世界観警察

架空の世界を護るために

女神の土地と不在の女神 - 『DARK SOULS』考察

 おはようございます。茅野です。

わたしはフランス語を専攻しているんですけど、同時に英語、ロシア語、アラビア語もやっているので、最近ずっとキメラ言語話してます。単語が別言語になる、とかだったら間違いがわかりやすくていいですけど、わたしの場合、文法が混ざりますからね。「それ対格じゃなくて生格の活用だよ(ロシア語)」「アラビア語でだったらこれが対格の活用なんだもーん!」みたいな不毛な会話を延々してます。バベルの塔よ、何故倒壊したのだ。

 

これまでのダクソ関連の記事はこちらから↓

 

 さて、前置きはこれくらいにして、今回は、「この現実世界のどこかに "ロードラン" なる地が見つかったとしたら、この地域の宗教・慣習は如何に研究され、分類され得るか」というようなコンセプトで、既存の比較宗教学や民族学の研究を応用し、本格的に論考することを目的とした、「旧王家神話体系」シリーズの第二回です。第一回をご覧になっていない方はまずこちらから読んで下さい。既読前提で話を進めます。

 第二回となる今回は、「女神の土地と不在の女神」と題しまして、旧王家神話に於ける女神、カリムの女神信仰とグウィンの妻について考えます。それでは宜しくお願い致します。

 

 

女神たち

 『DARK SOULS』世界では、女神とテキストで断定されている者に太陽の光の王女グウィネヴィア、罪の女神ベルカ、「運命的な美しさ」フィナ、涙の神クァト、生まれ変わりの母ロザリアがいます。

まず手始めに、彼女らをテキストから大雑把に分類しましょうか。

テキスト分析 - グウィネヴィア

すべてに愛されたグウィネヴィアの奇跡は
その恩恵をひろく戦士たちに分け与えるが
誓約者でなければ使うことはできない

                (太陽の光の恵み『DARK SOULS』)

グウィン王の長女にして、太陽の光の王女である
(中略)

太陽の光の王女グウィネヴィアは
多くの神と共にアノール・ロンドを去り
後に火の神フランの妻となった

               (太陽の王女の指輪『DARK SOULS』)

太陽の光の女神として知られるグウィネヴィアは

偉大なる太陽の光の王グウィンの娘であり

豊穣と恵みの象徴として、ひろく人々に愛されている

                  (女神の祝福『DARK SOULS』)

太古の女神によって祝福を受けたとされる遺物
女神の名は絶えており、メルヴィアの魔法院では
その存在自体が否定されている

                 (女神の祝福『DARK SOULS II』)

ロスリックの王妃が祝福したとされる聖水

(中略)

彼女は先王オスロエスの妻であり
豊穣と恵みの女神にすら例えられたが
末子オセロットを産んで後、姿を消したという

                 (女神の祝福『DARK SOULS III』) 

最古の王グウィンの長女として知られる
太陽の光の王女グウィネヴィアの名で伝わる指輪

(中略)

多くの神と共に故郷を去った彼女は
やがて妻となり、母となった
そして貴い子たちをもうけたという

              (太陽の王女の指輪『DARK SOULS III』)

その終末期に、ロスリックで見出された奇跡
(中略)

太陽の光の王女
その癒しと恵みを忘れた人々
それでもなお、彼女の後姿を思い描き
稚拙だが、真剣な物語を紡いだのだ

                  (放つ回復『DARK SOULS III』)

 ここから読み解けることは、 1. グウィン王の長女 2. 豊穣と恵みの象徴 3. 多くの神と共に故郷を去り、火の神フランの妻となった 4. 母となり、貴い子をもうけた 5. メルヴィアでは存在を否定されている の五点です。

 

テキスト分析 - ベルカ

罪の女神ベルカのそれは彼女の黒髪であり
信仰によらず理力を奇跡の糧とする

              (ベルカのタリスマン『DARK SOULS』)

罪とは罰せられるべきものであれば
罪を定義し、罰を執行するのが
罪の女神ベルカの役目であろう

                (因果応報『DARK SOULS』『III』)

犠牲の儀式によって作られる
罪の女神ベルカの、神秘の指輪
中でも、赤紫の色味を持つものは特別とされる

               (貴い犠牲の指輪『DARK SOULS III』)

罪の女神ベルカの教戒師が身に帯びる
象徴的な意味合いの強い刺剣

                 (ベルカの刺剣『DARK SOULS』)

罪の女神ベルカは異端であるが
古今あらゆる秘儀に通じており
神々の中でも強い影響力を持つと言われる

               (沈黙の禁則『DARK SOULS』『III』)

 ここから読み解けることは、 1. 異端の魔女 2. あらゆる秘技に通ずる 3. 神々の中でも強い影響力を持つ 4. 犠牲の儀式を行う 5. 理力に通ずる の五つです。又、関連する場所にベルカの教誨師オズワルドの出身地としてカリム、そして彼のアイテムが落ちているエレーミアス絵画世界が挙げられます。

 

テキスト分析 - フィナ

「運命的な美しさ」を謳われる
女神フィナの寵愛と加護の指輪

            (寵愛と加護の指輪『DARK SOULS』『III』)

その表面には、装備者を抱くように
女神の腕が絡みついている

移り気な寵愛とは裏腹に

                (寵愛の抱かれ鎧『DARK SOULS』)

 ここから読み解けることは、 1. 運命的な美しさの女神 2. 移り気 の二点です。フィナ関連は、カリムのロートレク以外からは伺うことができません。

 

テキスト分析 - クァト

涙の神クァトは、哀しみに寄り添う
慈愛の神という位置づけが一般的だが、
一部では人を絶望の運命へと導く
悪神とされている

                 (クァトの鈴『DARK SOULS II』)

女神クァトの加護を受けた聖鈴
カリムでも一部の聖職者のみが持つもの

                 (クァトの鈴『DARK SOULS III』)

カリムの赤い涙石は、装備者の危機に反応し

その攻撃力を一時的に高める

                (赤い涙石の指輪『DARK SOULS』)

カタリナの青い涙石は、装備車の危機に反応し

その防御力を一時的に高める

                (青い涙石の指輪『DARK SOULS』)

涙の神クァトは非業の死を遂げた者を悼み
血のような赤い涙を流す
この石はその涙が結晶になったものと
言い伝えられている

               (赤い涙石の指輪『DARK SOULS II』)

涙の神クァトは愛する人を亡くした者を哀れみ
清らかな青い涙を流す
この石はその涙が結晶になったものと
言い伝えられている

               (青い涙石の指輪『DARK SOULS II』)

それは女神クァトの、悼みの涙であるという
そして涙とは、死の側でこそ美しいものだ

               (赤い涙石の指輪『DARK SOULS III』)

 モーンは女神クァトの従者としても知られ
これは彼女を巡る死の物語であるという

                  (治癒の涙『DARK SOULS III』)

ここから読み解けることは、涙の神クァトは、 1. カリムで信仰されている 2. 善神と悪神二通りの解釈がある 3. 死との関係が強いらしい 4. 涙石との関わりがある の四つです。

 

テキスト分析 - ロザリア

ロザリアの指は、彼女に舌を捧げる者たちである
ある者は生まれ変わりのために
またある者は、ただ声なき女神を慰めるために

                (ロザリアの指『DARK SOULS III』)

生まれ変わりの母、ロザリアは
最初の子に舌を奪われたという
以来彼女は、それらを待っているのだと

                (幻肢の指輪『DARK SOULS III』)

深みの大主教は三人おり
一人は生まれ変わりの母、ロザリアに仕えた
彼はそれを、女神と呼んだという

              (大主教のスカート『DARK SOULS III』)

 ここから読み解けることは、 1. 生まれ変わらせることができる 2. 最初の子に舌を奪われた 3. 子供達を待っている 4. 深みの大主教の一人に女神と認められた の四点です。

 

その他

 その他、女神と考えられる存在について述べておきます。まず、フィリアノールですが、出自を鑑みると彼女も「旧王家の女神」とは考えられるものの、テキストをよく読むと、「王女」という記述はありますが「女神」としているテキストは一つもありません。つまり、「神としての性質」よりも「王女としての性質」が強いのだと考えられます。

 次に、「女神の祝福」にも記述があるロスリック王妃ですが、彼女自身は「女神と喩えられる」だけで、「神である」という記述はありませんので、除外します。

 

纏め

 ここまでの情報を纏めると、以下のようになります。

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 信仰地域は関わりがあると考えられるNPCの出身地、アイテムの落ちている場所から割り出しています。ロザリアに関しては、深みの聖堂が「流れ着いてきた場所」でない、とする根拠が不明確なので、一応括弧書きとしました。

 こうやって一覧にすると、女神の信仰はカリムに於いて盛んであることがわかります。一方で、旧王家の本拠地たるロードラン、ロスリックで実際にお目にかかれるのは男神ばかり。これはどうにも示唆的です。次節では、カリムの女神信仰について掘り下げます。

 

カリムの女神信仰

 カリムでは、一人の騎士が一人の女神、或いは聖女に仕えるという風習があります。以下のテキストを確認して下さい。

カリムの騎士は、生涯一人の聖女に仕えるという
かつてモーンが、ある女神に仕えたように

                  (惜別の涙『DARK SOULS III』)

 どうにもミンネザング風ですね。このように、カリムの騎士は原則として信仰戦士であることがわかります。しかも大概技量系。やっぱり時代はギンバサなんだよな。

尤も、カリム女性=聖職、男性=それを護る人、と役職が固定されているわけではなく、オズワルドが教誨師であるように、男性は聖職になれないというわけではないようです。

 

異教と異端

 さて、本題に入ります。ここで注目するのは、罪の女神ベルカのこのテキストです。

罪の女神ベルカは異端であるが

                (沈黙の禁則『DARK SOULS』『III』)

ベルカは「異端」です。宗教研究を囓ったことがある方なら、この語に強く反応するはず。これは絶大な意義を持つことばなのです。もう少しヒントを出しましょうか。ベルカは、「異教の神」ではなく、「異端の神」なのです。もう、この語だけでベルカ考察は8割終わったも同然。語義を確認します。今日も宜しくお願い致します、大辞泉先生!

い-きょう【異教】

ある特定の宗教を奉ずる者の立場からみた他の宗教。特に、キリスト教の立場から、キリスト教以外の宗教。

い-たん【異端】

正統から外れていること。また、その時代に多数から正統と認められているものに対して、例外的に少数に信じられている宗教・学説など。

 おわかり頂けますか、この違い。「異端」、それは、正道から外れていたとしても、体系の中に組み込まれる者。この場合の体系とは何か。『DARK SOULS』世界で「正統」とされる、一番ポピュラーな信仰、神話体系は一体なんなのか。そうです、それこそが「旧王家神話体系」ではなかろうか。即ち、言い換えれば、ベルカは「旧王家神話体系」に属する神だということです。

 体系が同じとは、どういうことなのか。つまり、宇宙論、神の定義、終末論などを共にしている、ということです。旧王家神話体系の概要については、前回の記事で述べましたね。

 これは「白教編」でも概説する予定ですが、カリムに根付いているのはこの「女神信仰」と「白教」の二つです。そして、この「女神信仰」は、少なくともベルカについては旧王家から見て「異端」と認定されています。そして、白教についても、アノール・ロンドやソルロンドの聖職者とは意見を異にし、ロイドは主神ではないとします。つまり、カリムの信仰は、旧王家神話をベースとしながらも、主たる信仰体系(アノール・ロンド、ソルロンド、アストラなどで信仰されているもの)とは異なる信仰体系を築いているということがわかります。

 

アノール・ロンドとカリムの関係

 わたしは、ロードランから見たカリムの信仰は、現実世界でいうとイスラームスンニー派からみたシーア・アリーにとても似ているのではないか、と考えています。「どちらが正しい」ということではなく、 1. 古来の信仰と混ざる 2. 「正統」な信仰体系が腐敗する 3. 「正統」な信仰の中心地から地理的に遠い 4. 信仰者同士の過去の確執 などが原因で、新たな信仰体系が生まれる、というケースです。言ってしまえば、カリムの信仰はアノール・ロンドの分派。わたしの考えでは、このことから、カリムはアノール・ロンドと地理的に離れているか、或いはアノール・ロンド、ソルロンドとカリムは過去に対立関係にあったのではないか、と考えています(流れ着いた影響を考慮すると、どうだかわかりませんが)。

 又、カリムには多くの女神信仰があります。そして、カリムの信仰は旧王家神話がベースです。であれば、この女神たちも旧王家神話の神、と考えるのが自然です。つまり、フィナ、クァトも旧王家神話に登場する神である可能性が高いです。一応言っておくと、これはわたしの命名が悪いのですが(すみません)、ベルカ、フィナ、クァトは「旧王家神話の神」である可能性が高いですが、「旧王家の神」ではありません旧王家とは、グウィンの一族を指すためです。体系が同じであれば、血族か否かという条件は求められません。これはどの世界の神話でも同様です。分かりづらいですが、そういうものだと理解してください、宜しくお願いします。ちなみに、「ロードラン神話」や「アノール・ロンド神話」としなかったのは、ロードランには別の神話体系(ニトへの信仰など)も存在すること、旧王家神話の分布はアノール・ロンドに限らないことを考慮した故です。

話が逸れましたが、であるならば、ベルカ、フィナ、クァトら女神は、アノール・ロンドを去った後、カリムへ向かったのかも知れません。或いは、アノール・ロンドは「神々が生まれ育った土地」ではなく「神が築いた街」であるという理解をすれば、カリムで生まれ育った神々がアノール・ロンドという街を築き、遷都したのだ、と考えることもできます。これは、アノール・ロンドとカリム、どちらを「正統」とするか、という議論にも繋がりますが、こちらは「白教編」にて。根拠は薄いですが、カリムで女神信仰が盛んであることを鑑みれば、自然な推理です。「慈愛」や「美」の女神が沢山いる土地……ダクソシリーズでカリムという土地に行けないのは一種のバグだとおもうのだが、貴公、どうおもう、『IV』はまだなのか。

 

不在の女神

 さて、カリムでの女神信仰について考えて参りましたが、当節では最も重要な女神について触れます。それは、偉大なる大王の妻、大いなる神々の母、つまり、グウィン王の妻です。

 グウィン王の妻については、偉大な存在であるはずにも関わらず、記述が一切ありません。これはなんとも不可解なことです。当節では、この点について考えます。

 

王家の家系図

 弊ブログでも最古のひとつの記事に、「王家の家系図」があります。冒頭にも書いていますが、この記事書いたの、高校生の頃なんですよね。今、大学で卒論書いてます。ああ、ずっと、ずっと側にいてくれたのか、我が師、導きのダクソ考察よ……。

……というわけで、無駄にテンション高いし、今と文体違うし、詰めが甘いし、恥ずかしくて消したいまであるのですが、一応紹介しておこうとおもいます。

 今回は、この「王家の家系図」とはほんの少しだけ異なる説を唱えてみようかとおもいます。考察勢というのはですね、一つの説を支持していなくてはならぬというルールはないのですよ。宜しいですか、下手な鉄砲数打ちゃ当たるじゃないですけど、一つの説に囚われてばかりでなく、色々な説を考え、柔軟に対応していくのも大切なことなのですよ、言い訳ではなく。マジで。四年もあれば意見が変わることだってある。尤も、今考えても、大枠に関しては意見を変えていません。推測で埋めている点もありますが、矛盾無くテキストを解釈するとこのようになるからです。今回は、テキストを矛盾させないまま、更に原点から覆しましょう。

 というわけで、今回の説、それは、「女神の不在説」。つまり、グウィン王にはそもそも妻などいなかった、という考えです。

 

神産み

 最近の他人の考察はほぼ一切読んでいないので知りませんが、これまで類を見なかった説です。今ではブッ飛び考察が最早主流になっているようですが、当時の「王家の家系図」も物議を醸したものだし、わたしは結構デカい説を打ち立てるの、好きですよ。論理的で筋が通っており、根拠が明確であれば、ですが!

 グウィンに妻などそもそもいなかった。だって、そうじゃありませんか。一言も語られていない太陽の光の長子のように、「消された」という記述もないだったら、はじめからそんな存在、居なかったんじゃないですか? とても自然な考えではないですか。

 よし、では考えられる反論を自ら出して、再反論してみましょうか。

反論1: ではどうやって子孫を残したのか? 長子、グウィネヴィア、グウィンドリンはどうやって産まれたのか?

再反論: 神の出産に男神と女神が必要など、誰が決めたのか? グウィン王が一人で「産んだ」って、よいではないか

説明しましょう。多くの神話に於いて、寧ろ、「神が神を出産する際に、人間と同じように絶対に男と女が必要である」という神話は少ないのです。唯一神を要す宗教では当たり前ですが、男神・女神と性の概念がある神話に於いても、です。更に言えば、特に太陽・月のような天体は、男神と女神の生殖によらない形で誕生した、とする神話が数多くあります。例を挙げましょうか。我らが日本神話では、男神伊弉諾尊イザナギノミコト)が禊をした際、左目から産まれたのが太陽の女神・天照大神アマテラスオオミカミ)、右目から産まれたのが月の神・月読尊(ツクヨミノミコト)、鼻から産まれたのが嵐の神・素戔嗚尊スサノオノミコト)とされます。日本神話の三貴神と旧王家神話の神が見事に対応することからも、『DARK SOULS』には日本神話のつよい影響を読み取ることが出来ます。尤も、『古事記』では素戔嗚尊伊弉冉尊イザナミノミコト)を母と認識していますから、根拠が弱いと考えられる方もございましょう。では、こちらはどうでしょうか。古代インドの聖典リグ・ヴェーダ』では、巨人プルシャを生け贄として祭典を行った際、心臓から月が、目からは太陽が産まれたといいます。更に、中国の『五運歴年記』によれば、神である盤古が死に瀕した際、声を雷に、左目を太陽に、右目は月に変身させたといいます。このように、太陽や月、そしてそれを司る神が、生殖を経ずに産まれた、とする神話は数多くあるのです。であるならば、旧王家神話がそうではないと、何故言い切れましょう? 我々は、あらゆる存在は生殖・出産によって産まれるという固定概念から解き放たれる必要があるのではないでしょうか。

 

妻であり母である女神

 太陽の長子、グウィネヴィア様、グウィンドリン様の誕生に、女神の存在は不要なのかもしれない。その上で、まだ反論の余地はあります。

反論2: グウィネヴィアやロザリア、ロスリック王妃に纏わるテキストでは、「妻」や「母」という語が強調されている。であれば、これは神産みの際に生殖が必要とされることの強い示唆ではないのか。

再反論: 寧ろ、「妻」であり「母」である必要が必ずしもなかったが故、強調されたのではあるまいか

特に説明は必要ないでしょう。前述の通り、人間と同じような生殖による出産と、それに拠らない出産が併存している神話の方が多いのです。であれば、人間のように夫婦という関係を築き、人間と同じ行為をして子を設けた、ということを強調している、そう読むことだって出来ます。

 

家系図との矛盾

 こんなところでしょうか。まだ反論があれば、コメント欄へ。

先程、大昔に書いた「王家の家系図」を紹介しましたが、この説と共存させることは可能でしょうか。余裕で可能です。

と、申しますのも、正直、元より不在だった女神の存在を抹消してしまえばそれでいいからです。つまり、こういうことです。

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ついでなので、ロイド神の周りを整頓し、フィリアノール嬢を足しておきました。又、生殖なしの誕生の可能性を考慮し、シースの妻、ヨルシカの父も再考の余地があるとして抹消しました。赤線が公式で確定している事項です。詳しくは「王家の家系図」へ。

 「シースはグウィンの外戚」「グウィンドリンが末子」「ヨルシカはグウィンドリンを兄と呼ぶ」ということを考慮すると、必ず、グウィン王とシースの娘(推定プリシラは婚姻しており、且つ、ヨルシカはグウィン王の娘ではないことを示す必要がありますグウィンに他に妻がいないのなら、シースの娘と考えられるプリシラが正妻である可能性だって十二分にあります。秘匿の理由は明らかになっていないのですから、グウィン王との関係が由来ではないかもしれないわけでしょう。もしかしたら、王家の家系図は、そこまでグロテスクなものではないのかもしれません。

 

最後に

 通読ありがとうございました。今回は9000字弱くらい。五桁行かなかったとは、わたしにしてはよくやったほうだ。

 「異教」と「異端」については、普段サークルで現代アラブ政治の研究をやっている関係で、「ダーイシュ(所謂イスラーム国)が、報道に際し何度 "異教" "異端" という語を使ったか」という論文を読んでいたときに「あ、そういえば、」とおもってザッと書いてみました。このように、どこからどのような影響を受けるかわからないので、考察勢は知識の門戸を広く開け放っておく必要があるのだ。

 「旧王家神話体系」シリーズは、まだまだ続きます。前提知識として書いておきたいことも結構あるので、ほんとに増えます。宜しくお願いします。

 それでは、今回はそろそろお開きにしましょうか。ご意見・反論などはコメント欄へ。ではまた次の記事にて。