世界観警察

架空の世界を護るために

パリ・オペラ座バレエ『オネーギン』2020/3/6

 こんばんは、茅野です!

当たり前に連日オネーギンを観ています。バレエだとオペラと違って本当に”連日”なので凄い。長文記事を書く人間の身にもなって頂きたい(ありがとうございます)。

昨日今日はいいですが、明日はマチネですし(絶起厳禁)、その二時間半後にはソワレです。どうしろと……。嬉しい悲鳴とは正にこのことです。

 

 二日目もしっかり目に焼き付けてきたのでガッツリ感想書いてゆきたいとおもいます。 また、昨日と重複するところは省略します。それでもどうせ長いです。

 

昨日の記事はこちらから↓

 

 

開演前に

 本日はU25引き替えで2階R席。昨日L席の推薦をした当てつけでしょうか。R席もいいぞ! 二幕一場のオネーギンがよく見えるぞ! 宜しくお願いします!(?)

今回もお隣がいらっしゃらなかったので可動域広め。とは言いつつ、昨日に続き想像以上に席の埋まりはいいです。よかった。

中央寄りだったので、ベンチもギリギリ見えました。ほんとうによかった。

 

 本日は珍しく(?) ぼっち参戦でした。こちらが珍しいという方が凄い。付き合ってくれる友人諸賢に感謝です。

 

キャスト

エヴゲーニー・オネーギン:ユーゴ・マルシャン
タチヤーナ・ラーリナ:ドロテ・ジルベール
ヴラジーミル・レンスキー:ポール・マルク
オリガ・ラーリナ:ナイス・デュボスク
グレーミン公爵:オドリック・ベザール
ラーリナ夫人:ベアトリス・マルテル
フィリピエヴナ︰ニノン・ロー
指揮:ジェームズ・タグル
 
 72回目の上演だそうです。
 

第1幕

第1場

 きょうもオリガが可愛い! 椅子の上に乗るときにフィリピエヴナの手を借りて、慎重に上がる様はオリガらしくないっちゃないんだけれども、お上品な感じがします。
 
 いや、もう1時間半ポルカでいいですよね。オペラ座の群舞が好きだ……。ポルカ、曲も好きです。バレエ「オネーギン」組曲のなかで、純粋に曲だけで言うと一番好きかもしれない。
 相変わらず細かすぎるツッコミをしますが(今更)、終盤全員で前に進む振りの前、オリガが三歩下がって前バットマン→三歩前に出て後ろアティテュード、という振りがあるのですが、下がるのが二歩だけだったな……と気付きました。それだけです。
 
 昨日のことがあるので(詳しくは昨日の記事参照)、注目のレンスキーの登場。
オペラ座のレンスキーは歩いてくるらしい!
つまり、ルーヴェ氏のみの解釈ではなく、オペラ座全体の解釈だったようです(或いはたまたま二人が被ったか……)。
しかし、後ろ手は組んでいなかったので、そこはルーヴェ氏のオリジナルとみました。オペラ座のダンサーが悠然と歩いてくると、もうそれだけで画になりますし、何よりノーブルな印象になりますね。オペラ版の演出でも、レンスキーを本当に冴えないオタクみたいな描き方をするものが少なくないのですが()、オペラ座のレンスキーを観ると、彼が「若い貴族の美丈夫」であることを想い出します。
 
 オネーギンの登場。
しかし、レンスキーとオネーギンの距離感が謎ですね。今日はかなり距離感や遠慮があるように見えました。昨日もですけど、今日の方が距離感あったイメージです。
 しかし、オネーギンの挨拶はなんとかならないものか。会釈にせよ、手に口付けするにせよ、目線を合わせたままにするせいか、首の動きだけで挨拶しようとするので猫背風になるのがなんともバレエらしくない。オネーギンらしくもない。オネーギンが挨拶をするシーンはかなり多いので、ここを改善すると絶対によくなります。基礎中の基礎、レヴェランス!
 
 ここらでオケの話をば。昨日よりは確実に改善されていたと思います。特に木管と弦は目に見えてよくなったとおもいます。して、オーボエは音はいいのに何故あんなに音量控えめなんでしょう。休憩中も練習熱心だったのに。そういう方針?(?) 終始気になっておりました……。
 
 レンスキーのVa。
いや、めっちゃ良い、良いんですが……、…………、……昨日が良すぎたんや……。
見比べるとこういう弊害がある。そうなんです。ふっつうに及第点以上だったはずなのに……。マルク氏のレンスキーの役作りは王道で、とても安定感があります! この対比ももしかしたら限界オタク向けの見所かもしれません! まだ間に合います、皆様も明日のマチソワでレッツ見比べ!
 
 レンスキーとオリガのPDD。
昨日と比べて、昨日の方が音の取り方がゆったりして溜めており、きょうは寧ろ音より早いくらいでした。
 ここのところ(楽譜参照)のオリガの回転が物凄くスピーディで素敵でした!

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↑中~終盤あたり。振りを言語化するのが難しいときは楽譜で指し示したら楽かもしれません(オペラのレビューの時はよく使っている手法)。
 
 最後ふわふわと上手後方から斜めに横断するところの妖精さん感といったら……。寧ろシルフィードやジゼルの世界のようでした。
 
 凄く今更なんですけど、何故レンスキーは右手にオリガ、左手に違う女性を引っかけ、両手に花状態で退場するのか。群舞の女性達はラーリン家の農奴なので、時代考証的にも引っかかるし、オリガはそれでよいのか。ということを改めて考えてしまいました。
 
 オネーギンのVa。
ほぼ確信に近いのですが、マルシャン氏、オネーギンの役作りでルスラン・スクヴォルツォフ氏やマルセロ・ゴメス氏をを参考にしたんじゃないでしょうか。初めて観るはずなのに、何だか凄くデジャヴュ。オネーギンのVa. では、胸を大きく開いて反る振りが多用されますが、胸の開き方がもう完全にスクヴォルツォフ氏のそれ。かなり特徴的です。後述しますが、「手紙」の演技も彼にかなり近いです。お気に召したんでしょうかね……。
 昨日述べた、シェネ時のアラスゴン→右手に額の件ですが、こちらもオペラ座の解釈のようで、ガニオ氏独特のものではない模様。うん、こちら、よいかもしれませんね。”バレエらしい美しさ”が引き立ちます。
 少し言いたいのが、マルシャン氏の指先の使い方について。氏、手の造型が非常に美しいのですが、指先までもう少し気を遣ってやると更にその美しさが際立つはずなのに……! と、幾度かモヤモヤしました。何というんでしょうか、指先の使い方で”オネーギンらしさ”ってもっと出るはずなんですよね。彼の基本形の指先は、何となく柳の枝を想起させます。美しいけれど、もう少し表情が欲しいかもしれない。
 
 コール・ド。
農奴 #とは ……という、最初に出てくる男性の優雅さ。ロシアの農奴だぞ。皆様がイメージする”ウォッカ飲んだくれの怠けもの”と相違ないあの”ロシアの農奴”ですよ。それもアラクチェーエフ体制下の農奴だぞ……貴族かな……。いや、綺麗ですけれども……。
 
 幕間の演技パート。
相変わらずレンスキーが優雅すぎるという点と、前述のオネーギンのお辞儀が気になります。ほんとうに直した方がいいとおもう……。
 

第2場

 本日はちゃんとオペラグラスを持参したので、細部までしっかり見えました(言えない……昨日は忘れたせいでターニャの演技についてあまり書けなかったことを……)。
 
 鏡のPDD。
二人の安定感が凄い! 昨日は少しハラハラするところもあったので尚更です。
身長差について示唆されていたので、今回もTwitterでの公演後の写真を拝見したら、なるほど……と。ここまで身長差があれば、難しい「鏡」のリフトも安定しやすいですね。
 
 大リフト1回目と2回目の間、舞台中央でターニャがアティテュードのまま独りでバランスを取っていて技巧的でした(普通はオネーギンに支えられたまま次の回転に進む)。素晴らしい。
 
 
 細かい指摘選手権続行します。上手前でターニャが地に付きそうな程反って二回転し、オネーギンが彼女のお腹に頬顔を寄せる振りがありますが(言語化すると微妙に変態チックで焦っている)、ここの回転が一回転抜けたのではないかとおもいます。それだけです。
 しかし、この「お腹に頬を寄せる」という振り、前述のように一歩間違うと「マノン」のムッシュー化するので、如何に好青年らしく(……?) 演じるかが鬼門です。個人的なアドバイスをさせて頂くと、スピード感が重要だとおもっています。ここだけでなく、「手紙」の後ろから左右の首筋にキスするシーンや、後ろから上下順に腕を回して抱きつくシーンも然りです。かなりテンポを上げてやると(それでも尚乱暴にならぬよう! )、変態っぽくなくなります。お勧めです(?)。
 
 一言言います。金管〜! 主にトランペットとホルン~! 宜しく頼みますよ~!!!!
 
 最後、ターニャがどういう表情をするか、というのはダンサーに大きく違うのですが、幕、閉まるの早すぎませんか?? もっとゆっくりでも曲終わりませんよ、大丈夫。もうちょっとしっかり観たかった……明日のソワレでなんとかします。
 

第2幕

第1場

 ナタ・ワルツ。
うーん、個人的には昨日の二人に軍配を上げたいです。昨日のほうが軽やかさがあります。しかし、本日の二人の方が王道な演技・解釈で、初見だったらこちらの方が薦めやすいかもしれません。
 
 キャラクター・ダンスは昨日より断然よくなっていた気が致します。もっともっと大袈裟でも大丈夫ですよ!
 
 さて、昨日(オペラグラスを忘れて)見はぐったターニャのここでの解釈ですが、ジルベール氏の演技はアリシア・アマトリアン氏を筆頭とする派のようです。こちら、時代考証の観点でいうと、最早”間違い”と言っても良いくらいらしいですが、バレエ版オネーギンでは主流になりつつあります。つまり、この段階で「オネーギンに期待を掛けている・夢を見ているような目をした」ターニャ、という解釈です。
Ах, для чего,
Стенанью вняв души больной,
Не совладав сама с собой,
Ему письмо я написала!
(ああ、何故わたしはこの病んだ心の嘆きに耳を貸して
抑えきれずにあの方にお手紙を書いてしまったの……?)
(↑ちなみにこちらが原作・オペラでのこの場面でのターニャです)。
 
 レンスキーとオリガの話に戻ります。
この二人はナタ・ワルツの途中で老年男性にぶつかるのですが、昨日のルーヴェ氏のレンスキーは盛大にぶつかった後、オリガを気遣うように彼から遠ざけ、背中をさすって「怪我はない?」と言ったようなマイムを入れていて、とにかく素晴らしい紳士でした。(昨日の記事に書くの忘れましたすみません)。こちら、かなり珍しいタイプです。そういうのもアリか……! と感嘆しつつ、やはりレンスキーにしては高貴すぎるのでは? という印象は免れ得ず。
 きょうは、ぶつかった後は従来通り悪戯っぽく2人で笑うタイプでした。王道! そうなのです、このレンスキーとオリガ、王道なのです。対比がいいぞ!
 
 オネーギンさんの話に移りましょう。
今回、すっごく良いなと感じたのは、カードゲームの卓にいるオネーギンの演技です。オネーギンがカードゲームを途中でやめて手のコンディションを確かめていたのですが、とっっても良いじゃないですか! 好きです! 流石、化粧に一日3時間かける男だ!(※原作第一章で「オネーギンは一日3時間化粧台に向かう」という茶化した言及があります)。
 ”オネーギン感”はやはりガニオ氏よりもマルシャン氏の方があります。少なくとも、ガニオ氏の解釈は王道的ではないと言えます。マルシャン氏は尊大な感じがよいですね。あとはその解釈に似合わない、あの自信なさげな会釈さえ改善されれば……(三回目)。
 
 名物恋文破り。
勿体なかったのは、ビリビリ音が全然しなかったことですね……オペラグラスで覗いていたのですが、音がしない要因は水分過多でしょうか……手汗かな……。どうでもいいですが、当方手掌多汗症につき、何となく親近感を覚えてしまいました。
 破られた後のターニャは、呆然自失している、というよりも少し屈辱を感じているように見えました。ジルベール氏のターニャ、どことなく気が強そうなのですよね……。後述しますが、それは第三幕ではとってもハマっているのですが、第一・第二幕となるともう少し柔らかくてもいいかもしれません。けれど、最初から強い芯を持ったターニャ、というのも素敵です。手紙を突っ返されそうになったターニャが、オネーギンに「いいえ、それはあなたに差し上げたものです」、と出す腕の凜とした動きよ。美しい。
 
 次いでターニャのVa。
ターニャのVa. では、ターニャが地団駄を踏むような振りがあるのですが、ここをふんわり可憐に踊る人も多い一方で、ジルベール氏のターニャはガッッツリ地団駄!! 素晴らしい。解釈が一致しました。わたし、ここでガッッツリ地団駄踏んでくれる、子供っぽいターニャが大好きなんです! 有り難う御座います。
ここで強く地団駄を踏んでくれることも、「少し気が強そうなターニャ」という解釈を促進させている要因かもしれません。
 只、その前のタンデュしながらのプリエはもうちょっと深くてもよいかも。
 
 パ・ド・カトル。
昨日、途中でオネーギンがでレンスキーに絡んでいるのが気になる、と申し上げたのですが、こちらもオペラ座の解釈のようで、本日もありました。いいですね、煽り力が高くて……。
 又、オネーギンとオリガがグレーミンとターニャの腕の間を通る時、かなりスペースがあって通るのが楽そうで安心感がありました。
 
 ちょっと気になったのは、5拍子のワルツの直前、レンスキーとオリガの間に割って入ったオネーギンに対して、オリガはもうちょっと驚き→歓びの演技を入れて欲しいですかね。さも当然、という感じだと、「振付です」という感じがしすぎてしまって、演劇性に欠けます。
 
 決闘申し込み。
一昨年から、ガニオ氏が手袋を拾って頷くことに関してずっと気になっていたのですが、こちらもオペラ座の解釈のようです。ここ、確かに、ジャン・ジャン・ジャンとキリが良い音が三連続するので、ここに合わせてオネーギンが何かアクションを起こす演技が多いんですけれど、個人的なお勧めは、「手袋に視線を落とす・姉妹、或いはレンスキーを見る・踵を返す」の3セットです。頷くと、本当に殺る気満々! という感じでちょっと場に合わぬ笑いが……。
 

第2場

 THE・王道レンスキー!
特に今回は適度な乱暴さが、やるせなさ、理不尽に対する憤慨、全てを物語っていて至高でした。上手前で手を天に差し出す振りなんか最高と言って良いですね。規定の振りよりも頭を抱える回数も多く、ここに来て感情表現が爆発。この公演、全体的にレンスキーがいいな…………。
 回転がつよいのか、軸がぶれずにキッチリ毎度5回転! 安定感もあります。
 
 パ・ド・トロワ。
一場の時点で思っていましたが、オリガが後ろ脚をレンスキーの脚の間に通すのに苦戦。ここ、身長差などによっては難しいんでしょうね……。
 ここでのレンスキーもとてもよかった。レンスキーは下手で姉妹二人を退けることを非常に遠慮し、柔らかく振り解くのですが、上手からの跳躍は本気。とにかく綺麗な跳躍です! 空中でぴたっと止まる。素晴らしい。 
 
 オネーギンさんの到着です。毎度のことながらお寝坊です(※オネーギンは決闘に2~4時間程度朝寝坊してきたと考えられている)。
マルシャン氏のオネーギンも太腿を叩きません。叩きませんが、衣装が当たってバチンという音はします。痛そう。
 
 決闘。
レンスキーは銃を取り落とさない派でしたね。持ったまま沈みました。わたしは昨日の取り落とした銃に無限の物語性を感じてしまったので、個人的には取り落とす方が好きなのかも知れません。何となく、松本オネーギンのファナーレ氏(二日目)を想起しました。レンスキーの解釈はそれぞれですね。
 
 決闘後、オネーギンを見つめるタチヤーナの凜とした表情の美しいことといったら! 「オネーギンを見つめている」というより、顔を上げ、斜め上を見据えているような感じ。毅然としていて、それはそれはオネーギンに自責の念を、そしてタチヤーナへの愛の萌芽を育む致命的な一手となったことでしょう!
 

第3幕

第1場

 ポロネーズ。相変わらずトランペットが…………。
上手前の軍服の男性が気合い入ってんな~! と思って観ていました。軍人だろうし、これくらいやる気満々でもよいのかも。寧ろ、こちらでは帝都らしい優雅さが必要とされるのではと思っていましたが……。
 少し気になったのは、一斉に上がるリフトのタイミングが結構ばらけたことでしょうか。ここは揃っていて欲しい。
そういえば、17/18シーズンのオペラ座オネーギンの広告もこのポロネーズの正にこの瞬間でした。とても美しかったのでよく覚えています。

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↑こちら。素晴らしい芸術性。
 
 グレーミンとターニャのPDD。
ターニャは断然3幕ですね!! 毅然としていて、非常に似合っています。美しいです。正に夜会の女王です。あれで自信満々に流し目なんてされた日には全人類が惚れてしまいます。
 PDDですが、ロマンスのテンポがかなり遅かった気がします。このバランスが大量にあるPDDでこのテンポとは、なかなか出来るものではありません。技巧が光ります。
オネーギンと再会し、一度振り返ったときのターニャの目線よ。誰だって「少年のように恋をする」でしょう。
 
 幕間の演技パート。
忘れているだけかもしれませんが、レンスキーが仰向けに斃れるのは初めて観たかもしれません! 大体、こちらに背を向けて横向きに死ぬので……。しかし、確かに実際の決闘の際、手の動き的にあれは仰向けに斃れるような斃れ方だった気がします、思い返せば。左足が蟹股風になっていて、”バレエ的な美”ではなく、演劇性が強調されていた印象です。よい。上手側だったので殊更よく見えました。このためのR席だったのかもしれない。
 

第2場

 手紙のPDD。
まず、なによりも安定感が段違いです! 安心して見ていられます。リフトも高く、しっかりしていて、余計な心配は一切不要。
 感情表現もよかったです。「鏡」よりも「手紙」に比重を持ってこられるオネーギンは、いいオネーギンだ。
ガニオ氏の方は、あの王子様フェイスも相俟って、「鏡」の方がメインに見えますもんね。いや、それが悪いということではないですが……。「鏡」、技巧的に難しいですし、魅せ場ですし……。
 
 何よりも驚いたのは、息遣いがはっきり聞こえること。二階席でもよく聞こえました。それも、リフト前の踏ん張りとか、ただの見苦しい荒い呼吸ではなく、ターニャの息を呑む音や、オネーギンの吐息など……。つまり、意識的な演技としてこういう演出になっているということです。素晴らしい。ただ、少々やりすぎかな、とも個人的には思いましたが。折角バレエなので、躍りの中で表現してくれた方がよい気がします。
 
 オネーギンがターニャの手を引いて、順番に回る辺りの場から、オネーギンの動きが激しくなってきます。必死さは伝わってくるのですが、ただ雑なだけのように見える場面もあり、これは好き嫌いが大いに分かれるでしょう。わたしはもう少し丁寧さを残してくれていたほうが好みです。
 
 フランチェスカの一番盛り上がる場面。オネーギンがターニャの両手を後方から握り、跪いて前へ進んでいく場ですが、ここでもやはりスクヴォルツォフ氏やゴメス氏風の演技でした。完全に脚の上に座してしまい、両手を大きく拡げるタイプです。正直に言うと、個人的にはあまり好きではない解釈なので、うーん…………。わたしはしっかり膝で立ち、ターニャ分の間隔だけ腕を開く、という形が凄く好きなのですが……(ヴラディスラフ・ラントラートフ氏やヴラジーミル・シクリャーロフ氏がこのパターン)、流行らないのでしょうか……。
 
 オネーギンの恋文破りで音が全くしない、と書きましたが、ターニャの方は恋文破りが上手い!(?)。ビリビリッという破壊的な音、強行的に押しつける様、とっても素敵でした。何よりも、その後オネーギンに出口を指し示す凜々しさ。つよく美しい女性でした。
但し、その分、オネーギンについて心が揺れ動いている感じは薄く感じたのも事実です。最初から心は決まっていたようにも見えました。
 
 
 そして最後のターニャ。錯乱したように走り回り、いつかのオネーギンのVa. のように特徴的に胸から背を反らし、手は祈るようでも拡げるでもなく、腰の辺りで握りしめるタイプでした。何よりも、やはり何度も書いているように毅然とした表情が似合う! 美しい幕切れとなりました。
 

最後に

 こんなところでしょうか! こんな感じで許して頂けますか!

8600字超えております。長々と失礼致しました、お付き合い有り難う御座いました。

 明日はなんと、マチネ・ソワレと二回公演……そんなことが有り得てよいのだろうか。一日にオネーギンを二回も観るなどと。そんなことが許されてよいのだろうか。わたしの体力は持つのだろうか。もうなんか全てに於いて不安でいっぱいです!!!!

マチネ開演まで9時間を切っておりますので、一度締めさせて頂きたいとおもいます。

それでは、次の公演も成功することを願って!