おはようございます!茅野です。
風邪が治りきらずに喉は死んでるわ鼻は止まらないわで参っております。但し短い冬休みはどんどん消費されていってしまいますので、悔いのないよう過ごしたい所存です。
さて、今回は『ABZU』考察の第三回目、BGMの曲名に迫ります。
これまでの『ABZU』記事をご覧になっていない方は、1から目を通して頂くとわかりやすいかと思います。
↑ こちらからどうぞ。
それでは早速、いってみましょう!
BGMのタイトル
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考察をやる上で必要なものなので……。『ABZU』の曲はどれも美しく、ヘビロテに難なく耐えうるので、心からオススメです。
ゲーム考察の際、BGMのタイトルや、歌詞というのは絶大な考察のヒントになる場合が非常に多いです。
弊ブログ「世界観警察」で過去に翻訳、解説した『Everybody's Gone to the Rapture』に於けるBGMの歌詞翻訳も、ヒントが盛り沢山でした。
↑ 皆様ABZUが好きでこの記事に辿り着いたろうことは承知の上で、『Everybody's Gone to the Rapture』も素晴らしいゲームなので宣伝しておきます。
ABZUのトラックリストは以下の通り。
1. To Know, Water
2. Heaven Was Not Named
3. Seriola Lalandi
4. And The Earth Did Not Yet Bear A Name
5. Delphinus Delphis
6. No Field Was Formed
7. Caranx Ignobilis
8. Myliobatis Aquila
9. No Destinies Ordained
10. Balaenoptera Musculus
11. Architeuthis
12. Chaos, The Mother
13. Arandaspis Prionotolepis
14. Elasmosaurus Platyurus
15. Ichthyosaurus Communis
16. Osteoglossum Bicirrhosum
17. Their Waters Were Mingled Together
18. Then Were Created The Gods In The Midst Of Heaven
まず、英語のタイトルのものは元ネタがあります。
『ABZU』考察記事の第一回目、「ABZUとはなにか」で解説した、アッカド神話の天地創造物語『E-nu-ma E-liš (エヌマ・エリシュ)』の第一粘土板冒頭部の英訳です。
第一回目の記事でこのような図を掲載したので、これを元に見ていきましょう。
左の行が原文、真ん中が英訳、右が拙訳です。
上記トラックリストと見比べて、どうでしょう。最早間違い探しの領域ですが……。
見覚えのある文字列がでてくるやも!?
というわけで……。
赤字で表記したところがそのままの曲名になっています。○で囲まれた数字はトラックナンバーを示していますので、是非お確かめください。
2、4、6、9、17、18が含まれています。
意味は右側に拙訳を出していますので併せてご覧ください。
他にも簡単に読めるものが二つありますよね。先にそこを見てしまいましょう。
1. To Know, Water
「水を知るには」?「知るべきは水」?
単調すぎて訳しづらいですが、要は水に触れて泳ぎ方を学んでくださいということです。
一番最初のエリアで流れているABZUのテーマ曲。曲だけで水中という感じが伝わりますよね。名曲です。
12. Chaos, The Mother
「全ての母、混沌」。上記『エヌマ・エリシュ』にも出てきましたね。
鼓動のような機械音と、外れたコーラスが不気味な一曲です。深海の壊れた工場とよく合っています。
さて、残ったものが、
3. Seriola Lalandi / 5. Delphinus Delphis / 7. Caranx Ignobilis / 8. Myliobatis Aquila / 10. Balaenoptera Musculus / 11. Architeuthis / 13. Arandaspis Prionotolepis / 14. Elasmosaurus Platyurus / 15. Ichthyosaurus Communis / 16. Osteoglossum Bicirrhosum
なのですが……。
これ、英語じゃありませんね! 困った!難解だ! ……しかし諦めるのはまだ早いです。ヒントはあります。
たとえば、14のElasmosaurus。え、ら、す、も、さ、う、る……もうおわかりでしょう。
こちら、各楽曲が流れている際のメインとなる水生生物のラテン語の正式学名なんですね! 詳しく見ていきましょう。
3. Seriola Lalandi
ヒラマサです。ちなみにこんな感じのお魚。
5. Delphinus Delphis
マイルカです。この曲、躍動感があっていいですよね。
マイルカはスタイリッシュなデザインでかっこいいですね。
7. Caranx Ignobilis
ロウニンアジらしいです。ちょっと目が怖い。
8. Myliobatis Aquila
英語名そのまま、コモンイーグルエイというらしいです。和名はないとのこと。
10. Balaenoptera Musculus
シロナガスクジラです。ここのシーン、曲も演出も大好きなんですよね……。自動で進みますし、なんだか水族館にいるみたいな心持ちになってしまいます。
11. Architeuthis
我らがダイオウイカ。英名は我らが『ABZU』の製作会社の名でもありますね。
『ABZU』のダイオウイカは頭の部分がぴらぴら動いてめっちゃかわいいですよね。癒やし。
13. Arandaspis Prionotolepis
アランダスピス、というそうです。古生代オルドビス紀中期に生息していた最古の無顎類なんだとか。軽く調べましたが正直よくわかりません。
14. Elasmosaurus Platyurus
みんな大好き(?) エラスモサウルス。かっこいい。
15. Ichthyosaurus Communis
名前くらいは聞いたことあるはず! イクチオサウルスです。和名だと「魚竜」。つよそう。
ここの海流、とにかく街並み(?)が綺麗で大好きです。特にステンドグラス風の回廊を下っていくところなんか最高ですよね。
16. Osteoglossum Bicirrhosum
シルバーアロワナです。なんだか急に特別感なくなりましたね。今まで恐竜とかでしたからね。それとも、ようやく現世に帰ってきた……という感じでしょうか。
これにて曲名解読は終了です。
『エヌマ・エリシュ』冒頭、ゲームに登場する主要水生生物の学名から取られているとは、まさしくABZUの為のBGM。
解釈
(※2021/8/11 追記)。
ふと思いついたので加筆していきます。ABZUとは、根源たる命の水、世界の始まりです。しかし、この『ABZU』世界に於いて、ティアマト=混沌は何を指すのでしょうか?
『12. Chaos, The Mother』が流れるのは、 Chapter 5, 工場に於いてです。そこでは、人間の技術の結晶、僚機や兵器(三角体)、そして主人公にABZUを注ぎ込んでいます。曲名から、こうは考えられないでしょうか。即ち、「混沌」、「母」とは、人間や、人間の技術のことなのだと。
神話世界の原初の水と、発展した技術が "mingled together" = 一緒になって、初めて、天国が生まれる。こう解釈することはできないでしょうか?
原初の水だけでは楽園は生まれ得ず、それは破壊をもたらす混沌と混じり合い、溶け合って、互いを理解し、牽制し、愛し合って、そして美しい世界を創り出すのだと。
最後に
『ABZU』考察シリーズ最終回でした。お役に立てましたでしょうか。
『ABZU』は言葉もなく数時間で終わってしまうのに、謎が多く、調べることも多いゲームです。当方は知的好奇心を刺激され、どきどきしながら検証に走ったり、資料を集めたりできて本当に楽しかったです。
今後は考察兼資料として、『ABZU』に登場した水生生物を纏め、そこから分布図を作成し、モデルとなった海域を推測する「ZEN MASTER」シリーズを展開する予定です。更にマニアックに『ABZU』を深掘りしたい皆様は、是非ともお付き合いくださいませ。
↑ 「ZEN MASTER」シリーズ、始動!
それでは、お開きとさせて頂きます。ありがとうございました。