世界観警察

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アルベルト憲章(1848) - 翻訳

 

 おはようございます、茅野です。

今回は、弊ブログでは初めてとなる憲法の翻訳です。初めてなので、至らない点があるかもしれません。又、当アルベルト憲章は勿論原文はイタリア語ですので、英語からの重訳です。誤訳があったらすみません。

 訳語は原則的に『法令用語日英標準対訳辞書』準拠です。それでは、宜しくお願いします。

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 カルロ・アルベルト、神の恩寵により、サルデーニャキプロスエルサレムの王、キアブレーゼ、ジェノヴァ、ピアツェンツァのサヴォイアジェノヴァ、アオスタ公、ピエモンテ、オネグリアの王子、イタリア、サルッツォ、イヴレア、スーザ、マロ、オリスターノ、チェザーナ、サヴォーナの侯爵、モリアナ、ジュネーヴ、ニース、タンド、ロモン、アスティ、アレクサンドリア、ゴセアーノ、ノヴァーラ、トルトーナ、ヴィジェーヴァノ、ボッビオの伯爵、ボーとフォシニーの男爵、ベルチェッリ、ピネロロ、タランテーズ、ロメリナとセージアの谷の君主、などなど……。

 

 王の忠誠と父の愛情をもって、国中を未曾有の出来事が襲うなか、状況の重大さに応じてどれほどまでに臣民への信頼が高まったか、そして如何にして心の衝動にのみ耳を傾けてきたかを表明し、我々は、その条件を時代の精神と国家の利益と尊厳に適合させることを完全に決意し、本日、我々が公布した2月8日の宣言で最愛の臣民に約束したことを、すべて実行するものである。

 

 我々は、同憲章に基づく広範且つ恒久的な代表制度が、王権と、十分な忠誠、恭順と愛を証明した臣民を結びつけ、永続的な紐帯を構築すると確信し、同憲章を承認し、発布することを決定した。我々は、同様に、神が我々の公正な意図を祝福し、この自由、強大、且つ、幸福に満ちた国家が、古来からの名声に値する、栄光の未來を示すことを確信する。

 

 従って、我々は、全知識と王権をもって、又、評議会の意向に従い、永続的で撤回不能な欽定憲章を以下のように制定し、宣言する。

 

第一条 ローマ・カトリック教は国家の唯一の宗教である。現存する他のすべての宗派は、同憲章に準拠する形で許容される。

 

第二条 国家は代表君主制政によって統治される。王位はサリカ法典に基づいて継承される。

 

第三条 立法権は王と二院、即ち元老院と代議院が協同して行使する。

 

第四条 王は神聖であり、不可侵である。

 

第五条 行政権は王一人が保持する。王は国家元首であり、陸海軍のすべてを指揮し、宣戦布告、平和条約、同盟条約、通商条約、その他の条約を締結し、国の利益と安全が許す限り速やかに両院に通告し、適宜説明を付す。財政債務或いは領土の変更を伴う条約は、両院の承認を得た後でなければ効力を持たない。

 

第六条 王は全ての官職の任命権を持ち、法の執行に必要な規則を発布し、その遵守を中断、免除することはない。

 

第七条 王一人が法を裁可し、公布権を持つ。

 

第八条 王は恩赦を与えることができる。

 

第九条  王は毎年両院を招集する。王は、会期を休会し、代議院を解散することができるが、後者の場合、4ヶ月以内に新たな代議院を招集しなければならない。

 

第十条 王と二院は、立法権を持つが、課税、国家予算に関するすべての法案は、最初に代議院に提示される。

 

第十一条 王は出生より18年目の年を全うした際、成年に達する。

 

第十二条 王が未成年である間は、近親の大公が、王位継承順に、21歳以上であることを条件に摂政となる。

 

十三条 王が未成年であり、且つ摂政権を保ちうる大公も未成年で、摂政権が更に遠縁の親族に移った場合、摂政は、王が成人に達するまでその職に就くものとする。

 

第十四条 王に男性の親族がいない場合、摂政権は王母に与えられる。

 

第十五条 王母が先に薨去した場合、摂政は両院で選出され、10日以内に大臣によって招集される。

 

第十六条 摂政に関する前条は、王が成年に達していても、身体的な事情を理由に統治が難しい場合にも適用される。このような状況下では、王位継承者が18歳に達した際、その者が完全な権利を有する摂政となる。

 

第十七条 王が17歳になるまで、王母が王の教育を担当し、それ以後は王の保護は摂政の手に委ねられる。

 

第十八条 聖職録に関する民権、及び諸外国に由来するあらゆる規則の執行に関する権利は、王によって行使される。

 

第十九条 王室費は、現治世も含め、過去10年間の平均値と同額を維持するものとする。王は、王宮、別荘、庭園およびそれらの付属品、そして王室の使用を目的とした全ての動産を継承するが、それらは所管の省庁が可及的速やかに目録を作成するものとする。将来的には、王家からの所定の寄付は、国王が即位した後、立法府が各治世の最初に定めるものとする。

 

第二十条 王の所有する財産は、彼の私的財産であり、又、王はその治世の間有償または無償で所有権を取得したものも私的財産にできる。王は私有財産を証書によって処分することが可能だが、その額については民法の規定を免除される。それ以外のあらゆる場合に於いては、王の財産は他の財産に関する法律の適用を受ける。

 

第二一条 同憲章は、王位継承者が成年に達した際、又、彼の結婚の際に、或いは、定められた条件下に於いて、王女、王妃の献納金として、そして王室と王室の血統の王子の手当として、年次王室費を提供する。

 

第二二条 王は、即位時に、両院の前で現行法を忠実に遵奉ことを宣誓する。

 

第二三条 摂政は、職務に就く前に、国王に忠誠を誓い、同憲章と国法を忠実に遵奉することを宣誓する。

 

【市民の権利と義務】

第二四条 王国のすべての臣民は、その地位や肩書きにかかわらず、法の前で平等である。すべての臣民は、法律で定められている場合を除き、公民権と政治的権利を平等に享受し、公職と軍職に就く資格を有する。

 

第二五条 すべての者は、資産に比例して、国家の債務に無差別に貢献する。

 

第二六条 個人の自由は保障される。何人も、法で規定された場合でなければ、逮捕、又は裁判にかけられてはならない。

 

第二七条 住居は不可侵である。法で規定された場合でなければ、住居の捜索をしてはならない。

 

第二八条 同憲章が規定する限り、報道は自由でなければならない。但し、聖書、教理問答書、典礼、祈祷書は、司教の許可なしに印刷してはならない。

 

第二九条 財産は、形態を問わず、例外なく、侵すことができない。但し、法的に公共の利益が必要とされる場合には、正当な補償をもって、同憲章に準拠し、全て或いは一部を放棄せざるを得ない場合がある。

 

第三十条 租税は、両院及び王の同意がない限り、賦課、或いは徴収してはならない。

 

第三一条 公的債務は保証される。国家のあらゆる債権者に対する義務は全て不可侵である。

 

第三二条  公共の福祉の為の特権行使を規制する法に従うことを条件に、非武装の平和的集会の権利は認められる。但し、この特権は、公共の場所又は公衆に公開されている場所での集会には適用されない。

 

元老院

第三三条 元老院は、王が任命した、満四十歳以上の人員によって構成され、議席数に制限は設けない。議員は、次に掲げる臣民の中から選出される。

 (1) 国の大司教、及び司教

 (2) 代議院の議長

 (3) 三立法権元老院、代議院、王)に従事しているか、代議院での六年以上の実務経験がある代議員

 (4) 国務大臣

 (5) 国務大臣の秘書官

 (6) 大使

 (7) 三年以上の実務経験のある外交官

 (8) 破毀院と会計院の最高裁判長官

 (9) 高等裁判所の裁判長

 (10) 五年以上の実務経験のある司法長官と検事総長

 (11) 三年以上の実務経験のある破毀院の裁判長

 (12) 五年以上の実務経験のある破毀院と会計院の協議員

 (13) 五年以上の実務経験のある破毀院の法務総監と検事総長

 (14) 陸海軍の将軍、及び五年以上の実務経験のある少将

 (15) 五年以上の実務経験のある国会議員

 (16) 三回以上の選挙当選経験のある州政府議

 (17) 七年以上の実務経験のある州知事

 (18) 七年以上の在籍歴がある王立科学アカデミー会員

 (19) 七年以上の実務経験のある公教育評議正会員

 (20)  奉仕、功労によって、国に名誉を与えた者

 (21) 過去3年間に3,000リラ以上の直接固定資産税または州税を支払った者

 

第三四条 王家の王子は元老院の議員とする。彼らは、大統領の次の位階を取るものとする。彼らは二十一歳で元老院に入り、二十五歳で投票権を持つ。

 

第三五条 元老院の議長および副議長は国王が任命するが、秘書官は元老院が自らの議員の中から選ぶ。

 

第三六条 元老院は、国家反逆罪や、国家安全保障、又、代議院が告発した閣僚の罪を裁く為、国王の勅令により高等裁判所を構成することができる。この際、元老院は政治機構としての役割を失い、招集された目的以外の司法上の事項に従事してはならず、他の如何なる行為も無効となる。

 

第三七条  凶悪犯罪を犯さない限り、元老院の決定以外では議員は逮捕されない。元老院は、議員の軽犯罪を裁く権利を持つ。

 

第三八条 王室の出生、結婚、死亡に関する法的文書は、元老院に提出され、元老院が保管する。

 

【代議院】

第三九条 代議院は、同憲章に基づき、選挙区から選ばれた代議員によって構成される。

 

第四十条 代議員は、王の臣下であり、満三十歳以上の人員で、公民権および政治的権利を享受し、且つ、同憲章で定められたその他の要件を満たしていなければならない。

 

第四一条 代議員は、原則的に選出された州ではなく、一般的に国民を代表する。従って、有権者は代議院に如何なる拘束力のある指示をも与えてはならない。

 

第四二条 代議員は五年毎に選挙で選出され、任期満了時に代議員としての資格は自動的に停止される。

 

第四三条 議長、副議長、秘書官は、各会期の初めに、全期間に渡って代議院によって任命される。

 

第四四条 代議員が理由の如何を問わず職務を遂行しなくなった際には、その代議員を選出した選挙区を直ちに招集し、新たな選挙を行わなければならない。

 

第四五条 凶悪犯罪を犯さない限り、任期中に代議員は逮捕されない。代議院の同意なしに議員を刑事裁判に付すことは出来ない。

 

第四六条 議会の開会期間中は、代議員は債権回収を免れる。又、その直前後の三週間についても、同様である。

 

第四七条 代議院には、元老院の大臣を告発し、高等裁判所に持ち込む権利を有する。

 

【両院に共通する規定】

第四八条 元老院と代議院の会期は、同時に開始し、同時に終了するものとし、他方が会期中でない時に一方が行った会議は違法であり、全て無効となる。

 

第四九条 元老院議員及び代議院議員は、その職務に就く前に、王に忠誠を誓い、憲法及び法を遵守し、王と国の共同の福祉を唯一の目的として職務を遂行することを誓わなければならない。

 

第五十条 元老院議員と代議院議員は、如何なる種類の報酬も金銭的な補償も受け取れない。

 

第五一条 元老院議員及び代議院議員は、院内で表明した意見及び投票について責任を負わないものとする。

 

第五二条 両院の会議は、原則公開される。但し、議員十名の書面による要請があれば、秘密会談を開くことができる。

 

第五三条 両院の会期または投票は、議員の絶対多数が出席しなければ、合法的又は有効なものとはならない。

 

第五四条 いずれの議題に於いても、両院の決定は、投票の過半数をもって決するものとする。

 

第五五条 如何なる法案も、両院が選出する委員会で予備的に審議されるものとする。法案は、いずれかの議会で審議され承認された後、他方で同様の手順を取り、その後に王に回付し承認を受けるものとする。法案は、一条毎に審議されなければならない。

 

第五六条  三立法権元老院、代議院、王)のいずれかによって否決された法案は、同会期中に再提出することはできない。

 

第五七条  選挙で多数派に達したあらゆる臣民は、請願書を各議院に提出する権利を有し、各議院は、それを委員会で審査するように命じなければならない。委員会の報告から、各議院は、これらの請願が審議に付されるかどうかを決定し、採択された場合には、所管の大臣に付託するか、省庁に寄託して適切な措置をとるものとする。

 

第五八条 請願は、各議院に直接提出することはできない。設立された委員会は、提出された請願に対処する権利のみを有す。

 

第五九条 議会は、議員、大臣及び政府委員以外の者の意見を聴取してはならない。

 

第六十条 各議院は、当該議員の資格について単独で判断する権利を有する。

 

第六一条 各議院は、権利を行使する方法を手続き規則によって決定する。

 

第六二条 両院の公用語はイタリア語と定める。但し、フランス語が使用されている地域に所属する議員については、フランス語を使用することは任意である。

 

第六三条 投票は、起立投票、分割投票、無記名投票によって行われる。但し、立法に関する最終投票、及び個人的な性質の議題の場合には、常に無記名投票が行われる。

 

第六四条 元老院議員と代議院議員を同時に務めることはできない。

 

【大臣】

第六五条 王は大臣を任命、及び解任できる。

 

第六六条 大臣は、議員であるときを除いて、いずれの議院においても、審議投票の権利を有さない。大臣は、両議院に入室する権利を有し、且つ、要求があれば聴講する義務を有する。

 

第六七条 大臣は責任を負う。政府の法及び行為は、大臣の署名がなければ、その効力を生じない。

 

【司法】

第六八条 司法は王に由来し、王の名に於いて、国王が任命する裁判官によって執行される。

 

第六九条 州の裁判官を除き、王が任命した裁判官は、3年間の在職期間を経た後は解任不可とする。

 

第七十条 現存する裁判所、法廷、裁判官は維持される。司法組織は、立法による場合を除き、変更不可とする。

 

第七一条 あらゆる臣民は、普遍的な法的管轄権を剥奪され得ない。従って、如何なる臨時の法廷、又は委員会も開かれ得ない。

 

第七二条 民事裁判の審議及び刑事裁判の審議は、公開の法的義務を有する。

 

第七三条 全ての臣民の義務である法解釈は、原則立法権に属する。

 

【一般規定】

第七四条 自治体や州の制度は法で規定される。

 

第七五条 徴兵制は法で規定される。

 

第七六条 民兵は法に基づいて設立される。

 

第七七条 各州は州旗を有し、青の旗は唯一の国旗である。

 

第七八条 現存する騎士団は、独自の基金により運営されるが、その基金は、法で定められた目的以外に使用してはならない。王は、騎士団を創設し、その憲法を定めることができる。

 

第七九条 貴族号は、その有権者に与えられる。王は新に貴族号を与えることができる。

 

第八十条 あらゆる臣民は、国王の許可無く、外国の権力からの命令、称号、年金を受けることはできない。

 

第八一条 同憲章に反する法は無効である。

 

【一時的な規定】

第八二条 同憲章は、両院の第一回会合での選挙の直後に施行する。その時点までは、緊急の公共事業は、現在の形式によって行われるものとする。但し、今後廃止される裁判所での追認と登記は行えない。

 

第八三条 同憲章の施行にあたり、王は、報道、選挙、民兵、組織のための法を制定する権利を留保し、国家評議会を組織する。報道に関する法が公布されるまでは、現在有効な報道に関する規定が有効である。

 

第八四条 大臣は、一時的なの規定の執行及び完全な遵守を委任され、責任を負う。

 

カルロ・アルベルト

内務大臣 兼 一等書記官 ボレッリ

教区・恩寵・司法長官 兼 国務長官 アヴェット

財務長官 ディ・リベル

公共事業・農業・貿易長官 デ・アンブロワ

外務長官 E. ディ・サン・マルザーノ

陸海軍長官 ブローグリア

教育長官 アルフィエーリ

 

―了―