こんにちは、茅野です。
こちらは『人喰いの大鷲トリコ』考察の3回目となります。特に記事の繋がりはありませんが、後半部は前回の記事を読んでいると理解が早まるかと思います。(該当部にリンクがあります)。
当たり前ですがネタバレ祭りなので、未プレイの方は閲覧注意です。
今回の議題は、「タルの中身と”人喰い”の真意」です。
トリコ考察においてもっともポピュラーな議題ですね。
物語終盤、タルの製造について恐るべき真実が明らかになります。しかし、タルの中身については未だ判然としません。
まず、大鷲の巣の随所に見られる青い物質を比較しながら、タルの中身に迫っていきたいと思います。
1. 青い物質
ギミックとしてたびたび出てくる青い煙は、トリコの大好物です。色から見ても、好む点から見ても、タルの中身と同じである、或いはそれを気化したものであることは想像に難くないと思います。
青い煙といえば、ヨロイを倒した時にも同じものが出てきます。中盤からは「少年を守るため」、「自身が攻撃されるため」という理由が主でしょうが、「ヨロイの中身が好物のため」という理由も考えられます。
つまり、ヨロイを動かしている原動力は青い煙なのではないか、ということです。
青い蝶はタルの周りを飛んでいます。このことから、タルの中身が大鷲だけでなく、蝶の餌でもあることが窺えます。
また、その美しい翅の色は青い煙の色に酷似しており、それらを(タルから?)摂取し、体色変化したと考えることが出来ます。
現実の動物でも、ザリガニなんかは餌によって体色変化しますよね。
はじめてトリコに飲み込まれ、吐き出された時(回想)、少年は青い粘液のようなものに包まれています。
この粘液の成分は餌となるタルの中身だと見て良いでしょう。つまり、タルの中身はトリコの体内の青い粘液と同じもの(それが気体なのか液体なのか固体なのかはわかりませんが)である可能性が高いということです。
また、「大鷲のひみつ」を見るに、少なくとも肉食ではなさそうなので、大鷲が人喰いだということはなさそうです。
透明なので、やはりこの謎の物質が怪しいかと思います。
このことから、青い煙、ヨロイの中身、青い蝶、タルの中身、トリコの体内の粘液は同じ成分で出来ているのではないか、と推察します。
また、少年が長い間中にいても生きていたことから、羊水的な役割を果たすのではないか、と考えることができます。(厳密には羊水の中で呼吸は出来ませんが。)
2. 連れ去られた子供たちのゆくえ
羊水という言葉を出しましたが、生まれ出た=吐き出された子供たちはどうなるのでしょうか。ここからは、白い塔最上部のタルを生みだす機械について掘り下げたいと思います。
上記の通り、私はタルの中身はトリコの体内の粘液と同種のものだと考えています。
では、中に入っていた子供たちはどうなるのか、というのがポイントになってきます。
考えられる説を列挙してみましょう。
・そのままタルの中に入っている説
なるほど、「人喰いの大鷲」ですね。しかし、この説は大変脆いです。
反駁として、白い塔が壊れ(=洗脳が溶け)た後、大鷲たちが子供を拉致したとは思えないことが挙げられます。
白い塔が壊れたということは、タルを生産できないからです。
しかし、大鷲たちは何十年も生き続けています。(エピローグ)
これはタルの中身が大鷲の巣に沢山あるものであることの根拠にもなりますね。
・ヨロイになった説
人型であることの繋がりですね。『ICO』での敵がイケニエとなった少年少女たちであるという説との関連も見えてきます。
しかし、前述の通り、ヨロイの中には青い煙が入っています。子供たちではありません。
他にも、ヨロイと少年にはかなりの体格差があります。ですから、他の子供たちも恐らく少年と同じくらいの背格好でしょうから、ヨロイの中に入って動くことは不可能です。
よって、この説は簡単に否定されてしまいます。
では、他に何がある?ということで、全く新しい説を提唱してみたいと思います。
・巣の主を守る影になった説
色々考えた末、これが一番有力なのではないかと思いました。
まず、『ICO』にて、イケニエの子供たちが影になったとする説。断定こそされていませんが、描写を見るに、かなり有力な説です。こちらをベースに使います。
しかし、影になったのは角の生えた子供でしたね。少年は「選ばれし者」でこそあれ、角は生えていません。
その代わり、少年には入墨のような紋様が全身に入っていますね。色は黒です。
初めてトリコに飲み込まれ、そして吐き出された時、(ここで紋様が入ったと考えられます)、紋様は青白い色をしていました。
これは前述の青い粘液が作用していることの現れかと思います。白い塔のタル製造器に吐き出された子供達は全身に青白い紋様が入っていますから、彼らは主人公たる少年よりも長い時間トリコの体内にいたのでしょう。
また、ヨロイに沢山捕えられることで紋様は広がっていきます。それはつまり、肌が黒くなっていくということです。
これが意味することといえば、少年は影になりかけているのではないか、という推論を立てることができます。
ということは、大鷲に連れ去られた子供たちは、巣の主を守る影になっているのではないか、と繋げられるわけです。
3. 巣の主の正体
巣の影が連れ去られた子供たちだとすると、その中心たる巣の主は別の存在だと考えられます。
前回の記事にて、上田文人氏の三作品は皆ラスボスが「影」である、と論じましたが、巣の主を守る影は子供たちであるという説を採択した場合、それに準じた巣の主に関する説を立てる必要があります。
勿論、『ICO』でのモブ敵である影と、女王(影)の関係と同等だとして、矛盾なく両説を採択することも可能です。それは前回の記事で論じた内容ですね。
↑前回の記事
可能ではあるのですが、今回はそれとは別に考えられないか試してみたいと思います。完全な別説です。
・巣の主は「光」説
光の概念については、前回の記事を参照してください。
簡単に復習しますと、影を打ち倒す魔術的な力が「光」でしたね。
巣の主自体は「光」の象徴である青白い光を放っています。
前述の少年は影になりかけている説を採択すると、巣の主が少年に攻撃することはとてもしっくりきます。
また、『ICO』において、女王(影)の娘であるヨルダには光を操ることができました。
このことから、巣の主が光を操ることが出来ても(トリコの場合はヨロイと同じ攻撃ですね)、不思議はないのです。
また、前作『ワンダと巨像』では、いにしえの剣も、巨像たちの弱点も、同じ「光」のシンボルが用いられました。
つまり、光に光は効くのですね。
故に、鏡及びトリコの尻尾から放たれる「光」ーいかずちが、今「光」だと仮定した巣の主を攻撃することは可能だということです。
以上の根拠及び推論から、「巣の主は光を具現化した存在である」という説を提唱致します。
なんとなくポジティブなイメージのある「光」が敵として描かれることに違和感は否めませんので、「これはちょっと違うな」と思われた方は巣の主もまた「影」である、という説を採択するとよいかと思います。歴作のラスボスは毎度影ですし、ツノのあるトリコを操っていることなど、「影」説の根拠を沢山挙げることも可能です。
どんな説を推すかはプレイヤー一人一人に委ねられていますからね。
仮にこの説が正しいとすると、上田文人氏のゲームで初めて明確に「光」たる存在が出てきたことになります。そう考えると、感慨深いものがありますね。
4. 最後に
如何でしたでしょうか。今回漸くストーリーの核となる問題に触れることが出来ました。(今まで生態や歴史についてでしたからね。)
まだまだこの人喰いの大鷲トリコに秘められた謎は多いので、これからも根拠を見つけ出し、関連を考え、考察を続けていこうと思っています。
この度はお目通しありがとうございました。
それでは、あなたとトリコの旅に幸の多からんことを。