世界観警察

架空の世界を護るために

オペラ『エヴゲーニー・オネーギン』 DVD, Blu-ray 一覧

 こんばんは、茅野です。

発売開始時間前からきちんとスタンバイしていたのに、ROH のバレエ『ロミオとジュリエット』 U25 席争奪戦に敗れ、意気消沈しております……。余りにも……余りにも瞬殺だった……。チケット争奪戦で敗れるのは久々です。悲しい……。

 

 しかし、『RJ』の神(?)がわたしに微笑まなくても、わたしには最愛の作品があります。『エヴゲーニー・オネーギン』です。この作品に裏切られさえしなければ、わたしはなんだってよいのだ。これは負け惜しみです。

↑ 当ブログの中で断トツで記事数が多い作品でもあります。大好き。

 そんなわけで、今回は『オネーギン』の記事で御座います。

先日、後輩から「『オネーギン』のオペラの映像を貸して欲しい」とお願いされたことを切っ掛けに、一度精査しておこうかな、と思いまして。

 

 今回の趣旨は、「販売されているオペラ『オネーギン』の DVD、Blu-ray を、わかりやすく纏める」ことです。

『オネーギン』は、上演回数が然程多くないにも関わらず、販売されている円盤が10種類以上あります。

 今回は、「『オネーギン』を観たいけど、どの映像を買えばいいのかな?」という疑問を持った方向けに、1『オネーギン』オタクが、可能な限り見易くリスト化したものになります。発売されているもののうち、今のところ2種ほど欠けているのはわかっているので、入手し次第加筆致しますね。

 それぞれの映像毎に、「入手難易度」「字幕の言語」「出演者」「一言評」を書いて参ります。『オネーギン』が初めての方のみならず、色々見較べてみたいオペラ玄人の参考にもなると嬉しいですね。

 

【注意点】

・入手難易度、一言評は筆者の主観に基づきます。

・字幕に関しては、同じ映像でも版によって異なる場合があります。購入前に必ずご自分で確認して下さい。

 

 それでは、お付き合いの程、宜しくお願い致します!

↑ 我が家の『オネーギン』映像集。コレクター型オタクの末路である。

 

 

オペラ映画版(1958)

―――原作のイメージに最も近い映像。『オネーギン』のビジュアルイメージを掴みたいなら見逃せない一枚。

Eugene Onegin / [DVD]

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Amazon

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕無し。英。

【出演】

オネーギン:エヴゲーニー・キブカロ(ヴァディム・メドヴェージェフ)

タチヤーナ:ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(アリアドナ・シェンゲラヤ)

レンスキー:アントン・グリゴリエフ(イゴール・オゼロフ)

オリガ:ラリサ・アヴデーエワ(スヴェトラーナ・ネモリアエワ)

グレーミン:イヴァン・ペトロフ(イヴァン・ペトロフ

指揮:ボリス・ハイキン

監督:ロマン・チホミロフ

【一言評】

 歌は一流の歌手が、演技は俳優が務めているオペラ映画版。演奏・演出共に非常にクオリティが高く、この演目のファンならば是非とも入手しておきたい一枚。但し、オペラ全曲ではなく、所々カットがあるので注意。オペラ玄人の皆様に於かれましても、ヴィシネフスカヤ様の名前だけで必聴確定。

 

オペラ映画版(1988)

―――名盤に映像を付けたオペラ映画。オペラ映画がお好きなら。

Amazon にはページ自体が存在せず。

【入手難易度】在庫僅少気味

【字幕】日本語字幕無し。英、仏、独、伊、西、中。

【出演】

オネーギン:ベルント・ヴァイクル(ミハイル・ドチュロマンスキー)

タチヤーナ:テレサ・クビアク(マグダレーナ・ヴァーシャリョヴァー)

レンスキー:スチュアート・バロウズ(エイミル・ホルヴァート)

オリガ:ユリア・ハマリ(カミラ・マガーロヴァー)

グレーミン:ニコライ・ギャウロフ(プシェミル・コチー)

指揮:ゲオルク・ショルティ

監督:ペトル・ヴァイクル

【一言評】

 こちらもオペラ映画。今作も全曲ではなく、曲のカットがあるので注意。映像は1958年度版の方が原作に近いと思いますが、こちらも美しいです。聴き所は、やはりギャウロフ様のグレーミン。

↑ 個人的なレビューはこちらから。

 

グラインドボーン音楽祭(1994)

―――シンプルな演出で、歌唱を楽しむ一枚。

Eugene Onegin [DVD]

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【入手難易度】新品はかなり難しい

【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、伊、西、葡、日。

【出演】

オネーギン:ヴォイチェシ・ドラボヴィッチ

タチヤーナ:エレーナ・プロキナ

レンスキー:マーティン・トンプソン

オリガ:ルイーズ・ウィンター

グレーミン:フルーデ・オルセン

指揮:アンドリュー・デイヴィス

演出:グラハム・ヴィック

【一言評】

 後述のカーセン演出よりも簡素なヴィック演出。殆ど演奏会形式並ですが、カメラワークと演技によって、充分楽しめる仕上がりになっています。主要歌手陣は当時皆若手で、現在と聴き比べるのも乙。但し、映像が古いので、音質や画質は割と粗め。

 

バーデン・バーデン音楽祭(1998)

―――入門にも人気の一枚。買って損はないでしょう。

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西。

【出演】

オネーギン:ヴラディーミル・グルシュチャク

タチヤーナ:オーラ・ボイラン

レンスキー:ミヒャエル・ケーニヒ

オリガ:アンナ・バーフォード

グレーミン:ミハイル・シェロミアンスキ

指揮:ゲンナディー・ロジェストヴェンスキー

演出:ニコラウス・レーンホフ

【一言評】

 入門向きと評判の一枚。少々照明が暗めだが、『オネーギン』に求められる簡素さと写実性のバランスが丁度良い。オネーギンさんの演技が非常に良いです。白眉はロジェストヴェンスキー指揮のオケ。

 

ボリショイ劇場(2000)

―――「この映像から『オネーギン』を観た人は全員この作品が好きになる」と言われている伝説の一枚。

【入手難易度】困難

【字幕】日本語字幕付きのものは存在するが、非常に入手困難。そうでないものは中古で手に入ることも。

【出演】

オネーギン:ヴラディーミル・レトキン

タチヤーナ:マリヤ・ガヴリーロワ

レンスキー:ニコライ・バースコフ

オリガ:エレーナ・ノヴァーク

グレーミン:アイク・マルティロシャン

指揮:マルク・エルムレル

演出:ボリス・ポクロフスキー

【一言評】

 『オネーギン』上演史上、恐らく最も豪華、最も写実的な伝説のポクロフスキー演出。この映像を観る機会があるのなら、観ないという選択肢は存在しない。「この映像から『オネーギン』を観た人は、必ずこの作品が好きになる」というジンクスが存在し、実際に、わたしを含めて、『オネーギン』ファンにはここから入門した人も多い。入手困難だが、『オネーギン』が好きなら絶対に手に入れたい名盤。

 

メトロポリタン歌劇場(2007)

―――「オネーギン役を演じるために生まれてきた」と称されるディミトリー・ホロストフスキー主演、シンプルながら美しく、人気の高いカーセン演出! 至高の一枚。

【入手難易度】在庫僅少気味

【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西、中。

【出演】

オネーギン:ディミトリー・ホロストフスキー

タチヤーナ:ルネ・フレミング

レンスキー:ラモン・ヴァルガス

オリガ:エレーナ・ザレンバ

グレーミン:セルゲイ・アレクサーシキン

指揮:ヴァレリーゲルギエフ

演出:ロバート・カーセン

【一言評】

 オネーギン役を最大の嵌まり役とするホロストフスキー様に、ロシアオペラの指揮には定評のあるゲルギエフ指揮と、歌手・指揮者共に最高水準の上演。更に、愛好家の間でも非常に人気の高いカーセン演出という、最強の「鉄板」な一枚。個人的にも、最もリピートした一枚です。迷ったらこれ!

 

ボリショイ劇場(2009)

―――円卓を中心とした、人気演出家の演出。本国首都クオリティ。

【入手難易度】容易

【字幕】DVD版は日本語字幕無し、英、仏、独、伊、西。Blu-rayは日本語字幕有り。追加は日、韓。

【出演】

オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェン

タチヤーナ:タチヤーナ・モノガロワ

レンスキー:アンドレイ・ドゥナーエフ

オリガ:マルガリータマムシロワ

グレーミン:アナトーリー・コチェルガ

指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ

演出:ディミトリー・チェルニャコフ

【一言評】

 数年前に Blu-ray 版が発売されたボリショイの上演。今をときめくチェルニャコフ演出、タイトルロールには常連クヴィエチェン。Blu-ray には日本語字幕が付くようですし(わたしは大分前に DVD 版を購入していたので Blu-ray 版は未所持)、モダンながらも基本的なところは逸脱しないので、手軽に観られてよいかもしれません。見所は3幕のオネーギンのジャケット。

 

ネーデルラント・オペラ(2011)

―――奇抜演出筆頭格。『オネーギン』の演出は 5, 6 種類以上見較べている、というような玄人向け。

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西、蘭。

【出演】

オネーギン:ボー・スコウフス

タチヤーナ:クラッシミラ・ストヤノヴァ

レンスキー:アンドレイ・ドゥナーエフ

オリガ:エレーナ・マクシモワ

グレーミン:ミハイル・ペトレンコ

指揮:マリス・ヤンソンス

演出:ステファン・ヘアハイム

【一言評】

 余りに奇抜な演出に、ブーイングが飛んだという『オネーギン』にしては珍しい上演寧ろ、何故 DVD が出たのか不思議演出に関しては評価し難いが、歌唱は安定しています。CD で欲しい。

 

バレンシア・オペラ(2011)

―――新国『ボリス・ゴドゥノフ』でもお馴染みトレリンスキ演出。こちらもかなり玄人向け。

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、西、中、韓、日。

【出演】

オネーギン:アルトゥール・ルシンスキー

タチヤーナ:クリスティーネ・オポライス

レンスキー:ディミトリー・コルチャック

オリガ:レナ・ベルキナ

グレーミン:ギュンター・グロイスベック

指揮:オメール・メイア・ウェルバー

演出:マリウシュ・トレリンスキ

【一言評】

 個人的には、歌唱も演出もそんなに評価できないのですが、入手は容易。嵌まり役として『オネーギン』愛好家の間でも人気の高い、コルチャックのレンスキーは大変よいです。

 

メトロポリタン歌劇場(2013)

―――『オネーギン』の新スタンダード。出演者も堅い!

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、西、中、韓。

【出演】

オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェン

タチヤーナ:アンナ・ネトレプコ

レンスキー:ピョートル・ベチャワ

オリガ:オクサーナ・ヴォルコワ

グレーミン:アレクセイ・タノヴィツキー

指揮:ヴァレリーゲルギエフ

演出:デボラ・ワーナー

【一言評】

 主要出演者が東欧系で統一された、東欧オペラ特化布陣! 演出も写実的で評価の高いワーナー演出と、入門に最適な上演。但し、日本語字幕がないことだけが玉に瑕。見所は、フランスパンを丸かじりしながら遅刻してくる決闘舐めプなオネーギン。

 

ロイヤル・オペラ・ハウス(2013)

―――英国ロイヤル・オペラ・ハウスでの上演。安定感はあります。

【入手難易度】容易

【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、伊、日、韓。

【出演】

オネーギン:サイモン・キーンリーサイド

タチヤーナ:クラッシミラ・ストヤノヴァ

レンスキー:パーヴォル・ブレスリク

オリガ:エレーナ・マクシモワ

グレーミン:ピーター・ローズ

指揮:ロビン・ティチアーティ

演出:カスパー・ホルテン

【一言評】

 歌手陣は『オネーギン』出演率の高い安定メンバー。全体的に「可も無く不可も無い」といった趣きな当上演。歌唱もまずまず、演出は奇抜でこそないが、そんなに評価できるものでもない。見所はレンスキーの椅子投げ。

 

最後に

 通読ありがとうございました! 参考になれば幸いです。

個人的なお勧めは、やはりボリショイか MET で上演されたものですかね。堅いですね。

 

 このような記事を、ずっと書こう書こうと思いつつサボっておりました。申し訳ない。

今回よりも更に骨折りにはなりますが、いつかこの CD 版も書いておきたいですね。

 

 しかし、最近はストリーミングサービスの方が主流なせいか、DVD, Blu-ray の新作が激減しており、コレクターオタクとしては非常に寂しいです。是非とも出して欲しいところ。買うので……わたしが……。

個人的にはマリインスキー歌劇場のステパニュク演出のものが欲しすぎるのですが。あれ一生観ていられる。

 

 皆様のお気に入りの映像はどちらでしょうか? 『オネーギン』の感想はなんでも大歓迎ですので、是非とも教えて下さいませ。匿名でも構いませんので(マシュマロ)。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また別の記事でもお目に掛かれれば幸いです!