こんばんは、茅野です。
実は今日誕生日だったりします。21になりました。精神年齢は変わらず5歳です。
しかし今年はとんでもない誕生日プレゼントがあるわけですよ。『エヴゲーニー・オネーギン』っていうんですけど。人生初の公演の為の遠征です。昨日から四泊五日の長野・松本一人旅なんです! たのしい!!
そして昨日、ソプラノ歌手のゆいさんのご厚意で、セイジ・オザワ松本フェスティバル2019のオペラ『エヴゲーニー・オネーギン』のゲネプロにお邪魔してきました……!
ただのオタクなのにこんな僥倖に恵まれちゃってよいんでしょうか。最近、色々身に過ぎた幸運に恵まれている気がします。本当にありがとうございます(平伏)。いやもうこの一週間幸せすぎますね。手の届くところに幸せがあるので掴みます!!!!!!!
それでは始めたいとおもいます~!
キャスト
エヴゲーニー・オネーギン:大西宇宙
タチヤーナ・ラーリナ:アンナ・ネチャーエヴァ
ヴラジーミル・レンスキー:パオロ・ファナーレ
オリガ・ラーリナ:リンゼイ・アンマン
グレーミン公爵:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
ラーリナ夫人:ドリス・ランブレヒト
フィリピエヴナ:ラリッサ・ディアトコーヴァ
トリケ:キース・ジェイムソン
大尉 / ザレツキー:デイヴィッド・ソアー
指揮:ファビオ・ルイージ
合唱:東京オペラシンガーズ
演出:ロバート・カーセン
指揮
まず、何より、指揮がいいですね!! 特徴的な緩急ハッキリした演奏です。
弦が1、2幕では弦が少し揃わないところが見受けられましたが、やりたいことは凄くよく伝わるし、ゲネプロということで今後が凄く楽しみになりました!
響きが豊かで……。わたしは一幕二場のイントロが大好きなんですが、もう、鳥肌ですよね素晴らしすぎる……。
ここの加速が!!!官能的すぎるんですよ!!!!!わかりますか!?!
わたしは個人的には、聞き比べた中ではここはレヴァインの王道的な甘~い演奏が好みだったのですが、これも物凄くいいです……。えっ、初振りってほんとうですか? 凄く研究されてるとおもいます……。弦が甘いし管は響くし……好き……(語彙力)
舞台・演出について
みんな大好きカーセン演出です! METの映像が入手しやすいので、初めての『オネーギン』がカーセン演出だった方も多いのではないでしょうか(わたしはポクロフスキー演出から入りました)。
幕が開いてすぐ思ったのは、舞台の傾斜がもう半端じゃない! 落ち葉で滑りやすくなっているだろうし、出演者が転ばないかちょっとヒヤヒヤするレベルでした。映像だとわかりませんが、あれあんなに傾斜があるんですね。
それに、やはり舞台の狭さを感じてしまいますよね。普段観ているカーセン演出のものがMETなので比べるのは忍びないんですが、特に2幕1場は「合唱やダンサーたち、動けるの……?」というくらいキッツキツ。やっぱりあれ舞台に対しての比率(椅子の配置)とかっていうのがあるんでしょうね。
特にこの演出の場合、3幕1場との対比であるとか、この間隔を狭めることによっての"やりたいこと"って、伝わってきますし。
第3幕のエコセーズ中のダンスはあんなに破廉恥でよろしいのでしょうか()。エカテリーナ期かな? という。又、カーセン演出のここでの踊りってなんか妙にカクカクしてて、もうちょっと柔らかくてもよいんじゃないかしらと思わなくもないです()。なにか意図があるのでしょうか。
オネーギン
幕が開いた瞬間、「えっバチルキ氏じゃない!」となりました。大西氏が演じられることを知らず(というか公表されていなかった)、びっくりしました。
大西氏のオネーギン全幕を聴くのは初めてだったので、聴けてほんとうによかったです! 日本が誇る今をときめくバリトンが我らがオネーギンを持ち役としていることの嬉しさといったらないですね。
大西氏のオネーギンは、響きがよく、"オネーギンらしい"上、どこか優しそうな、包容力のある感じが致します。中にはハリネズミみたいなオネーギンいますからね(?)。
いや、各々解釈が異なるので一貫性があればわたしはどちらでも許容できるのですが……。なるほどこれが兄のような愛かなるほど……。
演技もよくて、オネーギン感すごくありました! ひとりひとり解釈が違いますし、役作り難しい役だとおもうのですが、流石の持ち役! 今後は日本でも彼のオネーギンが頻繁に観られるようになるといいなとおもいます。
ご一緒した方からは歌うときに少し上体が反るのが気になるというご意見も。確かにその傾向はあったかもしれません。
2幕1場で「何食べてたんだろう」という話になり()、「ヨーグルトか杏仁豆腐か……??」 と議論になったのですが、実際の所どうなんでしょうね。
時代考証的な側面で考えると、舞踏会で食べられていたものとしてはアイスクリームが有力かなとおもうのですが、土地柄ヨーグルトということもあるかもしれません。というか、アイスだと溶けちゃうし、歌の隙間に食べるにはどうなんだろう、という気がするので、舞台上ではヨーグルトなんじゃないかなとおもいますが違うかも。
ちなみに、MET2010公演(カーセン演出)でオネーギン役を務めていたディミトリー・ホロストフスキー氏が食べていたのは、赤黒い物体(?)で、たぶん苺とか酸塊のジャムかな~とおもいます。たしかに、原作にもジャムとか果実ソースの描写は出て来るんですよね。
↑ めちゃめちゃ可愛いスクリーンショットが撮れてしまった……。
そして、カーセン演出で特徴的な生着替えですよね()。やっぱりあれみんなやるんですね!() いや、カーセン氏、絶対ポロネーズ聴かせる気ないでしょ、わたしは確信しています。当演出は、シンプルで歌を邪魔しないところが高評価の所以だとおもうのですが、ここだけはどう考えても聴かせる気が無い。聴かせどころなのに~!
皆様、オペラグラスの準備は宜しいか。
しかし、カーセン演出は2幕と3幕を生着替え+ポロネーズで繋いでいるわけですが、2幕~3幕の間には数年の月日が流れているわけであり、そのことを分かりづらくしているのではないか、と思わなくもないです。「手を洗って衣替え」、というのは象徴的で素敵でわたしは好きですけどね。
たしかに、オネーギンは第一幕が約90分、第二幕が約40分、第三幕が約30分になっているので、第二幕と第三幕を繋げると時間的に都合がいいのは凄くよくわかるんですけれどもね。
第3幕第1場でのオネーギンのアリオーソが凄く好きなのですが、大西氏の役作り・解釈だと、後ろの投影とか、エコセーズがない方が絶対よいのではないかと確信しています。折角のアリオーソを邪魔してしまっているかんじがしてなんか凄く惜しいというか、勿体ない。歌はとっても素晴らしいです……!
タチヤーナ
今回、何ってもうタチヤーナが最高なんですよね。声が合っていて、重くて力強い感じが非常によいです。外見もターニャらしいし、1、2幕の内気な少女も、3幕の大変身も見事で! どちらにも説得力があるターニャって意外とレアというか。
今回の舞台はほんとうにどのシーンも素晴らしかったのですが、個人的には「手紙の場」に軍配を上げたいとおもいます。ほんとうに鳥肌ものでした。
ものすっごい激しく落ち葉を巻き上げるので、髪や胸に大量に落ち葉が乗ってしまっていて、パッション伝わりました! そこまでやらなくてもいいのにとはおもいつつ!!
ここは下げる派でした。
最後の
Увы, заслуженным укором!
の、最後のp(r)をこれでもか! ってくらい巻き舌にして叫ぶように終わるのも大好きなんですが、ネチャーエヴァ氏の儚い、でも透き通った幕切れも凄く素敵です……!!両方大好き。堪らん。
第3幕の二重唱も勿論素晴らしい~! クライマックスの持ち上がりは何にも代えがたい……至高だったことを伝えたいです……語彙力のなさをゆるして
フィリピエヴナ・オリガ・ラーリナ夫人
また、フィリピエヴナがいいですね~~! わたし、「これはないな……」というようなフィリピエヴナを全然聴いたことがないんですが、フィリピエヴナという役には何か魔法でも掛かっているのでしょうか。安定感があってほんとうに素敵です。
オリガは時々中高音が揺れる印象がありますが、低音の力強さは圧巻です!
一方、ラーリナ夫人は高音がつよい印象です。中音は四重唱だとちょっと聞き取りづらい感じはありますが、高音の伸びが素晴らしい。
オネーギンを含むロシア・オペラはやっぱり低音がしっかりしていると映えるんですよね~! ロシア語自体が重たい声と相性がいいということもありますし。
レンスキー
レンスキーは他の歌手陣と比べるとどうしても声が篭もりがちな印象を受けました。あまりレンスキーっぽくもないような……。
決闘の場にて、銃を構える際に、オネーギンは上から構えるのですが、レンスキーは下からでした。ご一緒させて頂いた方々と「レンスキーに殺意がない(斃される前提)解釈なのではないか?」という議論になったのですが、個人的には判断がつかなかったので、今後の舞台で確認していきたいですね。
→本公演初日で大分印象が変わりました。
トリフォン大尉、ザレツキー
まさかの同一人物~!(そういう解釈ではない)。
大尉、妙に声がいいな……台詞一言しかないのに……とおもったら、ザレツキーも兼任でした。声ですぐわかりました! 響きがいい……。それにしてもこの役には勿体ないくらい声がいい……。
ムッシュー・トリケ
めちゃくちゃトリケっぽいwwww
たまに「あなたはもうレンスキーやればいいんじゃないですか」みたいな妙にかっこいいトリケいますけど、やっぱり歌うのはクプレなのだし、こういう役作りで来てくれると嬉しいですよね。
二回目の「Brillez!」は上げる派。最早カウンターテナーの領域。
グレーミン公爵
そして、何ってグレーミン公爵が素晴らしいですね! 最高。
氏の2013年の公演のグレーミン公爵のアリアの録音を聴いたことがあるのですが、全然違った……! 深みと重みが段違いです。拍手喝采。よかったしか言えない。語彙力ない。
その他
わたしは上手側にいたのですが、観客の態度についてもの申したいです。演奏中に喋ったり、鞄に鈴をつけて劇場にいらっしゃるのは辞めて頂きたい~!!
又、わたしはあまり把握できなかったのですが、著名な方が沢山いらしたそうな()(名前は出しませんが……)。ほんとのほんとに場違い感が凄いですね……失礼しました……。
終わりに
拙い雑感を失礼しました!
重ねて、聴くことができてほんとうに幸せでした! ありがとうございます!!
実はこのゲネプロが初めての通し稽古だったらしいのですが(厳密には初めて通すことが出来たの意)、とてもそうは思えない完成度でした。歌手陣もフルパワーで、酔えることといったらない。幸せなひとときでした……。
明日見逃した点などを追いつつ、この上演の解釈の理解を深め、楽しんでいきたいなとおもいます!
それでは今後の公演の成功を願いつつ、締めさせて頂きます。