おはようございます、茅野です。
東京は気温が乱高下しておりますね。一体全体どうなっているんだか。今日はこんなにも寒かったのに、これからまた暖かくなるって本当ですか?
さて、今回から、本格的に先日のデンマーク遠征の旅日記を纏めていきたいと思います。
旅の概要や、11月のコペンハーゲンについて纏めたプロローグ回はこちらから。
↑ いきなりかっ飛ばして長文書いてしまいました。ゆっくりお読みください。
今まで通り、大体「1記事に1日分」で進めたいと思っています。画像を多く貼るので、読み込みに時間が掛かるかもしれません。ご了承ください。
今回は、出発日の10月31日~到着した11月1日をお送りします。初日は夕方からスタートですし、移動だけなので、最初はこのような形で参ります。
到着早々、トラブルの連続で、初っぱなからクライマックス感がありますが、まだまだ旅は始まったばかりです。笑いながら読んで頂けたら幸いですね。
それでは、お付き合いのほど、宜しくお願い致します!
出発・飛行機
自宅を出たのはハロウィンの夕方のこと。
実は、ギリギリのギリギリまでこの記事を書いていました。脱稿して10分後にスーツケースを持って家を出る、という脳筋スケジュール。間に合って良かったです。
出発は成田空港からで、夜の便です。出発前、すでに空港のお店は殆ど閉まっていたので、唯一開いていたダイナーでラーメンを食べました。デンマークではひたすらパン生活なので、後にこの選択が大正解であったことが判明します。
今回行き帰りに搭乗したのはエミレーツ航空で、乗るのは初めてでした。直行便ではなく、経由をするのも実は初めて。
↑ 最初に乗った飛行機。
尾翼だけではなく、ジェットエンジンのアラビア書道も最高です。
添乗員のお姉さんに惚れかけた小話
席に着き、まずは前座席のアメニティ類や画面などを確認。
アメニティが入った袋が硬くて開けられず、添乗員さん(※丸顔に黒髪で、赤い口紅の印象的な明るい美女。国籍不明)に「これ、開けて貰えませんか?」と手渡すと……、お姉さんの手元から「バキィッ」と、何かが明確に破壊される音が!
「開いたわよ!」と言われ、返して貰うと……、なんとチャックが完全に破壊されていたのである! 可愛い顔して、とんでもないパワフルお姉さんである。
思いっきり破壊したことに気がついたのか、お姉さんは困ったようにウィンク。可愛い(迫真)。惚れそう(ちょろい)。
そのパワフル素敵なお姉さんは、わたくしの区画の担当だったようで、その後も色々と神対応をして貰い、好感度爆上がりでした。エミレーツ航空、いいな……(ちょろい)。
もうアンケートか何かで、名指しで賞賛したいくらいでしたが、運悪くいつもネームプレートが見えず、まじまじと胸元を覗き込むのも失礼極まりないので、結局お名前は判明せず……。
いやもう本人に伝わって欲しいですが、間違いなくこんな日本語のブログになんて辿り着かないと思うので、少し寂しいですね。
彼女の為にも、エミレーツ航空使ってくださいとダイレクトマーケティングしておきます。めっちゃ素敵な添乗員さんがいるので(その方が特別素敵だっただけで、他の方も皆優秀です)。
最後、降りるときに、そのお姉さんが機内に流れていた歌を口ずさみながら体を揺らしていて、マジで可愛かったです。理性が無ければナンパしていたところだった。危ない危ない。12時間のフライトの疲れとか、全部どこか行きましたとも、ええ。
機内食
みんな大好き機内食をご紹介するコーナーです。
行きは、成田→ドバイ便、ドバイ→コペンハーゲン便で、各2食、合計4食頂きました。順番にご紹介します。
最初は夕食(時間的には日付変更線あたりで、完全に夜食)扱いで、メニュー曰く、玄米サラダ、牛肉のミートボール、マンゴーチーズケーキ。こちらが UAE 風扱いのようで、選ばなかった方は和風の照り焼きチキンだったようです。
↑ エスニックでスパイシー系の味付け。玄米サラダに胡麻ドレッシングなのが地味に美味。
お次が朝食扱いで、季節のフレッシュフルーツ、フルーツコンポート添えヨーグルト、きのこオムレツ、フルーツマフィンです。選ばなかった方は和風の鮭の塩焼きだった模様。二回とも非・和風にしてしまいました。
↑ THE・朝ごはんという感じ。
話は前後しますが、次にドバイ→コペンハーゲン便の機内食をご紹介。
最初は軽食で、こちらはタマゴとチェダーチーズのホットサンド。選ばなかった方は、リンゴとシナモンのデニッシュでした。いきなりデニッシュの洗礼!
↑ 恐ろしく箱を開けるのが下手でごめん。だって熱でパンにくっついちゃってたんだもん(言い訳)。
個人的には熱したリンゴが苦手なので、今回は選びませんでしたが、やはりコペンハーゲンの民にはリンゴとシナモン味のデニッシュは大変人気のようで、機内はシナモンの香りに包まれていました。
最後にランチ扱いで、パスタサラダ、トマトケッパーソースのチキンとバスマティライス、アップルクランブルでした。選ばなかった方は、ビーフ・グヤーシュとのこと。グヤーシュ美味しいですよね、結構迷った。でもわたしは米が食べたかった。
↑ 今回はどちらが UAE 寄りでどちらがデンマーク寄りなのか判断が難しいメニューでした。インド米と東欧料理か……、うーん……美味だからヨシ!
座席に缶詰めにされているので、お食事ってやはり気晴らしに良いですよね。牢獄や船上などでお食事は最も喜ばれるというのは、間違いなく「空腹だから」以上の理由があると思います。
いえ、機内は(動けないこと以外は)快適でしたけれども。コペンハーゲン遠いんだもん!
ターキッシュ・エアラインも然りですけれど、中東系の航空会社の機内食についているおしぼりって、香水みたいな強い匂いがしますよね。殺菌作用があるのか疑問ですが、単純にいい匂いなので、嫌いじゃないです。
機内のコンテンツ
エミレーツ航空のコンテンツを少しご紹介。
尤も、行きは意識的に沢山睡眠を取るようにしていたので、そこまで画面で遊びませんでした。というのも、到着後数時間で『オネーギン』を観る予定だったからです。割と強行スケジュールである。
このわたくしが『オネーギン』で寝落ちるなんてことは有り得ないにしても、やはり万全のコンディションで挑みたいもの(※こちらフラグです)。どうせ帰りにも長く飛行機には乗るのだし、行きは休息することを心がけました。
いきなり政治的な話題ですが、エミレーツ航空の地図では、西サハラはモロッコ領ということになっているのですねえ。ふーん、なるほどぉ……、まあ湾岸の君主制の国ってモロッコ支持だもんなあ、しかし、そうかあ……へぇ~……。
↑ ※実はわたくし、国際政治の研究会で西サハラ問題の研究主任を務めていたことがあり、大変に関心があります。現在のウクライナやパレスチナに比べたら「地味」かもしれませんが、こちらも長いこと解決していないのです。皆様、目を向けてください。
行きでは、主に「Discover UAE」という、UAE の紹介ビデオをずっと観ていました。ホテルやレストランのコマーシャルが多かったですね。
映画などは日本でも観られるものが多いですが、こういう映像こそ、ここでしか観られませんのでね、今のうちに観ておこうかと思いまして。
↑ かなりいっぱいあって、全部観ようと思うと結構時間掛かります。でも全部観ました。
隣の席のスペインから日本へ観光旅行に来たお兄さんに見つかり、「何観てんのww」と言われたので、「え、コマーシャルだけど……(真顔)」と答え、ドン引きさせておきました。ゆめゆめ、わたくしのことを日本人代表と捉えなさいますな。
彼には、間違いなくドバイへ観光旅行に行く日本人だと思われたことでしょう。ところがどっこい、行き先はコペンハーゲンなのであった(我ながら、なんだコイツ……)。
ドバイ国際航空
約12時間掛け、ドバイ国際空港へ!
所属していた国際政治の研究会では、主にアラビア語圏の政治を担当していて、大好きでのめり込んでいたのですが、実は湾岸地域には一度も来たことが無かったので、現地時間では早朝なのにテンション爆上がりの日本人。
↑ エミレーツの飛行機がいっぱい。窓もオシャレです。
トランジットなので、国内に入ることはしませんでしたが、いずれ必ずや……! と誓ったのでありました。コマーシャルもいっぱい観たし。
しかし、陰キャコミュ障のオタクが、ドバイという特異な地で楽しく遊べるであろうか?
空港はえげつなく広く、空港の建物中を電車が走っていたり(どういうこと?)、タクシーや救急車も走っていました(???)。流石ドバイ、考え方が常人とは違うぜ。
電車には乗りましたが、案内表示が右から左からと交互に流れてくるのが面白かったです。
右から左から交互に流れてくる電光掲示板面白いから見て🇬🇧🇦🇪 pic.twitter.com/uZRYEWDBaR
— 茅野 (@a_mon_avis84) 2023年11月1日
↑ アラビア語は右から書くので、このような形になります。従って、日本語や英語の文章の中にアラビア語を交ぜると、限りなく不可解な現象が起きたりします。
3時間ほど空港内に滞在し、TAX FREE のお土産物屋さんを散策していました。物凄く広いので、飽きませんね。
結局買いませんでしたが、シェイク・ムハンマド殿下のご著書が色々な言語で売られていて、買うか非常に迷いました。アラビア語は勿論のこと、英語、ロシア語、中国語なども。日本語があればな~。誰か翻訳してくれないかな……(他力本願)。
↑ この表紙がズラリと平積みされているのは壮観でした。そういえば、日本もドバイ(連邦の構成国の一つですが)もデンマークも、君主制国家ですね。
娘ながら、我が父の交友関係は謎なのですが、彼はご子息のハムダン皇太子にはお目に掛かったことがあるらしい。曰く、お金の使い方が凄まじいスポーツマンらしいです。
ドバイ国際空港の特徴は、アナウンスが一切ないことで、空港内は比較的静かです。乗り遅れそうでも呼び出してくれないので、気をつけましょう。
しっかし、アラビア語は本当に美しい。文字も発音も大層美しい。実は大学の第三外国語(※語学部にいたので、第二に英語を入れて、第三になる)でアラビア語を履修していたので、ほんの少しだけ縁があるのですが、個人的には、あらゆる言語の中でも最も心引かれる発音だと思いますね。恐ろしく難しいですが……。
束の間のドバイ滞在も終わりを迎え、コペンハーゲン行きの飛行機に乗り換えます。
空から観たドバイをお裾分け。
↑ 手前には均整の取れた美しい建物群、奥には聳え立つ摩天楼が。
空から観ても美しいですね、ドバイは。
コペンハーゲン行きの飛行機内では主に寝て過ごし、上記の機内食を食べたくらいで、特に何もしませんでした。
アラビア語もデンマーク語も初歩しかわからないので、どちらの言語でのアナウンスも少ししかわからず(シチュエーションや、その後の英語アナウンスで意味は概ね察せるにしても)、歯痒い思いをしつつ、リスニングテスト状態でした。
ここからは日本語とはお別れです。
コペンハーゲンに近づくと、ドバイとは対照的に、大量の風力発電機がお出迎え。
↑ これ、ポケモンだったら絶対絶妙な配置で波乗りで進めないやつですよ(伝われ)。
風の街であることがよくわかりますね。
到着・空港にて
計20時間ほどかけて、コペンハーゲン国際空港に到着!
デンマーク語の案内が出始め、早くも興奮するデンマーク語初心者の図。
空港では、一ヶ所だけ日本語での表記もありました。嬉しい。
↑ しかし、今時そんなに日本人がコペンハーゲンに行くかしら?
空港ではスーツケースを回収し、中から防寒具を取り出し(重要です)、少しだけ両替をしました(※前回の記事にも書いていますが、両替は基本必要ありません)。
トラブル① クレジットカードが使えない
さてそれではコペンハーゲン市内に繰り出そう!……としたところ、早くもトラブル発生。
前回の記事でもご紹介した「コペンハーゲンカード」が、何故か買えないのです。クレジットカードが承認されず、何度も弾かれてしまいます。
違うクレジットカードに切り替えてもダメで、スマホを再起動してもダメ。デンマークでクレジットカードが使えない状況はかなり厳しいので、初っぱなから不安な気持ちになりました。
クレカが使えないとか、ロシアじゃないんだからさ(※リンク先記事参照)。
困ってしまったので、空港のインフォメーションカウンターに行ってみました。以下、簡単な英会話。
わたし「こんにちは、コペンハーゲンカードを買いたいんだけれど、クレジットカードが認証されなくて買えません。どうしたらいいですか?」
係のおじさま「今は完全にアプリ化されてしまっていて、現金対応とかできないんだよね。悪いんだけど、コペンハーゲン中央駅の近くにあるビジターセンターに行ってみてくれる? そこならなんとかしてくれると思うから。中央駅までは、シングルチケットで行ってね、左手に券売機があるから。買い方はわかる?」
わたし「わからなく……はないけどぉ。そうですか、じゃあそうします。ありがとう~……」
いや、シングルチケットを買うのが面倒だからここでコペンハーゲンカードを買いたかったんだが?
……その時知りましたが、コペンハーゲンカードは事前購入が可能です。現地に着いてからアクティベートすればよいのです。
前回の記事で、
訪れる前に購入しておき、到着したらアクティベートするのがお勧めです。
と書いているのはそのためです。下手をすると、わたくしと同じ轍を踏むことになります。
形態が独自すぎると評判のシングルチケットを券売機で購入してみます。買い方は、聖書「地球の歩き方」に書いてあるのを予習してきたので、問題ありません。
とはいえ、勿論初めて買うのでおっかなびっくり。券売機では普通にクレジットカードが使えて、首をかしげるツーリスト。どうしたコペンハーゲンカードアプリ。
カードが買えていれば必要なかった、約600円の無駄な出費でした。運賃が高いのである。というか、コペンハーゲンでは全てが高いのである。
チケットを購入し、駅のホームへ。改札がなく、無賃乗車はしていないにもかかわらずやっぱり不安になるツーリスト。
駅のホームは半屋外にあり極寒で(※ドバイ比)、飛行機でお隣の席だった、ドバイから観光に来たアラブ人のお姉さんがとても心配になる赤の他人。厚着してね。
吐く息が白く、ああ、コペンハーゲンに来たのだなあ、それも11月に……、と実感しました。
コペンハーゲン中央駅には、「S-tog エストー」と呼ばれる電車で行きます。
座席は日本でいう電車よりも新幹線寄りで、静かで速く、スタイリッシュで、快適です。
↑ 電車内。
仕切りのドアはセンサー式ですが、センサーが上部にあるので、余程の巨人以外は上に手を翳して開けましょう。
ちなみに、エストー自体の出入り口はボタン開閉式で、常に開いているわけではないので注意。理由は、「開けっ放しだと寒いから」だろうな、ということは、容易に想像が付きました。
「ビジターセンターってどこだろう……」と思いつつ、車内でダメ押しでもう一度コペンハーゲンカードをアプリで購入しようとすると、なんと……。
いや、いけるんかーい。なんでそれ数十分前にできなかったんですかね? 600円返してくれ(みみっちい)。
ご覧の通り、96時間(4日間)で購入しているのですが、中央駅まではシングルチケットを使ってしまいましたし、夜も後述する事件によって公共交通機関がまともに使えなかったので、完全に24時間分無駄になってしまいました。やはり5000円強返してくれ。
まあ……旅にはトラブルってつきものですし? 死ぬ以外は掠り傷くらいの精神で進もう、と教訓を得た脳筋トラベラーでした。
コペンハーゲン中央駅
コペンハーゲンカードが買えて嬉しいやら、どうしてそれが空港でできなかったんだとムカつくやらで悶々としているうち、中央駅に到着。
ちなみに、「コペンハーゲン中央駅」は、原語では Københavns Hovedbanegård というのですが、この発音がまた難しい。強いて無理矢理カタカナにするなら、クムハウンス・ホーヴベーネゴーゥみたいな感じだと思うんですが、いや本当にデンマーク語はカタカナにならない。
駅舎は天井が広く、美しいです。
↑ 日本と同じように、ホームにも小さいコンビニがあります。
ホームからエスカレーターを上がると、真っ先に目に飛び込んでくるのはお馴染みセブンイレブン。
↑ コペンハーゲンで最初に目にするショップがセブン。なんということだ。
ちなみに、広くない駅構内には他に、マクドナルドとスターバックスがいます。東京か??
「アメリカのグローバル巨大企業、すげ~……」と改めて思う極東の民でありました。
また、駅にはデンマークの国旗とウクライナの国旗がズラリと交互に掛かっていました。
↑ 赤・白・青・黄で、色合い的にも美しい感じがする。
コペンハーゲン滞在中は、ウクライナやパレスチナの旗を沢山見ました。こうして連帯を示しているのは良いですね。
ウクライナからコペンハーゲンに逃れてきた人も、中央駅がこの様子だと、少しは気が楽になるのではないでしょうか。
コペンハーゲンの拠点
中央駅に着いたら、まずホテルへ。15時チェックイン開始予定でしたが、着いたのは14時45分頃で、大体丁度良く。少し早めに入れて貰えました。
オタクゆえ、ホテル選びもこだわりました。コペンハーゲンでの拠点は、中央駅の真隣です。あまりにも立地がよすぎる。スーツケースを転がした距離、わずか数十メートル。最高です。
↑ ホテルのロビー。クラシカルでとても良い。ちなみに、奥のガラスの扉の先は部屋ではなく、エレベーター。
立地は恐らくコペンハーゲン最強なのですが、場所で選んだわけではありません(勿論それも理由の一つですが)(あと何故か多分予約するのがギリギリだったから大幅に割引していたのもある)。
こちらのホテル、なんと1914年創業なのです。古き良き近代の香りが致します。近代オタクゆえのチョイスです。
こちらのホテルで特に最高なのは、エレベーター。ドアは手動、作りは木製! すごく近代っぽい! テンション上がる!!
近代オタクだからコペンハーゲンでは1914年創業のホテルを拠点にしてるんだけど、ドア手動のガラス張り木造エレベーターがマジでイカしてるから見て pic.twitter.com/XM7KeLrUBv
— 茅野 (@a_mon_avis84) 2023年11月5日
↑ 動画を撮ったので、是非ともご覧ください。
コペンハーゲンに、というより、「近代に」来たな、という気分になりました。宿選びは大成功です。また来る機会があったら同じ場所にしよう……。
窓からの眺めも素晴らしく、何と言って、コペンハーゲン中央駅がドドーンです。窓から撮影した写真とは思えないほど、中央駅がよく撮れています。
↑ 下に見えるのが窓枠。改めて、すごい立地である。
グレードの高いお部屋だと、チボリ公園の内部が見える部屋もあるんだとか。それも気になるな……。
最初の小散策と軽食
お部屋で荷ほどきをし、少し休憩していると、早くも陽が落ちてきました。
寒くなりすぎないうちに一度外に出たかったので、早速街に繰り出してみます。
まずはスーパーマーケットを目指します。十分ほど歩いたところにあり、偵察に入りました。
入ると、パン屋さんか? というほどパンが並んでおり、早くもデンマーク人のパンへの愛を見せつけられます。
スーパーでは、ペットボトルの水の業務用9本セットを買いました。デンマークには殆ど自動販売機がないですし、重要な水筒の確保です。ちなみに、4日で飲みきりました。
帰りには、中央駅の例の大変オシャレなセブンイレブンに寄って、バジル味のバゲットサンドを買いました。まだこちらの物価に慣れていなかったので、随分高級品だな……と思いましたが、サイズもかなり大きく、一度で食べきるのは不可能で、お夜食用に少し残しました(全部美味しく食べましたのでご心配なく)。
↑ おにぎりや肉まんがない代わり、バゲットサンドが大量にある、デンマークの小洒落たセブンイレブン。
折角の初日の夜を、素敵なディナーではなく早めの時間の軽食で済ませたのには理由があります。
そう、これから、オペラに行くのです。
トラブル② バスが迷走したせいで全力疾走した話
ここで、早くも、この旅での最大のトラブルともいうべきトラブルが発生します。
セブンイレブンに寄った後は、お部屋に戻り、バゲットサンドを頬張りながらバスの乗り方を復習し、良い頃合いになったので、オペラハウスに向けて出発しました。
中央駅前のバス停から、おっかなびっくりバスに乗り、Google Map を開きっぱなしにしながら揺られること数分(ここで開きっぱなしにしておいたのが大正解だとすぐにわかります)。
最初こそ順調に思えましたが、何故か途中からバス停で一切止まらず、どんどん進んでしまうように……。終いには、本来の路線とは全く別の道を走るように!!
最初こそ、「この駅間は間隔が長いのかな?」などと考えましたが、それでもやはりバスの進みは Google Map と照らし合わせるに明らかにおかしく、車内には不穏な空気が漂い始め、ただ事ではないと気付きました。そして、アナウンスも何もないのです。
状況が知りたかったので、取り敢えず周囲の乗客の様子を伺ってみます。
わたくしのすぐ近くには、高校生同士と思しきうら若きカップルがいて、彼氏くんの方がわたくしと同じように Google Map を開きっぱなしにしていました。
「1ミリもデンマーク語はわからないツーリストです☆」みたいな素知らぬ顔をして、カップルの話を少し伺っていたのですが(本当に申し訳ない)、曰く、二人は人生で初めてオペラハウスに行くこと、オペラを観るのも初めてだということ、このデートは彼氏くんが企画したことなどがわかりました。
「人生初めてのオペラに『オネーギン』を選んでくれてありがとおおおお!!!」と日本語で叫び出したい変質者オタクだったのですが、最後の理性で堪えました。ありがとう理性、大活躍だな。
しかし、今はそれどころではありません。バスの様子がおかしいことは、カップルも気がついた模様。不安がる彼女ちゃんの頭を撫でる彼氏くん。ご馳走様でした。しかし彼氏くんの方もとても不安そう。
つまり、これは現地住民でも想定していない事態であるということがわかったわけです。
カップルの様子を観察していると、にわかに後方に座っていたおばさまが立ち上がり、運転席へ。固唾を飲んで見守る他の乗客たち。その間もずんずん変な方向に進むバス。
丁寧ですが、しかし有無を言わさないような口調で、「どうなっているんですか。」と運転手に尋ねています。
運転手の返答はわたくしの位置からでは聞こえませんでしたが、対するおばさまの方はどんどん表情が険しくなっていき、少しすると会話を切り上げて席に戻ってきました。
友人と思しき隣の席のおばさまに、「どうだった?」と訊かれ、半ば呆れながら、半ば怒りながら返答していましたが、わたしのデンマーク語リスニング能力的にも、距離的にも、聞き取ることができず。
他の状況がわからない乗客たちも、皆困ったように目を見合わせています。車内に生まれる緊張感と謎の連帯感。緊急事態で生まれる絆に組み込まれる車内唯一のツーリスト。
とうとう、前の方に乗っていたおじさまが痺れを切らし、運転手に怒鳴り込み始めました。運転手側はどうにも冷静に返しているらしく、全然聞こえない返答。
会話中、突然バスが止まり、後方のドアが開かれます。温かい絆が生まれ始めた車内に吹き込む冷たい夜風。
それとほぼ同時に、怒鳴っていたおじさまがくるりとこちらに振り返り、怒り心頭で一言。
「Denne fxxkin' …… vil ikke arbejde ……!」
完全にはわかりませんでしたが、聞き取れた単語とニュアンスから推測するに、恐らく「このクソ運転手はもう働く気がないんだと!」、というような感じだと思います(Fxxkin' だけめっちゃわかった。そこだけ英語だった)。
ええ~~ッ、そんな馬鹿な!!!
その一言を皮切れに、ゾロゾロと降りていく乗客たち。心底困ってしまったような顔をした人も、めちゃくちゃ悪態をつき、捨て台詞的なものを吐いて降りる人も、呆れたようにスタスタと歩いて行く人もいます。
全員が降りていくので、これは自分も降りないといけないやつだな、と思い、わたしもそこで下車しました。
外は、霧が深く、僅かに雨が降っていました。
Google Map を元に、わたしたちの不可思議な旅路を地図に起こしてみました。
赤線が本来のバスの路線で、青線が乗ったバスが途中から通った道です。大まかに、南西から北東に進む路線で、わたしは見切れている場所から長く乗車しています。オペラハウスの位置も示しておきました。
いやおかしいだろ明らかに。
着いて初日にこれなので、本気で不安でしたが、周りの乗客も同じように不安そうだったので(特に近くのカップル)、少し勇気を持てました。その点だけはよかった。
怒鳴っていたおじさまの発言から、最初は運転手の職務放棄とか、ストライキの類いなのかなと思いましたが、こうやって地図で見てみると、クリスチャニアを避けているように見えるので、もしかしたらクリスチャニアで何かが起こっており、それを避ける為の経路だったのかもしれないですね。憶測の域を出ませんが……。いやしかし、いずれにせよアナウンスくらいしろ??
他の乗客も全然状況がわかっていない様子だったので、訊いてもわからなかったでしょうし、その後ニュースなども確認しましたが特に報道されている様子もなかったので、何もわかりません。真相は闇の中です……。
問題は、この後どうするかです。
例のカップルは、この後オペラハウスに行くことが会話からわかっていたので、彼らに着いていけば道は問題ないだろう、と考えました。
しかし、時間が限られています。強制的にバスを下ろされた時、時刻は 19:13 でした。オペラの開演時間は 19:30 です。
Google Map で、急いで徒歩の経路に変更すると、停車位置からオペラハウスまでは歩いて約20分掛かる、ということでした。
え、これ、間に合わなくね?
血の気がサーッと引いていくのを感じました。おい、おれは『オネーギン』を観に20時間も掛けてこんなとこまで来てんだぞ、いい加減にしろ?
しかし、これくらいなら、道を間違えずに走ればギリギリ間に合うかもしれない!
オタク、走る。愛らしいカップルよ、すまない。君たちのことは置いてわたしは行こう。序曲は最悪逃してもいい、しかしどうか『オネーギン』を楽しんでくれたまえ。
「運動不足の引きこもりオタクを走らせんなよ~!」と日本語でブツクサ唱えつつ、逐次 Google Map を確認しながら、とにかく走りました。Google Map があまりにもファインプレーすぎます。
他の演目であれば、冷たい秋雨の中、オペラを諦め、一人泣きそうになって、バスが使えないとなればホテルへの帰り道もわからず、異郷の地で完全に途方に暮れていたかもしれません。
しかし、こちらはオタクであり、『オネーギン』がどうしても観たいのであった!! オタクは好きなものの為なら走れるのである。走れオタク。待ってろセリヌンティウス!!
通りすがりの人々に好奇の目で一瞥されつつ、汚いフォームで、左手に Google Map 、右手に傘を差し、オタクは走りました。15分くらい全力疾走しました。
そして、見事開演時間ギリッギリに到着し、(こんなこともあろうかと?、いや、単に初めての劇場で自信が無かったので)、席を一階の最後列にしていたことも幸いし、なんとか間に合ったのであった……。
お昼間、死ぬ以外は掠り傷くらいの精神で進もう、という教訓(?)を得たばかりではないか。危険なバスジャックとかじゃなかったんだし、なんとか間に合ったし、良かったじゃないかと言い聞かせながら席に着きます。
指揮者の登場から、しっかりと観ることができました。めでたしめでたし!
序曲の間、まだ呼吸が整わず、肩で息をしていたことは内緒だ!
オペラの公演評と帰路に関しては、次の記事にて!
To be continued...
最後に
通読ありがとうございました。1万2000字ほどです。
いきなりトラブルの連続で、「この旅、本当に大丈夫か!?」「お姫、実は同担拒否!?(?)」と不安になりまくりましたが、いずれもなんとか切り抜けることができました。よかった。
最初から波瀾万丈で、今思えば良い経験で、楽しかったですね……。これを、「生存者バイアス」といいます。
特にバスについては、何が起こっていたのか真面目に知りたいので、情報をお持ちの方は是非とも教えてください。
また、ご感想なども頂けたら嬉しく思います。
↑ 匿名がいい人向け。コメント欄やリプライも歓迎です。
次回は、『オネーギン』の公演評を書きたいと思っています。実はオペラには全然関心が無いよ、という方にも目を通して頂けたら嬉しいですね。現地の観客についても色々書く予定です。
それでは、今回はここでお開きと致します。また次の記事でもお目にかかれれば幸いです!
↑ 次の記事を書きました! こちらからどうぞ。