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映画『ソイレント・グリーン』 - レビュー

 こんにちは、茅野です。

 

 書き損じレビューを大量消化していくマラソンです。

一昨日の深夜、妙にスッキリと目が覚めてしまい、突発的に「何か映画でも観るか」と思い立ちました。そこで、試してみたのが『ソイレント・グリーン』です。

Amazon Prime で視聴。便利な世の中で有り難いですね。

 わたくしは普段あまり映画を見ないので、古典的名作と言えどもご縁がなく。今更になって初見でした。

 

 今回は、備忘に簡単に感じたことなどを纏めておこうと思います。

それでは、早速ですが、お付き合いの程宜しくお願い致します。

 

 

キャスト

ロバート・ソーン:チャールトン・ヘストン
ソル・ロス:エドワード・G・ロビンソン
シャール:リー・テイラー=ヤング
タブ・フィールディング:チャック・コナーズ
ウィリアム・R・サイモンソン:ジョゼフ・コットン

監督:リチャード・フライシャー

 

雑感

 映画『ソイレント・グリーン』は、1973年アメリカ映画です。古典的な作品ですね。

 原作は、ハリイ・ハリスン原作のSF小説Make Room! Make Room!(邦題:人間がいっぱい)』。

 こちらも古典的な作品で、題はよく聞くのに拝読したことがなく……。これを機に手にとってみようかと思いつつも、積読の山に埋もれております。暫し待たれよ。

 

 して、何故今更になって『ソイレント・グリーン』かと申しますと、この作品の舞台が2022年ということになっているからです。

「時代が追いついてしまったのか……」ということで、50年近く前に描かれた2022年を体感してみることに。

 

 古典的な作品ゆえ、ストーリーはご承知の方が多いかと思います。

人口爆発でろくに居住区や食糧が足りなくなり、最終的に「ソイレント・グリーン」なる名の人肉が出回る、という物語です。

 映画『赤い闇』などを思えば、さもありなん……というところ。

 フィクション作品だと、バイロンの『ドン・ジュアン』などにも、極限状態で人肉を食べる描写がありますね。

 

 映画『ソイレント・グリーン』は、50年近く前の作品ということもあり、映像的にチープに感じる点はかなり多いです。しかし、恐ろしいほどの人混みで、常時汗を垂れ流している様子、明確に貧富の差が出る服装など、描写は必要十分でわかりやすく、「まあ古い映画だしな」と思えば、特に気になりはしません。

話の筋としても単線的で、余分なものを削ぎ落としたストイックな作品であると感じました。

 

 美女に人権を与えずに「飼う」様子など、人口が増えれば権利を担保できなくなる、という予想にも思うところがあり。

彼女らを「家具(furniture)」と呼ぶのは、『うみねこのなく頃に』を想起したり。寧ろそちらの方が影響を受けているのでしょうが……。

↑ 最近、YouTube にピアノアレンジ譜を出したりしています。

 

 象徴的なのは、主人公の相棒である老人、ソル・ロスが安楽死するシーン。

映画の説明や wiki などの大手サイトを見る限りでは、ベートーヴェン交響曲第 6 番(『田園』)がよく話題に上るようですが、他に用いられている「クラシック音楽」は、チャイコフスキー交響曲第 6 番(『Pathétique(悲愴)』)と、グリーグの『ペール・ギュント組曲より『』でしたね。

謎に 6 番ばかりで、何かの示唆かと思いましたが、特に関連性は見つけられていません。

 個人的に、普段はチャイコフスキー某オペラを愛でているので、彼の楽曲が使用されていて大変嬉しかったです。

↑ 該当部からにしてあります。美しい~~!

 

 「ソイレント」という語は、大豆(soybean)とレンズ豆(Lentil)を掛け合わせたもの。非常にわかりやすいですね。

作中では、他に「ソイレント・レッド」「ソイレント・イエロー」がありますが、肝心の人肉が原料となっているものは、「グリーン」というのが示唆的です。

基本的に、緑色というのは、目に優しい自然の色とされている、だからこその「グリーン」なのでしょうね。皮肉が効いております。

個人的には深緑色が一番好きな色なので、複雑な気持ちになりましたが……。良いですよね、藻の色……(?)。

 

 しっかし、主人公ソーンと相棒ソルの関係は、何と申しますか、BL とまではいかなくとも、充分ブロマンス風味でしたね。

現代であれば、「バディもののブロマンスっていいよね~」で終わるんですけれど、この映画が70年代のアメリカのものだと考えると、結構思い切った描写であったのではないかと考えたりもします。どうなのでしょうね、当時の受容としては……。

 

 普段、特に古典的な映画はあまり観ないもので、逆に真新しく、楽しむことができました。

オススメの古典映画等御座いましたら、ご教授頂けますと幸いです。

 

最後に

 通読ありがとうございました。2500字ほど。

 

 『ソイレント・グリーン』は、SF 映画の古典ですが、わたくし、どうしても一つ映像化して欲しい作品がありまして……。フィリップ・K・ディックの『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』というのですが……!!

↑ この表紙が作中の内容を端的に表していて大好きすぎるという話をよくしています。ハヤカワさんはたまに本の表紙をグッズ化していますが、『聖痕』のものがあればすぐにでも買うのに……。

 『聖痕』は、PKD 作品の中ではマイナーな方ですが、腐っても PKD ですよ。そろそろ映像化の話が来てもよくないですか!? 絶対スクリーン映えするとおもうのですよ。是非とも宜しくお願いしたいところです。

 

 それでは、今回はここでお開きと致します。また別記事でお目に掛かれれば幸いです。