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コンスタンティン・グリャコ『葬送行進曲』の音源を作成する - 音楽雑記

 こんばんは、茅野です。

数時間前(!)、弊ブログ初の音源作成記事を投稿しました。

 本日はわたくしの趣味の研究の対象推しロシア帝国皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィチ殿下のお誕生日(ユリウス暦)ということで、彼の死に捧げられた曲のご紹介をしたものです。死に際して捧げられた曲は現在確認されているだけで二曲あるため、この記事の中で、

もう一つの曲も、近々ご紹介できたらと考えています。

と書いていたのですが、日付が変わるまでに音源を作成することに成功したので、投稿します。なんたって特別な日ですからね!  (内容的に命日の方が相応しいのはそうなのですが、思い立ったのが今なので許して下さい)。

 というわけで、今回はコンスタンティン・イヴァーノヴィチ・グリャコの『葬送行進曲』をご紹介致します。それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します。

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↑ 洒落たフォントで少々読み辛いですが、「大公であり皇太子であるニコライ・アレクサンドロヴィチ殿下の死を悼む葬送行進曲 皇帝アレクサンドル・ニコラエヴィチ陛下に捧ぐ ピアノの為の曲 К. И. グリャコ作曲」とあります。

 

 

『葬送行進曲』

作曲の経緯

 グリャコの『葬送行進曲』は前回の記事でご紹介したグウェント作曲の『序曲』と同様、1865年にロシア帝国の皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィチ殿下が薨御したことを受けて作曲されたものです。従って、作曲・発表年共に1865年になります。

 

構成

 ピアノ一台の為の器楽曲です。ゆったりとしたテンポなのでわかりづらいですが、「行進曲」なのに四拍子

調は『序曲』と同様 F-moll 、中盤は同主調 F-dur に転調します。今回ご紹介した曲は偶然にも両方 F-moll でしたが、特に「葬送曲は F-moll」 という規定があるわけではないので、殿下には F-moll が似合う何かがあるのかもしれません(?)。ちなみに、他に F-moll の葬送曲にはリストの『葬送(Funérailles)』などがあります。名曲です。一時期ずっと弾いてました。

発想記号は Lento(遅く)。作成した音源では♩=56 で取りましたが、これで演奏時間約8分になります。

和音で奏でる付点八分・十六分の組み合わせが多いパートと、右手だけで演奏するパッセージが交互に現れるのが特徴です。

 

作曲家コンスタンティン・グリャコ

 音楽通の方もご存じないであろう、コンスタンティン・グリャコ。わたしも知りません(本日二回目)。

……歴史に埋もれるってこのことなのか……と寂しい気持ちになってしまいましたが、ご安心下さい、わたしが居ます。少なくとも音源は作ったのである程度報われたんじゃないかなと、信じております。はい。

 調べてみたところ、本業は画家さんで、水彩の肖像画を描く方みたいです。ちゃっかり殿下の肖像も描いていらっしゃる。これはほぼ間違いなく強火の同担

従って、恐らく音楽は趣味だったのではないかなと思います。好きが高じて絵では飽き足らず曲まで書いてしまったタイプの強い同担だ……。なんで殿下のことが好きな人って強火のオタクが多いんでしょうね(特大ブーメランに直撃されながら)。

 

楽譜

 例によって pdf の楽譜を掲載しておきます。画家さんということで、扉の美しい絵は本人が描いたらしいです。流石につよすぎる。一応説明によると、ロシア帝国の皇室の棺(ちなみに殿下が亡くなった1865年にデザインが変更されています)とそれに載ったサーベルと近衛隊の軍帽、二対の国章旗、肖像、有翼の青年の姿で描かれた死の神タナトス、喪服の女性という構成。

 相変わらず物凄く綺麗な楽譜です。これを印刷して弾けますね。

 

音源

 前回の記事と同様、楽譜だけ見てもピンと来ない譜読みが苦手なわたくし、楽譜作成・作曲ソフト『finale』と音源『Garritan』を用いて音源を作って参りました。今、人生で一番 DTM を弄る技能があってよかった……と思っています。本当です。

 楽譜を読み込んでくださった方はお気づきかもしれませんが、明らかな記譜法のミスが幾つかあるので、一部こちらで「恐らくはこういうことだろう」と推測して訂正してあります(記譜のミスがあると『finale』は読み込んでくれないのである)。

又、音源の都合上アルペジオが作れないので、精確なものを楽しみたい! という方は、是非弾いてみてください。

 

 どうでもいいですが、『finale』の変形図形ツールでクレッシェンド・デクレッシェンドの記号作るの難しくないですか?? この曲、強弱の指示が大量にあるので、その通り打ち込んだんですけど、苦戦しました。

『finale』では、プレイバック再生の際、きちんと書き込んだ強弱記号なども反映されるので、この苦労は一応音に現れている、はずです。少しでも情感豊かな演奏に聞こえれば幸いです。

 

最後に

 通読お疲れ様で御座いました。2500字弱。

まさか、古の同担も150年も後になって極東のオタクの手によって世界初の音源が作られているとは思わないであろうと思います。しかし、時移ろえど、志を共にしておりますから、後は現代の極東のオタクに任せて下さい。研究オタ活がんばります。

 さて、まだロシア語は自信が無いのですが、こちらもこちらでオタクを拗らせているので、勉強がてらに殿下に纏わる一次資料を翻訳中。こちらもグレゴリオ暦でのお誕生日(9月20日)を目安に投稿できればいいなと考えております。気長に待って頂ければと思います。

 それではお開きとしたいと思います。С днем рождения, Ваше Высочество!

 

参考文献