世界観警察

架空の世界を護るために

Axël 第四幕 五場 - 戯曲翻訳

 こんばんは、茅野です。

布教とフランス語の勉強を兼ねてAxëlの現代語訳を書いたので載っけておきます。只でさえ長いので、細かいことは別記事で。

sylphes.hatenablog.com

↑翻訳の方向性やこだわりについてはこちらに書いています。

 それでは、早速ですが、楽しんで貰えれば幸いです~。

 

Axël

Auteur: Auguste de Villiers de L’Isle-Adam

Maison d’édition: Maison Quantin

Traducteur: Kayano

 

第四幕 第五場

アクセル、サラ、次いで老兵たちの合唱、更に遠くの方で樵たちの合唱、そしてウッコの声


サラ:

 ……海を、ああアクセル、わたしは雄大な海が見たいの! まずイタリアに行きましょう! 大理石と炎の遺跡へ、輝ける入江へ向かうの!忽ちあの幸福な土地を味わい尽くすでしょうね!―――ああ、宮殿での愛の夜! フィレンツェの中でも最も夜に近い色を湛えた館を買いましょう! ……どう?フィレンツェは在りし日のパルミラのように美しいはずよ!


 その時、遠くから合唱。粗野な歌声は地下の厚い壁に遮られ抑えられているが、墓地の静けさによって二人の耳に届く。


老兵たちの合唱: 

崩れた城へ 我が主

さらばだ愛よ、財宝よ、兵馬共への 渇望よ!

我ら老い耄れ そこへ征く

やがて我らも 幽鬼となるらむ


アクセル:

使用人たちは夜業をしている。―――わたしの頼みで飲み歌っているのだ。彼の……あの異邦人の門出を祝してね。


サラ: 

 このステンドグラスに陽の光が差し込んだら、直ぐに「希望」の国へ旅立ちましょう! 

(将来の楽しみを想像して胸を詰まらせたように、目を閉じて、大理石の墓石に片手を置いて、) 

―――ああ、生の逸楽よ!

 

合唱: (遠くから微かに)

決別だ 剣の「過去」の 負の誇り

我ら放つ 目映い光 共に消えゆ

今日とて 冬の陽 眠りゆき

古き世界は 死に絶える

 

 突然、外からの青い夜明けの光が天窓を貫く。―――サラは瞬きしてその光を見つけ、身震いする。  

 

サラ: (叫ぶように)

 ―――太陽が! 夜明けよ、アクセル! ……見て! どんな未来が待っているのでしょう!

 

 サラは天窓に向かい、帳を開け放つ。青みがかった朝の光が地下霊廟へと入ってくる。

 

合唱: (城塞の奥で)

征け! 「未来」よ、眠気に着いて

―――飲もう、全てが  変わりゆく!

そして鳴るらむ 最後の時に 天使の喇叭

眠りを覚ます

 

サラ: (嬉しそうに、得意げな笑みを浮かべて、大袈裟な身振りで財貨を指し示し)

 ―――行きましょう! 時間よ。外套に身を包んで。―――向こうへ行けば、菫色の木々の下に輝かしい光を受けて、わたしたちの外套や武器が煌めき、馬車馬が露を蹴り上げるわ。ああ、わたしのアクセル! オレンジの薫り高い枝の下を行きましょう! わたしたちは輝く霧の中を通っていくの! ―――やがて小鳥たちが歌い、輝く千の真珠に彩られた藁葺きの小屋が現れるでしょう。―――葉が垂れ下がる草原で、朝に二人で笑い合いながら、ミルクを飲む幸せといったら! ―――さあ行きましょう! やがて街道には人の姿が見えて……それから村にも……街にも! 街を太陽が照らすわ! そして、いずれ世界も!

 

 長い沈黙。

 

アクセル: (場にそぐわぬ非常に冷静な声で、サラを見つめながら)

 サラ! きみに感謝しなくてはね―――きみに逢えたこと。

(サラを腕の中に引き寄せて、)

 ―――わたしは幸せだ、ああ、百合のようなわたしの花嫁、愛するサラ、わたしの乙女、わたしの命よ! 若さと希望に満ち、唯一不滅の感情に支配され、そしてこの神秘的な金の光に輝き、―――この恐ろしい夜の中、ここに二人で在れること、城の底に消えゆくことが、わたしはとても幸せなんだ。

 

サラ:

 そこでは、あらゆるものがわたしたちを呼んでいるの。アクセル、わたしの唯一の主、わたしの愛! 若さ、自由、 目眩がするようなわたしたちの力! そして―――為すべき大義が……全ての夢が現実になるの!


 サラは夜明けの光に吸い寄せられ、天窓を開けようとする。

 

2. 究極の選択

 

アクセル: (重々しく、冷ややかに)

 実現することが、―――その夢を実現することが、なんだって言うんだ?

 

サラ: (少し驚いて、アクセルを振り返り)

 アクセル、……何が言いたいの?

 

アクセル: (変わらず静かに、重々しく)

 帳を降ろしておきなさい、サラ。太陽は見飽きた。

 

沈黙。

 

サラ: (不安そうにアクセルを見つめ続けながら、独白)

 血の気がない―――地面を見詰めて……何か企んでいるのね。

 

アクセル: (やや弱く、物思いに耽った様子で、独り言のように)

 疑う余地なく、神はわたしを妬むだろう―――今この瞬間に死を選ぶことのできる、このわたしを。

 

サラ: 

 アクセル、アクセル!もうわたしを忘れたの?  神秘的な思想に捕らわれてしまったの? ……来て、地上へ出ましょう、生きなければ!

 

アクセル: (微笑を湛え、明瞭に、そして冷酷に)

 生きる? いや。―――我々の実存は充たされたのだ……杯は溢れた!如何なる時計が今宵の時を刻めるというのか!  未来? ……サラ、わたしの言葉を信じてくれ。我々は生を空にしたのだ。我々が生きた幻想と比べて、あの現実というやつが、明日、どうなるというんだ? 財貨が何になろう?

 例を出そう。あの腑抜けた我々の先祖が見た、この1ドラクマ(※1)の金の夢が、我々の輝ける勝利の手に握られたステュクス(※2)の冥銭だ!(※1 古代ギリシアの重量単位。約3.24グラム)(※2 冥界を流れる川)
我々の希望というのは、この地上に赦されるようなものではないのだ。我々の憂鬱が蔓延るこの惨めな星に、あの瞬間の精彩を欠いた反射以外に、何を求めると言うんだ?

 「地上」と言ったね? この地にあって、騙すことしか能のない「時間」という凍った汚泥の雫が、何を実現させたと言うのか?これが、地上というものだ。わからないか? 地上、それが「幻想」になったのが! 認めるべきなんだ、サラ、我々は、我々の並外れた心の中で、生への愛を破壊したのだ―――そして正に「現実」に、我々は魂に成ったのだ! 今や、生き長らえることを受け入れることは我々自身に対する涜聖に他ならない。生きる? そんなことは、召使がやってくれる。

 快楽の残り物を拾い集めることなんて、現実の価値を「感覚」によってしか計ることのできない不幸な人々に任せておけ。永遠に満ち足りた我々は、宴から立ち去ろう。生を受け入れ、行動するには、わたしは余りにも深く考えすぎたのだ!……

 

サラ: (不安そうに、動揺し)

 なんて超人的な……理解しようという方が無理だわ! ―――アクセル、あなた熱があるのよ。わたしの甘い声で癒やしてあげることができたら!

 

アクセル: (この上なく平然と)

 熱なんかないさ。無駄話をしているわけではないんだよ―――我々が治さねばならぬ唯一の熱というのが、実存することなんだよ。

 愛するサラ、よく考えてわたしの話を聞いてくれ。そして、きみ自身が選択するんだ。―――我々が味わったばかりの完成されたあの夢を、あの陶酔の一瞬一瞬を、何故蘇らせようとするんだ? 我々の崇高な願望を試す権利を、何故時間や生に求めなくてはならないんだ? 間違いなく、明日には刻一刻とその本質自体が失われゆくのに……。

 それじゃあきみは受け入れるのか。我々に定められた、病や、絶え間ない幻滅や、老衰しかない見下げ果てた「明日」を。そんな退屈しかない日々を繰り返すって? 「大海」ですら癒やすことが出来ない乾きを、どうしてたった数滴の水が満たすことが出来る? 所詮、つまらない薄笑いを浮かべた狂人共が賢明だって言うのか? 何だって奴隷共の祈祷に「アーメン(そうですね)」なんて答えてやる必要がある?

 徒労なんだよ、サラ! そして、未だ純潔の我々が、この奇跡的な婚礼の夜の後、尚もそんな徒労を続けるなんて、全く我慢ならないんだよ!


サラ: (胸を詰まらせて)

なんて神懸かった!…… あなた、死を望んでいらっしゃる。


アクセル:

 きみにだって見えているはずだ、外界が……きみの魂を通じて。それは実存という強さを伴って、酷く魅力的に見えるかもしれない。だが、外界が寄越す一時間は、我々が生きた一秒とだって比べられないような代物だ。

 真の、絶対的な、完成された実現というのは、この豪華絢爛の地下霊廟で、今し方二人で経験した瞬間に他ならない。この完成された瞬間は、きみがそれを何と呼ぼうと、もう二度と復元出来ない。あの瞬間を蘇らせようとすることは、現実に塵で仮象を創り上げることと同義だ。それはあの瞬間を変質させ、神懸かった印象を減退させ、最も純粋だった我々自身を壊滅に追い込むことなんだよ。まだ間に合う内に、死す術を知らなければ。
 ああ、外界だって! 光の中で、脚に鎖を繋がれた老奴隷に騙されるな。奴らは、楽園への鍵を約しておきながら、その閉ざされた黒い手の内には一握りの灰しか持ち合わせていないのだ!

 先程きみは、バグダッドパルミラについて話したね。エルサレムについても。きみが持つオリエントの光り輝く記憶というのは、現実では、ただの石屑の山、燃えた不毛の大地、汚れた獣の巣でしかないってこと、きみが知っていたらな! そんながらくた共の、無様な退屈と倦怠と言ったら! ……さあ、思い描いたか? なら、もう十分だ。実際に見る必要なんて無い。

 サラ、地上なんてものは、わたしに言わせれば、嘘と貧困で膨らんだ、光沢ある泡のようなもので、近づいてきた無価値な少女の一息で簡単に破れてしまうものなんだ! そんなところからは離れよう、完全に、唐突に! 神聖な激情によって! ……同意してくれるかい、これは狂気なんかじゃない。「人類」が崇拝した神々は皆、「天国」を確信して、我々よりも前にこれを完遂したんだ。……そして彼らの前例から、わかったんだ。ここでやることは最早なにもないってね。


サラ: 

いや! 不可能だわ! ……現実味がないもの! ―――それでは超人的というより、非人間的よ! 許して、アクセル! 怖いの! 目眩がする。……ああ! わたしは生を擁護するわ。考えてみて―――死ぬ? 若くて愛に満ちた、この上なく幸福なわたしたちが? 美しく、勇敢で、知や高貴さや希望に満ち溢れたわたしたちが? なんてこと! 今すぐに? もう二度と太陽を眺め、別れを告げることもなく? 考え直して、その恐ろしい考えを!

 ……明日にしない? きっと、明日になればわたしはもっと強くなれる、今までのわたしとは違う……。


アクセル: 

 ああ、愛しいサラ! 明日になれば、わたしはきみの美しい身体の虜になってしまうだろうよ! その瞬間、わたしを活気づけていた純粋な活力というのは、きみの与える歓びに取って変わられよう! しかし、やがて、万物の法に従い、我々の激情も、汚れ無き焔のような愛も消し止められてしまうのなら……。
 ああ! そんな悲愴な瞬間を待つ必要なんかないんだ! ―――精神を目覚めさせる危険を冒す必要はない。我々の決断は、それほど崇高なのだから!

 

 深い沈黙。


サラ: (物思わしげに)

 震えが止まらない……でもそれは誇りによるものでもあるの。……そうね、あなたがどうしてもと仰るなら、わたしは従いましょう。未知の夜の中を、あなたについて行きます。―――でも、想い出して……人類のことを!


アクセル: 

 わたしが人類に与える手本は、人類がわたしに与えたものに相応すると思うがね。

 

サラ:

 「正義」の為に戦う人なら、―――自殺は逃げだ、って仰るでしょうね。

 

アクセル:

 神を食い物にしている乞食共には、好きなことを言わせておけ。

 

サラ:

 もしかしたら、万人の幸福を想う方が……。

 

アクセル:

 世界は互いに苦しめ合っている。ならば、寧ろこちらの方が好ましい……万人にとってね。

 

サラ: (半ば取り乱して)

 何ですって! 断つ……これほどの歓びを? ……この財宝を暗闇に棄ててしまうの?なんて残酷な!

 

アクセル:

 人が死の先へ持って行くことが出来るのは、その生に於いて所有を絶ったものだけだ。事実、空っぽの器だけが、我々がここに残していくものだ。この財貨の価値を計るのは、我々の内部だろう。

 

サラ: (密やかに)

 わたし達が知っているのは、わたしたちが見棄てるもの。決してわたしたちが見つけようとしている「もの」ではないのよ!

 

アクセル:

 我々に、立ち向かうという目が眩むほどの英雄的行為を促す「もの」に向かって、我々は還らなければ。

 

サラ:

 わたしたちの死という、常軌を逸した、超人的な、惨憺たる歴史を知ったなら、人類は嗤うってことがあなたにもわかるでしょう?

 

アクセル:

「嗤うこと」の信者共なんか、愚鈍の内に捨て置け。生は、常に、杖刑の役割を担っている。

 

 ステンドグラスを通して、曙光が降り注ぎ始める。

 

サラ: (沈黙の後、考え込むように)

死……。


アクセル: (微笑を湛えて)

 愛しいサラ! わたしはきみに生き延びてくれ、なんて言わないよ。わたしは、きみが「生」なんてものは悲惨な幻想だと知っていることを、つよく確信したのだ。

 

 アクセルは短刀を探すように周囲を見渡す。

 

サラ: (今や蝋のように蒼白となった顔を上げて)

 その必要は無いわ。この指輪のエメラルドの中に、猛毒が入っているの。この財宝の中から、最も美しい杯を探しましょう。……そして、あなたの意志のままに。

 

アクセル: (サラを抱き締めて、暗い陶酔に浸りながら)

 ああ、世界の花よ!

 

 暫くして、アクセルはサラから離れ、地下の輝く財貨の山に向かう。サラはアクセルが宝石や金細工を動かしている間、静かに再び墓石の上のダイヤモンドの首飾りで自身の胸元を飾る。


サラ: (天窓の方で、優しく)

 なんて美しい陽でしょう!

 

アクセル:(宝石の埋め込まれた壮麗な杯を携えて戻ってくる。サラを一瞥し、それから暫く見守りながら、甘い声で)

 春の花を摘みながら、平原を歩きたくはない? 髪に朝の風を感じるのはなんという歓びだろうね! おいでよ、同じ桜草の上で唇を重ねよう!……


サラ: (アクセルの憂鬱な考えを見抜いて)

 いいえ。わたしは太陽の眺めよりもあなたを愛しているもの。この煌びやかな杯の縁に、二人の唇の跡を重ねましょう。―――ここに、わたしの伝来の指輪が……同時に婚約の指輪でもあるのね!


 サラは伝来の指輪を抜いて、エメラルドのバネを押し、アクセルの杯の底に金の金具に入った褐色の粉を落とす。

 

アクセル:

朝露がまた落ちた……この聖なる杯の毒を溶かすのには、透明なこの涙が数滴があれば充分だろう。


 アクセルは天窓の近くの墓石に登り、右手に悲劇的な杯を高く掲げ、それを天窓の格子の外に突き出す。その間、サラはうわの空で大理石のグレーハウンド犬を撫でる。

 

 さあ、これで天も我々の自殺の共犯だ!

 

 遠くから、森の中で朝の歌の合唱。二人はそれを聴く。

 

老兵たちの合唱:(遠くから)

祝いだ、祝い!

死して我らの 糧となる 巨木の森よ!

陽は昇り 黄金の葉陰の 下にある

樵は小鳥の 目を覚ます 聴き給え!

風音、囀り、葉擦れの音、鳥の羽ばたき 聴き給え!

我らの歌は 森の奥!

我らの神よ 栄えあれ!

 

サラ: 

 聴いた? 神ですって! 森の殺戮者たちでさえも神を称えるのね!


アクセル:

 森の魂の最期には、安らかに、美しいことばを掛けさせておけばいい!

 

サラ: (考え込み、独り言のように)

 わたしも過去に斧を握った―――でも、振り下ろしはしなかったわ!

 

 草原から呼び声とファンファーレ。

 

ウッコ: (遠くから)

花の盛りの 山の上

恋人は今 ここにいる!

真白の晴れ着 裾に露

真珠の刺繍 鏤めて

我が恋人に 救いあれ!―――

ドイツの子 両の瞳を

乙女の前に 伏せられて

地を踏み鳴らす 音となるらむ

 

アクセル: 

婚礼の若者たちじゃあないか! 彼らに祝福のことばを掛けてやってくれないか。きみの想いが彼らに届けば、彼らは互いをより魅力的に思うだろうからね!


サラ: (にこやかに、天窓の方を向いて)

 あなた方に、丘の向こうで無邪気に歌うあなた方に……祝福あれ!

 

アクセル: (墓石から降りて、サラに近づき)

 陽の光で、婚礼の洋燈の煌めきは弱まった! そろそろ消えてしまいそうだ。それは我々も同じ……。

 

(杯を持ち上げて、)
 年老いた大地よ、わたしはおまえの醜い地表に夢の館なんて建てないよ。わたしは燭台も持たないし、敵も鞭打たない。
 人類は、無意味な絵空事を、空虚な絶望を、そして目が眩むような嘘を消し去れる。最早陰鬱な謎に挑むこともない。そうだ、終わらせることが出来る。別れも告げずに、冷淡に去ることが出来るんだ。我々が手本となろう。

 

サラ: (ダイヤモンドに光り輝き、神秘的な恍惚に酔った頭をアクセルの肩に預けて)

 今や、無限だけがわたしたちを裏切らない。関係の無い人たちの言葉は忘れて、わたしたちの中の「永遠」へ!


 アクセルは死の杯を唇へ運び、―――飲み、―――痙攣してよろめく。サラは杯を受け取り、残りの毒を飲み干し、―――目を閉じる。―――アクセルは倒れ、―――サラは彼に身を傾け、彼の死に戦慄する。地下霊廟の通路の砂上、サラはアクセルの上に重なるように横たわる。そして唇を重ねて最期の息を交わし合う。

 

 そして、二人は息絶え、動かぬ姿となる。

 

 天窓から斜めに入る太陽の光が大理石の像を黄金色に照らし、洋燈と燭台がぱちぱちという音を立て、煙を吐きだして消えゆく。一枚の金貨が落ちて時計のような音を立て、墓石を横切って転がる。―――そして―――二人が「天」に魂を捧げた恐ろしい静寂は、遠くから聞こえる広大な森のそよぎ、空の揺らぎ、草原のうねりなどの「生」のざわめきに破られる。

 

―幕―