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架空の世界を護るために

カディス憲法(1812) - 翻訳

 こんばんは、茅野です。

ふと思い立ったので、今回は久々に憲法の翻訳をやります。

↓はじめての訳はアルベルト憲章でした。こちらからどうぞ。

 

 今回取り上げるのは、1812年に発布された、スペインのカディス憲法です。前文と384条からなります。従って、この記事は物凄く長い(3万6500字程)ので、注意されたし。分割してもよかったのですが、後々ページ検索するときなどに楽かなと思いまして、一記事で纏めました。

 カディス憲法は、最新の研究では評価も変わりつつありますが、当時にしてはとても人道的、民主的、革新的であり、それを理由に絶対王制を採用する複数の国家から断交されたほど。そんな内容が気になったので、確認してみることとしました。

 

 邦訳は一応存在するらしいのですが、入手困難。且つ、英訳も断片的なものしかなかったので、致し方なく自分で訳してゆくことに。英訳があるところは重訳しつつ、原文(スペイン語)を機械翻訳の力も借りつつ確認しました。一応フランス語専攻なので、スペイン語はフランス語とある程度語幹や文法が共通するため、全文確認はしていますが、スペイン語話者ではないので、精度には特に期待なさらないでください「大体こんなかんじ」という大意を把握するに留めて頂けると有り難いです

訳語は変更した方が適切と思われる場合を除き統一してあります。また、如何せん長いので、校閲が働いていなかったり、表記揺れがあったらすみません。

 

 それでは、長くなりますがお付き合いの程宜しくお願い致します!

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

前文

 スペイン、1812年憲法

 一般・臨時両コルテスは、細心の綿密な考査と熟慮の上討議した結果、古来の王国基本法が、スペイン国民の栄光、繁栄、福祉を促進するという壮大な目的を達成する為に完全に計算されていることを確信し、それを恒久的に確立し、完全に施行することを可能にする為に、そして保証し得るあらゆる予防措置と権威の元、国家をよく統治し、正しく運営する為に、以下の政治憲法を布告する。

 

第一章 スペイン国とスペイン国民について

第一節 スペイン国について

第一条 スペイン国とは、両半球の全てのスペイン人の結合である。

 

第二条 スペイン国は自由で独立しており、いかなる王家や個人の所有物でもない。

 

第三条 主権は国家に属し、基本法を制定し、発布する権利を独占的に有する。

 

第四条 国家は、賢明で公正な法律により、国家を構成する各個人の自由、財産、その他全ての正当な権利を保護する義務を負う。

 

第二節 スペイン人について

第五条 合法的に規定されるスペイン人とは以下に当て嵌まる者を指す。

 (1) スペイン領内で生まれ育った全ての市民とその息子たち。

 (2) コルテスから帰化を許諾する書簡を得た者。

 (3) スペイン領内に十年以上居住し、そのことにより永住権を得た者。

 (4) スペイン領内で自由を得た奴隷。

 

第六条 祖国を愛し、それと同様に公正で誠実であることが、全スペイン人の最初の絶対的な義務である。

 

第七条 全てのスペイン人は、憲法に忠実であること、法律に従うこと、確立された当局に敬意を払うことが義務付けられる。

 

第八条 また、全てのスペイン人は、法が発布された場合、例外なく武装して祖国を守る義務がある。

 

第九条 また、全てのスペイン人は、例外なく、自分の収入に応じて国の財政に貢献する義務がある。

 

第二章 スペインの領土、宗教、政府、市民権について

第一節 スペインの領土について

第十条 スペインの領土は、アラゴンアストゥリアス、旧カスティーリャ、新カスティーリャカタルーニャコルドバエストレマドゥーラガリシアグラナダ、ハエン、レオン、モリーナ、ムルシアナバラバスク地方セビリアバレンシアバレアレス諸島カナリア諸島、アフリカの他の領土を含む半島とその隣接する島々で構成される。アメリカ北部では、新ガリシアユカタン半島を含む新スペイン、グアテマラ、西部の内地、2つのフロリダを含むキューバ島サントドミンゴのスペイン領、プエルトリコ島、これらに隣接するその他の島々、そして両海の大陸が該当する。南米では、新グレナダベネズエラ、ペルー、チリ、プレート川流域の諸州、太平洋と大西洋の全ての隣接する島々である。アジアでは、フィリピン諸島とその政府に従う人々が含まれる。

 

第十一条 スペイン領土の分割は、国家の政治的状況が許す限り、憲法によって行われなければならない。

 

第二節 宗教について

第十二条 スペイン国の宗教は、ローマ・カトリック使徒教会が唯一の真の信仰であり、今後も不変であることを認め、国は、賢明で公正な法律によってこれを保護し、他の宗教的儀式を阻止する。

 

第三節 政府について

十三条 政府の活動の目的は、国家の福祉であり、国家を構成する個人の幸福は、全ての政治的社会の幸福である。

 

第十四条 スペイン国の政府は穏健であり、世襲の王制である。

 

第十五条 法律を制定する権利は、国王と共にコルテスが有する。

 

第十六条 法律を執行する権利は国王が有する。

 

第十七条 民事上及び刑事上の理由で法律を適用する権限は、法律によって設立された法廷が有する。

 

第四節 市民権について

第十八条 両親ともいずれかの半球に属すスペイン人であり、且つスペイン領内のどこかの村に十年間居住している人。

 

第十九条 また、外国人であっても、規定に従ってスペイン人となった者は、コルテスからの特別な市民権証明書によって、市民権を得ることができる。

 

第二十条 外国人がコルテスからこの許可証を得る為には、スペイン人と結婚している必要があり、且つスペインに価値ある発明や産業をもたらしたり、確立したり、直接費用を支払って不動産を取得したり、コルテスの判断により自らの資本で商業を確立したり、国家の利益と防衛の為に重要な奉仕を行う必要がある。

 

第二一条 スペイン領内に定住している外国人の嫡出子で、スペイン領内で生まれ、政府の許可なく他国に行ったことがない者は、二一歳で、領内のどこかの村に居住し、何らかの職業、役職、有用な商業に従事していれば、市民権を得ることができる。

 

第二二条 どのような血筋であれ、アフリカ出身であると評されるスペイン人は、市民権を得る資格を有する。従って、コルテスは、祖国に適切なサービスを提供した者、または才能、応用力、行動力で際立った存在となった者に対し、市民権証明書を与える。条件は、教育を受けた両親の合法的な結婚による子供であること、教育を受けた女性と結婚してスペイン領内に住んでいること、何らかの職業、貿易、有用な産業を営み、自分自身の資本を持っていることである。

 

第二三条 市民権を有する者だけが自治体の職に就くことができ、法律で指定された場合、その職を選ぶことができる。

 

第二四条 以下に該当する場合、スペイン市民権は永久に失われる。

 (1) 他国に帰化した場合。

 (2) 他国政府から役職や地位の任を得た場合。

 (3) 肉体的、或いは不名誉な刑罰を宣告された者(但し、救済された場合を除く)。

 (4) 政府からの委託や許可なしに、連続して5年間海外に居住した場合。

 

第二五条 以下に該当する場合、同市民権の執行を停止する。

 (1) 身体的または道徳的無能力を理由とする裁判上の決断が出た場合。

 (2) 破産者または国庫の債務者となった場合。

 (3) 従僕の地位にある場合。

 (4) 役所に所属せず、雇用もなく、生活手段もない場合。

 (5) 刑事裁判を受けている場合。

 (6) 1830年以降に市民権を行使する場合は、読み書きの技能を持つ必要がある。

 

第二六条 市民権は、前二条に明示された理由のみでしか失効し得ず、他の理由で剥奪されたり停止されたりすることはない。

 

第三章 コルテスについて

第一節 コルテスの構成

第二七条 コルテスは、国家を代表する全ての代議士の連合であり、以下の方法で市民によって指名される。

 

第二八条 代議員の基盤は、両半球とも同様である。

 

第二九条 この基盤は、両親がスペイン人でスペイン領の住民である人々、コルテスから市民権証明書を受け取った人々、そして第二一条に含まれる人々からなる国民からなる。

 

第三〇条 ヨーロッパでの支配領域の人口を計算には、新しい国勢調査が行われるまでは1779年の最後の国勢調査の結果が用いられ、海外県でも国勢調査が行われるが、それまでは最も近く行われた国勢調査のうち最も信頼できるものが用いられる。

 

第三一条 第二九条に記載された人口七万人ごとに、コルテスに一名の代議士を送らなければならない。

 

第三二条 人口が各州に分配された後、いずれかの州で人口が三万五千人を超過した場合、七万人に達した場合と同様に、追加の代議員が選出される。余剰が三万五千人を超えない場合は、その限りではない。

 

第三三条 人口が七万人に達しない州であっても、六万人を下回らない場合は、その州は代議士を選出しなければならない。但し、サント・ドミンゴ島は、その人口にかかわらず、代議士を任命しなければならない。

 

第二節 コルテスの代議員の任命

第三四条 コルテスの代議員を選出する為には、教区、都市及び州に於いて議会(ユンタ)を開催されなければならない。

 

第三節 教区選挙管理委員会について

第三五条 教区選挙管理委員会は、それぞれの小教区の範囲内に住む全ての市民で構成され、その中には世俗的な聖職者も含まれる。

 

第三六条 これらの議会は,コルテスが開催される前年の十月の第一日曜日に、本土(半島)、隣接する島々及び領地で開催される。

 

第三七条 海外県では、両者が事前に報告書を送るのに十分な時間を確保する為、コルテス開催の一五ヶ月前の十二月の第一日曜日に行われる。

 

第三八条 教区の議会では、居住者である市民または選挙人二百人毎に、教区の有権者を一人選ばれなければならない。

 

第三九条 教区の住民数が三百人を超えるが四百人に達しない場合は二人、五百人を超えるが六百人に達しない場合は三人、というように段階的に任命される。

 

第四〇条 住民の数が二百人に満たない小教区では、百五十人であれば、代議士を任命し、これに満たない小教区では、近隣の住民が他の小教区の住民と共に、自分に対応する有権者を任命しなければならない。

 

第四一条 教区評議会は、十一人の代議員を複数票で選出し、教区代議員を任命できるようにする。

 

第四二条 教区の有権者が二名の場合は二一名、三名の場合は三一名の代議員が選出されるが、混乱を避ける為に、いかなる場合もこの数を超えてはならない。

 

第四三条 小規模な町の有用性を高める為、住民が二〇人の教区は一人、三〇人から四〇人の教区は二人、五〇人から六〇人の教区は三人、というように段階的に代表者を選出する。住民が二〇人未満の教区は、最寄りの教区と共に代議員を選出する。

 

第四四条 このようにして選出された小規模な町の教区の代議士は、最も適した町に集まり、十一人、または少なくとも九人の場合は、一人の教区の有権者を任命し、二一人、または少なくとも十七人の場合は、二人の小教区の有権者を任命し、三一人、または少なくとも二五人の場合は、三人の選挙人、または必要な数の有権者を任命する。

 

第四五条 教区の有権者に任命されるには、二五歳以上の市民であり、教区の住民でなければならない。

 

第四六条 教区議会は、その開催地の市町村の政治的責任者または市長が、その行為をより厳粛にする為に教区司祭の助力を得て主宰する。同一町内で、その教区の数が多い為に二つ以上の会議がある場合は、政治的責任者または市長が一方を、他方が他方を主宰し、市会議員が抽選で他方を主宰する。

 

第四七条 会議は町役場や慣例的な場所で開催され、出席した市民と共に議長は教区教会に行き、そこで教区司祭によって厳粛なミサが行われ、司祭は状況に応じて演説を行う。

 

第四八条 ミサが終わり次第、会議の開催地に戻り、会議を始める。出席している市民の中から、二人の監視官と一人の書記官を任命し、会議は全て公開で行われる。

 

第四九条 そして議長は、贈収賄や賄賂について、市民からの苦情がないかどうかを尋ね、もしあれば、公的な場で口頭で正当化しなければならない。告発が事実であれば、罪を犯した者は選挙権と被選挙権を剥奪される。誹謗中傷をした者も同様の罰を受ける。この判決に対して不服を申し立てることはできないものとする。

 

第五〇条 出席者が投票に必要な資格を有しているか否かについて疑義が生じた場合、会議はその場で適切と思われる決定を行い、その決定はその会議に限り異議なく実行されるものとする。

 

第五一条 これは、各市民が議長、秘書官、書記官の机に近づき、代議員の数に等しい人数を指名し、書記官が彼らの立会いの元で名簿に記載することによって行われる。この選挙及びその他の選挙に於いては、投票権を失うという罰則のもと、何人も自分自身の為に投票することはできない。

 

第五二条 この投票の終了後、議長、秘書官、書記官はリストを確認し、議長は最大の得票数を得たことにより代議員に選出された市民の名前を声高に公表する。

 

第五三条 任命された代議員は、集会が解散する前に別の場所に退き、互いに協議して、その教区の有権者を指名する作業を進め、半数以上の票を得た者を選出しなければならない。任命はその後、会議で公表されるものとする。

 

第五四条 書記官は議事録を作成し、議長及び代議員が書記官とともに署名し、代議員が署名した議事録の写しを、選任された人に渡してその任命を記録しなければならない。

 

第五五条 いかなる口実や動機によっても、市民はこの義務を免れることはできない。

 

第五六条 いかなる市民も、武装して傍聴席に現れてはならない。

 

第五七条 選挙が終了した時点で、議会は直ちに解散しなければならない。その後議会が行おうとするその他の業務は、全て無効であり、違法である。

 

第五八条 議会を構成した市民は教会に移動し、厳粛な『テ・デウム』が唱和され、議長、書記官、秘書官の間に選挙人または被選挙人を誘導する。

 

第四節 地区選挙管理委員会について

第五九条 地区選挙管理委員会は、コルテス代議員を選出する為に州都に赴く有権者を任命する為、各地区の長で会合する教区選挙人によって構成されるものとする。

 

第六〇条 これらの会議は、本土及び隣接する島や領地では、常にコルテスが開催される前年の十一月の第一日曜日に開催されなければならない。

 

第六一条 海外県では、教区評議会が開催される十二月の次の月の一月の第一日曜日に開催する。

 

第六二条 各地区が指名する有権者の数を決定するにあたっては、以下の規則に従うものとする。

 

第六三条 地区有権者の数は、選出される代議員の数の三倍とする。

 

第六四条 州内の地区の数が、それに対応する代議員を任命する為に前条で必要とされる選挙人の数よりも多い場合には、各地区毎に一人の選挙人が任命される。

 

第六五条 地区の数が任命されるべき有権者の数に満たない場合、各地区は必要な数が揃うまで一人、二人またはそれ以上を選出するが、それでも一人足りない場合は、人口の最も多い地区から任命し、さらにもう一人足りない場合は、次に人口の多い地区から任命する。

 

第六六条 第三一条、第三二条、第三三条及び前三条で定められているように、国勢調査によって、各州に対応する代議員の数と、各地区に対応する選挙人の数が決定される。

 

第六七条 地区選挙管理委員会は、地区の政治的責任者、または地区の最大の街の市長が主宰する。その際、小選挙区有権者は、自分の選挙を証明する文書を持って出頭し、選挙管理委員会の議事録が作成される本に名前を記入してもらう。

 

第六八条 任命された日に、地区の選挙人は、議長と一緒に、公の議場に集まり、選挙人自身の中から、書記官と二人の秘書官を任命することから始めなければならない。

 

第六九条 選挙人は、その後、任命証明書を提出して事務員と担当者の審査を受け、翌日、その証明書に問題がないかどうかを報告しなければならない。議長及び秘書官の証明書は、この目的の為に任命された三名の議員からなる委員会によって検査され、翌日に報告される。

 

第七〇条 この日、教区の有権者が集合し、証明書に関する報告書が読み上げられ、それらのいずれかに異議がある場合、または必要な資格のいずれかを欠いていることを理由に有権者に異議がある場合、理事会は、理事会が適切と考えることを決定的かつ即時に決定し、その決定は不服申し立てなしに実行される。

 

第七一条 その後、出席した地区の有権者と共に議長は教区教会に行き、そこで教区司祭によって厳粛なミサが行われ、司祭は状況に応じて演説を行う。

 

第七二条 この宗教的行為の後、彼らは会議の開催地に戻り、有権者は優先順位をつけずに席に着き、秘書官が憲法のこの章を読み上げ、その後、議長が第四九条に含まれる同じ質問をし、そこに規定されていることは全て守られる。

 

第七三条 その後直ちに、地区の有権者は、選出された人の名前が書かれた投票用紙を用いて、秘密投票により一人ずつ任命される。

 

第七四条 投票が終了すると、会長、書記官、秘書官が票を数え、半数以上の票を得た者と、それ以上の票を得た者を当選とし、議長は選挙のたびに公布する。絶対多数の票を獲得した候補者がいない場合は、最大の票を獲得した二人の候補者を再度投票に付し、最大の票を獲得した候補者を当選とする。同点の場合は、抽選で決定する。

 

第七五条 地区の有権者になる為には、二五歳以上の市民権を持つ者であり、宗教的な地区のものであれ、世俗的な地区のものであれ、地区に所属する住民であり居住者であることが必要であり、選挙は議会を構成する市民が当選することもあれば、議会外の市民が当選することもある。

 

第七六条 書記官は議事録を作成し、その議事録に議長と書記官が共に署名し、その写しに彼らが署名したものを選挙された人に交付して、彼らの任命を記録するものとする。本理事会の議長は、自分と書記官が署名した別の写しを州理事会の議長に送付し、そこで選挙が公文書に記録されるものとする。

 

第七七条 第五五条、第五六条、第五七条及び第五八条の全ての規定は、地区選挙管理委員会の場合及び小選挙区選挙管理委員会の場合にも遵守される。

 

第五節 州選挙管理委員会について

第七八条 州選挙管理委員会は、その州の全ての地区の有権者によって構成され、それらの有権者は、国家の代表者として高等法院に出席する為に、その地区に対応する代議員を任命する為に、首都で会合する。

 

第七九条 これらの会合は、常にコルテスの前年の十二月の月の第一日曜日に、本土及び隣接する島々で開催されなければならない。

 

第八〇条 海外県では、地区議会が開催される年の三月二日に開催される。

 

第八一条 これらの会合は、州の首都の政治的責任者が主宰する。政党の有権者は、会合の議事録に名前を記載できるように、自分の選挙の文書を持って提出しなければならない。

 

第八二条 任命された日に、地区の選挙人は、町役場またはそのような厳粛な行為に最も適していると考えられる建物で、公開の場で議長と会合する。そして、有権者自身の中から、複数の投票によって、書記官と二人の秘書官を任命することから始める。

 

第八三条 一つの州に代議士が一人しかいない場合、その指名の為に少なくとも五人の選挙人がいなければならない。この人数は、その州が分割されている地区に分配されるか、またはこの目的の為だけに地区が結成されるものとする。

 

第八四条 選挙を扱う本憲法の四つの章を読み上げる。その後、各議長から送付された地区選挙の議事録証明書を読み上げ、有権者も同様に任命証明書を提示し、書記官と秘書官が検査して、翌日には整然としているかどうかを報告しなければならない。秘書官及び秘書官の証明書は、この目的の為に任命された三人の議員からなる委員会によって検査され、翌日にはそれらについても報告されるようにする。

 

第八五条 証明書に関する報告書は、当該地区の有権者が共に読むものとする。そして、証明書のいずれかに異議がある場合、または必要な資格のいずれかが欠けているという理由で有権者に異議がある場合、理事会は適切と思われることを最終的かつ即座に決定するものとし、その決定は不服申し立てなしに実行されるものとする。

 

第八六条 その後、出席した地区の有権者と共に議長は教区教会に行き、そこで教区司祭によって厳粛なミサが行われ、司祭は状況に応じて演説を行う。

 

第八七条 この宗教的行為の後、彼らは会議の開催地に戻り、有権者は優先順位をつけずに席に着き、秘書官が憲法のこの章を読み上げ、その後、議長が第四九条に含まれる同じ質問をし、そこに規定されていることは全て守られる。

 

第八八条 各市民が議長、秘書官、書記官の机に近づき、代議員の数に等しい人数を指名し、書記官が彼らの立会いの元で名簿に記載することによって行われる。秘書官と書記官は最初に投票するものとする。

 

第八九条 投票が終了すると、会長、書記官、秘書官が票を数え、半数以上の票を得た者と、それ以上の票を得た者を当選とし、議長は選挙のたびに公布する。絶対多数の票を獲得した候補者がいない場合は、最大の票を獲得した二人の候補者を再度投票に付し、最大の票を獲得した候補者を当選とする。同点の場合は、抽選で決定する。

 

第九〇条 代議員の選出後、補欠議員は同じ方法で選出され、その数は各州に対応する代議員の数の三分の一とする。各州が選出すべき代議員が一名または二名しかいない場合でも、その州は代理の代議員を選出しなければならない。これらの者は、選挙後に有権者が死亡したり、コルテスの意見で有権者が権利執行不可能になったりするなど、いずれかの事故が発生した場合には、いつでもコルテスに出席しなければならない。

 

第九一条 コルテスの代議員になる為には、二五歳以上の市民権を有する者であり、その州で生まれたこと、またはその州に七年以上居住していることが要求され、宗教的な地区のものであれ、世俗的な地区のものであれ、地区に所属する住民であり居住者であることが必要である。

 

第九二条 また、コルテスの代議員に選出される為には、自分の財産から比例した年間税収を納めることが必要である。

 

第九三条 前条の規定は、今後開催されるコルテスが、賃貸料の額及び賃貸料の源泉となる財産を明示して、その効力を発生させる時期が到来したことを宣言するまで、停止される。

 

第九四条 同一人物が本来市民権を持つ州と居住している州とで選出された場合には、居住地の選出を存続し、コルテスに出頭するものとする。

 

第九五条 官房長官、国家評議会議員、王室の職務に従事する者は、コルテスの代議員に選出されない。

 

第九六条 外国人は、コルテスから市民権証明書を取得していても、代議員に選出されることはできない。

 

第九七条 公職に就いている者は、政府によって任命された場合には、その者が雇用されている州のコルテスの代議員に選出されることはできない。

 

第九八条 秘書官は、選挙の議事録を作成し、議長及び全ての有権者が署名しなければならない。

 

第九九条 その場合、全ての選挙人は、いかなる弁解もせずに、次の方式に従って、各代議員に広範な委任状を与えなければならず、各代議員には、コルテスに出頭する為の対応する委任状を与えなければならない。

 

第百条 委任状は以下の内容で作成する。

「○○市、○年○月○日、○○にて。集まった○○(州の選挙管理委員会を構成する議長と地区の有権者の名前はここに示される)は、署名された公証人とその為に召喚された証人である私の前で、スペイン君主制の政治的憲法に従って、同憲法に規定された全ての厳粛な儀式をもって、教区と地区の有権者の任命を行ったと述べた。ファイル内の証明書の原本から明らかなように、本年度の○月○日に本州の政党の前述の有権者が、本州の名に於いて、また本州を代表してコルテスに出席する代議員の任命を行い、○○、○○が作成し、署名した議事録からもわかるように、以下の者が本州の代議員として選出された。その結果、憲法が定める範囲内で、スペイン国民の一般的利益に資すると理解するあらゆることを、逸脱することなく合意し、決議することができるようにする為に、その職責を果たし、遂行する為の十分な権限を、全員に、そして各人に与え、コルテスの他の代議員とともに、スペイン国民の代表として、憲法が定める権限を行使することを認める。また、付与者は、この行為の為に任命された選挙人として与えられた権限により、自分自身及び本州の全住民を代表して、コルテスの代議員として行ういかなる行為も有効であるとみなし、これに従わなければならず、また、コルテスがスペイン君主制の政治的憲法に基づいて決議したことに従うものとする。このようにして表明され、承認された。証人として○○が出席し、署名者と共に署名し、し、証人となった」。

 

第百一条 議長、秘書官及び書記官は、選挙の議事録に署名した写しをコルテスの常設代理に直ちに送付し,また,印刷機を用いて選挙を公表させ,その写しを州内の各町に送付しなければならない。

 

第百二条  代議員の報酬については、代議員は、各総代会の第二年目にコルテスが次の代議員の為に定める手当を各州から受けるものとする。

 

第百三条 第五五条、第五六条、第五七条及び第五八条に規定されている全てのことは、第三二八条の規定を除いて、州選挙管理委員会に於いて遵守される。

 

第六節 コルテスの開催について

第百四条 コルテスは、毎年、王国の首都に於いて、この目的為だけに用意された建物で会合する。

 

第百五条 他の場所に移動するのが適切であると考えられる場合は、首都から十二レグア(訳注: スペイン、ポルトガルの古い距離の単位。)以内の町に移動し、出席している代議員の三分の二がその移動に同意することを条件に、移動することができる。

 

第百六条 各年のコルテスの会期は、三月一日から始まる連続した三ヶ月間とする。

 

第百七条 コルテスは、国王の要請があった場合と、下院議員の三分の二の決議によってコルテスが必要と判断した場合の二つの場合に限り、最大で一ヶ月間、会期を延期することができる。

 

第百八条 コルテス議員は、二年ごとに全面的に更新される。

 

第百九条 戦争または敵による王政領土の一部の占領により、一つまたは複数の州の代議員の全部または一部が時間内に出頭できない場合、欠席した代議員は、それぞれの州の以前の代議員と交代し、対応する数が揃うまで彼らの間で抽選を行うものとする。

 

百十条 構成員は、別の任命による場合を除き、再選される資格はない。

 

第百十一条 代議員が首都に到着すると、代議員はコルテスの常設代理に出頭し、コルテスは代議員の氏名及び代議員を選出した州の氏名をコルテス事務局の登録簿に記載しなければならない。

 

第百十二条 代議員が更新された年には、最初の準備会合が二月十五日に公開で開催され、議長は常任代議員会の会長が務め、秘書官と書記官は代議員会の他の構成員の中から同じ代議員会によって任命された者が務める。

 

第百十三条 この最初の会合では、全ての代議員がその権限を提示し、複数の投票により二つの委員会が任命される。一つは、全ての代議員の権限を審査する五人の委員、もう一つは、この五人の委員を審査する三人の委員会である。

 

第百十四条 同年二月二○日には、第二回準備会合も公開で行われ、両委員会は州選挙の議事録の写しを持って、代理人の正当性について報告する。

 

第百十五条 本会合及び二五日までに必要となるその他の会合に於いて、代議員の権限及び資質の正当性に関して生じた疑義は、複数の投票によって最終的に解決される。

 

第百十六条 代議員が更新された年の翌年には、最初の準備会合を二月二〇日に開催し、その後二五日までに、前3条に示された方法と形式で、再任される代議員の権限の正当性を決議する為に必要と思われる会合を開催する。

 

第百十七条 毎年二月二五日に最後の準備会議が開かれ、その中で代議士全員が聖福音書に手を置いて次のような誓いを立てる。

「王国で他の宗教を認めることなく、ローマ・カトリック使徒教会の信仰を守り、維持することを誓いますか?」。「誓います」。「あなたは、一八一二年に国家の総会議事及び臨時会議事によって承認されたスペイン君主制の政治的憲法を守ることを誓いますか?」。「誓います」。「あなたは、国家があなたに託した責任をよく果たし、忠実に遂行し、全てのことを国家自体の善と繁栄に向けることを誓いますか?」「誓います。さすれば、神が報いてくれるかもしれませんし、そうでなければ、神がそれを要求するでしょう」。

 

第百十八条 次いで、代表団の中から議長、副議長及び四名の書記官を、無記名投票で絶対多数の票を得て選出する。この時点で、代表団は構成されたものとみなされ、常設代表団はその全ての機能を停止するものとする。

 

第百十九条 同日、二二人の代議士及び二人の秘書官からなる代表団が任命され、コルテスの構成及びコルテスが選出した議長について国王に報告し、三月一日に開催されるコルテスの開会式に出席するかどうかを国王が表明できるようにする。

 

第百二十条 国王が首都以外の場所にいる場合、この参加は書面で行われ、国王は同じ方法で回答しなければならない。

 

第百二一条 国王はコルテスの開会を補佐しなければならない。また、何らかの障害が生じた場合には、議長が指定された日に自ら開会しなければならず、他の期間に延期するいかなる事情も許されない。会期の終了についても同様にするものとする。

 

第百二二条 国王は、コルテスの内部統治の為に作成された規則により、衛兵を伴わずにコルテスの広間に入り、帰還時の出迎え及び同行の為に任命された者のみを伴うものとする。

 

第百二三条 国王は公にコルテス会議を開き、必要と思われる事項を提案し、議長はこれに対し解答を行う。王が出席しない場合には、王はその演説を議長に送付し、それを読むことができるようにする。

 

第百二四条 コルテスは王の立会いのもとで審議することはできない。

 

第百二五条 国務長官は、国王に代ってコルテスに提案をしなければならない場合には、コルテスの定める時と方法で討議を補佐し、意見を述べなければならないが、採決には立ち会わないものとする。

 

第百二六条 コルテスの会議は公開されなければならず、特に必要な事情がある場合に限り、秘密会議が開かれる。

 

第百二七条 コルテスの討議並びにコルテスの統治及び内部秩序に関する他の全ての事項については、歴代コルテスがその中で適切と考える改革を行うことを妨げることなく、これらの一般コルテス及び臨時コルテスによって作成される規則に従うものとする。

 

第百二八条 代議員は、その意見に対して不可侵であり、如何なる時も、如何なる状況に於いても、また如何なる権威によっても、その責任を問われない。代議士に対して行われるいかなる刑事事件も、代議士はコルテスの法廷によって、その内部統治に関する法律が指示する方法と形式で裁かれる。コルテスの会期中及び会期後一箇月の間は,いかなる代理も文民権力によって逮捕されず、またその財産を債務の為に執行することができない。

 

第百二九条 この点に於いて、自分の指名が常任代議員に知らされた日から始まる任期期間中、代議員は、それぞれの立場での正当な奉仕活動でない限り、国王から有利な雇用や場所を受けたり、他人に昇進を求めたりすることはできない。

 

第百三十条 同様に、派遣期間中及び公的職務の最後の行為から一年後には、国王から与えられた年金、名誉、地位、勲章を自ら受け入れたり、他人に求めたりすることを禁ずる。

 

第七節 コルテスの権限について

第百三一条 コルテスの権限と義務は以下の通りである。

 (1) 必要に応じて、法律を提案、決定し、それらを解釈し、廃止する。

 (2) 国王、アストゥリアス王太子、摂政の宣誓を、所定の場所で指示された書式に従って行う。

 (3) 王位継承の行為または権利に関して発生する可能性のある疑問を解決する。

 (4) 憲法で定められた場合に、摂政を選出し、摂政が王権を行使する際の制限を規定する。

 (5) アストゥリアス王太子を公的に承認する。

 (6) 憲法で指示されている場合には、未成年の王に教師を任命する。

 (7) 攻撃、同盟、補助、特に通商に関する条約を批准前に承認する。

 (8) 王国への外国軍の入国を許可または拒否する。

 (9) 憲法によって設立された法廷における地位の創設または廃止、及び公職の創設または廃止を命令する。

 (10) 国王の提案により、その年の海軍と陸軍の割合を決定し、平時の常備軍と戦時の増強を決定する。

 (11) 陸軍、海軍、国民兵に対して、あらゆる状況下で彼らを指導する為の確立された指示の規則を発行する。

 (12) 公務の費用を定める。

 (13) 分担金と賦課金を定める。

 (14) 緊急の際には、国家の信用に基づいて、資金を借りることができる。

 (15) 各州に課される分担金の割合を承認する。

 (16) 公金の領収書を審査し、承認する。

 (17) 税関及び関税率を設定する。

 (18) 公的資金の管理、保存及び支出の為に必要な処分を行う。

 (19) 流通媒体の価値、重量、標準、印象及び名称を決定する。

 (20) 最も公正且つ適切と思われる度量衡制度を採用する。

 (21) あらゆる種類の産業を促進し、奨励し、それらを妨げる障害を取り除くこと。

 (22) 王政全体の公教育の一般的な計画を確立し、アストゥリアス王太子の教育の為に追求されるものを承認すること。

 (23) 王国民の健康と警察の為の規則を承認すること。

 (24) 報道機関の政治的自由を守ること。

 (25) 国務長官及びその他の公務員の責任を有効にすること。

 (26) 最後に、憲法に基づいて必要とされる全ての行為及び状況に同意を与えるか否かは、コルテスの判断による。

 

第八節 法律の制定と勅許について

第百三二条 全ての代議員は新しい法律を提案する権限を持っており、それを書面で行い、その必要性を証明する理由をコルテスに説明する。

 

第百三三条 法案が提出され、配布され二日以上経過した後、その法案は再び提案され、コルテスはその法案が討議に付されるべきか否かを審議しなければならない。

 

第百三四条 審議の為に認められた事項であっても、その重要性から、まず委員会に付託すべきであるとコルテスが判断した場合には、そのように処理されるものとする。

 

第百三五条 法案が審議入りしてから少なくとも四日後には、三回目の提案が行われ、審議開始の日を設定することができる。

 

第百三六条 討議の日には、草案の全体と各条文を容認する。

 

第百三七条 コルテスは、問題が十分に議論されたかどうかを確認し、そのように決定された場合には、投票を行うべきかどうかを決定する。

 

第百三八条 投票することを決定したならば、直ちに行われるものとし、審議で得られた意見に従って、法案の全部または一部を承認または否定し、変更または修正するものとする。

 

第百三九条 コルテスの投票は、少なくとも半分以上の代議員が出席していなければ成立せず、絶対多数の投票で可決されなければならない。

 

第百四〇条 どの段階に於いても、提案が否決された場合、その議案は破棄されたものとみなされ、同じ年に再び提出することはできない。

 

第百四一条 これが正規の法律として成立した場合、写しが作成され、コルテスで正式に読まれる。議長と二人の書記官が正式に署名した両本は、代議士によって陛下に提出されるものとする。

 

第百四二条 国王は、法律を認可または拒否する権限を持っている。

 

第百四三条 国王は、この書式に従って、自分の署名の下で同意を与えるものとする。
「これを公表してもよい」。

 

第百四四条 国王は、自らの署名の下,次の書式で同意を拒否するものとする。「コルテスに戻してもよい」とし、反対の理由を説明することができる。

 

第百四五条 国王には、この特権を行使する為に三〇日間の猶予が与えられ、その期間の満了時に、国王が承認も拒否もしなかった場合には、同意が与えられたものとみなされ、それに従って承認されるものとする。

 

第百四六条 これらの法案の写しの一つは、承認されたか否かを問わず、情報管理の為にコルテスに戻され、コルテスの文書館に保存されるものとし、もう一つは国王が保有するものとする。

 

第百四七条 国王が同意を拒否した場合、同じ問題はその年のコルテスでは審議されないが、次の年には審議され得る。

 

第百四八条 同一の法案がコルテスに提出され、正式に可決された場合には、翌年、国王に提出され、国王陛下が適当と考えるところに従って、拒否または承認されるものとし、反対の場合には、同じ年に再び提出してはならない。

 

第百四九条 これが三年目に繰り上げられ、コルテスで承認された場合、陛下の同意を得たものとみなされ、提出された時点でそれに応じて承認されることになる。

 

第百五〇条 国王が法案に署名すべき三〇日が経過する前に会期終了の期間が到来した場合、国王は次の会期の九日目までに最後通告をしなければならない。この期間中に最後通告を行わなかった場合、承認されたものと理解され、それに従って権限が与えられる。国王が同意を拒否した場合には、同じ会期中に再度これを提出することができる。

 

第百五一条 国王が法案の承認を拒否した後、その法案を再び提出しようとする試みがなされずに数年が経過したとしても、最初の動議が提出された時と同じ代議員の会期中、またはそれに続く二つの代議員の会期中にその法案が更新された場合には、王室の同意に関して、前三条に適応するとみなされ、処理されるものとする。しかし、三つの代議員会の会期終了後まで残存することが許された場合、更新されたときには、あらゆる点で新しい法案として扱われるものとする。

 

第百五二条 もし、二回目、三回目と同提案がコルテスに持ち込まれたが、いずれも破棄された場合、今後のいかなる動議に於いても、それは新しい法案とみなされなければならない。

 

第百五三条 ある法律を廃止するには、それを制定するのと同じ過程を辿らなければならない。

 

第九節 法律の制定について

第百五四条 法案がコルテスを正規に通過した場合には、国王は直ちにその旨を知らされ、法令を公布しなければならない。

 

第百五五条 陛下が法律を公布する際には、各大臣に宛てた以下の書式を採用するものとする。

「神の恩寵とスペイン君主制憲法に基づき、全スペインの王である○○は、ここに、これらの文書が届く可能性のある全ての人々に、コルテスが次のように決定し、我々が承認したことを知らせる。[ここに法案の前文を文字通り記す]。 我々は、全ての法廷、裁判官、司令官、総督、及びその他の当局、文民、軍事、教会、あらゆる種類の当局に対し、この上記の法律をその全ての分派に於いて保存し、遵守し、従わせるよう指示し、これを達成する為に自らの権力と権限を行使し、これを印刷し、出版し、流通させる。」

 

第百五六条 全ての法律は、国務長官が、陛下の命により、地方の最高法廷、その他の民政長官及び最高権力者の全てに伝達し、また、それらの者が下位の者の間に回覧する。

 

第十節 コルテスの常任代議員について

第百五七条 コルテスが閉会される前に、次の七名からなる代表団が選出されなければならない。ヨーロッパの諸州から三名、ヨーロッパの諸州から三名、海外県の諸州から三名、及び七人目は双方からの抽選によるものとし、これを常設の代表団と称する。

 

第百五八条 同時に、コルテスはこの代議員の代理を二名、一名は欧州から、もう一名は海外県から任命する。

 

第百五九条 常任代議員は、一方のコルテスが解散してから他方のコルテスが開催されるまで着任する。

 

第百六〇条 この代議員の権限は

 (1) 憲法及び法律の遵守を監視し、違反があった場合には次の大法廷に報告する。 

 (2) 憲法で定められた場合に臨時裁判所を召集する。

 (3) 第百十一条及び第百十二条に示す機能を果たす。

 (4) また、ある州の代表者及び代理者が死亡または絶対的に不可能になった場合に、その州に対応する命令を伝え、新たな選挙に移行できるようにする。

 

第十一節 臨時コルテスについて

第百六一条 臨時代理委員会は、その任期中の二年間に一般代理委員会の為に選出された代議員と同一の代議員で構成される。

 

第百六二条 常任代議員は、以下の三つの場合には、日を定めて臨時コルテスを招集しなければならない。

 (1) 王位が空位になったとき。

 (2) 何らかの理由で、国王が統治能力を失ったとき、または後継者の為に王位を退くことを望んだとき。

 (3) 危機的または重要な状況の結果、国王に必要と判断され、国王がその旨を使節団に助言した場合。

 

第百六三条 臨時コルテスは、招集された目的以外のいかなる業務も処理してはならない。

 

第百六四条 臨時コルテスの開会及び閉会に際しては、一般コルテスと同様の儀式を行うものとする。

 

第百六五条 臨時コルテスの開催は、所定の時期に行われる新しい代議員の選挙に影響を与えない。

 

第百六六条 臨時コルテスの会期が指定された期間または一般コルテスの集合期間までに終了しない場合には、臨時コルテスの機能は直ちに停止し、他のコルテスは当該案件を終了させる。

 

第百六七条 常任代議員は、次条で表明された状況下で、第百十一条及び第百十二条で指摘された職務の行使を継続する。

 

第四章 国王について

第一節 国王の不可侵性とその権限について

第百六八条 国王は神聖で不可侵であり、如何なることにも責任を負わない。

 

第百六九条 国王は、カトリックの国王陛下と称される。

 

第百七〇条 法律を執行し有効にする排他的な権限は国王にあり、その権限は、法律及び憲法に基づき、国家の内部の良好な規制及び外部の安全と防衛に寄与するあらゆるものに及ぶ。

 

第百七一条 国王は、法律を承認して公布するという特権に加えて、以下のような多くの権利と権限を持つ。

 (1) 法律の適切な執行に寄与すると思われる命令、指示、命令書の発行。

 (2) 王国全体で正義が迅速かつ効果的に実行されるように配慮する。

 (3) 宣戦布告、講和の締結及び批准を行い、後にその正当な文書をコルテスに提出する。

 (4) 国家評議会議の助けを借りて、全ての民事・刑事判事を指名する。

 (5) 全ての文官及び武官を任命する。

 (6) 国家評議会の助言を得て、全ての司教座、教会の恩典及び尊厳を贈呈する。

 (7) 法律の範囲内で、全ての階級に名誉と区別を与える。

 (8) 海軍と陸軍を指揮し、将軍を任命する。

 (9) 軍を配置し、その判断に従って分配する。

 (10) 大使、公使、領事を指名し、他国との商業・外交関係を指揮する。

 (11) 貨幣の鋳造を規制し、その上に自分の肖像と名前を表示する。

 (12) 行政の各部門の要求に応える為に、資金の使用を決定する。

 (13) 法律に従い、犯罪者に勅許を与える。

 (14) 国家に有益と思われる法律または改革をコルテスに提出し、所定の様式に従って審議させる。

 (15) コルテスの同意を得て、審議会の命令又は勅令を保留し、又は公表することを許可する。一般的な内容のものである場合には、国務への影響又は重大な結果について国家評議会議に助言し、疑わしい内容のものである場合には、法律に基づいて処理されるように大審問院に引き渡す。

 (16) 各官庁の長官を任命し、寛大な手当を与える。

 

第百七二条 権限の制限は以下の通りである。

 (1) 国王は、いかなる口実をもってしても、憲法の定める時と状況の下でのコルテス会議の開催を妨げ、コルテス会議を中断または解散し、いかなる方法によってもコルテス会議の審議を阻止または妨害することができない。これらの行為について、彼に助言し、または彼を援助した罪を犯した者は、反逆者として処罰される。

 (2) 国王はコルテスの同意なしに王国を離れてはならず、その場合には王位を退いたものとみなされる。

 (3) 国王は、王権又はその特権を放棄し、譲り渡し、又は他の者に譲り渡すことができない。

 (4) 国王は、如何なる理由であれ、正当な相続人の為に王位を退くことを望む場合には、コルテスの同意なしにこれを行うことはできない。また、国王は、如何なる都市、町、村、またはスペイン領土の一部でも、それがどんなに小さくても、これを供与し、譲渡し、または交換することはできない。

 (5) 国王は、コルテスの同意なしに、如何なる外国の国とも攻撃的または防御的な同盟、または同盟や通商の特別な条約を結ぶことができない。

 (6) コルテスの同意なしに、如何なる条約によっても外国の国家を補助する義務を負うことはできない。

 (7) 国王は、コルテスの同意なしに、国有財産を譲渡することはできない。

 (8) 国王は、コルテスの事前の命令なしに、直接的にも間接的にも、如何なる名目であれ、また如何なる目的であれ、負担金を課したり、借金をしたりすることはできない。

 (9) また、如何なる個人または法人にも排他的特権を与えることはできない。

 (10) 法人または個人の財産を奪うことはできない。公共の利益の為に必要な場合には、個人の財産を特定の目的の為に転換することが必要だが、尊敬すべき人々の正当な評価による完全な補償なしには行うことができない。

 (11) 国王は、如何なる方法であれ、いかなる口実であれ、個人を処罰し、又は個人の自由を奪うことはできない。命令に署名した国務長官及び命令を執行した裁判官は、国民に対して責任を負うものとし、その場合には、市民的自由に対する犯罪者として処罰される。

 (12) 国王は、反逆罪または国家の安全に対する試みの場合にのみ、個人的に逮捕の指示を与えることができる。

 (13) 婚姻の前に、王はコルテスに進言し、その同意を得なければ、王位を退位したものとみなされる。

 

第百七三条 国王が即位したとき、又は年齢に達していない場合には、国王の統治が開始されたとき、国王はコルテスの前で次の形式に従って宣誓しなければならない。

「神の恩寵とスペイン君主制憲法により、全スペインの王である私、○○は、神と聖なる福音書著者の前で、王国全土に於いて他の宗教の行使を許さず、ローマ・カトリック使徒教会を擁護し維持することを誓います。私は、スペイン王政の法律と政治的構成を遵守し、また遵守させ、あらゆることを王政の利益の為だけに行い、行動し、王国のいかなる部分も買収したり、譲渡したり、解体したりしないこと、また、コルテスの決定がない限り、献金や金銭その他のものを決して要求しないことを誓います。私は私有財産を尊重し、何よりも国家の市民的自由と各個人の権利を尊重します。私が今誓ったこと、またはその一部に反する行為を発見した場合、その行為は無効であり、従わないものとします。私がこのように誓う以上、神が私に報い、保護してくださいますように、またそうでないならば、私は危険に見舞われるでしょう。」

 

第二節 王位の継承について

第百七四条 スペイン王国は不可分である。この公布の時点から、王冠は、以後列挙する王家の男女の正当な相続人を介して、先祖代々の権利と代表権により、規則的な順序で下るものとする。

 

第百七五条 恒常的かつ合法的な結婚で生まれた正統な子供である者だけが、スペインの王になることができる。

 

第百七六条 同じ地位や家系では、男性が女性よりも優位であり、常に年長者が年少者よりも優位である。しかし、同じ家系でも、地位の高いの女性は、下回る家系や地位の男性より優位である。

 

第百七七条 国王の長男または長女は、王国の継承権を得ずに父親が死亡した場合、叔父を優先し、再提示権により直ちに祖父の後を直ちに継ぐ。

 

第百七八条 継承すると決まっている家系が消滅しない限り、直系の継承者は変更されない。

 

第百七九条 現在のスペイン国王はブルボン家のフェルナンド7世である。

 

第百八〇条 ブルボン家のフェルナンド7世が不在の場合は、彼の嫡出の子孫(男女問わず)がこれを継承する。これらの子孫が不在の場合は、彼の兄弟、叔父、父の兄弟(男女問わず)とその嫡出の子孫が、代表権と後続の子孫に対する先行者の優先権を維持しつつ、規定の順序でこれを継承する。

 

第百八一条 コルテスは、統治者としてふさわしくない者、又は王冠を失うに値する行為をした者を継承から除外する。

 

第百八二条 ここに示された家系が全て消滅した場合、コルテスは国家にとって最も重要であると判断した場合には、常にここに定められた継承の順序と規則に従って、新たな招集を行わなければならない。

 

第百八三条 女性が王位を継承した場合、女性はコルテスの同意なしに夫を選ぶことができず、そうしない場合は王冠を放棄したとみなされる。

 

第百八四条 女性が統治するようになった場合、その夫は王国に対する権限を持たず、政府にも関与してはならない。

 

第三節 国王の幼年期と摂政について

第百八五条 国王は満十八歳まで未成年とする。

 

第百八六条 国王が未成年の間、王国は摂政によって統治される。

 

第百八七条 国王が、精神的または肉体的な原因で統治能力を失った場合にも、同様の方法がとられるものとする。

 

第百八八条 国王の障害が二年を超え、直系の後継者が十八歳以上である場合、コルテスはその者を王国の摂政に任命することができる。

 

第百八九条 王冠が空位で、アストゥリアス王太子が未成年であり、臨時コルテスが召集されるまで通常コルテスが召集されない場合には、暫定摂政は、皇太后、コルテスの常設代表団から選出された最も年長の二名の代議員、最も年長の二名の国家評議会議員で構成される。皇太后が不在の場合は、三番目に年長の国家評議会議員が摂政に就く。

 

第百九〇条  臨時摂政は、皇太后がいる場合には皇太后が、皇太后が不在の場合には最初に任命されたコルテスの常設代議員各人が統轄する。

 

第百九一条 臨時摂政は、遅滞の許されない業務以外の処理を行ってはならず、また、暫定的な場合を除き、従業員の更新や任命を行ってはならない。

 

第百九二条 臨時コルテスが収集され次第、三人または五人で構成される摂政を任命しなければならない。

 

第百九三条 摂政になる為には、市民権を保っていることが必要であり、外国人は市民権証明書を持っていても除外される。

 

第百九四条 摂政は、その構成員のうち、コルテスが指定する者によって統率される。必要に応じて、統率者に交代があるか否か、及びその条件を決定するのはコルテスである。

 

第百九五条 摂政は、コルテスが命じた制限の下で、王権を行使する。

 

第百九六条 摂政は、第百七三条に規定された方式に従って宣誓を行い、国王に忠実であるという条項を加えなければならない。恒久摂政は、その権限を行使する為にコルテスから課せられた条件を遵守すること、国王が成人した際、またはその不可能性がなくなった際には、少しでも遅延すると叛逆者として裁かれ処罰されるという罰則の下に、王国の統治を彼に引き渡すことをも加えなければならない。

 

第百九七条 摂政の全ての行為は、王の名に於いて公表されるものとする。

 

第百九八条 未成年の国王の後見人は、死亡した王がその遺言で指名した者とする。任命されていない場合は、未亡人である限り、皇太后が後見人となる。これを怠った場合、後見人はコルテスによって任命されるものとする。第一と第三の場合では、後見人は王国の出身者でなければならない。

 

第百九九条 摂政は、未成年の国王の教育がその高貴で崇高な目的に最も適したものであり、コルテスの承認した計画に従って実施されることを確認しなければならない。

 

第二〇〇条 コルテスは、摂政団が享受すべき給与を決定する。

 

第四節 王家、及びアストゥリアス王太子の承認について

第二〇一条 国王の長男はアストゥリアス王太子と認識される。

 

第二〇二条 王の他の子息や子女は、「スペイン王子、王女(Infantes de las Españas)」とし、またそのように呼ばれる。

 

第二〇三条 同様に、アストゥリアス王太子の子息や子女もスペイン王子、王女」となり、そのように呼ばれる。

 

第二〇四条 スペイン王子、王女の地位は、これらの者に限定されるものであり、他の者に拡大することはできない。

 

第二〇五条 スペイン王子、王女は、これまで享受してきた地位や名誉を享受し、司法やコルテスへの代議員を除くあらゆるポストに任命されることができる。

 

第二〇六条 アストゥリアス王太子は、コルテスの同意なしに王国を離れることはできず、同意なしに離れた場合には王位の継承から除外される。

 

第二〇七条 また、許可証に記載された期間を超えて王国外に滞在した場合や、帰還を求められたにも関わらず、コルテスが示した期間内に帰還しなかった場合も同様に理解されるものとする。

 

第二〇八条 アストゥリアス皇太子、王子、王女、及び国王の臣民であるその子供と子孫は、王位継承から除外されるという罰則のもと、本人及びコルテスの同意なしに結婚することはできない。

 

第二〇九条 王家の全ての者の出生、結婚、死亡の証明書の真正な写しは、コルテスに、それができない場合は常任代議員に送られ、その文書館に保管されなければならない。

 

第二一〇条 アストゥリアス王太子は、コルテスの規定の形式に従い、コルテスによって承認される。

 

第二一一条 この認定は、彼らの誕生後に開催される最初のコルテスで行われるものとする。

 

第二一二条 アストゥリアス王太子は、十四歳になったとき、次の形式でコルテスの前で宣誓しなければならない。

アストゥリアス王太子である○○は,神と聖なる福音書によって、ローマ・カトリック使徒教会の宗教を擁護し維持することを誓います。王国内で他の宗教を許さず、スペイン君主制の政治的憲法を守り、国王に忠実かつ従順であることを誓います。さすれば神の加護があることでしょう」。

 

第五節 王家への配当について

第二一三条 コルテスは、国王の為に、その性質の高貴さに対応して、その家計の年貢を決定する。

 

第二一四条 前任者が享受していた王宮は全て王に帰属し、コルテスは、王の身辺の娯楽の為に確保するのに適した土地を指定しなければならない。

 

第二一五条 コルテスは、アストゥリアス王太子に対して出生の日から、幼年期と少年期に対しては七歳から、それぞれの性質に対応する年間の額を食費に充てる。

 

第二一六条 王子、王女に対しては、彼らが結婚するとき、コルテスは持参金とみなす金額を設定し、これが支払われた後は、毎年の扶養料は終了する。

 

第二一七条 王子、王女は、スペインに居住している間に結婚した場合には、割り当てられた扶養手当を継続して受けるものとし、結婚して外国に居住した場合には、扶養手当は終了し、コルテスが決定する金額を一旦与えられるものとする。

 

第二一八条 コルテスは、未亡人である皇太后に与えられる年間の維持費を決定する。

 

第二一九条 摂政の給料は、王家に割り当てられた基金から支給するものとする。

 

第二二〇条 前条で言及されている王家の住居や家財及びの食費は、各治世の初めにコルテスによって定められ、その間変更することはできないものとする。

 

第二二一条 これらの割り当ては全て国庫からなり、国王が任命した管理者に支払われ、その管理者は積極的・消極的な行動を理解され、利益の為に運用することができる。

 

第六節 国務長官と大臣について

第二二二条 官庁の長官は以下の七名である。

 - 国務長官

 - 本土とそれに隣接する島々の総督府長官。

 - 海外県の総督府長官。

 - 法務省長官。

 - 財務省長官。

 - 戦争省長官。

 - 海軍省長官。

コルテスは、経験や状況に応じて、この秘書官の制度を変更することができる。

 

第二二三条 官庁の長官になる為には、市民権を持つ住民でなければならず、市民権証明書を持っていても外国人は除外される。

 

第二二四条 コルテスによって承認された特別規則により、書く官庁が処理すべき業務はその官庁に割り当てられる。

 

第二二五条 国王の全ての命令は、その事項が関係する官庁の長官が署名するものとする。裁判所や公的機関は、この要件を満たさずに命令を執行してはならない。

 

第二二六条 官庁の長官は、憲法または法律に反する命令を認可した場合、コルテスに対して責任を負うものとし、国王から命令されたことを理由にしてはならない。

 

第二二七条 事務局の秘書官は、それぞれの官庁が負担するとみなされる行政の費用の年次予算を作成し、所定の方法で負担した費用の会計を報告しなければならない。

 

第二二八条 官庁の事務員の責任を徹底する為、裁判所はまず、事件の成立に動機があることを宣言しなければならない。

 

第二二九条 官庁の長官はこの命令によって停職させられ、コルテスは動機に関する全ての文書を大審問院に送還し、大審問院は法律に従って審理し、決定するものとする。

 

第二三〇条 コルテスは、官庁の長官がその任期中に享受すべき給与を決定する。

 

第七節 国家評議会について

第二三一条 国家評議会は、四〇人で構成され、その市民権を持つ住民でなければならない。但し、外国人は、市民権証明書を持っていても除外される。

 

第二三二条 構成員は以下の通りである。有名で実績のある教養と功労のある四人の聖職者(そのうち二人は司教)、必要な徳、才能、知識を備えた四人のスペイン大公、そして残りは、その教養と知識により、あるいは国家の行政と政府の主要部門のいくつかで傑出した功績を残した臣民の中から選ばれる。コルテスは、選挙の時点でコルテスの構成員である者をこれらの役職に推薦することはできない。国家評議会の個人のうち、少なくとも十二名は海外県で生まれた者でなければならない。

 

第二三三条 全ての国家評議会議員は、コルテスの提案に基づき国王が任命する。

 

第二三四条 この会議を成立させる為には、コルテスに於いて、示された割合で作成された三つ全ての階級の名簿が作成されなければならない。国王は、この名簿から、国家評議会を構成する四〇人の人物を選び、自らの階級の名簿からは聖職者を、次の階級の名簿からは大公を、そして他の階級からはその他の人物を選ぶ。

 

第二三五条 国家評議会に空席が生じた場合には、最初に開催されるコルテスは、空席が生じた階級の者三名を国王に提示し、国王が適当と認める者を選択できるようにする。

 

第二三六条 国家評議会は国王の唯一の諮問機関であり、政府の重大な事項、特に法律の制定、宣戦布告、条約の締結などについてその意見を聴取する。

 

第二三七条 会議は、全ての教会の恩典の贈呈と、司法の空席の補充を候補者によって国王に提案する義務を負う。

 

第二三八条 国王は、まず国家評議会の意見を聴取した上で、国家評議会の統治の為の規則を制定し、それをコルテスに提出して承認を得る。

 

第二三九条 国家評議会は、大審問院で判断された正当な理由なく解散されることはない。

 

第二四〇条 コルテスは、国家評議会議員が享受すべき給与を決定する。

 

第二四一条 国家評議会議員は、その職に就くとき、憲法を守り、国王に忠実であり、特定の目的や私利私欲にとらわれることなく、国の利益に資すると理解されることについて、国王に助言することを誓うものとする。

 

第五章 民事及び刑事事件における裁判所と司法の運営について

第一節 裁判所について

第二四二条 裁判所には、民事及び刑事上の裁判を行う権限がある。

 

第二四三条 国王もコルテスも、如何なる状況下でも、司法権を行使したり、未決の裁判を擁護したり、再審を命じたりすることはできない。

 

第二四四条 法律は、全ての裁判所が従うべき裁判の一般的な形式と順序を指示するものであり、国王もコルテスもこれを廃止したり変更したりすることはできない。

 

第二四五条 裁判所は、判決を下し、その判決を実行に移させること以外の行動を起こしてはならない。

 

第二四六条 また、司法行政の為に、法律を廃止したり、新しい法律を制定したりすることもできない。

 

第二四七条 スペイン人は、民事事件でも刑事事件でも、他の如何なる事象に於いても、旧法によって設立された権限のある法廷以外で裁かれることはない。

 

第二四八条 民事及び刑事の共同訴訟に於いては、全ての階級の者に対して、唯一の裁判形式を採用しなければならない。

 

第二四九条 聖職者は、現行法が規定する限り、あるいは将来的に指示される限り、その特権を享受し続けるものとする。

 

第二五〇条 また、軍人は、現在または将来の命令が許す限りの特権を享受するものとする。

 

第二五一条 行政官と裁判官は、スペイン領内の出身の二五歳以上でなければならない。

 

第二五二条 行政官や裁判官は、一時的であろうと永続的であろうと、完全に証明された何らかの犯罪に対して合法的に判決を受けなければ、その地位を解かれることはなく、合法的に優先される何らかの告発に対してでなければ、停止されることもない。

 

第二五三条 国王は、いずれかの行政官に対する苦情が提出され、それが十分に根拠のあるものであると認められた場合には、国家評議会の助言を得て、その行政官を停職することができる。

 

第二五四条 民事及び刑事裁判で法律を遵守する責任は裁判官にあり、裁判官は法律の適用を誤った場合には裁かれなければならない。

 

第二五五条 行政官や裁判官の裏切り、偽装、汚職は、その者を公的な裁判と刑罰に値するものとする。

 

第二五六条 コルテスは行政官及び裁判官が享受すべき給与を決定する。

 

第二五七条 司法は国王の名の下に行われ、上級審の行為や証書も同様に国王の名の下に登録される。

 

第二五八条 民法、刑法及び商法は、王国全土に於いて同一のものでなければならない。但し、コルテスは、特定の事情から、必要と認める場合には、これを変更することができる。

 

第二五九条 裁判所には、大審問院と呼ばれる裁判所を設置する。

 

第二六〇条 裁判所は、それを構成する裁判官の数と、彼らを分割する議場を決定する。

 

第二六一条 大審問院の権限は以下の通りである。

 (1) スペインの全領土における監査の管轄権と、本土と隣接する島々に存在する特別裁判所との管轄権を全て担う。海外県では、後者は法律で決められた通りに解決される。

 (2) 裁判所が罪を認めた場合、国務長官及び官庁長官を裁く。

 (3) 国家評議会議員及びコルテスの議長の離任及び停職に関するあらゆる原因を審理する。

 (4) 国務長官、官庁の長官、国家評議会議員及びのコルテスの代議員の刑事事件を審理し、最も権限のある政治的責任者が、この裁判所に付託する為の手続きの指示に責任を負う。

 (5) この大審問院で個人に対して提起された全ての刑事事件を審理する。この大審問院の責任を有効にする必要が生じた場合には、コルテスは第二二八条に定められた形式の後、この目的の為に、抽選で選ばれる九人の裁判官で構成される裁判の任命を行う。

 (6) 法律の規定によりその対象となる公務員の居住地を審理する。

 (7) 王室の庇護に関わる全ての争訟を審理する。

 (8) 宮廷の全ての上級教会裁判所からの訴えを審理する。

 (9) 無効とされた告訴を再審する。この訴えは、手続きを復活させ、それを返還し、第二五四条に言及された責任を有効にする為、最後に出された判決に対して提出されるものである。海外に関しては、これらの控訴は、同条文に記載された方法で審理される。

 (10) あらゆる法律の理解に関する他の法廷の疑念を聴取し、その疑念について、推定される根拠をもって国王に諮り、国王が法廷で適切な宣言を促進できるようにする。

 (11) 司法の迅速な運営を促進する為に国家評議会から送られなければならない民事事件及び刑事事件のリストを調査し、その写しを同様の目的で政府に渡し、印刷機により出版を手配する。

 

第二六二条 全ての民事及び刑事上の事件は、それぞれの裁判所の管轄内で裁かれるものとする。

 

第二六三条 第二審及び第三審のその区画の下級裁判所の全ての民事事件及び法律で定められた刑事事件を審理し、また、その区画の下級裁判官の停職及び離職の原因を法律で定められた方法で審理し、国王に説明することは、大審問院の義務である。

 

第二六四条 第二審で判決を下した裁判官は、第三審で同じ事件の審理に出席することはできない。

 

第二六五条 また、大審問院は、その領域内の全ての下級裁判官の間の紛争を審理する義務を負う。

 

第二六六条 また、その領土内の教会裁判所や当局から導入された強制力に関する訴えを審理する責任を負う。

 

第二六七条 また、司法の最も迅速な受容を促進する為に、その領域の全ての下位裁判官から提出された事件の通知、及びその裁判所で係争中の民事及び刑事事件のリストを、それぞれの状況を鑑みながら適時受け取ることも義務とする。

 

第二六八条 海外県の裁判所は、取消訴訟を審理する責任を負うものとし、これらの訴訟は、三つの法廷を形成するのに十分な数を有する裁判所に於いて、いずれの場合も事件を審理していない裁判所に申し立てられるものとする。この数の裁判官で構成されていない裁判所では、これらの訴えは、同じ上位の総督府の地区に含まれるものから別のものへと提出されなければならず、後者の裁判所が一つしかない場合には、他の地区の最も近い裁判所に提出されなければならない。

 

第二六九条 無効が宣言されると、事件を審理した審理官は、第二五四条で言及された責任を行使する為に、適切な挿入物を含む証言とともに、最高裁判所に報告しなければならない。

 

第二七〇条 裁判所は毎年、民事事件の正確なリストを大審問院に送付し、刑事事件については、六ヶ月毎に下級裁判所から受け取ったものも含めて、終結したものも保留中のものも、その状況を追記しつつ送付しなければならない。

 

第二七一条 特別法令は、裁判所の裁判官の人数(七名以上)、これらの裁判所の形態、及びその居住地を決定する。

 

第二七二条 第十一条に示されるように、スペインの領土を便宜的に分割する際には、設立されるべき裁判所の数が決定され、その土地が指定される。

 

第二七三条 裁判官は平等であり、各裁判長は、対応する裁判所に必要な数の裁判官を置く。

 

第二七四条 これらの裁判官の権限は、争議案件に限定されるものであり、法律は、その地区の首都及び町に於いて裁判官にどのような権限が与えられるか、また、裁判官が控訴せずに民事案件をどの程度まで審理できるかを決定するものである。

 

第二七五条 市長(アルカルデ)は全ての町に置かれ、訴訟や経済面での市長の権限の範囲を法律で定める。

 

第二七六条 下級裁判所の全ての裁判官は、三日目までに、自国の領域内で犯された罪に起因する事件について、それぞれの審理に説明を行い、その後も審理が規定する時期に、その状況を説明しなければならない。

 

第二七七条 また、それぞれの裁判所で係争中の民事事件と刑事事件のリストを六ヶ月ごとに、状況を示しながらそれぞれの行政官に送付しなければならない。

 

第二七八条 特定の事件を審理する為の特別裁判所を設置するかどうかは、法律で決定する。

 

第二七九条 行政官と裁判官は、その職に就く際に、憲法を守り、国王に忠実であり、法律を遵守し、公平に司法を行うことを宣誓しなければならない。

 

第二章 民事訴訟における司法行政について

第二八〇条 いかなるスペイン人も、両当事者が望めば市長(アルカルデ)により解決する権利を奪われることはない。

 

第二八一条 市長が下した裁定は、当事者が控訴する権利を留保していない場合、執行可能となる。

 

第二八二条 各市の市長は、自ら調停役を務め、民事上及び個人的な損害を訴える者は、その調停を申請しなければならない。

 

第二八三条 市長は、各当事者が指名した二人の善良な男性と共に原告と被告の訴え、それぞれの意向を裏付ける理由を聴取し、二人の男性の意見を聴取した後、訴訟をこれ以上進展させずに終了させる為に、当事者がこの超法規的な決定に満足した場合には市長にとって適切と思われる措置を講じなければならない。

 

第二八四条 調停が試みられたことが記載されていない場合は、いかなる手続きも行われない。

 

第二八五条 全ての事件に於いて、金額の大小にかかわらず、少なくとも三つの最終判決が発表されなければならない。二つの適合する判決から第三審が提起された場合、法律で定められた方法で、それを決定する裁判官の数は、第二審の審理に出席していた人数より多くなければならない。また、事件の性質、異なる判決の性質と質を考慮して、各事件でどの判決を執行するかを決定するのも法律の役目である。

 

第三節 刑事訴訟における司法行政について

第二八六条 法律は、刑事事件について、裁判が遅滞なく開始され、犯罪が効果的且つ迅速に処罰されるような方法で、司法の運営を規制する。

 

第二八七条 スペイン人は、犯した行為の確かな情報がなければ、投獄されることはない。法律に従い、体罰に値する行為であり、宣誓供述を行った裁判官がその者の投獄を命令する必要がある。

 

第二八八条 全ての国民はこれらの命令に従わなければならない。いかなる抵抗も重罪とみなされる。

 

第二八九条 抵抗があったり、逃亡の恐れがある場合は、力ずくで確保することも有り得る。

 

第二九〇条 逮捕された者は、刑務所に入れられる前に、妨げとなるものがない場合には、供述を受ける為に裁判官に引き渡されるが、これが不可能である場合には、被留置者として刑務所に連れて行かれ、裁判官は二四時間以内にその供述を受けなければならない。

 

第二九一条 逮捕された者の供述は宣誓なしで行うものとし、これは刑事上の問題で誰からも自分の行為についての宣誓させてはならない。

 

第二九二条 逮捕された者の申告は、誰にも判断を委ねられないものであり、重大な犯罪については、全ての犯罪者は逮捕され、裁判官の前に連行することができる。

 

第二九三条 行政官が囚人を拘束するか拘留するかを決定した場合、行政官は事件の概要とその命令書を作成し、その写しを市長に送り、市長はそれを逮捕簿に記入しなければならない。この必要条件がない場合、市長は最も重い責任の下で、いかなる囚人もそのように認めてはならない。

 

第二九四条 財産は、訴訟が何らかの金銭的責任のある犯罪の為に提起された場合にのみ、その金額の範囲内でのみ、差押えの対象となる。

 

第二九五条 保釈を申し出た者は、法律が保釈を受け入れることを明示的に禁止している状況下でない限り、何人も刑務所に収容されない。

 

第二九六条 囚人が体罰を受ける必要はないと判断された場合には、裁判のどの期間に於いても保釈が認められる。

 

第二九七条 牢獄は、囚人の安全を確保しつつ、苦痛を与えないように建設されなければならない。従って、市長は囚人の身柄を確保するように注意しなければならず、また、独房には、裁判官が命令する者を入れるが、決して地下や不潔な牢屋には入れてはならない。

 

第二九八条 法律は、市長の刑務所への訪問の頻度を決定するものとし、その際、いかなる囚人も、いかなる口実であれ、出頭することを許されない。

 

第二九九条 前条で指摘された義務を怠った市長は、偽装監禁の罪で処罰される。この罪は刑法に含まれるものとする。

 

第三〇〇条 囚人は、二四時間以内に、その監禁の原因及び告発者がいる場合にはその告発者の氏名を知らされる。

 

第三〇一条 囚人の供述または自白を取るときには、証人の全ての文書及び証拠をその氏名とともに読み上げなければならず、また、知らない証人がいる場合には、その主題に関するあらゆる情報を与えなければならない。

 

第三〇二条 この時から、法律で指示された形式と方法に従って、全ての手続きを公開する。

 

第三〇三条 拷問やいかなる暴力も、自白を強要する為に用いてはならない。

 

第三〇四条 財産の没収という刑罰は、決して行われない。

 

第三〇五条 いかなる罪に対しても、その罰はいかなる点に於いても家族には及ばず、その重さは全てその罪を犯した者に掛かる。

 

第三〇六条 いかなるスペイン人の家も、公共の利益や国家の防衛の為に法律で指摘された特別な事情がない限り、奪われたり、破壊されたりすることはない。

 

第三〇七条 今後、コルテスが民事裁判と刑事裁判を区別する必要が生じた場合には、コルテスは適切と思われる方法で民事裁判と刑事裁判を区別しなければならない。

 

第三〇八条 コルテスは、国家の安全に影響を及ぼす特定の状況が必要とする場合には、王政の全部または一部に於いて、個人的な逮捕の為の手続きの停止を決定する権限を有する。

 

第六章 州と市の統治について

第一節 市議会(アユンタミエント)について

第三〇九条 市の統治の為に、市長、市会議員及び地方弁護士で構成される市議会があり、政治的責任者がいる場合はその政治的責任者が、不在の場合は市長またはこれらの中から任命された最初の者が議長を務める。

 

第三一〇条 市議会は、これを有しない市及びこれを有するのが適切な町に設け、自ら又はその地区が人口千人に達する町には、これを設けずにはおかない。

 

第三一一条 法律は、その近隣地域との関係に於いて、市議会が構成されるべき各階級の個人の数を決定する。

 

第三一二条 市長、市議会員及び警視総監は、市に於いて選挙により選任され、市議会員及び市議会で永年勤続している者は、その称号及び宗派の如何を問わず、その職を失うものとする。

 

第三一三条 毎年十二月に、各市の市民が集まって、同じ市に居住し、市民権を持つ一定数の有権者を、その近隣地域に応じた複数の投票によって選出する。

 

第三一四条 有権者は、同月中に絶対多数の投票により、市長、市議会員、検察官を任命し,翌年の一月一日から就任できるようにする。

 

第三一五条 市長は毎年、市会議員は毎年半数ずつ更新されるものとし、同様に地方弁護士も二人いる場合は同様である。一人しかいない場合は毎年更新するものとする。

 

第三一六条 これらの役職のいずれかに就いていた者は、同市が許す限り、少なくとも二年が経過しない限り、いずれの役職にも再選される資格はない。

 

第三一七条 市長、市議会員、地方弁護士になるには、市民権を持つ住民であることに加え、二五歳以上で、同市に少なくとも五年間居住していることが必要である。法律は、これらの従業員が持っていなければならない他の資質を規定しなければならない。

 

第三一八条 在職中の国王が任命した公務員は、市長、市議会員、地方弁護士になることはできない。国軍の民兵に従事する者は、この規則に含まれない。

 

第三一九条 前述の全ての自治体の役職は評議会の職務であり、何人も合法的な理由なしに免れることはできない。

 

第三二〇条 全ての市議会には、絶対多数の投票によって選出され、公共の資金で賄われる書記官がいなければならない。

 

第三二一条 市議会の権限は以下の通りである。

 (1) 住民の健康と安全の番人となる。

 (2) 住民と彼らの財産の安全及び公共秩序の維持に関するあらゆる事項について市長を補佐する。

 (3) 法令に基づき、任命した者の責任の下で、市の自己資金及び自治体の資金を管理・運用する。

 (4) 税金を分配・徴収し、それぞれの国庫に送金する。

 (5) 公共の資金から支払われる小学校やその他の施設を全て管理する。

 (6) 所定の規則に基づき、病院、養護施設、その他の慈善施設の管理を行う。

 (7) 道路、橋、刑務所の建設と修理、公営の山とプランテーションの建設と修理、及び必要性、実用性、装飾性のある全ての公共事業の管理を行う。

 (8) 市の地方条例を作成し、コルテスに提出し、コルテスが報告書を添えて承認する。

 (9) 町の地域性や状況に応じて、農業、工業、商業を振興し、町にとって有用で有益な全てのことを行う。

 

第三二二条 作品やその他の共同利用物が提供され、自己資金では十分でない為に物品販売に頼らなければならない場合、これらの物品販売は、州議会を通じてコルテスの承認を得なければ行うことができない。使用されるべき仕事や目的が緊急のものである場合、市議会は州議会の同意を得て、コルテスの決定が出るまで暫定的に使用することができる。これらの税金は、全て自己資金として管理される。

 

第三二三条 市議会は、州議会の監督のもとにこれらの任務を遂行し、州議会は毎年、収集・投資した公的資金の正当な報告をしなければならない。

 

第二節 州及び州議会の運営について

第三二四条 各州の政治的統治は、各州に於いて国王により任命された上級知事に帰属する。

 

第三二五条 各州には、その州の繁栄を促進する為に、州代表団と呼ばれる代表団があり、知事がその議長を務める。

 

第三二六条 この代表団は、知事、行政監督官及び後述の方法で選出された七名の個人で構成される。ただし、第十一条で言及された州の新しい分割が行われた後は、コルテスが将来的に適切と考えるか、または状況に応じてこの人数を変更することを妨げるものではない。

 

第三二七条 州の代表団は、二年ごとに半数ずつ更新されるものとし、一回目は人数の多い方、二回目は少ない方、というように更新される。

 

第三二八条 これらの個人の選挙は、コルテスの代議員が任命された翌日に、州の有権者によって、任命された順序どおりに行われる。

 

第三二九条 同時に、同様の方法で、各議席に対して三名の補欠を選出する。

 

第三三〇条 州議会員になる為には、市民権を有す住民で、二五歳以上であり、州の出身者または居住者で、少なくとも七年間居住しており、良識をもって自らを養うのに十分な能力を有していることが必要である。第三一八条で言及されている国王によって任命された職員は、任命されることはできない。

 

第三三一条 同一人物が二回目に選出される為には、その人物が退任してから少なくとも四年が経過していなければならない。

 

第三三二条 州知事が議会を主宰できないときは、行政監督官が主宰するものとし、彼が不在の場合は、最初に任命された議員が主宰するものとする。

 

第三三三条 代議員は、州の公的資金で賄われる秘書官を任命することができる。

 

第三三四条 代議員は、毎年、最大で九〇日間の会期を持ち、最も都合の良い時期に分配して開催する。本土では三月一日までに、海外県では六月一日までに、それぞれ会議を開催する。

 

第三三五条 州議会の権限は以下の通り。

 (1) 州への年貢を各町へ分配し、承認する。

 (2) 市の公的資金の適切な投資を監督し、その会計を検査し、その承認を得て上層部の承認を得られるようにし、法令が全ての点で遵守されるようにする。

 (3) 第三一〇条の規定に従い、適切な場所に市議会が設置されるようにする。

 (4) 州の公益の為の新規の建築工事や既存の建物の修復工事が提案された場合、その実行に最も適切と思われる裁定機関を政府に提案し、コルテスから対応する許可を得ることができる。海外県では、公共事業の緊急性の為にコルテスが解決を待つことができない場合、州議会は知事の明示的な同意を得て、直ちに政府に報告しコルテスの承認を得ることができる。税の回収の為に、代議員はその責任に於いて預託者を任命し、代議員が審査した投資勘定は政府に送付され、政府はこれを承認・認定し、最終的にはコルテスに渡して承認を得るものとする。

 (5) 承認された計画に従って青少年の教育を促進し、農業、工業、商業を奨励し、これらの分野における新しい発見の発明者を保護する。

 (6) 公的な収入の管理に於いて、あらゆる不正に気付いた場合、政府に報告する。

 (7) 州の国勢調査と統計を作成する。

 (8) 敬虔な慈善団体がそれぞれの目的を果たすことを確認し、観察される不正行為の改革に役立つと思われる規則を政府に提案する。

 (9) 州内で憲法違反が指摘された場合、コルテスに報告する。

 (10) 海外県の代表団は、不信心の原住民を改宗させる為の伝道の経済、秩序及び進捗状況を監視し、伝道を担当する者は、濫用を避ける為に、この分野における活動について代表団に報告しなければならない。

 

第三三六条 代議員がその権限を濫用した場合、国王は、コルテスにこの規定とその理由を伝えた上で、代議員を相応の期間停職させることができる。停職中は、代理の者が就任する。

 

第三三七条 市議会及び州議会の全ての構成員は、その職務を遂行するに当たり、スペイン君主制の政治的憲法を守り、法律を遵守し、国王に忠実であり、職務上の義務を宗教的に履行することを、前者は政治的責任者がいる場合はその責任者、不在の場合は最初に任命された市長、後者は州の知事に宣誓しなければならない。

 

第七章 税について

第一節 

第三三八条 コルテスは、直接、間接を問わず、国、州、市町村のいずれかの税金を毎年設定または確認し、その廃止または他の税金の導入が公表されることを条件に、旧来の税金を存続させる。

 

第三三九条 税金は、例外や特権なしに、全てのスペイン人にその能力に応じて分配される。

 

第三四〇条 拠出金は、全部門の公共事業の為コルテスが決定した費用に比例するものとする。

 

第三四一条 コルテスが公務の各部門の経費及びこれを賄う為の拠出金を確定する為、財務長官は、コルテスが集合し次第、必要と認められる一般予算をコルテスに提示し、他の長官からそれぞれの部門に関連する予算を徴収しなければならない。

 

第三四二条 同財務長官は、支出予算とともに、それを賄う為に徴収される拠出金の計画を提出しなければならない。

 

第三四三条 国王は、いずれかの税が負担になったり、有害であると考えた場合には、財務長官を通じてコルテスに報告し、同時にそれに代わる最も適切と思われる税を提示しなければならない。

 

第三四四条 直接拠出の割当額が確定した後、コルテスは各州への分配を承認し、各州にはその富に応じた割当額を割り当てる。

 

第三四五条 国全体の為の総合的な国庫があり、国の奉仕の為に運命づけられたあらゆる収入の全ての収益を処理する責任を負う。

 

第三四六条 各州には国庫があり、そこには国庫の為に集められた全ての資金が納められなければならない。これらの国庫は、財務省と対応しており、財務省が全ての資金を管理する。

 

第三四七条 総括財務責任者への支払いは、財務局長官が署名し、その金額が意図された支出とそれを許可するコルテスの法令を記載した国王の法令に基づいて行われない限り、行ってはならない。

 

第三四八条 財務局がその会計を適切な純度で維持する為には、借方と貸方が、それぞれ有価証券に関する会計と公的収入の分配に関する会計によって監査されなければならない。

 

第三四九条 これらの事務局は、その目的を果たす為に、特別の指示によって配置される。

 

第三五〇条 公的資金の全ての勘定を審査する為に、特別法により組織された総合会計事務所を設置する。

 

第三五一条 全ての拠出金及び収入の年間収量とその投資額を含む総勘定元帳は、コルテスの最終承認を得た後、印刷、発行され、地方議会及び市議会に回覧されなければならない。

 

第三五二条 同様に、各支部で発生した費用について事務局の秘書官が作成した会計は、印刷、出版、配布されなければならない。

 

第三五三条 財政の管理は、常に、それが委ねられている機関以外のいかなる機関からも独立していなければならない。

 

第三五四条 この規定は、コルテスが決定するまで有効でないが、海港と辺境を除いて税関は取らない。

 

第三五五条 認識されている公的債務は、コルテスの最初の仕事の一つであり、コルテスはその漸進的な消滅を確実にする為に最大の注意を払い、常に収入が発生した部分で支払われるようにし、この重要な部門の管理に関する全てを、設立される可能性のある税(一般の国庫とは完全に分離して管理される)と、会計及び報告の事務所の両方について手配することになる。

 

第八章 国軍について

第一節 常備部隊について

第三五六条 国家の対外的防衛と国内秩序の維持の為に、陸海に恒久的な国軍が存在する。

 

第三五七条 コルテスは、毎年、状況に応じて必要となる軍隊の数及びその最も適切な招集方法を決定する。

 

第三五八条 また、コルテスは毎年、武装した又は武装させておくべき軍事海軍の船舶の数を定める。

 

第三五九条 コルテスは、それぞれの条例によって、規律、昇進の順序、俸給、管理その他陸海軍の良好な組織に関係する全ての事項を定める。

 

第三六〇条 軍学校は、陸軍及び海軍の全ての異なる兵科の教育及び指導の為に設立されなければならない。

 

第三六一条 いかなるスペイン人も、法律で定められた時と方法以外で兵役を免れることはできない。

 

第二節 民兵について

第三六二条 各州には、その人口と状況に応じて各州の住民で構成される国民民兵隊を設置する。

 

第三六三条 その結成方法、人数、全ての支部における構成は、特別な条例によって規定されなければならない。

 

第三六四条 これらの民兵の任務は継続的なものではなく、必要とする場合にのみ招集されるものとする。

 

第三六五条 必要であれば、国王はこの力をそれぞれの州内で使用することができるが、コルテスの同意なしに州外で使用することはできない。

 

第九章 公教育について

第一節

第三六六条 王国の全ての村に、初等教育の学校を設立し、子供たちに読み書きや数の数え方、カトリック宗教のカテキズムを教え、市民の義務についても簡単に説明しなければならない。

 

第三六七条 また、あらゆる科学、文学、芸術を教えるのに適していると思われる、適切な数の大学及びその他の教育機関を手配し、創設しなければならない。

 

第三六八条 一般的な教育計画は王国全体で統一され、教会学や政治学が教えられている全ての大学や文学施設で、君主制の政治的憲法が説明されなければならない。

 

第三六九条 認められた学識経験者で構成され、政府の権限の下に公教育の検査に責任を負う研究総局を設置するものとする。

 

第三七〇条 コルテスは、特別な計画と法令により、公教育という重要な目的に関連する全てのものを調整する。

 

第三七一条 全てのスペイン人は、法律で定められた制限と責任のもとに、出版の許可、修正、承認を必要とせずに、自分の政治的アイデアを自由に書き、印刷し、出版することができる。

 

第十章 憲法の遵守と改正について

第一節

第三七二条 コルテスは、その第一会期に於いて、適切な救済措置を講じ、憲法に違反した者の責任を強制する為に、注意を喚起された憲法違反を考慮しなければならない。

 

第三七三条 全てのスペイン人は、憲法を遵守する為に、コルテスや国王を代表する権利を持つ。

 

第三七四条 文民、軍人、教会関係者を問わず、公職に就く者は、その職に就く際に、憲法を擁護し、国王に忠実であり、その職務を適切に遂行することを宣誓しなければならない。

 

第三七五条 憲法が全ての地域で適用されてから八年が経過するまでは、憲法のどの条文に対しても変更、追加、修正を提案することはできない。

 

第三七六条 憲法に変更、追加、修正を加える為には、それを確定的に決定する代表団に、この目的の為の特別な権限を与えることが必要である。

 

第三七七条 憲法のいずれかの条文を改正する提案は、書面で行い、少なくとも二〇人の代議員の支持と署名を得なければならない。

 

第三七八条 修正案は、一回の提出から次の提出まで六日の間隔を於いて三回読み上げられ、その後審議に供することができるかどうかが決定されるものとする。

 

第三七九条 審議が認められた後は、法律の制定に規定されているのと同じ形式と手続きの下で進められ、その後、次回の一般評議会で再度審議すべきかどうかが投票に提案される。このように宣言される為には、三分の二の賛成が必要である。

 

第三八〇条 次期国家評議会は、その全ての部分で同様の手続きを行った後、二年間の会期のいずれかに於いて、投票数の三分の二の同意を得て、改革を実行する為に特別な権限を付与する必要があると宣言することができる。

 

第三八一条 この宣言が為された後、公表され、全ての州に伝達されなければならない。コルテスは、この宣言がなされた時期に応じて、特別な権限をもたらすのが次の議会かその次の議会かを決定する。

 

第三八二条 これらは州選挙管理委員会が付与するもので、通常の権限に次の条項を加える。

「また、コルテスの法令で言及されている憲法の改革を行う為の特別な権限も付与しており、その文言は次のとおりである。○○(条文の内容)。全ては憲法の規定に基づき、それによって確立することができるあらゆるものを憲法として認め、考慮することを約する」。

 

第三八三条 提案された改革案は再度議論され、コルテスにて三分の二の賛成を得た場合、憲法制定法となり、そのように裁判所で公表される。

 

第三八四条 代議員が国王に改革令を提出し、国王がそれを公表して王政の全ての当局と町に回覧できるようにする。

 

一八一二年三月十八日、カディス

 

―了―

 

原文