世界観警察

架空の世界を護るために

パリ・オペラ座バレエ『オネーギン』2020/3/7 Matinée

 こんにちは、茅野です!
今日も元気にパリ・オペラ座オネーギン! 行っております! マチソワ2回! 頭がおかしくなりそうだ!既におかしいは禁句
 
 今回は感想執筆リアルタイムアタックということで、比較的コンパクトに書くことを目指しております。目指しているだけできっと達成はできません。
 
一昨日(同じキャスト)の感想はこちらから↓
 
昨日(セカンドキャスト)の感想はこちらから↓
 

開演前に

 本日はU25引き換えで4階R席。きょうは土曜で人が入るだろうとおもっていたので、そんなことだろうとはおもっておりましたが……。4階でオネーギン観るのはじめてなので新鮮でした!(ポジティブ) 1列目だったので割と観易かったです!
 
昨日(というか全然今日)、朝の4時まで記事を書いていてまさかの2時間半睡眠。休憩込みのバレエ版オネーギン上演時間、或いは休憩無しのオペラ版オネーギンの上演時間と同等です(こじつけ)。
そんなわけで、頭回るかな……と不安におもっておりましたが、アドレナリンは偉大なのである。脳味噌しゃっきり覚醒しておりますのでご安心ください。それでは書いていきます!
 

キャスト

エヴゲーニー・オネーギン:マチュー・ガニオ
タチヤーナ・ラーリナ:アマンディーヌ・アルビッソン
ヴラジーミル・レンスキー:ジェルマン・ルーヴェ
オリガ・ラーリナ:レオノール・ボラック
グレーミン公爵:オドリック・ベザール
ラーリナ夫人:ベアトリス・マルテル
フィリピエヴナ︰ニノン・ロー
指揮:ジェームズ・タグル
 
 73回目の上演!
 

第1幕

第1場

 いや、初日からおもっていましたが、ラーリナ姉妹、ビジュアルが理想形では……??
栗色の髪に青白い頬、面長で長身なターニャ、金髪で小柄、妖精のようなオリガ……。
最後に見たのが新国オネーギン(ベルトマン演出)だったこともあり、オリガがターニャに頬を寄せていると余りにも微笑ましく、安心感が……(※ベルトマン演出では、ターニャとオリガ、ラーリナ夫人が不仲という設定でした)。
 
 ポルカはきょうも最高です、もう毎日言っているので書かなくていいですね。そういうことにしましょう。
 
 レンスキーの登場。
きょうはレンスキー後ろ手組まなかった! 日替わりだったのか!(?) なんと!
幕間の演技パートではやってましたけどね。まあそれがなくても全然ノーブルなレンスキー様で御座いました。
 
 オネーギンの登場。
四階席なこともあり、見間違いだったら申し訳ありませんが、オネーギンさん、挨拶する時、オリガの頬を触りませんでしたか?? 流石の伊達男! やる気満々じゃないですか!
 ……しかし、これだと、第二幕のストーリーも相俟って、初見の方なんかにはオネーギンはオリガに気があるように見えてしまうのでは? という危惧も……。いや、オネーギンのストーリーがばっちり頭に入っている我々にとっては、伊達男解釈ありがとうございますという感じなのですが……。それにしても第一幕からレンスキーの目の前でオリガにちょっかいを掛けるオネーギンさん、好戦的ですね。
 
 相変わらずアルビッソン氏は鏡に映るオネーギンを見ませんし、オネーギンさんは「どうした?」とばかりに腕を拡げます。確認しましたが、ガニオ氏のオネーギンはほんとうにこのマイムが好きらしい。隙あらばやります。一場に一回はあると言っても過言ではない。もうちょっと演技にヴァリエーションがあるとよいかな……とおもいますね。
 
 レンスキーのVa。
はいノーブルで美しい解散。これが見たかった(一日空け並感)。
このVa、めちゃくちゃ回転技が多いんですが、更に一回ストゥニュがおまけで付いていたように見えました。回りすぎ。
 ルーヴェ氏、ずば抜けて天才的な技量があるという輝き方ではないし、周りもがっちりエトワールに囲まれているのにどうしてこんなに際立って美しく見えるのか、ということを考えていたのですが、わたしの意見では、腕の使い方に秘密があるとみました。背中から腕を使っているし、音楽にぴったり合わせて指先を丁寧に開くのです。めっちゃ美しい~! なるほど、これだけで大分魅せ方が変わりますね! 上手い。千秋楽をご覧になる方は、彼の指先までオペラグラスで追いかけて下さい。
 ……しかし、この指先とあっては、それこそオネーギンのVa. が観たくなりませんか? わたしは大いになったんですが……。あの右手が額になったらどうなるか? 革命ですよ。これはデカブリストの乱も成功するに違いあるまい(???) クランコ財団に推薦状を出したい(残念ながら当方にそんな力は無い)。
 
 レンスキーとオリガのPDD。
相変わらずびたっっと魅せ場で止まるのがつよすぎますね! これぞバレエ! これぞオペラ座! という感じです。
只、オリガの後ろ→前アティテュード→ピルエットの際、何故か二回ともモタついていました。どうした。
 
 オネーギンのVa。
相変わらずちょっと力む印象。個人的お勧めですが、トゥールアンレールの前のストゥニュをもうちょっとゆっくりやってあげると音の間隔と合って力んでるように見えづらくなります。
 
 次いでターニャを交えてアダージオ。
オネーギンが離れるとターニャが一歩引くのが大変可愛いです。これ、恐らく振りの中に入っているはずなのですが、何故か省略するダンサーさんが多くてわたしは悲しいです。ここで一歩引くと内気で恥ずかしがっている印象が出るのでとてもターニャらしくなります。
 一昨年から思っていたのですが、ガニオ氏のオネーギン派下手奥から上手前へゆっくり移動する時、重心の掛け方がかなり独特ですね。後ろから急に前に来ます。
 
 群舞。
昨日よりかは農奴み(?) が出ていたきがします! 昨日は完全に王子様お姫様軍団だった……。
 
 幕間演技パート。
ラーリナ夫人に次いでレンスキーとオリガが出て来るのですが、二人がちょっとスキップしてて無限に可愛かったです。可愛い。
そしてレンスキーは去る際、陶酔するように反って去って行くマルク氏とは違い、オネーギンのように後ろで手を組んで尊大に去って行きます。もうあなたはオネーギンをやりなさい。レンスキーに見えなくなってきた。
 

第2場

 物申させてください。
今回はオペラグラスをちゃんと忘れずに持ってきたので「手紙の場」がよく見えたのですが、タチヤーナの手紙というのは、肘を付いて書けるような代物では無いのです!! 宜しくお願いします!!!!! 詳しくはオペラを視聴の上、齋藤友佳理先生のお話を聞いて下さい!! 宜しくお願いします!!
 可愛いけれど、半分寝転んであまりやる気もなさげに「あなたは私の守護天使ですか?」とか書かれても困るんですよ。もっとガッツリ力むくらいの気合いで認めて下さい。当時ロシア貴族社会で若い娘が恋文を認めるというのがどういう行為なのか、よく考えて欲しいです。
 
 鏡のPDD。
やはりアルビッソン氏のターニャはダイナミックでよいですね! 舞台に咲く大輪は大いに映えます! ガニオ氏はやっぱりちょっと大変そうですが!
 一昨日指摘した2回目の大リフトですが、最早2回転は諦め、上げたらそのまま一回転して開脚へ移りました。やっぱり苦手だったのでしょうか。まだ千秋楽もありますし、無理は禁物。
 

第2幕

第1場

 まあまず安定の「_(┐「ε:)_ズコー」です。どう足掻いても第二幕の最初の音はどうにもならないらしい。
オケの演奏ですが、寧ろ昨日の方が良かったんでは、という気さえします。音量はどんどん大きくなってきているとはおもうんですがね……。
 
 そして、やはりレンスキーは真摯である。
昨日二人のレンスキーの演技の違いについて触れましたが(詳しくは昨日の記事参照)、やはりオリガを庇うような動きをしますね。オリガのことが心底大切なんだろう。ちなみに初日よりもぶつかる感じは控えめ。初日は盛大にぶつかりすぎてこちらが心配になるレベルであった。これくらいでいいです。
 
 キャラクター・ダンスは昨日の方がよかった気がします。特に、若者たち。最初のリフトで抱え上げられる女性の足先や、ふたりの女性に言い寄られる男性の演技など、今日は及第点出しがたい。
 
 恋文破り。
一昨年から思っていましたが、ガニオ氏のオネーギンは体面を気にしている感がつよく、破る前にかなり徹底して周囲を見るのが特徴的です。いや、そういう振付なのですが、ガニオ氏の周囲確認はダントツで徹底しています。貴族は名誉が命ですからね!
 破った後、オペラグラスで覗いたところ、「何してんだはやくママのところに戻りな」とでも言いたげな煽り顔ではなく、「ほんとうにウンザリ」というような演技になっていました。ガニオ王子、そういうお顔も出来るようになったんですね……! 素晴らしい。何だか目に見えてオネーギン役の上達を感じます。喜ばしい。千秋楽も立ち会いたかった。
 
 ターニャのVa。
昨日指摘した地団駄がほんとうに可愛い〜! アルビッソン氏も盛大に地団駄するタイプ。ありがとうございます。
 何度かあるポージングの時の背中の使い方の美しさは絶品です。
 又、オネーギンを気にして覗き見る振りが三度あるのですが、最初の一回でバッチリ目が合ってしまっていて、寧ろこちらがドキドキしました。あの状況下であんなに見つめられたら、ターニャでなくとも動転します。
 
 一昨日も指摘しましたが、5拍子のワルツの前のレンスキーとオリガのステップが可愛いです。なんでそんなにせまこましているんだ。ほんとうに仲良くじゃれあっているという感じ。
 
 パ・ド・トロワの振りが最後ありますが、オネーギンは3人をちゃんと見ていて欲しいなと思いました。思いっきり正面客席カメラ目線でした。ちょっと気になりました。
 相変わらず頷きます。
 
 幕間の演技パートですが、四階R席からだと後ろを歩いて行くレンスキーがとても見辛いです。紗幕の光の当たり方の関係だとおもいますが……。色々な角度から眺め回すと、こういう楽しみがありますね。
 

第2場

 レンスキーのVa。
相変わらず綺麗です。ただ、綺麗なだけでやはりマルク氏の方が感情表現は秀逸。いや、一昨日の方がよかったというのもあるかもしれません。
 膝を突いて、2回背中を反らして倒れ込む動きの間に挟まれる脚を伸ばしたポーズ(伝われ)の際も倒れ込んでいました(通常だとここでは倒れ込まない)。苦悩が見えました。
 
 パ・ド・トロワ。
すっかり書くことを忘れていましたが、レンスキーが二連続で天に向かって両手を差し出す振りではプリエを入れない派です。ルーヴェ氏、マルク氏、二人ともそうです。個人的にはここでプリエ入れる解釈があまり好きではないので嬉しい。レンスキーの衣装の色も相俟って、オネーギン界隈(そんなもの存在するのか?)ではここでプリエを入れるレンスキーを「蛙」と呼ぶ倣わしがあります。失礼な話ですが、まあ正直言いたいことはわかる。
 
 そしてやはり銃を取り落とすレンスキー! わたしはこれが好きなのかもしれない! 今更になって決闘に関する己の好みを把握しました。オネーギン歴(?) 6年目のことです。正直言うと、バレエ版、映像をカウントしてよければほんとうに300回は軽く見ているはずなので(※一時期一日3回観ている廃人みたいな時期があった)、今になってこんな気付きがあるとは嬉しいです。あ、今コイツほんとうにオタクで気持ち悪いな……とおもった貴方。そういうのを、「今更」といいます。というか、ここまで拗らせていないと1公演1万字は書けないのです。
 
 ……それはさておき。
最後、オネーギンとターニャが目を合わせている時間がとても長かったのが印象的でした。やはり、ターニャの目線があってのオネーギンの後悔、なのですね。バレエ版では。
 

第3幕

第1場

 ポロネーズ、美しいです!
昨日指摘したリフトのタイミングですが、今日は揃っていました。最高。
 これは舞踏譜的にどちらが正しいのかわたしもよくわかりませんが、フォーメーションで円を描くところ、オペラ座だと三角形のように見えます。しかし前後のフォーメーションは三列になるので、寧ろこちらが正しいのかもしれません。わかりません。
 
 グレーミンとタチヤーナのPDD。
アルビッソン氏、ターニャの赤いドレスが大変お似合いになる。美しいです。グレーミン公爵は相変わらず士官学校出たて感がありますが、どんどんサポートが上手くなっていっている気がします。
 オネーギン、腰掛けるのがちょっとだけ浅くなりました。ガニオ氏はこのときも脚の指先まで気を配っていてよいですね。きのうのマルシャン氏がここでかなり雑な足先だっただけに、より良く見えます。
 それにしても、オネーギン、立ち上がるの早すぎでは? 音楽的に考えても、リフトに合わせると丁度いいくらいかとおもいます。それに、立ち上がる前に一度もターニャを見なかったのが懸念。ターニャに気付いて、ハッとして立ち上がって頂きたい。
 それに付随して、一昨日ここでのオネーギンはもっとターニャを凝視するべき、と書いたのですが、後になって考えてみるとこの解釈もなかなかよいのではないか、とおもうようになってきました。……と、言いますのも、彼はターニャを見ないで何をしているのかというと、ただ呆然とうろうろしているのではなく、有り得ないくらい頻繁に頭を抱えるのです。わたしは、それを見て現在のターニャではなく、過去の妄執や自分の世界に酔っているという解釈なのかな、と判断しました。本人の口から聞いたわけではありませんが、わたしが受け取った限りでは。ガニオ氏の解釈では、オネーギンはずっと、永遠に救われなそうな気がします。ガニオ氏は、オネーギンがタチヤーナへの愛によって遅まきに生まれ変わる可能性を、ここで否定したのかもしれません。
 

第2場

 あんまり関係ありませんが、ここでのグレーミンは二角帽を手に正装(?) をしている関係から、何か闘いに行くのではないか、という解釈が結構あるのですが、では闘いだとして、何の闘いで何をするのでしょうね。……つまり、グレーミンは軍人で、体制側のはずなんですよ。そしてオネーギンは言わずもがな反体制派。それってつまり何かの暗示だったりするのでは……とか、原作のグレーミンはオネーギンと気が合う関係から、もしかしたら反体制派に与しているとか……とか、何だかそんなことを考えながら観ていました。
 ここでのターニャなのですが、グレーミンの後頭部をさも大事そうに抱え込み、優しくキスをする様は美しい恋人同士のそれ。次が「手紙」のPDDってこと、忘れていませんか? というレベル。この二人の間には、もう少し距離感があったほうがよいのではないか、と感じました。美しい二人で画になりましたけどね……。
 
 手紙のPDD。
今日、ガニオ氏のオネーギンがよかったんですよ。「手紙」に関しては、わたしはマルシャン氏よりも断然ガニオ氏の演技の方が好みだな、と見比べて感じました。うん、凄くよかったです。今日はここに多く配点を割きたい。
 ガニオ氏のオネーギンは、前述のように、きっとガニオ氏の中では永遠に報われない男です。しかし、ここでのオネーギンはそれに”気が付いていない”。だから、必死なのです。諦める素振りがありません。そして、どこまでもターニャに対して柔らかく手を差し伸べます。それが非常によかったな、と感じました。一昨年よりも、一昨日よりも絶対によくなっています。これは千秋楽に期待……なのですが、わたしは今日で撤退する予定なので……どなたかわたしに代わって1万字レビューを書いて下さい。お願いします。
 
 一方で、ターニャの演技が全然足りていないのが勿体ない!
アルビッソン氏のターニャは、控えめで、感情表現に乏しく、きょうの折角のガニオ氏の好演には少し演技面で不釣り合いだと感じました。美しいんですけどね……。物語バレエなのだし、もっとダイレクトに感情表現してもいいのでは、とわたしは個人的におもっています。
 
 手紙を破くのが上手い(?)。そして今回は盛大にそれを撒き散らしましたね。そこでの表情もオペラグラスで追いかけていましたが、いやはや、ガニオ王子も成長しましたなぁ。そこでの驚愕と哀願の表情は、完全に絵本の中の王子を脱していたと思います。よいです。
 最後のターニャの表情ですが、ここでももっと感情表現が欲しかったです。昨日のジルベール氏がかなりよかったので、見比べてしまうと更に薄味に感じてしまうのが勿体ない。
 
 あ、後はこれだけは申し上げておかなくてはならないのですが、あの盛り上がる地からの大ジャンプの直前で金管がコケるのだけは、ほんとうに勘弁して下さい。そこだけでいいので、もう。ほんとに。
 

最後に

 は~~~!!!!!!! なんとかソワレ前に脱稿出来ました!!!! 褒めて下さい!!! 流石に今回は褒めて下さい!!!!! 1時間20分で7000字書いたんですよわたし!! これが愛の成せる技!! やった!!!!!!
 ……お付き合いありがとうございました。案の定のボリュームでした。わたしがオネーギンについてコンパクトに纏められるなんて思わないで下さい(ガンギマリ)。
 それではソワレ行ってきます! 無事終演出来ることを願って!!