世界観警察

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人喰いの大鷲トリコ - 考察資料一覧

 こんにちは、ダクソDLC2が楽しみで仕方がない茅野です。

今回は、わたしが『人喰いの大鷲トリコ』考察で使った参考図書を紹介していきたいと思います。

 「参考図書として読んだ」という視点でのレビューは少ないかと思いますので、参考にして頂ければ、と思います。

仮に難しい古典的資料だとしても、「これがこうなってトリコに繋がるのか……!」とか思うとすらすら読めたりするものなので、わたしのマニアックな趣味がもしあなたの琴線に触れたのならば、是非共に楽しみましょう。

 資料の場合は、本作からだけでは得られない知識が得られますし、作品の場合は、トリコに似ている、だけどまた別の素晴らしい作品に触れることが出来ます。また、勿論考察に大変役立ちます。

人喰いの大鷲トリコという作品を愛した今こそ、チャンスなのです!

 

では早速見ていきましょう。

現在の収集結果はこんな感じです!

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 トリコ本体より右は元々持っていたものなので、今回集めたものは結構少ないです。

でも一つ一つが濃密だった感じがします。どれも大変楽しめました。

トリコを介して、また沢山の良書に出逢えたことに感謝ですね。

 

 私は漫画も読まないし映画も全く見ないのですが、今回久しぶりに漫画を買ったし(実にうみねこぶり……)、『Fumito Ueda Material Book』にある古いアニメ映画を結構見ました。(何を隠そう始めてまともにジブリ作品を見た純ジャパであった。)

普段は触れない媒体に触れて、視野が広くなった気がします。

 

 

 

1. 世界幻獣伝説

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こちらはトリコ考察にあたって最初に読んだものです。

トリコ発売の直前にフォロワーさんから大量に頂いた本の中の一冊で、現在は絶版となっているレア本です。

「何か良い本ないかなぁ」と見回し、幻獣という字が目に付いたので、ぱらぱらと捲ってみると、「こんな奇跡みたいなドンピシャがあってたまるか……」。

この本から得られたことはめっちゃくちゃ多いです。

トリコの生態に迫った考察記事「1 - Cryptozoology」の情報は、ほぼこの本から来ています。

先ほど絶版だと言いましたが、ご安心下さい。引っ繰り返せば、Cryptozoologyにこの本のトリコに近しい部分は全て記載致しました。未読の方は、是非お目通しくださいませ。
sylphes.hatenablog.com

 

2. 幻想博物誌

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こちらは、上記の世界幻獣伝説とかなり内容が重複している一冊です。

幻獣伝説の方が軽く読みやすく、幻獣を簡単に紹介しているのに対し、本書は幻獣を見る目が考察的です。

本当に実在したのか? しなかったとしたら、何がモデルになっているのか? 幻獣が出てくる民話の寓意性は? などなど。

著者に、是非ともトリコに関する考察も書いて欲しいなと思ってしまいました。

 

3. ドラゴン

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こちらはなんと、上田文人氏のキャビネットの中にもあった一冊です!(『神話を紡ぐ』より)

こちらも頂き物なのですが、流石に奇跡が過ぎるだろうと思って笑いが込み上げました。

Cryptozoologyの、「ツノの聖性」の下りなんかは本書から引いています。

 本書は神話に登場する世界各地のドラゴンたちを、各数ページでわかりやすく纏めています。数ページといえど、その情報量はかなりのものなので侮ってはいけません。

ドラゴンはゲームなどでよく出てきますから身近なイメージがありますが、新しく知ったことも多かったです。

  しかし、こちらはトリコというより、ワンダの時に参考にしたのかな、と思うことがありました。

 

4. MUDMEN

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上田文人氏のTwitterより

 

これを見て、「ン・バギってなんだ……?」と思って調べて辿り着いたのが本書。

諸星氏の漫画を読むのは始めてのことだったのですが、純粋に凄く面白かったです。

特にわたしは、考察の中でも世界の歴史や文化を研究するのが好きなので(昔は民族学を専攻しようと思っていたくらい)、パプア・ニューギニアに関する伝承から、日本の文化と絡めて比較したり、もうとにかく好みでした。さすが上田氏がハマるだけあります(?)

 

一番トリコに近いと思ったのはここです。

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↑ナミコの家を襲うン・バギ

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↑フラッシュバック2で少年を攫うトリコ

_人人人人人人_

 > 完全に一致 <

 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

 

これは故意だろうな、と思いましたww

 他にも、アエンが村民を洗脳するシーンは、同じくフラッシュバック2で少年の目が赤く光るのに似ているような気もします。

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MUD MENは、氏が仰っておりますから、ン・バギ→トリコは勿論、村のモデルになのだと思います。

ということは、村はパプア・ニューギニアがモデルなのだったりして……?

 

そういえば、「三作品に見る繋がりと寓意性」という記事でこんな地図を作りましたが、

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↑弓矢分布地図

MUD MENでは弓矢が出てきます(パプア・ニューギニアが舞台)。

不思議に思い、深く調べ直してみたところ、部族によっては2mを超える(!)長弓を使うところもあるようです。研究不足で申し訳ないです。ダクソの竜狩りの大弓みたいな感じでしょうか……。

(まあそれにしてもトリコに出てくる弓矢は明らかに2m級ではないのですけれども。)
sylphes.hatenablog.com

 

5. WHERE THE WILD THINGS ARE(かいじゅうたちのいるところ) 

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先ほどのツイートに「センダックはもちろんだけど~」とあります。

センダックといえば、『かいじゅうたちのいるところ』。

初見直後に書いた「遠く離れていても」でも書いたのですが、わたくし、この絵本の大ファンなのであります。

久々に読み直してみて、いいなぁと思い直してみたり。

sylphes.hatenablog.com

 映画ももう6回くらいは見ていたのですが、折角だしこの機会に!と思い、安売りしていたこともあって、Blu-rayを買ってしまいました。何回見ても好きです……。

そこでふと思ったのは、主人公マックスが"かいじゅう"の一人(一匹?)KWの口の中に入るシーンがあるのですが、それがちょっとトリコっぽいかなぁと感じました。

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↑口の中

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↑引っ張り出される

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6. Art Masters #169 

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先ほどのツイートにもあった、ヨン・バウエルの画集です。

絵画芸術に関しては浅学なので、新しい扉を開けた気がします。

トリコとの関連でいえば、直接的な類似性はないように思えます。(主観なので、気になった方は是非手にとって見て下さい)。

ですから、「強いインスピレーションを受けた」というのは、その芸術性であったりとか、全体的な雰囲気であったりとか、そういう意味なのだと思います。

 『かいじゅうたちのいるところ』の"かいじゅう"たちや、この『Art Masters #169』に登場するトロールやトントゥは、基本的に共に登場する少年少女に友好的です。

未知の、一般的に恐れられる巨大生物が、少年少女と仲良くしている。強いて言えば、これが共通項かなぁ、と思います。最早こじつけの領域ですが……。

 

7. 私家版鳥類図譜

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Fumito Ueda Material Book』にて大ファンであることを公言されている、諸星大二郎氏の漫画、その2。ちなみに、前述の氏のキャビネットにも本書を確認しました。

『人喰いの"大鷲"トリコ』ですし、"鳥類"というのが気になったので購入しました。

様々な鳥に関する物語を、多角的に纏めた短編集です。

驚くべきことに、本書では鳥類に関することよりも、世界観に関する発見をしました。

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こちらの画像は、『塔に飛ぶ鳥』から。

これだけでは分かりづらいかと思いますが、この奥の柱一本一本が塔なのです。

地面が見えない程の高さの塔が沢山建ち並ぶ世界。トリコの遺跡と完璧に一致しますね。

「遺跡という環境がレベルデザインに最適」「トリコを必要とするアクション(高低差)」というゲームコンセプトからあのような世界観になったとは、氏がよくインタビューなどで話されていますが、最終的なビジュアルイメージはここから来たのではないか、と推察します。

 また、「塔に飛ぶ鳥」の鳥たちは人間の屍肉を食べています。

これも「人喰い」というイメージに一致するかと思います。

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8. 暗黒神話

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諸星大二郎氏の漫画、その3。

本書は日本神話をベースにしたストーリーになっています。相変わらず民俗学、考古学的研究に熱心であることを伺わせる、深い内容です。

 トリコ要素といえば、やはりでしょうか。

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日本神話の三種の神器八咫鏡

トリコに登場する鏡も「神器」なのかもしれないと思いました。神話からのアプローチも面白いかもしれませんね。

また、天叢雲剣はここにもあるとおり、雷を呼ぶ伝説の剣と解釈されることも多いです。(正確には、「自ら光り輝く剣」。名前が「八岐大蛇の頭上にはいつも雲がかかっていることから」ということで、この二つを関連づけ、「雷を呼ぶ剣」とされることが多い)。

同じページに書かれているだけで、この暗黒神話では、雷と鏡に何の関連もないのですが、トリコファンだとつい反応してしまいますね。  

 

9. 魔術的芸術

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 図書館で閲覧した本です。前述の、氏のキャビネットにあって気になったので閲覧しました。

「幻の本」といわれる、レアリティの高い本です。シュールレアリスム宣言でお馴染みのアンドレブルトンが、『魔術的芸術とはなにか』について、細かく解説しています。内容はかなり難解な芸術の本です。

 ここからは、トリコというよりも過去作に関するヒントを多く見受けられます。

例えば、『ICO』の表紙のモデルであろう、ジョルジュ・デ・キリコの作品が多数収められています。

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 他にも、上記の『MUD MEN』のタイトルたる、パプア・ニューギニアのマッドメンの作品や……。

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 『ワンダ』では数種類出てくる、「シャーマンの仮面」……。

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 変形させると、鳥の仮面から人面が現れる仮面……。(トリコの顔の裏がこうなっていたらどうしよう!w)

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大変興味深い一冊なので、入手は難しいかと思いますが、機会があれば是非とも! 

 

↑バージョン違いですが一応 

 

10. センダックの世界 

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こちらも図書館で閲覧した一冊です。

センダックの絵本を全て読んだわけではないので、「センダックを参考にした」と仰っていた以上、こういう纏まっている本で学習しておくべきかな、と思いまして、手に取りました。

 モーリス・センダック自身のことばや生い立ち、筆者による絵本内容の考察、未公開の原稿など、センダックファンにはたまらない一冊かと思います。

 筆者の、「センダックの絵本には食べる/食べられるの関係が色濃い」という考察にはとても納得させられました。たしかに、かいじゅうたちのいるところでも、「おまえを食べちゃうぞ!」と言って夕飯を抜かれたマックスが、"かいじゅうたちのいるところ"へ行き、かいじゅうたちに出逢い、「食べちゃいたいくらい好きなんだもの」と言われて別れ、現実世界に戻ってくると、そこにはまだ温かい夕飯が用意されていた―――と、一冊のなかでもこれだけの「食べる/食べられる」の関係が登場しています。

 トリコの少年も、長老か誰かに「食べちゃうぞ!」とか言って、手を焼かせていたのでしょうか。そう思うと、ちょっと可愛いですね。

 

11. 最後に 

 如何でしたでしょうか。今後トリコの資料に目を通した時はこの記事に追記していこうと思いますので、宜しくお願いします。鏡や、民族衣装に関しては、もう少し研究が必要だと考えておりますので……。

他にも、これが参考になるんじゃないか?」というものに遭遇した場合は、是非ともコメントで教えて下さいね。

これを機に、上記の紹介した他作品に触れて貰えたら私も嬉しいです。

それでは、あなたとトリコの旅に幸の多からんことを。