世界観警察

架空の世界を護るために

Ol' Shoshone - 『Firewatch』レビュー

  こんにちは、ウォーキング・シミュレータ大好き茅野です。

個人的に、バリバリ戦うゲームよりこうひたすら散策するの好きなんですよね。ダークソウルとか色々例外はありますが……。

ちなみに一番好きなテレビ番組は10年くらい前からずっと『世界ふれあい街歩きです。宜しくお願いします。

 

 さて、そんな私がこの度楽しくプレイさせてもらったのが、こちら、『Firewatch

f:id:sylphes:20170317151159j:plain

前々から興味はあったのですが、$課金するのが面倒くさくて中々手を出せていなかった一作。

海外インディーズ作品で、お洒落なゲームとして話題を集めました。色々なゲーム評論サイトでもかなり高得点を叩き出しています。

全編英語でローカライズがないため、日本ではとてもマイナーですが、海外で人気を集めた理由が凄くよくわかる良作でした。

各項目に分けてつらつらと感想を述べたいと思います。ネタバレは少なめですが、スクショなども多いので自己判断でお願いします。

 

 

 

舞台

 舞台は1989年、アメリカはワイオミング州

自然豊かなShoshone National Forest(ショショーニ国立森林公園)で、主人公ヘンリーはFire Look(山火事を監視する仕事)をすることになります。

このキャンプ地がめちゃくちゃ綺麗なんです!!

f:id:sylphes:20170317161620j:plain

↑日没が映える渓谷

f:id:sylphes:20170317161820j:plain

↑緩やかに流れる小川

f:id:sylphes:20170317161905j:plain

↑ちっこい滝

f:id:sylphes:20170317161948j:plain

↑白樺林

 

ここに79日一人で滞在し、山火事が起こらぬよう監視するのですが、この世界を独り占めしてもいいのか!?という絶景。わたしもFire lookの仕事したい。

f:id:sylphes:20170317164510j:plain

↑主人公の住まうLookout Tower(監視塔)

 

 景観もさることながら、ウォーキートーキー(無線)とか、ゲームボーイとか、カセットとか、時代を感じさせる小物も良い味を出していました。世界観警察、大歓喜です。

缶ビールのデザインや、妙にパンチの効いた絵柄の花火、デライラの部屋のクロスワードパズルなど、アメリカを感じました。

 なにか作品に触れたとき一人一人違う感想を抱くのは当然のことですが、Firewatchをプレイしてわたしはもっと具体的に、アメリカ留学に行っていた時を思い出し、妙に懐かしい気持ちになってしまいました。

ワイオミングではないですがクソ田舎に行っていたので、「わかる、この不便さ!この自然の美しさ!」と共感を覚えました。ちなみにバスタブとトイレこそ室内にありましたが、寮がLookout Tower内にそっくりな簡素さで、アメリカに戻ったような心持ちに…ww

わたし個人としては、そういう記憶の呼び起こしもあって、更に良ゲーとして消化されました。アメリカの田舎に縁があった人は、『Firewatch』、やるしかありません!

 

 そしてFirewatchが話題となった理由の一つに、そのグラフィックがあります。

Everybody's Gone to the Rapture 幸福な消失のようなリアルなものではなく、どちらかといえば、『ABZUや『The Witnessのような、少しデフォルメされた特徴的なグラフィック。

f:id:sylphes:20170317164135j:plain

↑『ABZU』

f:id:sylphes:20200422132657j:plain
↑『The Witness』

リアルなものとどちらが好きか好みは分かれると思いますが、なかなか味が出ている素敵なグラフィックでした。

 

ストーリー

 1989年、アメリワイオミング州、ショショーニ国立森林公園。

アルツハイマーになってしまった妻ジュリア(Julia)をもつヘンリー(Henry)は、彼女が治療をしている夏の間ここでレンジャーとして火災監視の仕事をすることに。

彼の上司は同年代の女性、デライラ(Delilah)。快活且つ饒舌であり、ウォーキートーキーを通してほぼずっと会話をすることになります。

 最初はキャンプに来たティーンエイジャーが放置した花火を回収したり、順調に仕事をこなしていきますが、中盤から不穏な匂いが漂い始めます。

ヘンリーの監視塔に泥棒が?

誰もいないはずなのに人の気配が?

ヘンリーとデライラの会話が誰かに聞かれている?

森林の奥に政府の立ち入り禁止区域が?

そもそもこの無線機の先のデライラは信用できるのか……?

 

 ざっくり纏めるとこんな感じでしょうか。

平均的な初見プレイ時間は6時間ほどらしく(わたしは初見は8時間ほど掛かりました)、それくらいのボリュームの作品として簡潔に纏まっている印象を受けました。起承転結がハッキリしているとでも申しましょうか。

 この「大自然のなか一人で火災を監視する男」という題材はものすごくよくて、色んな方向に話を展開出来そうだ、と感じました。

大自然に囲まれているわけですから、『どうぶつの森さながらのスローライフを送るゆる~いゲームにも昇華出来たでしょうし、一度も顔を合わせたことがない相手からの命令を聞き行動する、という点でデライラとの関係をもっと掘り下げることも出来たでしょう。また、陰鬱とした森林もありますから、この『Firewatch』というゲームが選択したように秘密の隠れ家や秘匿された政府の基地なんかが見つかっていき…なんていうサスペンススタイルも面白い。

こういうように、色んな方向に話を持って行ける題材ですから、「あっ、話の展開、そっち行くんだ!?」とは少し感じました。結果的に綺麗に纏まっているのですが、個人的には結構意外な展開でした。

 

 一つ不満な点があるとすれば、折角なら79日分フルで遊ばせてくれよ!ってところでしょうか。

ゲームテンポが悪くなるため敢えてカットしたのはわかるのですが、こんなにこの世界に惚れさせておいて余りにも滞在時間が短いと感じました。79日が体感3日間。「この自然は隅から隅まで俺だけのものだ!」と言わんばかりの、飽きるほどの探索、したかったです。(やろうと思えば出来るんだけど、ゲームのクエストの一環として)。

 

英語について

 『Firewatch』を購入するのを少し躊躇っていた理由として、ローカライズを期待していたというのもあります。(この先も出ないのでしょうか?)→追記: 出たらしい。やったぜ。

この『Firewatch』、所謂洋ゲーというやつで、全編英語です。

ウォーキング・シミュレータでは、前回記事で取り上げた『Submergedや有名な『JOURNEYのように、ほぼ言語を必要としないゲームも多いですが、『Firewatch』はずっと喋りっぱなしでかなりの英語スキルを必要とします。

なにって、デライラさんが喋る喋る喋る!

この会話の言い回しや内容があまりにもリアルでウィットに富み、面白くて、それが『Firewatch』の大きな魅力の一つなのですが、純ジャパには厳しいものがあります。

 

 第一に、『Firewatch』がゲームであるということ。

何を当然なことをと仰るかもしれませんが、考えてもみてください。

もし仮にこれが映像作品なら、デライラさんが喋ることに集中出来るでしょう。実際、わたしは自分のプレイを録画して後々見返しましたが、プレイしながらの時と違ってすんなりとデライラさんの指示を理解することが出来ました。

しかしFirewatchはゲームなので、デライラさんの言うことを聞き、即座に指示に従う必要があります。

デライラさんが「東に行け」と言ったら、その指示を聞きながらコンパスと地図を取り出してそれを見る必要があります。

英語が母国語でない我々にとって、それはかなりハードです。

実際、わたしは序盤でデライラさんの話を聞きながら松ぼっくりを撫でていたら指示を聞き逃しました。(阿呆)

つまり、右から左に軽く聞き流していても指示が頭に入る……くらいの英語力がないとしんどい、ということです。

 

 第二に、時間制限です。

Firewatchでは、場合によって主人公ヘンリーの返答を自分で決めることができます。さながらギャルゲーや乙女ゲー、要はノベルゲーのように。

しかし、そう、これには返答受付時間なる、タイムリミットが設けられているのです!

 

画面左のREPLYのゲージがなくなったら返答出来ません。

……時間短くないですか!?

返答を読んで頭で理解するだけで基本的に時間終わってます。なので、以降はパッと目を通して、デライラさんの機嫌を損ねないようなのを適当に選択してました…。

 そうです。返答相手は常にデライラさんです。ギャルゲー慣れしている人こそ、返答はじっくり悩みたいところ。

返答受付時間が設けられているのは、このリアルなデライラさんとヘンリーの会話に更にリアリティとよいテンポを生みますが、プレイヤーにとってはかなりしんどいものがあります。

 

 第三に、スピードです。

デライラさんとヘンリーは二人とも英語のネイティヴスピーカーで、会話スピードがめちゃくちゃ速い。字幕がなかったらとてもじゃないですがついていけません。

「あ~っこの単語なんだっけ……」とか一瞬考えるだけで次のセリフ全部飛びます。とてもしんどい!

 前述の通り、『Firewatch』は世界観構成がすごく凝っていて、古き良き田舎の自然豊かなアメリカを全面に押し出しています。リアルな会話がそれに一役買っていることは間違いありません。そしてシンプルなゲームだからこそ、無線を通しての会話がとても印象的なものになっています。言い回しや会話もとても面白くて、完全に理解出来ていない初見のわたしでさえよく笑ったものです。

しかし、「世界観的原語主義とはなにか」でもお話した通り、理解できなきゃしょうがない!

sylphes.hatenablog.com

 途中からはサスペンス的な展開になってくるのに、何が起きたのか分からないのではモヤモヤしてしまいます。

というわけで、日本語ローカライズは絶対的に必要だと思います。

日本語パッチ開発急がれます。

誰もやらないなら私がやる!ってレベルですが英語力ないから余計混乱させるだけになりそうです。どうしたものか。

時間があればこのブログに自作の訳とか載っけるのもいいかもしれません。パッチを作る技術力は当方にはありません。

英語が苦手だからといって手に取らないのは勿体ないゲームですが、だからといって英語ミリしらでやるには辛すぎるゲーム、『Firewatch』。難しい。

引っ繰り返せば英語のリスニングめっちゃ鍛えられるゲームであるということ!なんだ、欠点無き神ゲーじゃないか!(白目)

 

音楽

 わたしが『Firewatch』を知ったとき、PVを見て、グラフィックと音楽だけで「近いうちにこれ絶対やらねば」と思いました。それほど、音楽は素晴らしいです。

静かな森林、夕陽の色が溶けた渓谷、細く緩やかに流れる小川にぴったりな、ゆったりと落ちついたギターの曲が多いです。

メインビジュアルのような夕暮れに似合う少し哀愁漂う曲が印象的。

後盤サスペンスシーンに突入すると、それでいて不穏さも出てきます。

音楽を手掛けたのはこの『Firewatch』のシナリオやゲームデザインも行ったChris Remo氏。

氏が一人で全てを作ったということで、なるほど、ビジュアル、シナリオ、音楽、全てが違和感なく完璧にマッチしています。

サウンドトラック、$6とお求めやすくなってます。私も買わねば。

 

 ちなみにこの記事のタイトルはトロフィーにもなっている、カセットに入っている曲から。

カントリー調の歌で、あまりにも「それっぽい」!ww

当時のラジオでめっちゃ流れてそう!って感じの曲です。

つい口ずさんでしまう……。

 

最後に

 通読お疲れ様でございました。

『Firewatch』はやろうと思えば1周でトロコン出来てしまう、コンパクトなゲームです。

f:id:sylphes:20170317191334j:plain

だからこそ、初見プレイを大事に、自らの手でプレイすることが重要だなとおもいました。

散々、特に英語の面で脅してしまいましたが、英語の勉強だと思って手を取って貰えれば嬉しいです。没入感は保証します。

長くなりましたが、これにて『Firewatch』レビューを締めさせて頂きます。

それでは、あなたのレンジャー生活に幸の多からんことを。