おはようございます、茅野です。
今年のゴールデンウィークはバレエ三昧、プロコフィエフ三昧です!
昨日は、先日の東京バレエ『ロミオとジュリエット』に引き続き、『シンデレラ』にお邪魔して参りました。
↑ 先日の分のレビュー。
従って今回は、新国立バレエ『シンデレラ』の簡単なレビューになります。5月3日火曜日マチネの回にお邪魔しております。
それでは、お付き合いの程宜しく御願い致します!
キャスト
シンデレラ:木村優里
王子:渡邊峻郁
義姉:小柴富久修
高橋一輝
父親:中家正博
仙女:細田千晶
春の精:広瀬碧
夏の精:渡辺与布
秋の精:柴山紗帆
冬の精:中島春菜
道化:山田悠貴
指揮:マーティン・イェーツ
雑感
バレエ版の『シンデレラ』は、数年前にウィールドン版の円形劇場での上演が話題になったのが非常に強く印象に残っています。そこで作中のワルツに聴き惚れて、暫くヘビロテしていた記憶。
↑ このワルツが好きすぎる。しかしこの動画は音質が悪い。
それでいて、クラシックなアシュトン版は初めてでした。
つい先日にクランコ振付作品を観たばかりだったので、違いがより際立ちますね。「踊りと演技の連続性」「振りの難易度の高さ」が特徴的なクランコ版とは対照的に、アシュトン振付は難解なパは少ないながら、軽やかな動きを求められる少々複雑なステップを中心にした踊り。踊りと演技はほぼ切り離されており、古典的な手の動きでの演技も多々。そしてディベルティスマン。
先日の『RJ』は演奏が酷く、「プロコフィエフだから(?)致し方ないのか……」とか悶々と考えておりましたが、今回で浄化されました。これだよこれ。一時トランペットが危うかったことを除いては、大満足です。流石の東フィル。
オケピを大分下げていたようですが、バレエなんだし、もっと音飛ばしてもよいのでは、と思いましたが、今回わたくしが4階席だったということもあるかもしれません。1~2階だったらうるさいくらいだったのかも。
義姉二人が男性舞踊手ということで、確かに非常にコミカルに仕上がっていました。よく考えたら、設定に反し、第1幕第1場はシンデレラが紅一点なのか……と思ったり(設定上は彼らの父の黒一点)。
最初、だいぶ舞台狭いなあとおもっていたら、奥に何層も何層も中幕張っていて驚きました。そりゃあ季節の精ならそれぞれ背景変えたいですよね。
パンフレットに、「日本とは異なる季節感の季節の精」とありましたが、確かにこれはロシア的な「季節」なのかなと考えたりしました。
確かに、チャイコフスキーの『四季』に於いても、軽快な春、気怠げな夏、忙しない秋、降雪を感じさせる刻みのある冬……といったような印象を受けます。
↑ 一番人気、ゆったりとした『6月』。
↑ 忙しない『8月』(チャイコフスキーの場合はユリウス暦に則っているため、実質的にはほぼ9月で、刈り入れ時のせわしないイメージ)。
振りも衣装もそのイメージによく合っていて美麗でした。「春」は細かい跳躍ばかりで愛らしく、しっかし疲れるだろうなあと感じたり、「夏」はポールドブラが美しく、「秋」は機敏で、「冬」はピンと伸ばした腕に厳しい寒さを感じさせ、『ジゼル』のミルタのようでかっこいいですね。
四季の精が登場しますが、オレンジが珍しいとされていたり、基本的には北方の寒い地域が舞台として設定されているのだろうな、と感じました。
↑ 丁度先日、オレンジの記事を書いていました。
そして、「プロコフィエフ」と「オレンジ」といえば、脳裏を過る例の行進曲! わかりやすいフレーズの登場には、思わず吹き出しそうになること必須。
↑ このユロフスキ御大の笑顔を見て。
しかもご丁寧に三つのオレンジ(一個は大きい)。
先々月、メトロポリタン(MET)ライブビューイングで、マスネのオペラ『サンドリヨン』(抜粋・英語版で『シンデレラ』)を観てきた時も、「退屈で鬱、今度は恋した人が見つからなくて鬱と、王子は『三つのオレンジへの恋』か!」と突っ込んだばかりだったので、伏線回収が為されたような気分です。
マスネの『サンドリヨン』では、王子が「ズボン役」なので、王子が男性である意味新鮮でした。
↑ 王子役のエミリー・ダンジェロ氏、めちゃくちゃお似合いでカッコよかった。
マスネの『サンドリヨン』の曲は、実はバレエファンにも馴染み深く、マクミランの『マノン』で楽曲が使用されているので、是非ともご鑑賞あれ。
全体的に、特徴的だなと感じたのは、シンデレラを含め、客席に背を向けて踊ることが多いということです。コール・ドのフォーメーション次第ではよく起こりえますが、主役のソロでまで、となるとかなり珍しい気がしました。背面には背面の良さがあるので、これはこれで大変よい。
2幕1場は宮殿で、最初に道化が出てくるので、『白鳥の湖』を彷彿とさせます。
↑ 今回は角が生えていないタイプの道化さん。
原則的にアッと言わせるような超絶技巧を混ぜないアシュトン振付ですが、道化は妙にエグかったですね……。お見事。
シンデレラの登場、確かにポワントで階段を降りるの大変緊張感があってよかったですね。
それにしても、白のチュチュがお似合いで……。白いお衣装は浮いてしまうことも多々ですが、よく馴染んでいらっしゃる。
シンデレラの Va.、ポワントでのパッセのまま上体を反らせる振り、キツそうですね~! 何事もないように踊っていらっしゃって、流石すぎました。
後半もずっとピケターンで、演技パートが長い分、魅せるところは魅せる! という方針なのでしょう。
王子の方は、童話ベースの物語の宿命と申しましょうか、出番が少なく、もう少し出番をあげても良いのでは! と思いつつ。
PDDも、シンプルだからこそ基礎がしっかりしているのがよく見えてよかったです。音楽は複雑ですけれどもね!
第2幕では、周囲が完全に「額縁」化していましたが、これはこれで美しいもの。特に今回は、個人的に、ゴールデンウィークということもあってU25券が出なかった関係で、初めて4階席にお邪魔していたので(たまたま前の席が空いていたこともあって、死角もなく大変良い席でした)、群舞のフォーメーションがよく見えてよかったです。やはりコール・ドを観るならば上階席。
二人三脚のように走り去って行く義姉たち、めちゃめちゃ好きです。扇子の間から顔を出してライオンのたてがみみたいになっているのも良い。レヴェランスまでコミカルでバッチリでした。
アシュトン版では、あのワルツは完全に超自然的世界の住人のものなのですね。美しい。
しっかし、ロマンティック・バレエの伝統では、幻想世界と人間界は原則混じらないものであるので、宮廷の人々と妖精たちが一緒に踊っているのはなんだか新鮮でしたね。この世界での種族の共存はどうなっているのかと、余計なことを考えたり。
それにしても、ナポレオンとウェリントンの風刺がエグすぎます、これは笑いを誘う。19世紀の王侯貴族や英雄の風刺が出て来るのは20世紀作品ならではですね。
メタな考えを抜きにすると、時代は19世紀以降であるとして、場所は如何でしょう。マズルカがあるので、ポーランド付近が有力かと考えると、まあ、そうですね、それくらいキッツい風刺をお見舞いしても、或いはよいのかもしれませんね! 会議は踊る、されど舞台上でも踊る……。
2幕最後の変身、魅せ方お見事ですね! ふつうに仕掛けがわからなかった。時計の鐘が鳴る場での中幕を介しての演出もお洒落です。中幕の内での踊りもかなり複雑で細かく、これはこれでしっかり観たい。
3幕冒頭、中幕前での演技は、個人的には『オネーギン』を大変想起させるのですが、『シンデレラ』の方が先なんですよね。この序曲中や舞台転換中の時間の有効活用、大変よいですよね。
三幕は短く、25分程度。またも『オネーギン』か! とツッコむことになる『オネーギン』オタク。休憩と上演時間が同じってどうなんだ。とはいえ、スッキリ纏まっているのって凄くいいですよね。
バレエ作品としては、最後はグラン・パ並に魅せ場を作ってもよかったのでは、と思いつつ、大団円にて幕!
最後に
通読ありがとうございました。3500字ほどです。
まさか半年で二回も『シンデレラ』を観ることになろうとは。今度はちゃんとウィールドン版も観てみようかななどと考えつつ。
ゴールデンウィークということもあって、両隣とも小さなお子さんでした。『RJ』と違って、『シンデレラ』なら親御さんも安心だろうなと余計なことを考えつつ。いや、わたしは『RJ』好きですが、子供向けではないよなといつも思うので……。
わたくしは現時点では、これからの上演で席を取っているバレエ公演は特にないのですが、初夏には来日ガラなどが立て続くようなので、それを楽しみにしつつ、今回はこれでお開きとしたいと思います。お勧めの公演や演目など御座いましたらプレゼンください。
それでは、また別記事でお目に掛かれれば幸いです。