別の運命が待っているのかしら……?)とかではなく、太い筆でЯ!! ЛЮБЛЮ!! ТЕБЯ!!!!!(私は! あなたが!! 好き!!!)って書いてそう(偏見)。

 

 オネーギンの方では、前述のように、フォーゲル御大の解釈が大幅に変更され、現実世界でも優しさのあるジェントルなオネーギンに変化したことが原因です。

以前の少年エヴゲーニー君スタイルでは、平時は冷笑的で悪戯っぽい解釈であったので、夢の中との演じ分けが顕著でしたが、今回は平時でもかなり優しい解釈に変わっているため、この解釈では、「鏡」の方を更に王子様風に変更していく必要があると考えます。

バランスの問題ですね。

 

 夢から覚めた後、ダンサー側が「時間が無い」と学んだのか、全ての動作をテキパキ行うようになりました。本当はもっと余韻が欲しいけどなあ~。音楽との合わせも、昨日よりはマシでしたが、しかしここはやはりオケがしっかり減速してあげるのがよいのだと思う……。

 

第2幕1場

 休憩を挟みまして第2幕。

 

 ナタ・ワルツ。

第一主題の最後のファゴットのファ↘ミ↘ラ、に合わせてレンスキーに軽くお辞儀をするオリガ! 可愛いです。今日可愛いしか言ってないな。ここのオリガの振付がお辞儀だったことに初めて気付きました。ただリズム取っているだけかと思っていた。

↑ わかりやすいように楽譜を出そうと思ったら、まさかの音が違うっていうね。でも音型としてはここです。いいからはやくスコア譜出版してくれ~~。買うから!

 

 登場時、昨日よりも真っ直ぐ前に歩いてくるオネーギン。右に左にとうろうろしません。ほぼ真っ直ぐ。

 テーブルの方に付いてから初めて手袋を脱ぎ始めます。

 

 ナタ・ワルツ主題3回目が始まる前に片手アン・オーでポーズするレンスキー×オリガペア、これも素敵でした。ここは普通に社交ダンス風の組み方するのがデフォルトだと思っていました。

 

 恋文破り。

昨日、「オネーギンはターニャの名誉を守るために彼女の恋文を破ったのではないか」というアクロバット擁護をしました。今回は、どうしてそのような印象を得たのか、今回観察してみることにしました。

 まず、オネーギンはターニャと二人きりになった後、彼女に会釈します。そして少し一緒に踊った後にも会釈をしています。ここから、彼女に十分な敬意を払っていることが窺えます。

 また、群舞が去ったとき、「もう(踊らなくて)いいですよ」というように彼女に手で合図する動作が優しく、悪意がないことを窺わせます。

 彼女に手紙を返そうとするとき、最初の2回は、2回とも諭すように丁寧に返そうとしています。それを受け、ターニャは肩を揺らして号泣。その時初めて少しイラッとしたようで、恋文破りをする、という解釈になっていました。

 手紙を破った後も、肩に手を置く時も、優しく「もうこんなことしたらダメだよ」と諭すような感じに変化。

 しかし、それで彼女が傷ついていることに気が付いて、最後振り返る時も、自己嫌悪なのか結果に対してか、「あーあ」という表情になっていました。

 これらを総合して、「彼女の名誉を守るために手紙を破ったオネーギン」という印象になったのだな、と分析します。

 一部のジェントル・オネーギンは、王子様スマイルのまま手紙を破ってくるのでサイコパスみたいで怖いのですが、フォーゲル御大の最新解釈のオネーギンは、ジェントルながらも極めて自然で、これは凄くいいなと感じました。どの瞬間に何を考えているのかが伝わります。

 

 グレーミンの登場時にコケるホルン。祖国戦争負けそう。モスクワだけじゃなくてペテルブルクも燃えそう。

 

 これはオリガの引っ張られ方にも起因すると思いますが、オネーギンがオリガをカードゲームに誘うときは、昨日の方が引き留め方がスマートでしたね。

 そしてこれは昨日も思いましたが、ゲームの勝敗にもっと時間を割いて欲しいです! 2回ともオリガが勝っているんです。オネーギンはオリガを気持ちよく勝たせてあげられる、エスコート界の神だということを我々に教えて欲しい。

 

 今回は昨日と比べて、ポルカでの動きにも変化があります。オネーギンはレンスキーと腕をつかみ合うし、レンスキーをしっかり明確に押しのけています。

 また、最後のポーズでは後ろで手を組んでいました。これもフォーゲル御大の特徴なのですが、彼はあまり後ろに手を回さないんですよね。オネーギンは、尊大に後ろに片手を回して歩く人が多いので、これをしないことも、ジェントルな印象を受ける要因になっていると思われます。

 

 ターニャのVa.は昨日しっかり観たので、今回は後ろのレンスキー組を観ることにしました。

ふてくされるレンスキーの裾を引っ張って気を引くオリガが愛らしすぎました。レンスキーに内緒話をして、ハグして、仲直り。可愛い。

 正直に言って、オリガとグレーミンに関しては、誰がやってもある程度一緒であろうと思っていましたが、演技が細かいのはどのキャラクターであっても好感度が高いです。好きかも! オリガに関しては、わたしは昨日のブラウンさんより今日のイオネスクさんの方が好みですね。

 

 レンスキーを思いっきりはねのけるオネーギン。昨日より凄く当たり強くない?

一方で、レンスキーは棒立ちすぎます。リマさんのレンスキーなんかこの時完全に過呼吸起こしてるぞもっと演技をして欲しいところ。

 2018年に彼のレンスキーを観たときのログを引っ張り出してみたら、

オネーギンが煽っても溜め息ばかり。もっと怒っていいんだよ〜〜〜!!!と思って観ていました。呆れる程度では決闘までの短い時間に説得力がない気がします。

と書いていたので、当時からそこまでの変化はなさそうです。

 

 5拍子のワルツ。

オネーギンがちゃんとドゥミ・プリエ+アラベスクでポーズしてくれるのが良いと思いました。

オネーギンに首を触れられる前、オリガが回転で少し目が回ったかのような演技を入れていたのが印象的でした。丁寧な演技が入るオリガ、素晴らしいですね。

 

第2幕2場

 幕間演技パート。

昨日同様、ここでオネーギンは既に頭を抱えて動揺しています。しかし、「仕方ない」というように顔を上げ、左手で右の頬を触れていました。ちょっと官能的な所作。でもオネーギンっぽくていいと思う(?)。

 

 元気で威勢の良いレンスキー。

前述しましたが、回転技が強いです。ピルエットめちゃめちゃ綺麗で安定感がある。

 片膝立ちでうずくまるシーンでは、両手をベタッと床に付け、激情的な絶望を表現します。

 やはり、左右反転しがちなレンスキーのVa.。今日は昨日とは反対に、下手から上手へ斃れるような向きになっていました。

 今日は弦のソロがよかった! 邪魔をしなかったし、なんなら酔えたくらい。

 

 姉妹の登場。

 姉妹のお衣装は、オリガが緑でタチヤーナが青ですよね。たまに反転している時ありますけど。レンスキーのお衣装が緑ベースなので、オリガも緑の方が揃っていてわかりやすいと思います。

 背中を向け、両手を空に突き出す振りでは、プリエ入り。そうだった~~、シルヴァさんのここはプリエ入りなんだった。レンスキーお衣装緑だし、カエルっぽくてどうか……と思っちゃうのだが。なくてもよくない?

 

 本日もオネーギンの太腿叩きは絶好調。絶対痣なりますよ。ところで、オネーギンはマント投げ捨てるの上手すぎます。今日は特に上手かった。

決闘時、昨日よりは木陰より見えましたが、まだ前に出て貰っても大丈夫ですね。しかし今日は、そんな位置取りの話以前に、構えてから撃つのが速かった! 照準も合わせず、一瞬で撃った! 無課金おじさんもビックリである。スナイパーオネーギン。

……しかしそれはもしかしたら意図的であるかもしれないですね。

 

第3幕1場

 この時から(?)、場内アナウンスで「上演が終わるまで拍手はお控えください」と入るように。クレーム入ったのかな。

 

 ポロネーズ。ペット~~!!! オペラ版でこれをやったら大爆死でしたよ……、命拾いしたな……、いや、『チェレヴィチキ』だったらテキトーやってもいいと誤解されてもイヤなんで、許しませんけど……。

 

 文化会館の舞台で、これだけ複雑なフォーメーションを動くのは大変そうです。今日は、特に最後のポーズで左側前から3組目のペアなんかは移動が多くて大変そうだな~とか思って観ていました。

 

 PDD。

 今回改めて確認しましたが、やはり見間違いや一回限りの演技ではなく、フォーゲル御大の最新解釈のオネーギンは、女性に席を譲るために席を立ちます。本当にノーブルでジェントルでアンニュイなオネーギン像になっている……! わたしこの解釈好きかもしれません。

 

 グレーミンは昨日よりも線が細く、厳めしさがあるタイプの「威厳」を実装していました。

 それにしても、バデネスさんの3幕1場ターニャは、心底嬉しそうです。歯を見せて笑っています。オネーギンのことなんぞ全く覚えていないかのようですし、現実世界を満喫しているように見えます。

 今回の上演では、オネーギンがとても優しいこともあって、ある意味で二人の解釈の相性が悪いように感じられます。ターニャの心からの幸福が、元はといえば「彼女をスキャンダルから救おうとした」オネーギンを苦しめるよな……。

 

 オネーギン、走り去る前は昨日よりも右往左往し、4-5回くらいウロウロしました。しかし最後に左右を見てかぶりを振ることはなく、そのまま走り去りました。

 

第3幕2場

 幕間の演技。

今日もオネーギンはレンスキーを撃つのが遅く、レンスキーの方が先に斃れます。

 実際の決闘では、オネーギンは構えたと思った瞬間速攻で撃っていたので、回想とは異なります。ただ、いずれにせよ、オネーギンがしっかり照準を合わせていないというのがポイントで、これはフォーゲル御大なりに「殺意がない」ことを示しているのかもしれません。或いは、「自分がやったことを信じたくない」という願望の表れか。

 

 「手紙」。

3幕1場でも似たようなことを考えていましたが、バデネスさんのタチヤーナにとって、オネーギンは、あくまで「黒歴史の象徴」なのかもな……と感じました。「彼との恋に走るべきか」という葛藤が面白いくらい見えない。

 それは、例えばこの間のジルベールさんのターニャのように、本心を表に出さない「氷の女王」タイプであるからではなく、昨日も指摘した、彼女が「既にグレーミンとの子供がいる」という解釈で演じているからに他ならないのだと思います。

 

 改めて思いましたが、こういう話をして恐縮ですけども、しかし時代考証的に考えても、やっぱりドストエフスキーが「ロシアの聖女」と崇めたタチヤーナ・ラーリナは処女だと思いますよ。

 だからこそ、「純潔の1820年代の聖女タチヤーナ」と「欲望で穢された1860年代の聖女ソニヤ」の対比が効いてくるのだし、「性行為も無しに夫に貞淑を誓うタチヤーナ・ラーリナ」と、「子供もいるのに若い男に走るアンナ・カレーニナ」の対比が効いてくるわけじゃないですか(原作では公爵の苗字が明かされないのも対照的だ)

ここはやはりロシア文学史の観点からも、意識されているように思うんですけどね。

 

 たまに、「原作文学とバレエは分けて考えるべきだ」と言われることもありますが、しかしモスクワでは原作通り3幕でもオネーギンは26歳という設定で演じられているし、それであればターニャも純潔という解釈を取られていると思うんですけどね。

それは寧ろ、振付家や観客ではなく、カンパニーやダンサーの裁量に委ねられている気がします。

 「子供がいる」という設定であれば、バデネスさんの演技はそれを巧みに表現していると思うのですが、個人的にこの解釈そのものがわたしと解釈違いであるため、その点で入り込めない側面がありました。もっとオネーギンに心揺さぶられて欲しいよ~。フリーデマン・フォーゲルのエヴゲーニー・オネーギンだぞ!? 寧ろどうして揺れない!?!

 

 サビ(?)手前で大きく減速。木管、特にフルート、頑張ってくれ。オケは最後のほう力尽きていた気がします。話が前後しますが、最後はジャン!と歯切れ良く終わるタイプ。

 また、主演二人も、流石に3幕2場はお疲れの様子でした。細かい演技も昨日の方が多く、細部は昨日の方が良かったように思います。

 一方で、『オネーギン』3幕2場はこのような「疲れ」が見えてもある程度許容される側面もあります。何故なら、作中では10年の時間が経過し、二人は精神的にも切羽詰まっているからです。

 

 オネーギンは恋文破りの前、優しく手をほどかれた時点で、もう既に結末を悟っているようでした。2幕1場で行った分析や、バデネスさんの解釈のこともあり、わたしは今日はオネーギンに感情移入してしまい、心底「可哀想だなあ」と思ってしまいました。殿下、早く余計者を救ってあげてくれ……。

 

 

 昨日書きそびれましたが、カーテンコールはバデネスさんのお辞儀が物凄く深くて好印象ですね。もうそこまで行くとストレッチの域。

 

 こんなところでしょうか?

 まさかの2日連続で同キャスト! しかし、彼らの新たなる解釈に触れ、しっかりと分析することができたので、個人的には満足です。

 全体的には、昨日よりも今日の方が上演の質が高かったように思います。有識の相互さん曰く、「昨日はフォーゲル御大目当ての熱烈なファンが多く、客席からの "圧" に、彼は少したじろいでしまったのではないか」と予想していました。それ、あるかも。多くの観客の目は血走っていたと思うし。今日は代役ということで、ある意味伸び伸び踊れた側面があったのかもしれませんね。

 正直に言って、昨日は「このキャストであっても、こんなものか」みたいな気持ちが多少ありました。しかし、今日は酔うことができたので、満足しました!

 それから、今日はオリガがとても愛らしくて好みでした。これまで観てきたオリガの中でもトップクラスかも。ご本人には申し訳ないけれど、まだ暫くターニャではなくオリガをやっていて欲しい。

 フォーゲル御大の新解釈、とても良いですね。わたしは気に入りました。もう少年スタイルが観られないのかと思うと少し寂しくもありますが……。またこの解釈で観たいですね、是非上演して欲しいところです!

 

 以上!

 

最後に

 通読ありがとうございました。1万字強。連日同じキャストでも5桁書けます、任せてください、オタクですから!!

 

 本当は今日パンフレットも読んでこれについても書きたかったのですが、明日もあるし、5桁乗ったし、眠いので、明日以降にしておこうと思います。

 

 いよいよ明日が千秋楽! 早すぎませんか!? もっとのんびりあと365日くらいやってもらっても大丈夫です!!

 というわけで、次回は千秋楽レビューの予定です。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです!