こんばんは、茅野です。
発売開始時間前からきちんとスタンバイしていたのに、ROH のバレエ『ロミオとジュリエット』 U25 席争奪戦に敗れ、意気消沈しております……。余りにも……余りにも瞬殺だった……。チケット争奪戦で敗れるのは久々です。悲しい……。
しかし、『RJ』の神(?)がわたしに微笑まなくても、わたしには最愛の作品があります。『エヴゲーニー・オネーギン』です。この作品に裏切られさえしなければ、わたしはなんだってよいのだ。これは負け惜しみです。
↑ 当ブログの中で断トツで記事数が多い作品でもあります。大好き。
そんなわけで、今回は『オネーギン』の記事で御座います。
先日、後輩から「『オネーギン』のオペラの映像を貸して欲しい」とお願いされたことを切っ掛けに、一度精査しておこうかな、と思いまして。
今回の趣旨は、「販売されているオペラ『オネーギン』の DVD、Blu-ray を、わかりやすく纏める」ことです。
『オネーギン』は、上演回数が然程多くないにも関わらず、販売されている円盤が10種類以上あります。
今回は、「『オネーギン』を観たいけど、どの映像を買えばいいのかな?」という疑問を持った方向けに、1『オネーギン』オタクが、可能な限り見易くリスト化したものになります。発売されているもののうち、今のところ2種ほど欠けているのはわかっているので、入手し次第加筆致しますね。
それぞれの映像毎に、「入手難易度」「字幕の言語」「出演者」「一言評」を書いて参ります。『オネーギン』が初めての方のみならず、色々見較べてみたいオペラ玄人の参考にもなると嬉しいですね。
【注意点】
・入手難易度、一言評は筆者の主観に基づきます。
・字幕に関しては、同じ映像でも版によって異なる場合があります。購入前に必ずご自分で確認して下さい。
それでは、お付き合いの程、宜しくお願い致します!
↑ 我が家の『オネーギン』映像集。コレクター型オタクの末路である。
- オペラ映画版(1958)
- オペラ映画版(1988)
- グラインドボーン音楽祭(1994)
- バーデン・バーデン音楽祭(1998)
- ボリショイ劇場(2000)
- メトロポリタン歌劇場(2007)
- ボリショイ劇場(2009)
- ネーデルラント・オペラ(2011)
- バレンシア・オペラ(2011)
- メトロポリタン歌劇場(2013)
- ロイヤル・オペラ・ハウス(2013)
- 最後に
オペラ映画版(1958)
―――原作のイメージに最も近い映像。『オネーギン』のビジュアルイメージを掴みたいなら見逃せない一枚。
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕無し。英。
【出演】
オネーギン:エヴゲーニー・キブカロ(ヴァディム・メドヴェージェフ)
タチヤーナ:ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(アリアドナ・シェンゲラヤ)
オリガ:ラリサ・アヴデーエワ(スヴェトラーナ・ネモリアエワ)
指揮:ボリス・ハイキン
監督:ロマン・チホミロフ
【一言評】
歌は一流の歌手が、演技は俳優が務めているオペラ映画版。演奏・演出共に非常にクオリティが高く、この演目のファンならば是非とも入手しておきたい一枚。但し、オペラ全曲ではなく、所々カットがあるので注意。オペラ玄人の皆様に於かれましても、ヴィシネフスカヤ様の名前だけで必聴確定。
オペラ映画版(1988)
―――名盤に映像を付けたオペラ映画。オペラ映画がお好きなら。
↑ Amazon にはページ自体が存在せず。
【入手難易度】在庫僅少気味
【字幕】日本語字幕無し。英、仏、独、伊、西、中。
【出演】
オネーギン:ベルント・ヴァイクル(ミハイル・ドチュロマンスキー)
タチヤーナ:テレサ・クビアク(マグダレーナ・ヴァーシャリョヴァー)
レンスキー:スチュアート・バロウズ(エイミル・ホルヴァート)
オリガ:ユリア・ハマリ(カミラ・マガーロヴァー)
グレーミン:ニコライ・ギャウロフ(プシェミル・コチー)
指揮:ゲオルク・ショルティ
監督:ペトル・ヴァイクル
【一言評】
こちらもオペラ映画。今作も全曲ではなく、曲のカットがあるので注意。映像は1958年度版の方が原作に近いと思いますが、こちらも美しいです。聴き所は、やはりギャウロフ様のグレーミン。
↑ 個人的なレビューはこちらから。
グラインドボーン音楽祭(1994)
―――シンプルな演出で、歌唱を楽しむ一枚。
【入手難易度】新品はかなり難しい
【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、伊、西、葡、日。
【出演】
オネーギン:ヴォイチェシ・ドラボヴィッチ
タチヤーナ:エレーナ・プロキナ
レンスキー:マーティン・トンプソン
オリガ:ルイーズ・ウィンター
グレーミン:フルーデ・オルセン
指揮:アンドリュー・デイヴィス
演出:グラハム・ヴィック
【一言評】
後述のカーセン演出よりも簡素なヴィック演出。殆ど演奏会形式並ですが、カメラワークと演技によって、充分楽しめる仕上がりになっています。主要歌手陣は当時皆若手で、現在と聴き比べるのも乙。但し、映像が古いので、音質や画質は割と粗め。
バーデン・バーデン音楽祭(1998)
―――入門にも人気の一枚。買って損はないでしょう。
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西。
【出演】
オネーギン:ヴラディーミル・グルシュチャク
タチヤーナ:オーラ・ボイラン
レンスキー:ミヒャエル・ケーニヒ
オリガ:アンナ・バーフォード
グレーミン:ミハイル・シェロミアンスキ
指揮:ゲンナディー・ロジェストヴェンスキー
演出:ニコラウス・レーンホフ
【一言評】
入門向きと評判の一枚。少々照明が暗めだが、『オネーギン』に求められる簡素さと写実性のバランスが丁度良い。オネーギンさんの演技が非常に良いです。白眉はロジェストヴェンスキー指揮のオケ。
ボリショイ劇場(2000)
―――「この映像から『オネーギン』を観た人は全員この作品が好きになる」と言われている伝説の一枚。
【入手難易度】困難
【字幕】日本語字幕付きのものは存在するが、非常に入手困難。そうでないものは中古で手に入ることも。
【出演】
オネーギン:ヴラディーミル・レトキン
タチヤーナ:マリヤ・ガヴリーロワ
レンスキー:ニコライ・バースコフ
オリガ:エレーナ・ノヴァーク
グレーミン:アイク・マルティロシャン
指揮:マルク・エルムレル
演出:ボリス・ポクロフスキー
【一言評】
『オネーギン』上演史上、恐らく最も豪華、最も写実的な伝説のポクロフスキー演出。この映像を観る機会があるのなら、観ないという選択肢は存在しない。「この映像から『オネーギン』を観た人は、必ずこの作品が好きになる」というジンクスが存在し、実際に、わたしを含めて、『オネーギン』ファンにはここから入門した人も多い。入手困難だが、『オネーギン』が好きなら絶対に手に入れたい名盤。
メトロポリタン歌劇場(2007)
―――「オネーギン役を演じるために生まれてきた」と称されるディミトリー・ホロストフスキー主演、シンプルながら美しく、人気の高いカーセン演出! 至高の一枚。
【入手難易度】在庫僅少気味
【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西、中。
【出演】
オネーギン:ディミトリー・ホロストフスキー
タチヤーナ:ルネ・フレミング
レンスキー:ラモン・ヴァルガス
オリガ:エレーナ・ザレンバ
グレーミン:セルゲイ・アレクサーシキン
演出:ロバート・カーセン
【一言評】
オネーギン役を最大の嵌まり役とするホロストフスキー様に、ロシアオペラの指揮には定評のあるゲルギエフ指揮と、歌手・指揮者共に最高水準の上演。更に、愛好家の間でも非常に人気の高いカーセン演出という、最強の「鉄板」な一枚。個人的にも、最もリピートした一枚です。迷ったらこれ!
ボリショイ劇場(2009)
―――円卓を中心とした、人気演出家の演出。本国首都クオリティ。
【入手難易度】容易
【字幕】DVD版は日本語字幕無し、英、仏、独、伊、西。Blu-ray版は日本語字幕有り。追加は日、韓。
【出演】
オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェン
タチヤーナ:タチヤーナ・モノガロワ
レンスキー:アンドレイ・ドゥナーエフ
グレーミン:アナトーリー・コチェルガ
指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
演出:ディミトリー・チェルニャコフ
【一言評】
数年前に Blu-ray 版が発売されたボリショイの上演。今をときめくチェルニャコフ演出、タイトルロールには常連クヴィエチェン。Blu-ray には日本語字幕が付くようですし(わたしは大分前に DVD 版を購入していたので Blu-ray 版は未所持)、モダンながらも基本的なところは逸脱しないので、手軽に観られてよいかもしれません。見所は3幕のオネーギンのジャケット。
ネーデルラント・オペラ(2011)
―――奇抜演出筆頭格。『オネーギン』の演出は 5, 6 種類以上見較べている、というような玄人向け。
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、伊、西、蘭。
【出演】
オネーギン:ボー・スコウフス
タチヤーナ:クラッシミラ・ストヤノヴァ
レンスキー:アンドレイ・ドゥナーエフ
オリガ:エレーナ・マクシモワ
グレーミン:ミハイル・ペトレンコ
指揮:マリス・ヤンソンス
演出:ステファン・ヘアハイム
【一言評】
余りに奇抜な演出に、ブーイングが飛んだという『オネーギン』にしては珍しい上演。寧ろ、何故 DVD が出たのか不思議。演出に関しては評価し難いが、歌唱は安定しています。CD で欲しい。
バレンシア・オペラ(2011)
―――新国『ボリス・ゴドゥノフ』でもお馴染みトレリンスキ演出。こちらもかなり玄人向け。
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、西、中、韓、日。
【出演】
オネーギン:アルトゥール・ルシンスキー
タチヤーナ:クリスティーネ・オポライス
レンスキー:ディミトリー・コルチャック
オリガ:レナ・ベルキナ
グレーミン:ギュンター・グロイスベック
指揮:オメール・メイア・ウェルバー
演出:マリウシュ・トレリンスキ
【一言評】
個人的には、歌唱も演出もそんなに評価できないのですが、入手は容易。嵌まり役として『オネーギン』愛好家の間でも人気の高い、コルチャックのレンスキーは大変よいです。
メトロポリタン歌劇場(2013)
―――『オネーギン』の新スタンダード。出演者も堅い!
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕無し。英、独、仏、西、中、韓。
【出演】
オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェン
タチヤーナ:アンナ・ネトレプコ
レンスキー:ピョートル・ベチャワ
オリガ:オクサーナ・ヴォルコワ
グレーミン:アレクセイ・タノヴィツキー
演出:デボラ・ワーナー
【一言評】
主要出演者が東欧系で統一された、東欧オペラ特化布陣! 演出も写実的で評価の高いワーナー演出と、入門に最適な上演。但し、日本語字幕がないことだけが玉に瑕。見所は、フランスパンを丸かじりしながら遅刻してくる決闘舐めプなオネーギン。
ロイヤル・オペラ・ハウス(2013)
―――英国ロイヤル・オペラ・ハウスでの上演。安定感はあります。
【入手難易度】容易
【字幕】日本語字幕有り。英、独、仏、伊、日、韓。
【出演】
オネーギン:サイモン・キーンリーサイド
タチヤーナ:クラッシミラ・ストヤノヴァ
レンスキー:パーヴォル・ブレスリク
オリガ:エレーナ・マクシモワ
グレーミン:ピーター・ローズ
指揮:ロビン・ティチアーティ
演出:カスパー・ホルテン
【一言評】
歌手陣は『オネーギン』出演率の高い安定メンバー。全体的に「可も無く不可も無い」といった趣きな当上演。歌唱もまずまず、演出は奇抜でこそないが、そんなに評価できるものでもない。見所はレンスキーの椅子投げ。
最後に
通読ありがとうございました! 参考になれば幸いです。
個人的なお勧めは、やはりボリショイか MET で上演されたものですかね。堅いですね。
このような記事を、ずっと書こう書こうと思いつつサボっておりました。申し訳ない。
今回よりも更に骨折りにはなりますが、いつかこの CD 版も書いておきたいですね。
しかし、最近はストリーミングサービスの方が主流なせいか、DVD, Blu-ray の新作が激減しており、コレクターオタクとしては非常に寂しいです。是非とも出して欲しいところ。買うので……わたしが……。
個人的にはマリインスキー歌劇場のステパニュク演出のものが欲しすぎるのですが。あれ一生観ていられる。
皆様のお気に入りの映像はどちらでしょうか? 『オネーギン』の感想はなんでも大歓迎ですので、是非とも教えて下さいませ。匿名でも構いませんので(マシュマロ)。
それでは、今回はここでお開きと致します。また別の記事でもお目に掛かれれば幸いです!