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ウィーン国立歌劇場(2013)の「オネーギン」について - CDレビュー

 こんばんは、茅野です。
本日は新国立劇場オペラ19/20シーズンの「エウゲニ・オネーギン」一般発売日ですよ! 皆さま準備は宜しいですか? はじまるのは戦争ですよ、瞬発力と課金力が試されております。
これはチャンスなのです。ここで集客できれば、当演目が今までの10年に1度ペースから()、2.3年に1度ペースに昇格できるかもしれない(?!)という正念場なのです。我々オタクはこの機会を逃すわけには参らぬのですよ。いざ出陣!
ちなみに、当方はセイジ・オザワ松本フェスティバルのオネーギンpremière(8月20日)と翌22日、新国立劇場の方は取り敢えず10月6日を抑えております。あとはお財布の許す限り、U25や当日券を使いつつ、出来るだけ通い詰めたい……と、情報の更新を血眼で追い掛けております。いや〜〜たのしみですね!!

 

 さて、その前にですね、新たなオネーギンを入手致しました!
それがこちら、ウィーン国立歌劇場の150周年記念BOXでございます!!

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↑この重厚感!

当初はその値段(1万2000円……)から躊躇っていたのですが、オペラ好きの親と交渉をし、決心致しました。買って正解です、未だ躊躇っておられる方はこの記事を読み終える前に入手しましょう、はい、今です!

shop.wiener-staatsoper.at

ダイレクトマーケティング。回し者ではありません。寧ろ回し者になりたい。オネーギン売りつけたい。


これは……凄いですよ……。まだオネーギンしかちゃんと聴けていないのですが、このオネーギン2枚組だけで1万円強の価値ありです。

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↑刮目してください、うちの家宝です。

CDに関してはいちいち記事でレビューを書くつもりはなかったのですが、凄すぎてこの熱い想いをどこへぶつけてよいのかわからなくなってしまったのでここで吐き出している次第であります!
というわけで10割方オタクの妄言になりますが、お付き合い頂けると幸いです!

 

キャスト

エヴゲーニー・オネーギン:ディミトリー・ホロストフスキー
タチヤーナ・ラーリナ:アンナ・ネトレプコ
ヴラジーミル・レンスキー:ディミトリー・コルチャック
オリガ・ラーリナ:アリサ・コロソワ

グレーミン公爵:コンスタンティン・ゴルニー

ラーリナ夫人:ゾルヤナ・クシュプラー

フィリピエヴナ:アウラ・トゥワロフスカ

ムッシュー・トリケ:ノルベルト・エルンスト

ザレツキー:ミハイル・ドゴターリ
指揮:アンドリス・ネルソンス

合唱・演奏:ウィーン国立歌劇場合唱団・管弦楽団

 

 いや、なんですか、この暴力的な布陣は。一周回って舐めてんのかと(?)。これが……1万2000円の力……(※22枚組10作品での値段です)
権威主義じゃありませんが、これでダメなわけがないでしょうが、というお話ですよ。
あまりにも有名人オンパレードなので、わたしのような捻くれ者は逆に斜に構えてしまったりするものですが()、3日間延々と聴き続けたわたしがお伝えできるのは、今すぐ入手すべきだ、その一言なのであります。

 

録音情報

2013年 4月

ウィーン国立歌劇場

ライブ録音


 何故これを生で観ることが出来なかったのかと、自問自答の日々を過ごしています。たしか、わたしがこの作品に出逢い、沼底まで光の速さで沈みこんだのは2015年2月(当時16歳)のことですから、2013年時点ではオネーギンのオの字も知らなかった次第なのです。悔しい。

 それにしても2013年というのは恐ろしい年でして、ボリショイ劇場でバレエ版の初演があったのも2013年なんですよ。わたしはあの映像がオネーギン初見なので、全ての元凶にあたるのですが、この公演も2013年。なんと豊作なんだ2013年。2013年時点でオネーギンオタクだった方は幸せです。

 

内容について

 ネルソンス指揮。全体的に少し速めな印象を受けますが、気になるほどではなく、あくまで聴き比べた際比較すると~、というかんじです。個人的には、オネーギンはもうちょっとねっとりした演奏が好みです。ロマンティックでメランコリックでノスタルジックなかんじがやっぱりオネーギンには欲しい。

また、強弱がすごくハッキリしていて、メリハリがあります。やりすぎ感も否めませんが、やりたいことが伝わってきますし、オペラ向きの演奏なのではないかとおもいます。わたしは好きです。

全体的に木管が美しく、チャイコフスキーの甘美さを体現しています。一方で、金管はたまに安っぽい響きをすることもあるように感じました。たとえば、こことか。

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↑第三幕第二場の冒頭なんですけど、伝わりますかね……。

しかし、全体的に聴きやすく、初心者にも耳の肥えた方にも推薦できる演奏です!

 

 オネーギン役ですが、ディミトリー・ホロストフスキー氏のオネーギンは、""特別""です。これは全てのオペラ「エヴゲーニー・オネーギン」ファンが口を揃えて言うことなのではないでしょうか。

過去の記事でも書いているんですが、これが至高なんだってば、としか言えない。

sylphes.hatenablog.com

↑限界過ぎて語彙力がなくなっているのであまり読む価値はないです(自分で言う)。

 チートなことに(?)、容姿にも恵まれているので映像だとつい見た目にも気を取られがちになってしまう氏ですが、音楽に集中すると更にこの深みのある声を堪能することができます。声量があり、低音から高音まで伸びやか。力強いので、「怒っているように聴こえる」という意見も散見されるのですが、余計な"力み"はなく、肩が張ったかんじは致しません。アリア、アリオーソは特に艶がかっていて、とにかく酔える! その一方で底抜けの明るさではなく影がある響き。これがHomme fatalか、と納得します。

 これはオペラでもバレエでもそうなんですが、演者の国籍に関係なく、「ロシアの魂を持った」オネーギンのキャラクター性の肉付けが出来るか、というのは非常に難しいものの、この特に演劇的な演目・キャラクターを演じる上で必須の点なのではないかとおもいます。まあでも、氏はロシア人ですから、その点やっぱり有利かもしれません。

個人的に、ディーマのオネーギンの解釈が凄く好きなんですよね……解釈一致なんです。当ブログでは何度も述べておりますように、オネーギンというキャラクターの解釈に正解はありません(勿論、原作を読み込む上での"不正解"は存在します)。氏はインタビューで、「オネーギンは残酷な人間なのではなく、非常に魅力的な人物だ。でなければタチヤーナも恋に落ちたりしないだろう」と述べています(MET2010)。これはどうでもいいのですが、オネーギンを演じているのは当人なのですから間違ってはいないのですが、インタビューで他の歌手がキャラクター名で解釈を語る中で、彼だけオネーギンを"me"と言っているのがなんか凄く好き。もうあなたがオネーギンでいいです、流石「オネーギンを演じるためだけに生まれてきた男」(わたしは彼の別の役も好きなのでこの言説には賛同致しかねるのですが、1オネーギンファンとしてこの素晴らしい歌手がそのような異名(?)を得るのは非常に喜ばしいと考える次第です)。

 

 アンナ・ネトレプコ氏のタチヤーナ。映像も何種類か持っていますが、改めて、素晴らしいです。

特に、1,2幕と3幕の演じ分け! 3幕になると、恋に恋する少女から夜の女王へと大変身するわけですが、声だけでそれがよくわかります。成長した彼女は、しとやかで、落ち着いていて、深みがあります。

そして高音が伸びる伸びる! 数えてみたら、当方オネーギンのCDを7枚持っているらしいんですけど(コレクター気質のオタク)、実はタチヤーナの音域を完璧にカヴァーできている歌手ってなかなかいないです。高音か低音、どちらかがちょっと怪しいことが多い。そして、彼女のタチヤーナは力強い。それでいて下品な感じがしない。

 ディーマとは逆に、ネトレプコ氏はタチヤーナに理解・共感を示さないと公言していることは有名な話なので()、演技面にはあまり期待なりません。声だけだと気になりませんが、人によっては演技がわざとらしすぎると感じるかも知れません。一幕二場のアリアの前に大げさな溜息を入れたりとか……。まあ、演技をどこまで重要視するかは人それぞれでしょうが(わたしは結構ドラマ性を重視する派なので気になっちゃうのです)。

 

 ディミトリー・コルチャック氏のレンスキー。

氏はよく日本にも来ていて、2016年のマリインスキー来日でもレンスキーを歌っていました。

レンスキーは少し軽めの声がはまるのですが(たまにオネーギンを決闘で撲殺しそうなレンスキーが出てきますが……ww)、ただ底抜けに明るいというのも違って、ロシア語の響きが似合う、少し影のある声が求められると理解しています。

氏、ぴったりじゃないですか……?? 若々しい感じが青い詩人っぽくていいですよね。ただ、低音と伸びはもう少し改善の余地があるかも? 来日公演の方がよかった気も致します。三年の成長でしょうか(いや、正直記憶が結構朧気で恐縮なんですが……)

 

 トリケのクプレなんですが、ちょっと歌い方が独特と申しますか。最初はなんじゃこりゃとおもったのですが()、何度か繰り返して聴いているうちに、「"クプレ"なんだし、これもまあアリか」とおもうようになってきました。慣れかもしれません。

 

 三幕一場のエコセーズはカット。最近エコセーズをカットする演出が増えている気がします。美しいのに、勿体ない。聴きたかったな~。

 

 グレーミン公爵のアリア。

ディーマのオネーギンが重たく力強いので()、対比としてはもっとバスの底力を見せて深いとよいとおもうのですが、充分聴かせてくれます。というか、ストーリーからしても、オネーギンとグレーミン公爵を比べてはならない()(バレエ・クランコ版だとグレーミン公爵に軍配が上がるという方も多いのですが、それはさておき)。

 

 凄く細かいことを言うシリーズ。

第三幕第一場のオネーギンのアリオーソの最後なんですけど、ここ。

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赤丸で囲ったところが他の演奏と聞き比べると音が大きい気が、します!(細かすぎる)。

いや、なにもおかしいということではないんですけど、慣れの問題……? ここ、和声の中の音の方が大きいことが多いので、なんとなく、違和感……? それだけです!()

 

 ライブ録音ですが、雑音など全然きになりません。最後に拍手や歓声が聞こえますが、それも良い味出しています。わたしはどちらかというとCDはスタジオ録音の方が好きなのですが、素晴らしいアリアのあとに無音だとなんだか寂しくなっちゃいますからね(そういう時はCDを聴いているわたしがBravo!を叫びます)。

あ、ただ、決闘の際の発砲音がやたらめったらデカいです。ちょっとびっくりします、いや、かなりびっくりします。音量大きくしてると左耳が爆発します、注意してください。

 

 こんな感じでしょうか……? 他の箇所について気になった場合は"リクエスト"とかコメントに投げて貰えると加筆されます()。

 

おわりに

 通読ありがとうございました。パパッと書いて終わらせる予定が、5000字近い。ついだらだら書いてしまう癖を改めねばなりません。

 わたしはアルコール耐性がかなりつよく、タバコにもドラッグにも依存していない恵まれた性質なのですが、エヴゲーニー・オネーギンを30秒きくと脳内麻薬がドバドバ出てハイになっちゃうんですけれど()、ここ3日間くらい延々とこのCDを聴き続けているので頭がおかしくなりそうです。もうなっているかも。合法ドラッグエヴゲーニー・オネーギン。授業中とかでも頭の中でずっと鳴り響いています。特に最後の二重唱とか……。

 途中で聞き比べの話を少ししましたが、ぶっちゃけ言うとこのCDがあればもういいとおもいます。このCDを手に入れましょう。8月までこれを聴いて過ごすのが正解だとおもいます。ほんとうに。

 

 それでは、お付き合いありがとうございました。もし入手されたら、わたしにも感想をお聞かせくださいませ。