こんばんは、茅野です。
別記事に切っ掛け等は書いていますが、最近デンマーク語の学習を始めました。「ニューエクスプレス」を1日に1課から2課進めている程度ですが、全面的に新しく知ることばかりなので、とても楽しいです。
↑ 語学学習最初の一冊、皆大好きニューエク。
しかし、お勉強をしていると、記事を書く時間が無くなるんですよね。うーむ、書きたい記事、備忘的に書かなきゃいけないと考えている記事が溜まる……。
そんなわけでまたレビュー記事執筆サボりが始まりそうなので、空いた日に一気に片付ける作戦です。
今回は、先日拝見した新国立劇場のオペラ『タンホイザー』についての雑感を纏めようと思います。プレミエ、1月31日に伺っております。
↑ 実はワーグナー作品の中では一番好き。
それでは、簡単にはなりますが、お付き合いの程よろしくお願い致します。
キャスト
タンホイザー:ステファン・グールド
ヴェーヌス:エグレ・シドラウスカイテ
エリーザベト:サビーナ・ツヴィラク
ヴォルフラム:デイヴィッド・スタウト
ヘルマン1世:妻屋秀和
指揮:アレホ・ペレス
演奏:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団
雑感
いつも通り U25 で席を取りましたが、席が埋まるのが速くて驚きました。流石のワーグナー。取れないかとさえ思った。ロシアオペラなんか毎度売れ残るのに……(売れてくれ……)。この差。
ちなみに、別の劇場でも、ワーグナーだけは売れ行きが良いようです。恐ろしきワグネリアン!
今回の『タンホイザー』は、数シーズン前に同じ演出を観て、2回目です。
↑ 18/19 シーズン版。
セットはかなり簡素で、ギリシア様式的な柱を中心としています。ヴェーヌス(≒アプロディーテー)とか出てきますからね。第2幕では、キリスト教会風に。汎用性が高い。
しかし、余りに簡素ゆえ、低予算っぽさがどうにも拭えず……。簡素なのは構わないのですが、低予算が透けて見えてしまうのはどうにもならないのですかね。何とか誤魔化しは効かないものか。
そしてヴェーヌスの柱? 乗り物? セット? が動く時の、カチッ・ウィーンという音は相変わらず。ある程度致し方ないのはわかるのですが、少々興醒め……。『オネーギン』の時よりはマシです、勿論。
↑ 一生言っている。
セットはともかくとして、今回改めて拝見して、小道具が殆どゼロなのが気になりました。
小道具が全くないせいで(登場するのはハープ、木の杖など、物語上不可欠なものくらい)、オペラというより、棒立ち発表会と化しているんですよね……、ただでさえ第2幕は発表会みたいなものなのに……。演奏会形式のオペラの方がまだ動きありそう。
コロナ禍で歌手同士の絡みを少なく!……みたいな指示はまだ健在なのでしょうか。いやでも19年の上演でもこんな感じだった気がする。
オケに関して。今回は上階席だったこともあってか、音が全然飛んで来ない……!
新国はオケピの高さを動かせるので、下げているのでしょうか。かなり控え目な音量で、序曲くらいはかっ飛ばしてもいいのになあと感じました。
『タンホイザー』は出がホルンのことが多いですが、大抵コケてしまう。寂しい。
歌とのズレは、いつものように、千秋楽にはよくなっているかも、……とは思いつつ、大体プレミエの席を買ってしまうのでありました(予定との兼ね合いもあって)。
冒頭のバレエですが、何故か新国立劇場バレエ団ではなく、東京シティ・バレエ団からのダンサーさんだったようです。何故。だから新国オペラと新国バレエ不仲説とか出てしまうのでは。今シーズンは折角『コッペリア』と『ホフマン物語』で揃えたのに!
いやしかし、最近の新国バレエはスケジュール過多で怪我人が続出しているので、その影響かもしれません。19年の上演では新国がやっていたはずなので……。お大事にして欲しい……。
『バッカナール』の振付は高尚でお上品な仕上がりのバレエです。もっとお下品でも良いと思う。わたくしは昨今の無駄にエロ・グロに特化した演出が好みではありませんが、『サムソンとデリラ』等も含め、『バッカナール』はリブレットからしてそうなのだから、狂っていて良いと思っています。
パンフレットにもあるように、「娼館みたいにしたくない」という気持ちはよくわかるのですが、別に直接的な表現である必要もないわけで……。演出家・振付家それぞれの考える「官能」を教えてくれ。
ここがお上品すぎると、第2幕でタンホイザーが「愛は情欲による」と歌うことに対する説得力が足りないと思ってしまうのですよね。
ヴェーヌスとエリーザベトを必ずしも対極に置く必要はないのですが、この美術では彼女たち二人のお衣装も似ているので、対比不足に感じますし、なんなら双子のようです。もしそれが意図的なものなのであれば、面白い解釈であるとは思いますが……。
タンホイザーは人気のヘルデンテノール、ステファン・グールド氏。
確かに、声は良い……よく通ります。上階席までバッチリです。しかし、どうにも一本調子に感じてしまいますね。「教科書・譜面通り」という感じがして、吟遊詩人なのに、「元から台本があって、その通りに歌っています!!」というような歌唱とでも申しますか。アドリブではなく、暗唱。もう少し表現力が欲しいかもしれません。
女神や王女(オペラでは姪か)を惚れ込ませたパッションがあまり見えない。寧ろ彼に賛辞を送るヴェーヌス様の方が情感豊かです。
……、初日だからセーブしている?(二回目)。
一方で、女性二人は大変良かったです。
エリーザベトって、なんというか、言うなれば「キャラが薄い」ので(『ドン・カルロ』の同名とか、『カルメン』のミカエラとか、その他大勢の「無垢な美女」的ソプラノの類い)、個人的にはあまり感情移入もできないし、どう捉えて良いのやら迷います。
そうして、いつも「(少なくともキャラクターの造形としては)絶対ヴェーヌス(エボリ公女、カルメン etc. )の方がいいじゃん」などと思ってしまうのだけど、今回はエリーザベトが良かったですね。今回の上演で一番良かったと思います。
2幕の最後では、その場に会す主要登場人物が全員男性の中で、文字通りその場を支配しておりました。良い女王になれそう。統治して欲しい(?)。
一方のヴェーヌスも良かったですけれどもね!
今回の上演で、「あなたがタンホイザーなら、ヴェーヌスとエリーザベト、どちらに付いていく?」と訊かれたら、とても迷うでしょうね。甲乙付けがたい。勢力拮抗。物語的にもその方が説得力がありますし、良い歌手さん連れてきたなあと関心してしまいました。お名前が日本人には難しい。
最早新国イツメンと化した妻屋御大。いつも通り良かったです。最近はフランスオペラやロシアオペラなども歌って下さいますが、やっぱりドイツオペラがお得意なのかなという気も致しました。
(彼はグレーミン公爵をまた歌いたいと仰って下さっているので、『オネーギン』オタクとしても是非とも実現して欲しいのです。期待して待っているので宜しくお願い致します)。
そしてわたくし、二階席なのにも関わらずオペラグラスを忘れた粗忽者であったのですが、よく見える。デカい。エリーザベトを抱擁しても頭一つ出ます。デカい。
同演出で拝見するのが二回目ということもあり、細かい点に目が向いて、少々辛口気味になってしまいましたが、辛口ファンの多いシビアなワーグナー上演でこれほどであれば、充分満足度の高い上演であったと言えるのではないでしょうか。
千秋楽までに更によくなっていると思います、多分。これから向かわれる仕合わせなチケット取得者はお楽しみ下さいませ。
最後に
通読ありがとうございました。3500字強。
劇場へ向かう前日、久々にリムスキー=コルサコフのオペラ『見えざる街キーテジと乙女フェヴローニヤの物語』の映像を観ていました。
↑ こちらです。なんと日本語字幕付き。最高。今すぐ買おう。
リムスキー=コルサコフの音楽はなんて雄弁なんだ~と感動してしまいました。新国でもやりましょうね。ねっ(圧)。
それに、このパッケージですよ。とてもよくないですか?
このチェルニャコフ演出には賛否両論ありますが(わたくしも気になる点は幾つかあります)、この第1幕のセットが好きすぎるんですよね。美麗。少し霧の掛かった森。素晴らしいです。
……と、少々豪華なものを観てしまった為に、新国『タンホイザー』の演出の簡素さが目立ってしまったのかもしれません。
皆様はどのような演出がお好みですか。
それでは、今回はここでお開きと致します。また別の記事でお目に掛かれれば幸いです。