世界観警察

架空の世界を護るために

Axël 翻訳中記 - 雑記

 こんばんは、茅野です。

先日、ヴィリエ・ド・リラダンの「Axël(アクセル)」第四幕 五場の拙訳を上げました。ど初っぱなから最終場っていう。すいません。ネタバレ気にならなければ読んでやってください。

sylphes.hatenablog.com

↑こちらです。

 

 Axëlの翻訳は全篇やりたいとおもっているので、今回は翻訳"後"記ではなく、翻訳"中"記です。Axëlは戯曲としては長めなので(200ページ越え)、最後まで出来るんかな、と今から震えています。生暖かい目で見守ってください宜しく御願いします。
 今回は、第四幕 五場を訳した際のこだわりポイントとか、ぼやきとか、翻訳しながら考えたことを書いてゆきます。勿論全面的にネタバレですので、ご注意くださいませ。又、先に訳出した本編を見て頂いた方が宜しいかと思います。それでは宜しく御願い致します。

 

全体的な感想

 フランス語としてはそんなに難しくないとおもいます。簡単なところ〜難しいところの差が激しいので、ちょっとチャレンジしたい中級者にお勧め。戯曲(会話が9割)なので、皆さんの嫌いな単純過去も出てきません! やったね!

 会話パートは辞書を引かずとも訳せるところも多いですが、長台詞・演説パートはかなりキッツいです。一文6行くらいあります。プルーストかよ……。場合によっては、三文くらいに分割して訳出したところもあります。長い。

 更に、長台詞では言葉が非常に修辞的で、暗喩のみの反語とか、意味はわかっても理解しづらいようなところも……。各箇所、色々考えて自分なりの答えを日本語に落とし込んだつもりですが、解釈違いだったらすみません。

 

翻訳の方向性

 基本は現代語訳を志していますが、折角の近代戯曲なので、長台詞パートは少し硬めに、文語体チックに訳出しています。その方が映えますからね。ただ、そのせいで会話パートとの口調の違いが少し違和感を生じさせているかもしれません。どうでしょうか? 翻訳難しい……。

 口調に関してですが、アクセルとサラは伯爵と公爵令嬢なので、お上品な感じに纏めました。アクセル伯の一人称については最後まで迷いましたが、長台詞との親和性を考慮して「わたし」で統一しました。

サラは、所謂古典悲劇の女性口調って感じになりましたが、これはもうどうにもならないですね。さすがに「おお、我が愛しき戀びと!」とかにはできないので()、これでも配慮したつもりなんですが、まあそれでも違和感ない口語体にはならんわな。こういうのを綺麗に訳せる方ほんとうに尊敬します。やり方教えて欲しい……。

 

参考にしたもの

 唯一の邦訳である齋藤磯雄先生訳は適宜確認しています。よって、明らかな誤訳は防げているかなあとおもっています。 先生の訳は美しいのですが、かなり古いので、寧ろ現文の方が意味が取りやすいところもあるレベルで……。更に入手困難なことも相俟って、現代語訳が欲しいとおもったものの、誰もやってくれないので自分でやりました(自給自足型オタク)。アクティブなオタクでよかった〜。

 ちなみに、恐れ多い&恥ずかしながら、訳を比べてみるとこんな感じです。この引用部しか訳されていないのですが、土田恒二先生の簡潔で美しい訳も並べておきます。

f:id:sylphes:20191120003040p:plain

↑唯一の全編邦訳、齋藤磯雄先生訳。格調高い。

f:id:sylphes:20191120003204p:plain

↑土田恒二先生訳。簡潔でわかりやすいです。

f:id:sylphes:20191120003309p:plain

↑自分で書いたもの。硬さで言うと、おふたりの中間くらいでしょうか? 訳語の選び方などは後述します。

 

作中歌の訳のこだわり

 ちょっとこだわった点について。作中、何度も合唱が出てくるのですが(オペラじゃん……)、七五調で整えてみました。意外となんとかなるもんですね!()

どうしても難しいところも、4・4・5で韻を踏めるようにしたり、工夫しました。言い回しを考えるの楽しかったです。

 又、ちょっと古めかしい言い回しを故意に多用しています。文脈から見ても、きっと民謡風なんだろうな、とおもったので、それっぽくしたつもりです。

 

宗教的・哲学的含意のこだわり

 こだわりポイントその2。読んでいて、単語が難しいと感じた方もおられるとおもうのですが、大方故意です。というのも、もっと易しくすることも出来たのですが、そうすると失われるニュアンスや含意があったので、難しい単語を使っています。

 Axëlは、そのドラマティックなストーリーラインも勿論魅力的なのですが、やはり主眼は哲学的な示唆にあります。ですので、特に哲学用語はそのまま訳出するようにしています。例えば、「実在」「外界」「仮象」などです。

他にも、宗教も重要なアクターなので、「涜聖」や「正義」なども使っています。又、出来るだけ一度対応させたことばは以後出てきた際も同じ語を使うようにし、逆に、"exister"と"réaliser"と"vivre"など、意味は近いけれども重要な意味を持つ語は訳し分けるように心掛けました。

 

今後の方針

 第四幕 五場から訳し始めてしまったので、後ろから訳していきます。よって次は第四幕 四場ですね。分量が五場の倍近くあるので震えています。気長にお待ちください……。

 ちなみに、何故第四幕五場から訳し始めたのかというと、3つ理由があります。

その1: 第一幕が難しすぎる。

 第一幕は修道院を舞台に展開され、キリスト教の深い知識が求められます。ちょっと最初からやるにはハードルが高かった……。

その2: 短い。

 第四幕 五場、短いんですよね。全10ページほどで、日本語にした際に7000字超程度です。空いた時間に訳出して、大体4日くらいで書けましたかね。

その3: 面白い。

 戯曲の最終場が盛り上がらないわけがあるかと。Axëlはもうほんとうにコンテンツてんこ盛りの濃い作品なので、どこをとっても面白いのですが、特に最終場は至高ですよね。アクセル伯の自殺狂大演説はペシミズム文学ファンでなくとも思うところがあるはずです。書いててゾクゾクしました、楽しかった〜。

 

拙訳の使用について

 布教目的もあるので()、こんなんでよければ基本的には自由に使っていただいて構いませんが、コメントやメールでお知らせ頂けると助かります。Axëlの話するなら単純に聴きたいので取り敢えず呼んで下さい。

ほんとどこかの劇団上演してくれんかな、いくらでも協力するんだけどな……。

 

最後に

 お付き合いありがとうございました。駄文でした。わたしは仏語専攻の学部生ですが、今までで一番真面目にフランス語やった気がします(※不真面目な学生)。普段から勉強しろという話ですね、仰る通りです。

 Axël翻訳は、わたしのフランス語学習という側面も強いため、マイペースにやらせて頂きます。勉強にもなるし、セルフ供給も生み出せるし、理解も深まるし、一石三鳥だなあ。堪らん。そんな訳で、もし良ければ一緒に楽しんで貰えれば幸いです。それでは!