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映画『新章 パリ・オペラ座』 - レビュー

 こんばんは、茅野です。

人生の指針の一つとして、「迷った時は活動量が多い方を選ぶ」ことにしているのですが、このことによって、基本的には物事が好転することが多いものの、余計なことに首を突っ込んで自爆することもしばしば。

皆様は迷った時は何を基準に物事を決断していますか?

 

 さて、今回は映画新章 パリ・オペラ座』を鑑賞して参りました。パリ・オペラ座バレエ団のコロナ禍に於けるドキュメンタリーですね。

↑ 短く手軽に観られました。

 

 本日が上演最終日とのことで、最終上映を観て参りました。しかも遅刻ギリギリで駅から走ったので、文字通りの「駆け込み」で御座います。いつも余裕などない。

 

 というわけで今回は、この映画の雑感を簡単に記してゆきたいと思います。

それでは、お付き合いの程よろしくお願い致します。

 

 

主な出演者

アマンディーヌ・アルビッソン

リュドミラ・パリエロ

パク・セウン

マチュー・ガニオ

ジェルマン・ルーヴェ

ユーゴ・マルシャン

ポール・マルク

オレリー・デュポン

監督:プリシラ・ピザート

 

雑感

 「オペラ座かー、じゃあ、取り敢えず行っておくか」という軽さで出向いたので、事前情報はほぼゼロでした。
基本的には『ラ・バヤデール』の練習風景が収録されています。

 

 何に驚いたって、昨日投稿したオペラ『サムソンとデリラ』のレビュー記事にて、『ラ・バヤデール』について触れたばかり。
しかも、エトワール任命があってメインのひとつに据えられていた「黄金の仏像」のことです。

↑ 暴力的なまでの、最高の名演であった……。

そんなことあるんだ……。

 

 正直に申し上げて、『ラ・バヤデール』は苦手な演目。『海賊』なども含め、バレエの「なんちゃってオリエント」が全く好きになれないのです。なんと言うか、「THE・西洋の偏見」みたいなのが、ちょっと……。
 『ライモンダ』などは、ストーリーはさておき(あのストーリーが好きな人って実在するんですか?)、グラズノフの素晴らしい音楽が大好きなのですが、ミンクス……うーん……。
 第 2 幕(?)の「白のバレエ」に関しても、確かに美しいのですが、息のあった幻想的な群舞が見たいのであれば、『ジゼル』や『白鳥』で事足りるし……、と、基本的には敬遠している作品です。
 従って、『バヤ』かあ……、と少し落胆する気持ちもあったのですが、こういう機会でもないと観ないので、それはそれとして新鮮でした。

 

 というか、ヌレエフ版の『バヤ』二幕の書き割り、緑豊かすぎません? 確かにインドには湿潤な雨林が多そうですけれども……。

オペラ座はほんとうにヌレエフが好きですね……。伝記バレエ『ヌレエフ』は結局どうなったんだ……(それは他バレエ団ですが……)。

 

 「オペラ座のダンサーってあんまり詳しくないぞ。知ってる人どれくらいいるかな?」と思っていたら、エトワールは殆ど知っている方々で逆に拍子抜け。

皆『オネーギン』をレパートリーに入れてるじゃないですか! どうもありがとうございます。

マチュー・ガニオ氏のオネーギン、アマンディーヌ・アルビッソン氏のタチヤーナ、ジェルマン・ルーヴェ氏のレンスキー。

マチュー・ガニオ氏のオネーギン。

↑ ユーゴ・マルシャン氏のオネーギン、ドロテ・ジルベール氏のタチヤーナ、ポール・マルク氏のレンスキー。

 わたくし、『オネーギン』という作品を熱烈に推しているもので、寧ろ『オネーギン』しか観ていないとすら言えるような状況なのですが、皆様がこの作品を愛し出演してくださるのは大変に喜ばしいことです。

また観客の前で『オネーギン』踊って下さい宜しくお願い致します。

 

 最後にエトワール任命があったセ・ウン・パク氏のターニャは残念ながら拝見したことがないんですけれども、演技派である彼女のターニャは非常に評判がいいので、是非とも拝見したいところ。ジュリエットも大変良かったですね。ドラマティックがお得意なのかな。
 というか、任命そんなに最近のことでしたっけ? もっと前かと思っていました……。

 

 ダンサー達が、「自己表現の手段として」踊りを捉えているのが印象的でした。

わたくしも文字書きを自己表現の手段として好んでいるので、表現方法は違えど大変に共感できます。

表現それ自体は、勿論一人でも可能ではあるのですが、それだと張り合いがありませんし、モチベーションも上がりませんし、フィードバックが得られず成長が阻害されますよね。


 女性のクラスはオーレリー・デュポン氏自らが指導しているんですね。贅沢だ……。

最近の辞任劇は一体全体何があったというのか。オペラ座に限らず、芸術監督になると、トラブルや忖度や……というような、非常に「政治的な」問題に直面するので、非常にストレスフルであると伺っております。

ボリショイ・バレエ団のセルゲイ・フィーリン氏の硫酸事件がいい例ですね。心身共に健やかに過ごして頂きたいものです。

 

 当然といえば当然なのですが、レッスンもフランス語。バレエ用語がフランス語なので、自然で大変良いですね。既に固有名詞化してしまっているので、慣れの問題で他言語でも差程は気にならないものの、やはり「原語」というのはよいものです。

一昨日フランスオペラを観たばかりですし、フランス語を浴びる機会が多くて嬉しいところ(※一応フランス語専攻)。

 

 『オネーギン』公演のときも思っていたのですが、オペラ座の演目広報めちゃくちゃオシャレですよね。だいすき。

↑ フランス語での『エヴゲーニー・オネーギン』は、≪ Eugène Onéguine ≫ と綴ります。アクサンの位置と向きに注意。ファーストネームは「ウジェーヌ」と発音します。覚えて帰って下さい。

他の演目も同じ形式(?)なのですね。シリーズ化できそう。素敵。

 

 我々観客にとっては、エトワールやプリンシパルは雲の上の存在なので、プライベートの話が出てくると驚きます。

演者が舞台の上で輝くことだけが観客にとって肝要であり、それだけが彼らの仕事なのであって、個人的には、日常などは寧ろ見たくない派なのですが。プライバシーの権利を守って参りましょう。
 それにしても、エトワールも普通にアパルトマン住んでるんだ……と思うと、急遽現実感があると申しますか。相手も人間だなと実感するというか、複雑な気持ちになりますね。

 

 所謂「糠喜びシステム」というか、公演を行うとなってからキャンセルって一番辛いですよね。劇場にはよく通うので、気持ちは大変よくわかります。

伝統ある同劇場が、末永く繁栄することを願って。

 

最後に

通読ありがとうございました。短く、3000字ほど。

 

 Google は、わたしがパリに住んでいると勘違いしているらしく、最近はパリ・オペラ座の公演チケットが新たに売り出されると必ず通知を出してきます。何故。
 ちなみに、わたくしはWikipedia の編集も行うのですが、Wikipedia にはアラブ人だと思われているらしく、アラビア語でメールが来ます。何故。日本語、英語、フランス語のページしか編集したことないのに!

 

 各劇場、そろそろ新シーズンが始まる頃合いですね。パリ・オペラ座は、今シーズンはオペラもバレエも『オネーギン』はありません。悲しい。

しかし、前衛的に新作を上演し続けていく同劇場の姿勢は賞賛に値するものです。是非とも今後も頑張って頂きたいですね。


 それでは、今回はここでお開きとしたいと思います。また別の記事でお目に掛かれれば幸いです。