世界観警察

架空の世界を護るために

Les enfants seuls savent ce qu’ils cherchent. -『Sky: Children of the Light』レビュー

 こんばんは、茅野です。

先日、『ABZÛ』の検証・考察「ZEN MASTER」シリーズを書き切り、微妙にロス状態に陥ったわたくしは、比較的近しいゲームで遊ぼうと思い立ち、『Sky』を遊んでみることに。

↑ 『ABZU』記事はこちらから。

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↑ ここ『ABZU』で見た。

 『Sky』を制作した thatgamecompany さんは、『ABZU』を作ったマット・ナヴァ氏の出身会社(ナヴァ氏は自身のゲーム・カンパニー Giant Squid を創設。『ABZU』はその処女作)。『Sky』には関わっておりませんが、前作『JOURNEY(邦題: 風ノ旅ビト)』や『flowery』にアートディレクターとして携わっておりました。従って、『JOURNEY』と『ABZU』のデザインの方向性が酷似しているのは当然なのです。

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↑ 左が『ABZU』、右が『JOURNEY』。謎の猫耳や、主人公の顔も酷似しています。

 

 当方はウォーキング・シミュレーターを愛好しているので、勿論 thatgamecompany さんのゲームも馴染み深いものです。しかし、本業は考察書きですから、メソポタミア神話や生物学の知識を求められる高難易度考察ゲームである『ABZU』とは異なり、あくまで「雰囲気」を重視し、そして終始した『JOURNEY』にはあまりのめり込むことはできませんでした。

 『Sky』は、発売当初から存在は存じ上げていたのですが、あまりに『JOURNEY』ライクな作風に馴染める予感がせず、又ソシャゲが苦手ということもあり、触れてこなかったのですが、『ABZU』ロスに陥ったこと、そしてLe Petit Prince(邦題: 星の王子さま)』とのコラボレーションイベントが開催中! ということで、インストールしてみることに。

 

 「思い立ったら即行動」派、スタートダッシュの速さには定評があるので、夕方にインストールし、翌朝には全エリア初見プレイ完了、「星の王子さまの季節」イベントも公開されているクエストは終了しました。初見プレイ・リアルタイムアタック。イベントのクエスト該当エリアへの行き方がわからず詰み掛けたとき以外は wiki も使わず、初見プレイを存分に楽しめました。

 従って、やり込みはできていないのですが、取り敢えずフレッシュな感想を書いていこうと思います。今後意見が変われば加筆するやも……。

 それでは、お付き合い宜しくお願い致します。

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概要

 『Sky: Children of the Light』は2019年に発売されたオープン・ワールド・アドベンチャー・ゲーム。 対応機種は iOSiPadAndroidNintendo Switch です。わたくしは iPad にてプレイ。

 開発元は前述の通り、『JOURNEY(風ノ旅ビト)』でお馴染み、 thatgamecompany さん。独立したマット・ナヴァ氏の会社 Giant Squid と同様、本社は米国カリフォルニア州サンタモニカです。流石のシリコン・バレー。

 

操作性

 早速で申し訳ないですが、悪いです(直球)。最初にスマホで入れたのですが、小さい画面でプレイするのは中々骨折りでした。プレイステーションのコントローラーで遊びたい……(切実)。結構溝に嵌まったりしますし、抜け出すのは大変。「夢見の町」の滑走とかかなり厳しかった……。

 

 そのせいもあってか、初見プレイ中嵌まってしまい、抜け出せずやり直したことも……()。

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↑ 「隠者の峠」の底が抜けました。そして主人公の動きが何故か飛行から泳ぎに切り替わり、その場から動けなくなり……。

 

 容量的にも結構食うので、早々にアンインストールし、 iPad に切り替え。しかし、iPad でゲームするの初めてだったんですが、画面が大きい割にタッチで操作なので目と画面の距離を離せず、大変疲弊します。やはり据え置きしか勝たん……(※スマホや PC でゲームをするのが苦手な個人の見解です)。

 

 又、スマホならではの悩みも。『Sky』は様々な言語に翻訳されていますが、 Android の場合は機種言語依存で、ゲーム内で言語変更が不可能の仕様になっています(iPad では可能)。外国語学習の為などでスマホの設定言語を母語ではない言語にしている方には少々ツラいかも。

 

 尤も、インディーズゲームはあきらかに機械翻訳をそのまま使っただろう、というような酷い翻訳の場合も多いですから、原語なら原語での楽しみ方ができるかとおもいますが、『Sky』は邦訳も違和感ないと思います。というより、『JOURNEY』も『ABZU』も作中で言語を用いませんから、逆に言語コミュニケーションあるんだ……と意外に思いましたが。

 

 操作は『JOURNEY』とほぼ同様、歩く、飛ぶ、蝋燭を灯す、音を発すの四種類。オンラインでの協力プレイでは、ICO』さながら手を繋ぐなども追加されます。

シンプルで、なるほどスマホでも問題無く遊べるでしょう。しかし、『JOURNEY』を据え置きでプレイしていたプレイヤーからすると、やはりタブレット操作に苦戦するかと思います。

 

 それから、『JOURNEY』との違いとして、協力プレイが推奨され、言語でのコミュニケーションが可能になったり、フレンド機能が追加されたりしました。一期一会とは……。そのせいか、ソロプレイヤーは少々疎外感を感じるかもしれません。沢山手を繋いだ幻影を寂しく見つめる野良であった。

 

グラフィック

 スマホゲーではトップクラスに美しいでしょう。普通に大画面に耐えうる質の高さなので据え置きでも出して欲しい(n回目)。

 

 人気が高かった『JOURNEY』『ABZU』での猫耳(仮)は、デザイナーのマット・ナヴァ氏の著作権管轄内にあたるのか、今回は無し。普通に髪型を変えて遊ぶことができます。しかしながら、シンプルでデフォルメの効いたデザイン、鮮やかな色使いは前作に通ずるところが大きく、ファンには嬉しい点でしょう。

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↑ それにしてもここは完全に『JOURNEY』。

 

 どうでもいいですが、エリア名表示にそこはかとない既視感。

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↑ デーン……(空耳)。『Sky』でも黒竜カラミットを狩りたい。

 

音楽

 今回は『JOURNEY』『ABZU』で担当されたオースティン・ウィントリー先生ではなく、flowery』を担当されたヴィンセント・ディアマンテ氏。前作同様、特に耳に残るモティーフがあるわけではありませんが、雰囲気に合った、落ち着いていて柔らかいヒーリング・ミュージックのような趣き。それでいて、飛び上がった際の高揚感などはしっかりと耳からも感じさせてくれます

 特に鳥の鳴き声なども混ぜ込まれた、前半エリアの音楽は疲れた夜にはぴったりかもしれません。個人的には、 vol. 1 に収録されている『The Vault』というピアノを基とした曲がお気に入り(「書庫」エリアの曲です)。

 ↑ はやくも 3 まで出ております。それにしてもパッケージ買いも辞さない美しさだ。

 

ストーリー

 今回はストーリーにも言語を用いているながら、あってないようなものです。『JOURNEY』同様、遠くに見える山頂(Temple / 神殿)を目指してゆきます。新しく追加されたものに Spirits / 精霊 がありますが、ゲーム内では謂わば商人のような扱いで、ストーリーに大きく影響は与えません。

 更に、今回は比較的ゲーム性を重視した影響か、メッセージ性も強くはありません。thatgamecompany 及びマット・ナヴァ氏のゲームでは、「環境保全」という主題が強く打ち出されていましたが、『Sky』にそのようなメッセージはありません。

 従って、「何を伝えたいのか判然としない」という、文字通り「雰囲気ゲー」の地位に収まっていると思います。当方は考察書きで、他ゲームでは作中の事象を読み解いたり、モデルとなった文化の紹介などを行っておりますが、『JOURNEY』『Sky』に関しては、レリーフ象形文字ではなく絵になっていますし、音楽にも民族的調性は認められず、そもそも「謎」自体が少なく、他にヒントもない為、「書くに書けない」という、わたくしとしても歯痒い作りになっています。何か「ここがわからないので調べ考えて欲しい」というご要望等ございましたら、コメント欄や TwitterのDM、メールなど広く門戸を開いておりますので、お気軽にお寄せ下さいませ。

 

 作品全体のレビューはこのようなところでしょうか。次いで、イベント「星の王子さまの季節」に言及して参ります。

 

星の王子さまの季節

作家サン=テックス

 Le Petit Prince星の王子さま)』はフランスの大作家でありパイロットでもあるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(通称サン=テックス)の代表作です。

 わたくし、フランス文学専攻でして、当然サン=テックスは大好き。『星の王子さま』も勿論好きですが、『人間の土地』『夜間飛行』『戦う操縦士』……と、好きな作品は枚挙に暇がありません。自分が監督した事業のコンセプトを ≪Ce qui sauve, c'est de faire un pas. (救いは一歩踏み出すことだ。)≫ という『人間の土地』を引用した言葉にしたくらいには好きです。格好良くないですか!? 「サン=テックスは『星の王子さま』しか知らん!」という方は、もう是非ここからサン=テックス沼へ落ちて頂きたいですね。

 ↑ パイロットとしての実体験を綴った『人間の土地』。『星の王子さま』にも直接繋がる、サハラ砂漠での不時着のエピソードも綴られます。救いは一歩踏み出すことだ。

 ↑ 優美な暗黒の大空、雲の上に広がる星々、その裏にある命の危険と民衆の期待。パタゴニアの夜空に恋する表題作。支配人リヴィエールの発言は、全オタクが肝に銘じたい金言です。

 ↑ 負ける、死ぬとわかっていても出撃する。そのことに何の意味があるのか―――? 郵便飛行家であったサン=テックスが、悲しくも力強い「クレド(信条)」を胸に、第二次大戦で「戦う操縦士」へ。

 

星の王子さま

 さて、大人気文学『星の王子さま』です。いや、傑作ですが、灯台元暗しと申しますか、何故この作品"だけ"がこんなに人気なのか理解しかねるところもあるのですが……。

 これは有名な言説ですが、星の王子さま』は内容に反して原文のフランス語は少々難解です。この理由は過去時制の混在で、日常的には使われない「直説法単純過去」という時制が登場することに由来します。特別難しいというわけではありませんが、初心者向けではないでしょう。

 そこで手に取りたいのが翻訳です。ところが、『星の王子さま』は数え切れないほど翻訳があります。白水社の雑誌『ふらんす』2016年5月号では、数々の翻訳の違いを解説してくださっており、大変有用です。「色々読み比べてみたい!」「自分にぴったりの翻訳を見つけたい!」という方は参考にしてみてください。

↑ web上のサンプルでも少しだけ読めます。

↑ 購読者。いつもお世話になっております! 

 

 又、『星の王子さま』は日本でもテーマパーク化(?)されており、それが『星の王子さまミュージアム』です。ミュージアムとある通り、ファン垂涎の貴重な展示が山盛りですが、敷地内は建物や庭をテーマパークさながらフランス風に造っており、大変楽しい空間となっております。わたくしも、昨年同期とお邪魔して参りました。

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↑ フランスの田園風。星の王子さまのスタチューがお出迎え。

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↑ 広すぎず、狭すぎない敷地。どこも美しいです。

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↑ ≪Hotel Pirote de Guerre(戦う操縦士ホテル)≫の文字。そんな深夜に徴兵に起こされそうなホテルはイヤ! お隣は≪Théâtre du Petit Prince(星の王子さま劇場)≫。

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↑ カフェではかわいいパンケーキも食せます。

 サン=テックスファンなら一度は訪れる価値があります! 楽しかったです。

 

星月夜の砂漠

 それではゲームの内容について触れます。

怒濤の勢いで初見プレイを進め、ぶっ続けること数時間、解放に至りました。

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↑ エリアへの入口のアイコンが「ウワバミ」ってところにもうセンスを感じる。

 

 わたくしは原作厨拗らせ厄介オタクなので(自覚はしている)、基本的にクロスオーバーが大の苦手なのですが、『Sky』はそもそも作品のインスピレーション元として『星の王子さま』を挙げているように、すこぶる作品同士の相性がいいです! 違和感なく楽しめるどころか、あの『星の王子さま』が自分の指で操作し楽しむゲームになった! とばかりの感動を覚えます。これには原作オタクもにっこり。いえ、寧ろ原作を拗らせた面倒くさいオタクにこそ勧めたい! 非常に完成度が高いと思います。主人公が全く喋らないので、余計な介入がなく、作品を壊さないのですね。素晴らしい。

 原作では登場人物同士が孤立しており、王子としか会話がないというのも『Sky』の精霊システムによくマッチしています。お見事!

 当記事のタイトルにした ≪Les enfants seuls savent ce qu’ils cherchent. (子供たちだけが何を探しているのか知っているのさ。)≫ ですが、正に Les enfants (子供たち)という主語は『Sky 星を紡ぐ子どもたち』と重なります。それに「星」というキーワード、更に邦題には「星の王子さま」となっていますが、原題では ≪Le Petit Prince (ちっちゃな王子さま)≫ ですから、もう『Sky』はそもそも『星の王子さま』とのコラボレーションを見越していたのではないか? と勘ぐる程。

 

 グラフィックも原作をそのまま立体化したかのような造形で、ストーリーにも違和感がありません。良イベントです。

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↑ あの名言も健在。フォントも良い。

 

手を繋ぐ

 『Sky』では、上田文人氏の色褪せない大傑作『ICO』を彷彿とさせる、「手を繋ぐ」というアクションがあります。手を繋いで、他のプレイヤーやキャラクターと共に冒険をすることができるのです。今イベントでは、王子さまとおててを繋いで空を舞うことができます

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iPad なので、『ICO』のように心音のようなバイブレーション等を感じられないのが残念ですが。

 しっかし、その、何と申しますか、王子よ、全プレイヤーを夢女子(男子)にしようとしているな?? とばかりの無邪気可愛いムーヴはやめるんだ。冒険好きで束縛を嫌い、基本優秀だけれど、抜けているところがある……という「血」はオタクを破壊する、って『ロランの歌』にも書いてある(※書いてません)(でもそういうキャラクターって人気ありますよね)。

 

 しかしながら、王子に墜ちた皆様には残念なことに(?)、正妻はバラです。原作同様、この一人と一輪の愛憎乱れる関係を堪能することになります。

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↑ 王子が手ずから水をやり育てたバラ。美しい。

 

 現時点で(2021/8/22)、最終話は未発表。公開されたら加筆しようかと思います。

2021/9/1 加筆。軽いネタバレを含むのでご注意下さい。

 クリアしました! しかし、このエリアまでソロで辿り着くとは、さては王子様、『Sky』玄人だな。展開としては原作をなぞるとはいえ、「あのような姿になった」王子様を見るのは心理的に心苦しいですね。「星に帰る」ということは原作とも『Sky』ラストともマッチしており、又、バラとの後日譚などがないことが逆に、原作を尊重していて大変よいです!! 「わからない」、そのことに非常な魅力を感じます。大変満足しました! 

 又、クレジットで原作絵の他キャラもモデリングされていてとても嬉しかったです。どうでもいいですが、iPad でプレイしていたところ、字が見切れていたことだけ気になりました。

 

 そして、わたくしはと申しますか、皆様そうだと思うのですが、ソシャゲの課金システムには慣れず、パッケージ版で売って欲しいと切望するものです。が、基本プレイ無料で遊べてしまっている現在、楽しんだ分くらいはお金を落としたいと考えております。アドベンチャーパスかキャンドルか、はたまた服か……悩みどころです。できればこのイベントに関連したものがよいのですが、初心者はどうしたらいいんでしょう。求む有識者(追記: 取り敢えず襟巻きケープを買いました。ケープゲージがバラなのが芸が細かいです。何故か不具合でパスが購入できず……何故だ……かなしい……)。

 

最後に

 すっかり長くなってしまいました。7000字強です。

正直なところ、『Sky』を触ってみた感想として、やはり馴染まないな……と感じていたのですが、期間限定「星の王子さまの季節」が非常に優れており、フランス文学愛好者として大変に嬉しかったので、一筆書かせて頂きました。このイベントは是非とも高く評価されて欲しいですね。

 それではお開きとさせて頂きます。また別の記事でもお目にかかれれば幸いです。楽しい空の旅を。