世界観警察

架空の世界を護るために

シュトゥットガルト・バレエ・ガラ 2022/3/21

 おはようございます、茅野です。

シュトゥットガルト・バレエ・ガラ、千秋楽・3日目です! しかしながら、ご承知のように、我々にとってはかなりショッキングな出来事が……。

↑ Cプログラム。

『オネーギン』が抜けた……だと……??

『オネーギン』一筋7年のオタク、悲しみに暮れる。しかし、まあ「書く」と言ってしまったので今日も書いてゆこうと思います。

 

 というわけで今回は、シュトゥットガルト・バレエ・ガラ、3日目の感想となります。極簡単に纏めてゆきます。ご了承下さい。

↑ 一日目。

↑ 二日目。

 

 それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します。

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↑ 今回の目玉演目、『ボレロ』。

 

 

『オネーギン』が無くなった話

 書かずには居られない!!

昨日のキャスト変更では、「昨日(初日)の公演を受け~」とのアナウンスが流れましたが、本日は「芸術監督の強い意向により」とのこと。思わず客席のディートリヒ氏を仰ぎ見るオタク。そんな……どうして……ディートリヒ氏、『オネーギン』オタクの同志だと信じていたのに……。

↑ 講演会で本人がそう仰ってたもん……。

 

 しかし、元のプログラムに無理があったのは事実。正直なところ、この展開は予想できないわけではありませんでした。フリーデマン・フォーゲル氏を酷使する気満々の強気プログラムすぎます。『鏡のPDD』に『Mayerling』2幕PDD、更に『ボレロ』とは。巷では「トライアスロン」と呼ばれていて流石に笑いました。何も間違っていない。

 ただ、World Ballet Day などを観て、「フォーゲルのオネーギンが観たい」と思っていた日本のバレエファンは何もわたくしだけではないはず。

↑ レビュー記事。最高だった……。

 『Mayerling』を元々上演予定だった、それはわかります。今回の目玉は『ボレロ』、それもわかります。でも一日くらい、フォーゲル氏にオネーギン役を回してくれてもよかったんじゃないでしょうか……?

 『オネーギン』はシュトゥットガルト・バレエの名を世に知らしめた出世作であり、同カンパニーが最も大事にしている作品(と言ってよいとおもいます)。それもあって、来日公演でも何度も取り上げられていますが、定番というのはそれでよいのです。寧ろ、シュトゥットガルトが積極的に上演しないならどこがやるんだまである。いや、わたしは色々なカンパニー、色々なダンサーの上演を観たいですが……。

『オネーギン』はプリンシパル級のダンサーも少なく、上演時間も短いため、恐らく劇場側にとって「コスパの良い作品」。それもあって、最近日本では上演回数が増えています。それでも、やはり本家シュトゥットガルト・バレエ団による上演は特別なものになるのではないでしょうか? 再考を宜しくお願いします。

 

 そして、千秋楽ということで、上演後にメッセージが。「次はカンパニー全員で」……。なるほど! 「次は『オネーギン』全幕やるよ! 宜しくな!」ってことですね? だからフォーゲル氏のオネーギンを出し惜しみしているのですね? そのような理解で構いませんよね、これは。

 また、NBS 公式 Twitter からは、このような投稿が。

次回の日本公演ではフルカンパニーによる全幕作品の上演を予定しております」。つまり、次の予定は既に決まっているのですね? それはきっと『オネーギン』なのでしょうね?? わたしは期待しています。

 

 まあ、それはそれとして。

↑ 「E. O. 」=「Евгений Онегин」=「Eugene Onegin」。

 

雑感

 ただの愚痴(と捉えられても致し方ありません)だけで終わるのは失礼すぎるので、他の演目についての雑感をば。

 

 昨日も申し上げましたように、『鏡のPDD』の音楽は、『ロミオとジュリエット』の二重唱がメイン。ダンサーも同じ、振付家も同じ、楽曲の原作も同じです。違いはチャイコフスキープロコフィエフかという点しかありません!(※この差は大きい)。「実質『オネーギン』……」と思って心を慰めるしかない。

 今日気が付いたのは、ロシオ・アレマン氏、もしかして凄く肩が柔らかいのではないかな、ということです。アン・オーの位置ですとか、比較的後方である気が致しました。

 

 『オネーギン』から変更となった、『椿姫』。三日連続です。本日に関しては、フォーゲル氏ではなくバデネス氏が「トライアスロン」に。(『椿姫』白のPDD、『白鳥の湖』黒鳥、『Mayerling』2幕のPDD)。

 昨日、一昨日は端正だなと思ったのですが、今日に関してはリフトがどれも不安定で、終始ヒヤヒヤしてしまいました。繋いでいる手が見るからに震えていたり、アルマンの肩の上で寝そべるようなリフトの際は一度落ちそうになっていて怖かったです。ギリギリ保っていましたが……。流石にもうお疲れだったのかな……などと考えてしまい。

 これは『椿姫』『ロミオとジュリエット』『オネーギン』と、ドラマティック・バレエに共通し、また三日間通して思っていたことですが、もっとラブラブでいいよな!! ということです。折角どれも愛のシーンなのに、感情表現が希薄なように思えます。シュトゥットガルト・バレエ団は、『オネーギン』を筆頭に、ドラマティックが売りであると理解していたのですが、ガラということもあってか、コンテンポラリーの方が良かったのではないか……と思いますね。まあ、ガラで一部抜粋だと、感情が乗り切らない面も多いのでしょう。


 『椿』では不安定でしたが、『白鳥』のバデネス氏は絶好調の極みで、「さっきのはなんだったんだ……」状態に。
 以前のシュトゥットガルト来日公演の『白鳥』では、黒鳥役だったアンナ・オサチェンコ氏が32回転のところで転倒してしまうアクシデントがあったので、「シュトゥットガルトの黒鳥か……」と少し身構えてしまいましたが、もう全部吹き飛ばして下さいましたね! 文句無し。

 バデネス氏、脚は強いのに、腕・肩の動きが滑らかで素晴らしい。ヴェッツェラ嬢も然りですが、オディールなど、「強い女」役が似合いすぎます。こんなのもうオデットとか過去の女ですね、忘れましょう。

最後、嘲笑うかのように仰け反るのが最高すぎました。惚れた。やっぱり彼女のタチヤーナが観たかった……、しかしながら、「タチヤーナよりオディールやヴェッツェラ嬢の方がお似合いだった」と言ってしまいそうな自分にも恐怖するのでありました。

 

 「トライアスロン」最終章。『Mayeling』です。

昨日は机上の本を捲っていたフォーゲル殿下ですが、本日は本には見向きもせず髑髏へまっしぐら。もしかして、尺を合わせる為の演技だったのでしょうか? 自然で大変良い!
 昨日も書いているんですけど、ヴェッツェラ嬢を脱がしておいて全く見ていないのが大層面白い。本日は席が上手側だったので殊更よく見えたのですが、肩紐をズリ下げたあとは上手下を見ていますね。何故脱がせたし(二回目)。

 躍りに関しては昨日・一昨日とほぼ同様なので割愛します。例の寝そべった皇太子の膝の上に乗る振りで、膝が大分上がってしまっていたことくらいですかね……。


 そして目玉『ボレロ』。

思ったんですが、『ボレロ』って三日連続で上演する演目ではないし、三日連続で観る演目でもないですよね!? 初日は涙が出るくらい興奮しましたが、二日目は技術的な面などをしっかり観る余裕が生まれ、今日に至ってはかなり冷静に観てしまいました。

 どうでもいいですが、『ボレロ』を観ると、わたくしは毎回こちらの方を想起してしまうのですよね……。

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↑ 『イワン雷帝』。

こう、高台の上に一人という点と、「手」と、宗教感が……。

 本日の上演では、心なしか、躍り自体もコンパクトに纏まっていた気さえ致します。フォーゲル氏ならもっと熱狂的な『ボレロ』を作れるはずだ……と感じてしまいました。まだ伸びしろがあるとは、えげつないが過ぎます。そして、そうやってどんどん進化してゆくオネーギンを、わたくしは心底観たいのでありました。

 

最後に

 通読ありがとうございました。4000字ほどです!

『オネーギン』オタクにとっては、不本意な幕切れとなってしまったシュトゥットガルト・バレエ・ガラ。しかし、前述のように、全幕を上演する予定が既に決まっているようなので、わたくしは期待して待ちたいと思います。『オネーギン』持ってきて下さいね!!!!

 今のところ、今後の生での『オネーギン』鑑賞の目処が立っていないのが寂しい限りです。熱狂の日々は二日で終わってしまいました。寂しいですね……。しかし、今回は新たなペアの『鏡』という収穫があったので、ここはポジティヴに捉えたいと思います。よかった。

 面白くもない愚痴(のようなもの)ばかり書いてしまいましたが、改めてお付き合いありがとうございました。暫くは映像の『オネーギン』を観て過ごしたいと思います。皆様もよきバレエ鑑賞ライフを送られますよう。

 それでは、お開きと致します。また別記事でお目に掛かれれば幸いです。