こんばんは、茅野です。
普段あまり映画は観ないのですが、珍しく最近は映画や演劇をよく観ますし、観たいという意欲があります。主に19世紀の実在の人物や出来事を題材とした作品を好むのですが、お勧めの作品がありましたら気軽に教えて頂けると幸いです。
さて、そんなわけで先日、映画『魂のまなざし(HELENE)』を鑑賞して参りました。
↑ いつもながら駆け込みです……。
今回は、備忘として、ごく簡単に雑感を書き残しておこうと思います。
それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します。
キャスト
ヘレン・シャルフベック:ラウラ・ビルン
エイナル・ロイター:ヨハンネス・ホロパイネン
ヘレナ・ヴェスターマルク:クリスタ・コソネン
ヨースタ・ステンマン:ヤルッコ・ラフティ
オリガ・シャルフベック:ピルッコ・サイシオ
監督:アンティ・ヨキネン
雑感
今作の映画の題材となっているのは、フィンランドの女性画家ヘレン・シャルフベック氏。無学にして、映画を拝見するまで全然存じ上げませんでした……。
初期には写実的な絵を、後期には20世紀らしいモダンな絵をメインに描く方のようです。時代によってかなり画風に差があり、万能型と言えます。
↑ 代表作『快復期』(1888)。
↑ 作中でとりわけ重要だった作品『水夫』(1918)。
近年、『メアリーの総て』や『トーヴェ』など、実在の女性作家・女性画家を題材とした映画は増えており、内容や映画自体の新規性は余り感じられません。
とはいえ、このような静謐で美しく、実在の人物を題材とした映画はもう幾つあっても良いですからね。今後も臆せず増えて欲しい。
↑ 『フランケンシュタイン』でお馴染みの作家メアリー・シェリーの伝記映画。奔放な詩人の夫に悩まされる半生を描いています。
↑ 今作とも共通する、フィンランドの画家(絵本作家)であり、『ムーミン』シリーズでお馴染みのトーベ・ヤンソンの半生を描く伝記映画。
そういえば、同じフィンランド映画ということもあって、『トーベ』で魔性の女ヴィヴィカを演じているクリスタ・コソネン氏は、今作でも、友人ヘレナ・ヴェスターマルクを演じておられますね。声が特徴的な、良い俳優さんだ……。
今作は、1910 - 20 年代のフィンランドを感じられるのが大変素晴らしいです。
個人的には19世紀の帝政ロシア(第一次大戦までフィンランドはロシア帝国領)に深い関心を寄せているので、もう少しその要素を堪能したいような気もしましたが、本筋からは逸れる個人の好みですので捨て置きます。
19世紀後半〜20世紀前半のフィンランドは、ジャン・シベリウスの『フィンランディア』に代表されるように、抑圧、そして解放の時代でありました。その時代の女性、芸術家解放運動などの様子が垣間見れて個人的にも興味深かったです。
音楽も静謐で、ピアノの音色がメインとなる楽曲が主です。画と非常に合っております。
素敵なので、サウンドトラックを購入したいくらいなのですが、簡単に確認したところでは販売されていない様子で……。『Rannalla(海岸へ)』や、『Beige』などが印象に残りました。たまに登場する弦の音は、ヴァイオリンではなくニッケルハルパなのでは? などと考えたり……。
個人的には、大好きなゲーム『Dear Esther』の音楽にかなり近いものを感じ、観ながらずっと想起していたので、当映画の音楽がお気に召した方は是非視聴だけでもしてみてください。
↑ 『Dear Esther』、人を選びますが傑作と断言できるゲームです。
俳優陣も、特に主演のラウラ・ビルン氏が好演で、殆ど一人芝居で御座いました。妙齢の女性の閉塞的な孤独を見事に描ききっております。
涙する前の小鼻の膨らみや、顎の痙攣、繊細ながらも力強い汚れた手など、演技力ある美しさを魅せてくれます。
前述のクリスタ・コソネン氏もまた良かったです。友人役に定評あり。
しかしとりわけ素晴らしいのは、母オリガ役のピルッコ・サイシオ氏でしょう。愛憎入り混じる関係を見事に演じきっております。家族って難しいですね……。
「どこかで観たことがあるような……」という要素が多分にあり、新規性のある映画ではありませんが、静謐で美しく、フィンランドの自然や言語を堪能できる作品です。
また、シンプルだからこそ、痛いほどに主人公ヘレンの心の動きを追うことになります。それは恋であったり、家族との関係や、ままならない身体、女性や芸術家の権利と世論の乖離であったり。
映画としては少し長めの 2 時間、没頭できる作品であると感じました。
最後に
通読ありがとうございました。2000字強。
最近は訳あってポーランド絵画についてリサーチを深めていたのですが、フィンランドの絵画も調べねばという気持ちになりました。東欧、北欧に波が。
↑ 「訳」。
新たに縁ができるというのは素晴らしきことです。自分の人生との紐帯は多いに越したことがありません。
またこのような近現代の優れた伝記映画に巡り会いたいと願いながら……、今回はこれでお開きとしたいと思います。また別記事でお目に掛かれれば幸いです。