こんばんは、茅野です。
ふと思い立って、先日はてなブログの「グループ」なるところにお邪魔してみたのですが、未だ役立て方がよくわかっておりません。ブログ歴何年目だって話ですね。突っ込んだら負けです(高校生の頃から書いているので、ろ、6年強……!? そんなばかな……)。
さて、本日は我らが新国立劇場上演、バレエ『コッペリア』にお邪魔しました。初日、2月23日の回で御座います。
なんだかバレエを観るのが久々なような気がしたのですが、確かに1月は何も観ていませんでした。一ヶ月観ないだけでこんなにも久々な感じがするものか。(ちなみに12月に観ていたものはこちら)。
そんなわけで、なんとなく新鮮な気持ちで楽しんで参りました。
今回はこちらの公演の簡単な感想を記して参りたいと思います。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!
キャスト
スワニルダ:小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之
指揮:マルク・ルロワ=カラタユード
演奏:東京交響楽団
雑感
今回は4階席中央です。舞台を観るにはとても良い席ですが、オーケストラピットが全く見えないのが玉に瑕。
先日も初台(オペラシティ)のコンサートに出向いていて、そちらもとても楽しかったので、演奏者が見えないことに殊更寂しさを感じつつ。
↑ 『マンフレッド』! プレトニョフの『マンフレッド』ですよ! 爆音キンキラキンですよ!(?) まだ公演ありますので、是非行って!
後輩ちゃんを連れてお邪魔してました🏃
— 茅野 (@a_mon_avis84) February 22, 2023
最近中世ロシア史をやりながら、「なんでこんな難儀な地域好きになったろう……」と思っていたけど、"これ"のせいですわ。そう。 pic.twitter.com/xTDNDeTwBW
↑ 雑感連ツイート。
そしてまたしてもオペラグラスを忘れる粗忽者で……。何をやっているんだか……。
プティ版は断片的にしか観たことがないので楽しみにしていました。
灰色のセットに、黒いお衣装のコッペリウス・コッペリアと、モノトーンカラーです。
第2幕は少々ホラーテイストで知られます。コッペリウスの館、普通に怖いです。
確かに、原作の E. T. A. ホフマンの『砂男』はホラーテイストなので、ある意味原作返りをしているのでしょうか。
↑ バレエとはあんまり似つかない原作。
パンフレットに、「ドールハウス風」という記載があり、合点が行きました。しかし、それならば、それこそもう少しカラーリングはカラフルでも良いのでは。女児が寄り付かなそうなドールハウスだ……。
一方、スワニルダ及び彼女の友人たちは薄桃色のお衣装で愛らしいのが、ホラーテイストなセットに対して良いアクセントになっています。
振りも超絶技巧で押すようなことはなく、基礎的なもので、逆に素地が問われます。
スワニルダ達のコケティッシュな振り付けは若さを感じさせ、どの作品よりもティーンエイジャー感があるかもしれません。
プティ版のスワニルダは、強気な感じよりも、おませな感じがしますよね。ポスターにもなっている、片膝をくねらせたような特徴的なポーズが良く似合う(冒頭画像・サムネイル参照)。
スワニルダは、第1幕から、アラベスクのキープの安定感が尋常ではなく、振りは愛らしいながらも、体幹の強さを感じさせます。そのキープ力から来る第2幕の人形振りもお見事。人形振りはぴたっと静止することができないと、全く映えませんからね。
ダンスは、一見激しい動きばかりに目がいきがちですが、一番難しいのは、厳密な静止であると感じます。
フランツ役は、当日になって急遽降板でキャスト変更。最近新国バレエは怪我や降板が多くて心配です。
ファンの間では公演数が増えたのが原因ではないか、と噂していますが、真相はどうなのやら。いずれにせよ、何事もないとよいのですが。
そんなフランツですが、突然キャスト変更になったとは全く思えないです。勿論、別日にフランツ役を踊る予定であったこともありますが、スワニルダとのパートナーリングもばっちり。
ぴっちりと肌に張り付くようなタイプでもないワイシャツ風お衣装でも、背中の反りがよくわかり、精悍な印象を受けます。
ダイナミックで舞台を大きく使うのも上手いし、本キャストの演技を観ていないのでなんとも言えないものの、寧ろ福岡さんで良かったのでは……と思うほど(渡邉さんファンの友人は「楽しみにしていたのに〜!」と悲しんでいましたが……)。
これは女性が演じるというのでは考えられない振り付けだと思いますね。しっかり男性用です。
第1幕最後の壁登りが凄い。「サンドマン」ならぬ「スパイダーマン」。
『コッペリア』も、ストーリー自体は単純で、第1幕と2幕の後半はほんとうにストーリー進みませんよね。その分、踊りの魅せ場が多いのでよいのですが……。
全幕を通し、幕が上がるのが非常にゆっくりで、左右に開けるタイプ。この開け方だと、何となく、原作が文学である感じがします(?)。いいですね。
プティ版は、セットの影響も大きいのでしょうが、舞台が農村ではなく街になっているのが特徴です。群舞も、男性は軍人さんです。頬を擦り合わせる振りが可愛い。
先日丁度、19世紀のポーランド(ロシア帝国領)の修道院改革について書いていたので、開幕早々、「やはり彼らはカトリック教徒なのだろうか……どのような主義を信奉しているのだろうか……自由主義者なのか、ポーランド独立を目指しているのだろうか……」と、余計なことばかり考えてしまいました。
しかし、公式サイトを見てみると、舞台はマルセイユに翻案しているのですね! 道理で……。
終始「小洒落たフランス!」という雰囲気があり、多くの民族舞踊があるにも関わらず、その謂わば「フランスの都会感」が崩れません。マズルカ、チャールダッシュ、スペイン舞踊、スコットランド舞踊の中にも、「フランス感」が染み込んでいます。
そのせいで、作品を通して統一感はあるものの、少しメリハリに掛けるというか、物足りなさのようなものも感じるかもしれません。
この版の最大の特徴の一つとして、コッペリウスが燕尾服を纏っていることが挙げられますが、燕尾服のデザインが明らかに19世紀後半のものですよね。
従って、原作の19世紀初頭のドイツや、バレエ版の舞台となっているポーランドではないな、ということが伝わります。舞台が変更になっただけではなく、時代も19世紀末に翻案されているのかな? と感じました。
マズルカは19世紀には社交ダンスの定番になっており、ポーランド以外でも踊られていましたし、当演出のコッペリウスは、服装などからして、「バレエ大好きパトロンおじさん」とお見受けしますので、彼の趣味でコッペリアにスペイン舞踊とスコットランド舞踊を踊らせる、という認識で宜しいのであろうか。
演奏に関してですが、いや、東京のバレエ公演でまともな音楽を奏でてくれるのは新国立劇場だけです。ほんとです(某『白鳥』を相当根に持っている)。今回は特に大変素晴らしい。
『コッペリア』は、ポーランド舞踊を中心に、「THE・ダンス・ミュージック」という曲が多いです。
従って、チャイコフスキーなどとは異なり、演奏だけでも楽しめるもの、というよりも、舞台あっての音楽であることを感じ、主張は強すぎない印象です。とにかく踊りとの相性が良いです。
ところで、序曲前や第二幕暗転後の手回しオルガン的な音は何をどうやって演奏しているのでしょうか? オケピを見た方、何が起きていたのか教えて欲しいです……。
演奏は総じて高水準ですが、やはり MVP はトロンボーンですよね、マズルカの! 『コッペリア』序曲、聴く度に「ばかなの?」と思います、はい。あのイジメみたいな(?)鬼畜パートをよくぞやってくれました。素晴らしい。オケピ覗きたかった。
↑ レオ・ドリーブ、トロンボーンとチューバに一体全体何の恨みがあるのか。
結婚式なのに衣装替え無しのフランツ。1幕から着た切り雀状態に。なんかカッコイイお衣装用意してあげてくださいよ。
結末はやはりホラーテイスト。お人形がバラバラになっちゃうの怖い……。
確かに、実在の女性に似せたお人形を作っているのは「キモい」のですが、迷惑にならないように勝手にこっそりやっているのに、当人となるカップルはともかく、野次馬的な街の人々にまでバカにされて全てを破壊されるの、なんか可哀想ですよね、と思ってしまうのは、わたしがコッペリウスに甘いのでしょうか。如何捉えられますか。
プティ版の『コッペリア』は、お衣装などは19世紀末風ですけれど、ストーリーや描き方がモリエールみたいですよね。非常識的な人を揶揄するのは、正にモリエールの Comédie 。フランスのエスプリは脈々と受け継がれている、ということなのでしょうか。
主演二人を始め、演奏も申し分なく、仕合わせな気持ちになれる公演でした!
祝日ですし、客席にはお子様も多く。喜劇ですから、誰にでも勧めやすい演目です。コッペリウスの最後は、少々切ないですけれどね。
最後に
通読ありがとうございました。4000字ほど。
レビュー執筆には苦手意識があるので、すぐに脱稿できてよかったです。バレエは比較的書きやすい、気がします。
私事ですが、ほんとうにわたしが小学生低学年くらいの幼い頃、何故か知りませんが、父がわたしからの着信音を『コッペリア』の「祭りの躍り」にしていました。
↑ この曲です。確かに出のインパクトは群を抜いている。
今はスマホの時代になり、通話も LINE などを使いますから、個別の着信音設定なんて文化も無くなってしまって、少し寂しいですよね。父は、今でもこの曲のイントロを聞くと、「早く電話取らなきゃ!」と焦るらしいですが、わたしも釣られてこの曲を聴くと何となく焦ります。刷り込みって恐ろしい。
『コッペリア』、音楽大好きです。
それでは、お開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです!