こんばんは、茅野です。
人生で初めてアロマキャンドルなるものを購入してみました。つい先程、おっかなびっくり火を付けてみたんですけれども、これ冬には大変よいかもしれないですね……。あたたかな灯火の揺らめき……。
お試しでちっこい子買ってしまった〜!❤
— 茅野 (@a_mon_avis84) January 13, 2023
火付ける前からいい匂いする……🕯 pic.twitter.com/z464IBKcMX
↑ (理由は当ブログの読者様方には言わずもがなですが)ネロリです。他の香りも気になる……。お勧めがあったら教えて下さい!
さて、素晴らしい香りに酔いつつ、何だか久々な気がする National Theatre Live さんの演劇に関してです! 今回は『レオポルトシュタット』を鑑賞して参りました。
同作品は、10月に我らが新国立劇場で拝見したので、ストーリーは頭に入っている状態です。
↑ 新国のレビュー記事。
登場人物が多い今作ですが、一度観ているお陰で混乱なく観られて幸いです。
今回はこちらの雑感を纏めて参ります。
それでは、お付き合いの程よろしくお願い致します!
↑ 最後まで観るとこのあやとりをする少年の意味がわかります。
キャスト
ヘルマン:エイダン・マクアードル
グレートル:フェイ・キャステロー
エーファ:ケイシー・レヴィ
ルードヴィク:セバスチャン・アルメスト
ハンナ:ナタリー・ロー
ヴィルマ:クララ・フランシス
フリッツ:マーク・エデル・ハント
エミリア:キャロライン・グルーバー
ポルディ:サイディ・シミン
パーシー:サム・ホアー
サリー:アヴィ・レヴェンティス
オットー:ヌーフ・オーサラム
ネリー:エレノア・ワイルド
ヤーコプ:セバスチャン・アルメスト
クルト:アレクサンダー・ニューランド
ローザ:ジェンナ・オーゲン
ナータン:セバスチャン・アルメスト
エルンスト:コーリー・ブリル
ザック:ジョー・コーエン
ヘルミーネ:メイシー・ナイマン
レオ:アーティー・フルーシャン
作:トム・ストッパード
演出:パトリック・マーバー
雑感
言語の差はあれど、新国立劇場での上演と台本は全く同じでした。舞台は回転しませんが、小道具なども含め、演出も殆ど同じ。従って、初めて観る上演のはずなのに、二回目の鑑賞の気分。
その為、ストーリーの内容などに関しては繰り返さないので、前記事を参照して下さい。
相変わらずの高水準の英国俳優陣。大人数であることもあり、「誰かの一人舞台!」ということにはなりませんが、粒揃いでした。
『レオポルトシュタット』は大人数の場が多いので、アップで撮れるライブビューイング向きの作品だなと改めて感じました。今回は喋っている人の姿が大きく映されるので、まるで映画のような仕上がりに。
一方で、実演で拝見した新国の方では、クローズアップされない人は囁き声になるなど、周囲の演技などは新国の方が優れていたようにも感じました。
新国の上演では、登場人物が多いこともあって、掛け持ちして一人二役・三役務めます。今回も同様かな? と思ったら、こちらも同様でしたね。最近の NTL の上演は、『リーマン・トリロジー』でも『ヘンリー5世』でも特徴的な役の掛け持ちをしていました。特に前者は圧巻。名演出です。
『レオポルトシュタット』では、特に、人種差別主義者のフリッツと、ナチ党員は同一人物が演じるのは示唆的です。悪役セット。なんなら同一人物扱いでも良いくらいかもしれませんね。
相変わらず胸糞悪い描写でした。フリッツがグレートルとの浮気のことを夫のヘルマンに話すのに、直接的なことを言わずにウィンクだけするのが憎らしい~! というかウィンクが上手い~!!
冒頭のインタビューで、戯曲作家のトム・ストッパード氏が、作中の登場人物に自分を投影していたことを始めて知りました。
確かに、作品解説でも、「ユダヤ系である自らの家系にインスピレーションを受けて書かれた」とはありましたが、まさか謂わば当人役がいたとは。
このインタビューを聞いた後に鑑賞すれば、誰が「トム・ストッパード」なのかはすぐにわかります。「レナード・チェンバレン」こと、「レオポルト・ローゼンバウム」です。非常にアイコニックな、あやとりをしている少年の成長した姿ですね。
レオポルトは、イギリス風に名を変えて生活しているわけですが、それは現実を生きる彼も同様で、生まれた時の名前はトマーシュ・ストロイスラーさんと仰るそうです。それは確かになかなか中欧らしいお名前ですな……。
彼は、そのような自分の出自を知らず、罪悪感すら抱かず生きてきたことに罪悪感を抱き、過去と向き合い、よい意味でそれを清算するべく、この戯曲を書いたとのことです。
レナード(通称レオ)の本名がレオポルトで、レオポルトシュタットの名の由来となった皇帝レオポルト1世と同名であることは大変に示唆的です。また、血筋的には彼が一番「ユダヤ純血」であることも。
トム・ストッパード氏がイギリス人として育ち、英語を話し、英語で戯曲を書いていて、それを反映したキャラクターがレナード=レオポルトなわけですから、英国で英語で上演する意義というものを強く感じました。
実際、英国が「世界のトップ」であり、「経済も優れていれば、他国への援助も惜しまず、王室だってある」というところでは、観客席から笑いが。うーん、皮肉っぽい。
そこから、三枚舌外交の話になるので尚更のことです。英国くんさあ……。
よく聞けば、レナードは綺麗なブリティッシュ・イングリッシュを話すのに対し、ローザとナータンは意図的に少し訛りを入れているようにも聞こえます。これは英国での上演でしか生み出すことのできないニュアンスですね。
ところで、字幕には反映されていませんが、エーファ(だったかな? 自信ない……)のご先祖、「キエフから逃げてきた」って言ってました? 第一幕ではガリツィアの話も出ますし。ロシア・ポーランドでもポグロムが猛威を振るっておりましたからね……。
ちなみに、タイトルにもなっているレオポルトシュタット地区は、確かにユダヤ人が多く住んでいた地域のことです。ウィーン中心街を囲む環状道路、リングシュトラーセに隣接しています。
↑ 少し歪ですが、輪を描いている北東側にレオポルトシュタット地区があります。
リングシュトラーセに関しては、この間ちょっとした記事を書いたばかりでして……。こんなところで繋がるとは……。
↑ わたくしが個人的に追いかけている某ロシア帝国皇太子の死から7日後のウィーンの物語。
今回は以前一度観たことがある作品ということで、心理的にも落ち着いて鑑賞することができました。
登場人物が多く、最初は取っつきにくいかもしれませんが、20世紀のユダヤ人差別問題について、そしてこれからについて、観客全員の思考を促す名作です。
最後に
通読ありがとうございました。短く3000字ほど。
先日、『The Stillness of the Wind』というゲームで遊び、簡単なレビューを書いたのですが、その中でイスラエルのファンドの話を軽く書きました。
↑ 安価なお手軽インディーズ! ちょっとした空き時間に如何でしょうか。
色々と繋がるものですねえ……。
NTL 、次回はチェーホフの『かもめ』ですか! 帝政ロシアもの、嬉しい~! 伺うのが楽しみです!
それでは、今回はここでお開きと致します。また別の記事でお目に掛かれれば幸いです!