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「デボンの荷物」を開けてみる - ポケスペ4章考察

 こんばんは、茅野です。

トンガの火山噴火やら、ポンペイ展開催やらで、最近は地質学のリサーチをしています。完全に門外漢なので、ごく簡単に調べるだけでも学びが多く、非常に楽しいですね。

リサーチした分はどこかに纏めたいなあと思えど、地質学が物語に深く関係している作品をわたしは4章しか知らないので、必然的に4章記事が増えます。地質学が密接に絡んだ面白い小説やゲームなどご存じでしたら、是非とも教えて下さいませ。

 

 というわけで今回はポケスペ4章(及びポケモンRSE)の考察記事です。

この間駅から自宅へ歩いている間、ふと天啓が降りて来ました。「潜水艇 "かいえん1号" って、漢字で書いたら "海淵1号" なのでは?」と。考えるまでもなくわかりそうなものですが、今までこの点について全く考えたことがなかったので、とても新鮮に感じました。

 詳しくは後述しますが、わたくしは過去に『ABZU』という海が冒険の舞台となるゲームの考察・検証記事を沢山執筆しており、そこで深海や海溝、もちろん海淵についてもリサーチしていたので、ここで培った知識をポケモンポケスペ考察にも活かせるのではないか、と考えつきます。

 思えば、「潜水艇 かいえん1号」についてはわからないことばかり。潜水艇って言っても、どこまで潜れるのか? 「海底洞窟」って水面下何メートルくらいの地点にあるの? 起動に必要な「デボンの荷物(スペ4章では "特別起動部品" )」には何が入っている? ……などなど。疑問があるならばリサーチをするしかない!

 従って今回は、「デボンの荷物を開けてみる」と題して、ポケスペ4章・ポケモン RSE に於ける「潜水艇 かいえん1号」、海底洞窟、デボン・コーポレーションについて考えます

 

 それでは、お付き合いの程宜しくお願い致します!

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かいえん1号

しんかい6500

 早速ですが、モデルの検証から開始します。潜水艇「かいえん1号」のモデルは、日本海洋研究開発機構(JAMSTEC)さんの開発した有人潜水艦「しんかい」系列であると考えられます

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↑ 「しんかい6500」号。

 

 根拠は三点あります。

第一に、「日本が独自に開発した潜水艦」であるということ。また、RSE・4章発表以前から活躍していること(「しんかい6500」は1989年に完成)。

第二に、船の名前が深い海にちなむ平仮名4文字+数字であること(「しんかい(深海)」、「かいえん(海淵)」。「しんかい」の 6500 は潜水可能深度(メートル)を示す)。また、JAMSTEC さんは「しんかい」以外にも、無人潜水艦・深海探査機「かいこう」「うらしま」などを開発しています。

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↑ 「かいこう7000」号。

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↑ 「うらしま」号。

第三に、「かいえん1号」と「しんかい6500」号の外見が類似していること。

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↑ 「かいえん1号」。丸みを帯びたフォルムに四角い羽根などの類似点があります。前方部にカメラ、マニピュレータを取り付けたら「しんかい6500」にそっくりなのでは?

 以上のことから、「かいえん1号」のモデルは「しんかい6500」である、と推測できます

 

 前述のように、「しんかい6500」の開発は JAMSTEC日本海洋研究開発機構)さんにより行われましたが、単独での開発ではなく、民間企業の参与を得て完成しました。その民間企業とは、皆様ご存じ、大企業・三菱重工さんです。

この構図は、「かいえん1号」を開発したクスノキ造船所とデボン・コーポレーションに重なります

 

デボンの荷物

 では、今回の本題、「デボンの荷物」を勝手に開けてしまいましょう。一体全体、何が入っているのでしょうか。

リサーチの結果、わたくしの意見では、ゲーム『ルビー』『サファイア』『エメラルド』『オメガルビー』『アルファサファイア』の「デボンの荷物」の中身と、ポケスペ4章の「特別起動部品」は異なるのではないか、と推測します。

 

 まず、ゲームの「デボンの荷物」から。作中での説明は以下の通り。

デボンで つくられた 何かの パーツが 入っている にもつ。

漠然としすぎていますね。わかることは、「潜水艇の完成に必要である」ということ、また、「持ち運べるサイズのものである」ということの二点です。

 ここから特定するのは最早不可能なのでは……と思った矢先、なんと「しんかい6500」でも、「三菱重工の方が潜水艦の部品を持ち歩いていた」というエピソードを発見! JAMSTEC さんの記事を引用します。

 (三菱重工の)大森(邦彦)さんの「しんかい6500」に対する思いもまた熱く、かつてどうしても原因のわからない油漏れが続いていた時、いつ何があっても良いように大森さんは疑わしい部分の部品を常にカバンにしのばせて毎日通勤、事実ある夜に修理要請の電話を受けた大森さんは翌朝にはその部品とともに寄港地に現れ、その迅速な対応に関係者一同感激しました。

スタッフ 有人潜水調査船「しんかい6500」 - JAMSTEC

もしかしなくてもドンピシャなのでは……??

 「トウカの森」で出逢う「デボンの研究員」のモデルは大森さんで、「デボンの荷物」に入っていたのは「海中油漏れを修復するための部品」である……と考えると大変しっくり来ます。

仮に、この「大森さんのカバン」が盗難されてしまったら、「しんかい6500」の完成は不可能、少なくとも遅れることは同記事からも明らかです。そう考えると、ゲーム RSE のイベントはこのエピソードにとても近いのではないか、とは考えられないでしょうか。

 

 但し、メタな話をすれば、この記事が投稿されたのは2012年です。このように一般的に情報が公開されていない段階で、ゲームフリークがそこまで調査したのかどうかは疑わしく、このイベントを意図的に配置した可能性は高くないとは思います。しかし、モデルであると推測される「しんかい6500」号建造に於いて、類似の事柄があったことは興味深く、参考するに値すると考えます。

 

特別起動部品

 次に、4章に話を移します。

4章の方では、研究員の「デボンの荷物」ではなくムクゲ社長自身が、「特別起動部品」なるものを盗難されたことになっています。

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 「特別起動部品」は特異な部品です。それがなくてもある程度の運行は可能ですが、それがないと深海まで潜水できない、という代物。であるならば、それはカメラなどの副次的なものでは有り得ず、また耐圧殻のような一人で持ち運べないものも除外されます

 従って、「特別起動部品」は「深海に潜水するためだけに必要なもの」であり、「人が一人で持ち運べるサイズのもの」であることがわかります。

 

 ……とは言っても、それが具体的に何を指すのか、全くピンと来ない門外漢。そもそもそんなものは存在するのでしょうか?

それではここで、再び「しんかい6500」号を参考にします。わたくしの考えでは、「主畜電池」がモデルではないかと考えます

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↑ 「しんかい6500」の側面図。赤丸で囲ったところが主畜電池を収める場所。

 

 「しんかい6500」の原動力となる電池。水面下6500mまで潜水するには、800Ah が必要です。それをこの電池で賄っています。

 建造された1989年当時は酸化銀 ・亜鉛電池を用いていたそうですが、2004年に新しく開発されたリチウム・イオン電池に変更されました。いずれも、お世話になっている方も多いであろう、GS ユアサさんが開発しています。それがこちら。

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↑ リチウム・イオン電池と、その開発を担当された GS ユアサ社の中村慶太さん。

 こちらは新型のリチウム・イオン電池ですが、中村さんが持っている写真から見ても、人が持ち運べそうな重さとサイズ感……ですよね。

尤も、初期の酸化銀 ・亜鉛電池は大変重かったそうですが、リチウム・イオン電池も「4章発表より2年後に開発されたもの」と考えれば、ごく近未来に完成している技術であると言えるので、サイエンス・フィクションとしても全く無理がありません。「完全に同じ」とはいかなくとも、「完全なフィクション」というわけでもない、という絶妙なラインが浪漫を生みますね。

 

 ところで、リメイクである ORAS 、及び13章では、「かいえん1号」の動力源は∞エナジーであることが明かされます

エナジー

ポケモンの生体エネルギーを吸い出し、変換することによって生み出される。デボンの先代社長(現社長ツワブキムクゲの祖父)が実用化。3000年前、他地方で起きた戦争を終わらせるため、ある男が開発した「最終兵器」を参考にしており、同じメカニズムでエネルギー生成を行う。第二宇宙速度で宇宙へ到達するロケット動力部、潜水艇かいえん1号のモーター等、多くの場面で∞エナジーは用いられており、デボンコーポレーションはこの成功によりホウエントップ企業となった。

 従って、この「特別起動部品」は、∞エナジーそのもの、或いはそれに関連するもの、と推測することが可能です。現実世界と比較するならば、上記のリチウム・イオン電池が∞エナジーに差し替えられている、と考えて問題ないでしょう。

 

 纏めます。

1. 潜水艇 かいえん1号」のモデルは恐らく「しんかい6500」である。

2. 「しんかい6500」を開発した JAMSTEC がカイナシティの「クスノキ造船所」及び「海の科学博物館」のモデル、それに参与した三菱重工、及び電池を開発した GS ユアサ社がデボン・コーポレーションのモデルであると推測できる。

3. 「しんかい6500」開発中にもゲーム RSE 及び4章に類似の技術やエピソードが存在し、「荒唐無稽な作り話」というより、「現実世界でも有り得そうなこと」として受容できる。

「かいえん1号」に関しては以上になります。次節では、「潜水した先」について考えます。

 

海底洞窟

 当節では、この「かいえん1号」は何処へ行くのか、つまり、海底洞窟について掘り下げます。

海淵とはなにか

 前述のように、当記事を執筆するに辺り、最初に思いついたのは「かいえん」の漢字は「海淵」ではないか、ということでした。

大辞泉で「かいえん」と引いてみると、同じ読み方をする単語が七つ出てきます。そのうち、「海」という字が入っているものが「海淵」「海塩」「海燕」の三つです。

 

 では、「海淵」とは何でしょうか。同じく大辞泉によると、こうあります。

かい-えん【海淵】

海底の特に深い凹地。ふつう海溝中にあり、発見船の名を冠してよぶことが多い。

言うなれば、海淵とは「世界の最深部」。わかりやすく言えば、「海底の裂け目」です。海淵の下には地震の際にニュースでよく出て来る「プレート」があり更にその下はマントルになります。4章にも多大な影響を与えている、ジュール・ヴェルヌの小説『地底旅行』や『海底二万里』を彷彿とさせますね。

 さて、説明に登場する「海溝」の定義は水深6000m以深を指します。前述の「しんかい6500」は深度6500m、「かいこう7000」は深度7000mまでの潜水が可能ですが、即ちこれは海溝を探査する為に製造されたことになります。

 

 海淵は原則的に海溝にあり、中でも一番深い場所にあります。「世界で最も深い海」といえば有名なマリアナ海溝ですが、最深度にあるのがチャレンジャー海淵で、深度10994mを記録します。ちなみに、今話題のトンガ近海にも海溝があり(その名もそのまま「トンガ海溝」)、その最深部がホライゾン海淵で、深度は10823mあります。これはマリアナ海溝チャレンジャー海淵に次ぐ深さです。

 

海底洞窟の深度を考える

 前述のように、海溝とは深度6000m以深を指します。潜水艦「しんかい6500」号は、「海溝」の探査が可能です。しかし、チャレンジャー海淵やホライゾン海淵の値を見れば明らかなように、「海淵」には深度1万mを超過するものも存在し、深度の測定などの調査は可能でも、海淵までの潜水は可能になっていません。

 一方、「かいえん1号」は、名前に「海淵」を入れていることからも、海淵を調査するために製造されたのではないか、と思えます。

 

 ご承知の通り、ホウエン地方のモデルは九州で、反時計回りに90度傾けた形になっています。九州に最も近い海溝といえば、琉球海溝です。

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↑ 赤線の部分が琉球海溝。島々から約20km離れた位置にあります。

 ホウエン地方の「海底洞窟」は、ルネシティの南(=屋久島の西)にあるので、琉球海溝との位置関係はズレます。しかしながら、ホウエンマップでは、沖縄(=サイユウシティ)を地図上に収めるべく、沖縄の向きと位置が大幅に変更されています。

 その際、「沖縄本島だけではなく、周囲の海(海底地形)も一緒に動かしていたら」、どうなるでしょうか。上記の地図なども参考にしつつ、一緒に考えましょう。

 つまり、ホウエンマップに合う形となるように、沖縄本島を反時計回りに約90度回転して、屋久島の真西に配置するわけです。すると、丁度屋久島(ルネシティ)と沖縄本島(サイユウシティ)を横切るように、琉球海溝が出現するではないですか。そこは正に127-128番水道と「海底洞窟」の位置になります。

 従って、強いてホウエン地方に「海淵」を求めるのなら、モデルは琉球海溝になるのではないか、と推測できるわけです。

 

 さて、琉球海溝です。最深度は7507mと言われています。「しんかい6500」の潜水可能深度よりも1000m深い計算です。「特別な潜水艇でないと到達できない深度」という作中の設定を踏まえれば、やはり海底洞窟は海溝クラス(深度6000m以深)にあるのではないか、と考えたいところです。

 

 別の側面からも検討します。次は、実際の「海底洞窟」を確認してみます。

例えば、実際に沖縄近海にある海底洞窟の一つである「大洞窟」は、大陸棚の途中にあり、深度20mから中に入ることができます。深度20mなら、スキューバ・ダイビングのライセンスを持っていれば、現実でも生身で潜水することができる深さです。

 「海底」とは、読んで字の如く、「海の底」。幾ら海が浅くたって、海底は海底です。「海底洞窟」という語だけでは、その深度を特定することは不可能です。

但し、現在確認されている海底洞窟は、元々地上にあった洞窟が沈んで海底洞窟となったもの、地上からの堆積物の流入で洞窟化したものなどが主なので、比較的浅い場所にあると考えてよさそうです。尤も、深海はまだまだわからないことが多いので、勿論深い場所にも洞窟がある可能性は残されています。

 

 最後に、生息している生き物から検討してみましょう。

深海の生き物といえば、「深海魚」。驚くべきことに、海溝級の深度に生息する生物も存在します。たとえば、このシンカイクサウオという魚は、海溝付近の深海に生息しています。

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↑ ふつうにポケモンにもいそうな可愛いフォルム。「つぶらな瞳」を覚えそう。

 尚、「深海」とは、深度200m以深の海のこと。今まで海溝だの海淵だのと極端に深い海を扱っていたので、「たったの200mから?」と拍子抜けされるかもしれませんが、深海200mは一切光の差さない暗黒の世界です。寧ろ、海溝や海淵が深すぎるのです。中学校なんかで走った100m走の2回分、と思えばほんの少しイメージが湧くかもしれません。

 

 ちなみに、ジーランスの元ネタであるシーラカンス」は約200~700m付近に生息している魚で、海溝までには全く届きません。ポケモンと実在の生物は別物とはいえ、どうでしょう、じららはサファイアとルビーを海溝・海淵まで案内できると思いますか?

 

 幸いなことに、わたくしは過去に『ABZU』という海が舞台のゲームの記事を執筆していました。この「ZEN MASTER」というシリーズは、作中に登場する水棲生物の分布を確認し、作中のモデルとなった海域を割り出す、という検証・考察を行ったものです。

「4」という数字には縁があるのか、『ABZU』での深海エリアは Chapter 4。しかも、分布を確認した結果、恐らくは沖縄近海、琉球海溝付近がモデルである、と特定しました。もし現実の琉球海溝付近の生物に関心があれば、ご覧頂けると幸いです。

↑ 「ZEN MASTER」シリーズ、全6回です。『ABZU』はポケモンで図鑑を埋めることが好きな人は絶対に好きだと思うので、是非とも遊んで頂きたい。

 

 纏めます。

1. 「海淵1号」という船名から、海淵まで潜水することを目的とする潜水艇なのではないかと推測される。従って、船名から考えれば、海底洞窟は深度6000m以深に存在するのではないか。また、是であるならば、モデルとなるのは琉球海溝ではないか。

2. 「海底洞窟」という語義からは深度を特定することはできない。

3. 海溝付近に生息する生物も存在する。ちなみにシーラカンスはそこまで潜れない。

 

 結論を出すことはできませんでしたが、検討すべき要素は検討しました。皆様はどれくらいの深度に存在するとお考えになりますか。

 

 ところで、エメラルド版以外では、グラードンも海底洞窟に眠っていたことは特筆に値します。ここに関しては、物語上の都合もあるでしょうが、別の見方もできるはずです。

 たとえば、琉球神道では、「ニライカナイ」という概念があります。こちらは「楽園」や「冥界」とも考えられていると同時に、「神の住まう場所」と考えられています。位置に関しては「海の向こう」、或いは「海の底」。「海の底の洞窟に眠る陸と海の化身」、関連づけて考えることは不可能では無い、そうは思いませんか。

 

デボン・コーポレーション

 最後に、デボン・コーポレーションについて考えます。

モデル=三菱説

 前述のように、「しんかい6500」号の製造には、三菱重工が関わっています。また、三菱重工種子島(トクサネシティ)のロケット打ち上げも主導しています。ということは、必然的にデボンのモデルは三菱重工なのではないか、と考えたくなります。

 

 では、試しに、その線に沿う形で掘り下げてみましょう。

 三菱グループは特段九州(特に福岡=カナズミ)を拠点としているわけではありませんが、三菱財閥二代目・岩崎弥之助氏の時代には高島という長崎県の炭鉱を買い取り、採鉱業に乗り出します

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↑ 航空写真。高島炭鉱世界遺産にもなっています。

元々海運業を担っていた三菱が陸に進出した、エポックメイキングな出来事です。前述のように、今は宇宙開発にも力を入れているので、海、陸、空と制覇しております。

 

 また、三菱グループの理念の一つが「所期奉公」です。こちらの意味するところは、

「生産活動は国の最も重要な活動の一つである。その活動に携わっているわれわれは、国から極めて重要な任務を任されているとも言える。したがって、事業の究極の目的は国のためにするということであって、その目的達成のためにベストをつくすことがわれわれの理想でなくてはならない

根本理念「三綱領」 | 三菱グループサイト

だそうです。大変立派な志ですが、ホウエンの民の「国(地方)に尽くさねばならない」という強迫観念染みた思想にも通ずるところがあるのでは……と考えてしまいますね。

 

 ご承知のように、三菱グループは日本を代表する大企業であり、エネルギー分野から日用品まで、ありとあらゆるものに携わっています。こちらも共通点足り得ます。

 更に、三大財閥を見較べてみても、三井グループ住友グループと比較して、三菱は主要な役職を多く岩崎家が占めており、大企業ながら、言うなれば「世襲制」とも言うべき形態(同族経営)も、少なくとも二代以上ツワブキ家が社長を継いでいるデボンとの類似点です。

 ここまで来るとこじつけの領域ですが、三菱グループを創業したのは「岩崎」家ですが、デボンの社長一家ツワブキ」家は漢字で書くと「石蕗」となり、「岩」と「石」で近いものがあります。

 

 ……と、このように、挙げようと思えばかなりの類似点を列挙することが可能です。勿論、「モデルの一つではないか」という推測であり、完全に一致するわけではありませんが、かなり有力な候補なのではないかと推定できます。

 

 余談ですが、昔『ARMORED CORE for Answer』というゲームについて考えていたこともあるのですが、こちらに登場する日本の大企業「有澤重工」は、もう言い逃れもできないくらいに三菱重工です。わたくしのなかでは、「フィクションに登場する日本の大企業のモデル、大体三菱説」が有力になってきました。改めて偉大なり、三菱グループ……。

 

法人形態

 さて、前項では日本を代表する特大企業・三菱グループとの比較を行いましたが、今回は別の視点で考えます。

 現在では、法改正により有限会社は設立できなくなりましたが、4章発表時はまだ可能でした。大企業ともなれば、十中八九株式会社ですが、一度立ち止まって考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

 「デボン・コーポレーション」は、フランス語版では «Devon SARL» と訳されています。SARL は «Société À Responsabilité Limitée» の略で、字面からもおわかりかもしれませんが、日本語にすると「有限会社」となります。

 英語の «corporation» では、株式でも有限でも有り得ますが、フランス語では有限会社であると断定されているのは興味深い事実です。

 

 但し、フランスの有限会社=SARL の事情は、勿論日本とは少し異なります。今でも有限会社を設立することが可能ですし、時期にも依りますが、フランスに存在する会社の約 2/3 が SARL だとするデータもあり、フランス商法典(19世紀初頭)の時代から、フランスでは株式よりも有限の方が人気のある形態であることがわかります。

 

 しかし、有限は有限。制約もあり、有限会社という形態が向いているのはやはり中小企業であると言うことができ、地方一の大企業が有限会社である、というのは違和感が拭えません

 「地方一の大企業ながら有限会社である」と考える場合、そうですね……、外部から資金を調達することがほぼできないので、創業者のツワブキ家が開発資金のほぼ全額を担うことができる程の超特大級の大富豪であれば、不可能では無いかもしれません。フランス語版ツワブキ(Rochard)家、大財閥説。

 ちなみに、日本の大企業でも、例えばサントリーさんは、株式会社ながら株式公開を行っていなかった時期もある(上場していなかった)同族経営形態なので、全く不可能というわけではありません。そういう意味に於いては、こちらもモデルの例として考えてもよいかもしれません。サントリーホールディングスも強すぎます。

 

社名の由来

 最後に、社名の由来について簡単に解説して締めたいと思います。

デボン(Devon)は英国の地名ですが、この場合は顕生代の区分である「デボン紀」から来ていると考えて間違いないでしょう。

 

 デボン紀の水棲生物にはとある特徴があります。その特徴とは、多くの種が、どうみても「みず・はがね」或いは「みず・いわ」タイプであるということ。これはただのわたくしの偏見ではなく、古生物学に於いても、「甲冑魚」と言って、堅い装甲に覆われた魚類である、と考えられています。

先程もご紹介した『ABZU』考察記事群「ZEN MASTER」シリーズにて、デボン紀の水棲生物の一部もご紹介しているので、是非画像を眺めるだけでもどうぞ。

↑ 「みず・はがね」で「いしあたま」っぽい魚が多いのがデボン紀、と覚えておくと、古生物学を調べるときに役に立つかも。覚えやすいですね。

ちなみに、じららことシーラカンスデボン紀から存続している種です。

 

 顕生代は幾度も大量絶滅が起こりました。デボン紀末期にも大量絶滅が起こりました。何故デボン紀は潰えたのでしょうか。

未だ研究段階にあり、確定はしていませんが、有力な説の一つが隕石の落下によるもの。なるほど、つまり13章というわけですね! そんなところまで示唆しなくて良いのに!

尚、このとき、約70%の種が絶滅したと言われています。13章ではなんとか回避できてよかったですね。

 

 ところで、「休火山にできた街」とされていたルネシティが、ORAS 版では何故か「隕石のクレーターにできた街」と変更されています。ご承知の通り、ルネシティのモデルは屋久島なので、いずれも創作ですが、エピソードΔ の布石とするための変更なのでしょう。

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↑ 有名なチクシュルーブ・クレーター。確かに、これであれば海中か上空からしか中に入れませんね。毎度お馴染み、ホウエン地方インフラ問題。

 

 纏めます。

1. デボン・コーポレーションのモデルの一つは三菱重工(或いは三菱グループ)である可能性が高い

2. 少なくともフランス語版では、デボン・コーポレーションは有限会社ということになっている従って、フランス語版では特に、ツワブキ家はとんでもない大富豪である可能性がある

3. 社名の由来は「デボン紀」であると考えられるちなみにデボン紀は隕石の落下によって終焉した可能性が高い

以上となります!

 

最後に

 通読ありがとうございました! 想定以上に大ボリュームになってしまい、既に1万字を超過しております。

「"かいえん1号"  は "海淵1号" と書くのでは?」というふとした思いつきから、ここまで脱線致しました。潜水艇関連については大分理解が深まったような気が致します。

 

 4章は掘り下げられる議題が多く、考察も書き甲斐がありますね。4章の記事は書いていて楽しいのですが、議題が思い浮かばないと検証も走りようがないので、疑問点もお気軽にお寄せ下さい。助太刀致します。

↑ これまでのポケモンポケスペ関連記事はこちらから。主に4章です。

 

 それでは、長くなってしまったので、ここでお開きとしたいと思います。また別記事でお目に掛かれれば幸いです。