世界観警察

架空の世界を護るために

東京フィル『オテロ』 - レビュー

 こんばんは、茅野です。

レビューラッシュです。なんとか乗り越えて参りたいところ。執筆速度が試されています。

 

 先日は東京フィル定期演奏会から、オペラ『オテロ』にお邪魔しました。少し遅くなってしまいましたが、7月27日の回で御座います。

 

 この間、 NTLive で演劇版の『オテロ』を拝見したので、一種の見比べということで。

↑ 『オテロ』な7月。作中の季節っていつなんでしょうね。

 

 オペラの方の『オテロ』はかなり久々です。16/17シーズンの新国以来でしょうか(当時まだ高校生でした)。

 こちら、新国にしては珍しく美術が非常に凝っていて美しいですよね。

新国での再演も待ちつつ。

 

 今回はこちらの公演の雑感を記して参ります。それでは、簡単にはなりますが、お付き合いの程宜しくお願い致します。

 

 

キャスト

オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデモーナ:小林厚子
イアーゴー:ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ:相沢創
カッシオ:フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア:中島郁子
ロデリーゴ:村上敏明
モンターノ:青山貴
伝令:タン・ジュンボ
指揮:チョン・ミョンフン
合唱:新国立劇場合唱団

 

雑感

 本日はお馴染み初台・オペラシティにて。2階席です。

 

 全てが高水準です。真っ先に「浴びた!」と感じられるのはよきオペラ公演です。

特に『オテロ』は、初っ端から嵐で飛ばしてますから、出が肝心みたいなところありますしね。

 

 照明で嵐を表現したり、船頭的な、或いは凱旋を強調するためか、オテロが合唱のド真ん中から登場したり、演奏会形式ながら演出も洒落ていました。バンダも出てきましたし。狭くて大変そう。

東フィル定期は日毎に上演会場が異なるので、毎回ホールに合わせて演出を変えるの大変だろうになあ、と思いつつ。他のホールではどのようにやっていたのだろうか。

 

 序盤から大迫力です。気持ちが良い。今日の天気の如く、嵐到来です。

オケも合唱も歌手も粒揃いで、ちょっとケチの付け所がありませんね。レビュー書くときに困るやつです(※とても褒めています)。

 

 今回の演奏会に関するオンラインイベントの方にも参加していたのですが、フルートの斉藤和志さんが序盤のフルートに関して「ピロピロピー↑」とか仰るので、吹き出しかけました。面白すぎる。

↑ 恐らくこの辺りのことかと。

 まあ実際聴いてみると、言いたいことはわかる……んだけれども!!

 

 第4幕のコントラバスに関しても、よく揃っていて良かったです。最後にマエストロと握手していて、何となく大団円を見た気分です。

ここ、本当にきっちり合っているのを聴いたことがないというか、ヴェルディも鬼畜なことするなあという気持ちだったので……。


 演奏会形式なので、小道具・大道具は殆どありませんが、ワインが湯呑みタイプ。時代柄それでもいいのかもしれませんが、ちょっと和風で面白い。

 

 マエストロは今回は演技なし。悲劇ですしね! 音楽に集中。

正面席からだと、手・腕の動きが殆ど見えません。動きが小振り。体幹がしっかりしていらして、指揮者に言うのも変ですけど、軸がぶれず見ていて気持ちの良い佇まいです。ダンスめっちゃ上手そう。

飛び出してくる音が本当に鮮やかでした。イタリアオペラ合うなあ……。

 

 テノールながらに最重量級の重たい声が要求されるオテロ。ロシアオペラだったら絶対バスでやるところです。イアーゴも然り。でもイタリアオペラなのでテノールです。

 前評判通り、また他の批評家の皆様が絶賛している通り、物凄く良かったです。よく響くし、嵌まり役だし、音楽一本勝負な演奏会形式でもしっかり引き込む力を持っていて、寧ろ余計な演技とかない方が集中できて良いなと思うくらい。

 

 デズデーモナも伸びやかで美しいです。しっかりヒロイン・デズデーモナであった。男性主要キャラが皆国外勢の中で、日本の意地を見せて貰いました。

 ところで、原作(というか英語)だとアクセントは「デズデモーナ」なんですよね。『オテロ Otello(オセロー Othello)』の舞台はイタリアですが、「デズデ(ー)モ(ー)ナ Desdemona」という名前はギリシア語由来のようなので、どちらがより適しているのかはわかりません。というか、何故ギリシア語由来にしたのだろうか。

ちなみに、「Desdemona」は「不運な」、「Othello」は「欲望」という語から来ているのではないか、ということです。

↑ 原作。オペラ版だとそこをそう省略しているのか~! 等、改めて観ると細かい点の差異が面白かったです。

↑ 「柳の歌」が出てきますし、関連図書として読んでみました。とても易しく、縦軸にも横軸にも広く書かれていて良かったです。お勧め。勿論『オセロー』に関しても。

 勿論「柳の歌」、「アヴェ・マリア」も素晴らしかったです。アリアというものはそもそもが見せ場ですけれども、「柳の歌」は特に伴奏もシンプルで、テンポも落ち着いていて、無茶苦茶な高音などの難所がない分、自力が試される曲だと思うので、ここでしっかり戦えるというのは本物です。

 

 イアーゴはしっっかり悪役をしてくれて助かりました。皆様も仰ってますが、ビジュアルからして悪役作ってきてくれてますし。『オテロ』という作品の要ですからね。

 

 一方で、カッシオは物足りず。声のへろへろ感がちょっと頂けなかったですね。他のキャストが良かっただけに、勿体ないというか、この豪華キャストと比べられるのは大変か……と思いつつ。

 

 エミーリアは終幕で、舞台奥から呼び掛ける声が響きすぎていてびっくりしました。普通に舞台中央で歌ってる時くらいの声量。怖い。どうなっているんだ。エミーリアが最後にしっかり叫んでくれると、気持ちよく終われると思っています。とても良かった。

 

 『オテロ』は全幕約30分ずつで良いですよね。バレエ版の『オネーギン』も各約30分ずつなんですけどね! これくらいが丁度良い気がします。

幕切れもあっさりしていて良いです。『ロミオとジュリエット』ばりに死ぬのに時間掛かりますが。舞台芸術ってそういうものだよな!

 

 文句の付け所のない素晴らしい公演でした。普段鬼のように辛口な批評家先生方も大絶賛で、完全に同意します。

このような公演を浴びられて、幸せな夜でした。

 

最後に

 通読ありがとうございました。3000字程。

文字を書く時間が余り取れず、遅くなりましたし、また駆け足になりましたが、やはり備忘の為に一筆書いておかねば……ということで、急いで書きました。

 

 明日は我らが最愛の『オネーギン』がありますのでね、ガラですが! こちらも勿論レビューを書きます。次の記事でも宜しくお願い致します。

 

 それでは、お開きと致します。また次の記事でもお目に掛かることができましたら幸いです。