明けましておめでとう御座います。皆様、年末年始は如何お過ごしでしょうか。私茅野はトリコ一色です。
さて、今回はいよいよトリコの考察を始めていこうと思います。
当たり前ですがネタバレ祭りなので、未プレイの方は閲覧注意です。又、前作『ワンダと巨像』の話も少し出てきますのでご留意ください。
最初の議題は、「人喰いの大鷲トリコってどんな生き物?」というとてもスタンダードな疑問から。
私事ですが、最近、偶然幻獣に関する絶版のレア本なんかを譲り受けまして、そちらを参考図書として読んでいたのですが、当記事を書くにあたり、PS3版『ICO』/『ワンダ』の初回限定版冊子「神話を紡ぐ」も再読致しました。
その中に上田文人氏のキャビネットの画像があったのですが、なんと、参考図書としていた本が数冊、そこに映っているではありませんか!まさかのドンピシャな資料集めに我ながら困惑しております……。
ですので、ソースとして手堅いことを確約いたします。
実際にそれを踏まえてトリコの設定を練ったのかどうかはわかりませんが、少なくとも制作陣が確実に目を通していると考えると、信憑性も高まるのではないでしょうか?
では、まずは神話上の聖獣や言い伝えられる幻獣と比較しながら、トリコの生態に迫っていきましょう。
- 1. A Difference Between Japanese and English
- 2. What is Griffin?
- 3. Phoenix
- 4. Thunderbird
- 5. 麒麟
- 6. The Lightning
- 7. The Horn
- 8. The Talismans
- 9. Name
- 10. The Trico
- 11. Final Comment
1. A Difference Between Japanese and English
人喰いの大鷲トリコは、日本語では「犬のようであり、猫のようであり、それでいて鳥のような架空生物」と紹介されている一方、英語では「グリフォンのような生物」と紹介されています。
文化の差なのでしょうが、この違いは大変興味深いです。最初の図鑑風のイラストにもグリフォンはいますしね。
2. What is Griffin?
じゃあグリフォンってなんだよ、って話ですよね。
グリフォンは、ライオンの胴に鷲の頭と爪を付けた聖獣です。ライオンを8頭合わせたよりも大きく、100匹の鷲よりもたくましいとされます。
元々インドで生まれたとされ、西アジアでは金鉱を守る怪獣として、エジプトでは財宝の守護者として崇められてきたそうです。
しかしその強大な力から、キリスト教ではサタンとされ忌避されているとか。
強くてたくましく、鷲の特徴を備えた聖獣。トリコとの共通点はとても多いですね。
3. Phoenix
OPの図鑑風イラストで、トリコの直前に出てくるのがフェニックスです。
こちらも大変有名ですが、死んでも蘇る不死鳥です。その蘇りの様は魂の再生や、太陽の昇沈のモチーフとして、エジプトが起源だとされています。
外見は鷲にもっとも似ているとされますから、トリコと関連づけることも容易でしょう。
4. Thunderbird
資料を漁った中で、わたしが一番トリコに近いな、と感じたのはサンダーバードです。こちらはアメリカに実在した…かもしれないと言われる怪鳥で、実際に写真が残っていたりします。
全長およそ10メートルとされる巨鳥で、雷を発生させることが出来ると信じられています。
もしかしてその鳥の本当の名前はサンダーバードではなく、トリコと言ったりして……。
5. 麒麟
麒麟といえば、前作『ワンダと巨像』の第四の巨像を思い出しますね。
外見的特徴はトリコと似つかない麒麟ですが、何故ここに挙げたかと申しますと、麒麟は選ばれし者の前に現れ、翡翠の鏡を吐きだしたという伝説があるからです。
選ばれし者の中には、あの孔子も含まれたとされています。
選ばれし者、翡翠の鏡……。思い当たる節は多いですよね?
トリコのモデルになったであろう幻獣はこんなところでしょうか。
こんな幻獣たちがいたとされる世界なら、トリコがいたっておかしくないですよね。上田文人氏のいう"リアリティ"が、モデルからも伝わってきます。
ではお次は、「いかずち」について少し掘り下げたいと思います。
6. The Lightning
様々な国や地域の神話で、雷は神の力とされています。日本語の「かみなり」だって、元は「神鳴り」だったという説が有力ですよね。
ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のユピテル、バラモン教のインドラは各神話における最高神ですが、皆雷神だとされています。北欧神話でも、今では死と戦争を司る神オーディンが主神とされていますが、昔は雷神トールが主神とされていたようです。
古代の人は、神々だけが使える最強の力の象徴が雷なのだと信じていたのですね。
先ほど挙げた幻獣に、もっともポピュラーな幻獣:ドラゴンがいませんでしたね。
グリフォンや不死鳥などの聖獣が鷲をモデルにしているのに対し、ドラゴンはトカゲやヘビをモデルとし、神話や伝説における役割は「悪の権化」です。神々の力の象徴が雷なのに対し、ドラゴンは炎や毒を使うともされます。
メタなことを言うと、神や英雄を立てるために用意された試練とも言えます。
少し話がズレるのですが、前作『ワンダと巨像』において、ワンダがトカゲの尻尾を食べて力が増すのは、トカゲ(=ドラゴンのモデル→邪悪な力?)の力を我が物としているからなのではないか、と深読みも出来ますね。
そうです、鷲は聖なるもの、トカゲは邪なるもののモチーフとされているのです。
となれば、聖なる大鷲トリコが、神々の力である「いかずち」を操ったとしても不思議はありません。
ギミック上、尻尾から出るものが炎でも何の問題もないと思いましたし、物を腐敗させるような毒霧を出したとしても良かったはずなのに、何故「いかずち」なのか?と思ったのですが、これで疑問は晴れますね。
ですから、神々が雷を用いて悪(ドラゴンなど)を倒す、なんていう伝説や神話も多いわけなのですね。具体的には、ゼウスのテュポーン退治や、トールがヨルムンガンドに雷槌ミョルニルで立ち向かった話なんかが有名でしょうか。
他のゲームだと、たとえばダークソウルでは神々の王グウィンが雷の力を使って古竜を退治したりしていますね。ちなみにダークソウルの世界は北欧神話をベースにしているのではないか、と私は推察しています。
トリコの「いかずち」で大鷲の巣の主を倒すという展開も、ここから来ているのではないでしょうか。
また、鏡は雷を呼ぶとされていて、避雷針が発明される前は鏡を設置していたそうです。
7. The Horn
上田文人氏の作品において、ツノは凄く重要な意味合いを持ちます。
あまりに重要なポイントなので、こちらに関しては別記事でもっと細かく纏めようと思っていますが、トリコのツノに関してだけ述べます。
↑ツノに関して細かく纏めました。「4. 光と影、そして角」の項目を参照してください。
トリコのツノは最初折れていて、物語が進むにつれ治ってきます。
鏡を拾う序盤:折れている
装置で凶暴化したトリコに飲み込まれた中盤:治ってきている!
白い塔を目指し数々の塔を昇る後盤:完治!
また、初回限定版付属の『Fumito Ueda Material Book』にはトリコの骨格が描かれていますが、ツノの中には骨があることがわかります。
トリコは人工の兵器なのではないか、という説も見受けるのですが、しっかり骨まで公開され、体もだんだん治るとなると、それはちょっと違うんじゃないかというのが私の見解であります。
また、大鷲たちは装置や白い塔の電波をこのツノによって受信していますが、それは人工的に後からつけられたものなのか、生まれつきそういう性質であるのかは不明です。
古代メソポタミアにおいて、ツノは聖性を表しました。トリコはなにかと聖なものに縁がありますね。
ですからツノは冠や神々の像につけられることが多く、またそのデザインは一対の湾曲したものだったようです。イコ、ドルミン(ワンダ)、トリコと、上田文人氏の作品に共通しますね。
8. The Talismans
トリコは目玉の色ガラスを怖がります。これは何故でしょうか?
現実にいる小鳥たちは、目玉を怖がる習性があります。これは、彼らの捕食者である猛禽類の目に見えるからなのではないか、というのが最も有力らしいです。
こんな風船もよく売られていますね。よく見るとトリコの色ガラスに見えて…くるかも??
でも、ちょっと待って下さい!
鷲といえば猛禽類の長。しかもトリコは大鷲なんて大仰な名前がついているわけです。
確かに大鷲同士の争いは大変激しく、物語後盤でも他の大鷲たちの攻撃に我らが相棒は大変苦しめられます。
ですが、他の大鷲が怖いから、トリコは目玉の色ガラスを怖がるのでしょうか?
この説も中々に有力ですが、なんとなく釈然としないのはわたしだけでしょうか。
ですので、他の可能性がないか、私なりにちょっと考えてみました。
こちらは、トルコで人気のお守りで、Nazar boncuğu(ナザール・ボンジュウ)といいます。青い目玉の絵をつけたガラスです。
イスラム教が始まる以前からあるという大変歴史あるお守りで、邪視から守ってくれるとされています。私も鞄に1つつけていたりします。
邪視といって連想するのはこのシーン。
フラッシュバックの2回目ですね。
変な所リアリストなので、少年の黒目にトリコの赤い瞳が映っただけなのでは、と考えていたのですが、もしこのナザール・ボンジュウが目玉の色ガラスのモチーフで、邪視を持つトリコがこれを怖がる……という説を取るとすると、このシーンで少年の目に赤い邪視が映り込んだ、というのは妙に説得力が出てきます。
じゃあなんで村には目玉の色ガラスがないんだ?という疑問が湧くのは当然ですよね。
村と大鷲の巣建造の謎については、これもまた別記事で細かく纏めようと思っておりますので詳しく考察することをここでは控えますが、村の人々は大鷲が色ガラスを怖がることを知らないのでしょう。
或いは、大鷲ではなく、物語の相棒となるトリコだけが色ガラスが苦手である可能性も否めませんね。
9. Name
大鷲の種族名は、何故トリコというのでしょうか。
まあこの疑問は、何故サルをサルと呼ぶのか、みたいな質問と変わらないのですが……。
まず第一に、「虜」が挙げられるでしょう。
よく使うことばだと思いますが、改めて辞書で引いてみることに致しましょう。
虜(とり-こ)
いけどりにした敵。捕虜。また比喩的に、あることに心を奪われた人。
(広辞苑)
普段は比喩的な意味で使うことが多いのではないでしょうか。プレイヤーはトリコの虜、なーんて
ここから多大な深読み合戦が出来ますね。例えば、白い塔の主にいけどりにされたのが大鷲トリコである、とか……。
また、上田文人氏のチームはteam ICO, project NICOときていますから、三作目である今作はTRICO、というのもあるでしょう。
じゃあなんで前作はニコじゃなくてワンダになったのか、私は滅茶苦茶気になります。情報をお持ちの人がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。
では次作はなんなんでしょうね。ヨンコ?クワトコ??なんかちょっとダサい……。(そして早くも次作が楽しみですね。)
また、少年や"わたし"も、創作言語のなかで「トリコ」と発音しますよね。
創作言語の完全な解読は出来ていないので、真偽の程は確かではありませんが一応自説を記します。
少年は「トリコ」と発音しますが、"わたし"はなんか「トリクォーヌォ」みたいな発音しますよね。
1.フランス語よろしくbe動詞的なものとリエゾンしている説
"わたし"は毎回そう発音するので。
2.活用形になっている説
要はI, My, Me, Mine的な……。
3.我らが相棒は「トリコ」であり、"大鷲"は「トリクォーヌォ」説
よく見ると、字幕は毎回"大鷲"になっているため。
ヨルダの言語はフランス語に聞こえるように調整した、と制作陣が語っていましたので1も捨てがたいですが、個人的には3かなぁと思っていたりします。あなたはどう思いますか?
真偽のほどは……、解読班の方がんばってください(丸投げ)
10. The Trico
相棒となる大鷲の中の一匹。彼(彼女?)はどういった性格の持ち主なのでしょうか?
当記事を書くに当たり、北米版の考察wikiを一読して参りました。そこで、面白い記述を見つけたので紹介します。
適当に直訳したので読みづらかったらすみません。
トリコはヨロイに対して驚異的な力を発揮しますが、他のトリコと争った場合、1対1の状況であってもすぐに圧倒されてしまうので、もしかしたら経験が少なかったり、とても若い個体なのかもしれません。
また、少年を攫うとき、窓に頭を突っ込んだ結果抜けなくなって建物を破壊してしまったり、壺を落として周りの人間に気取られ、騒がれてしまったりと、不器用でおっちょこちょいなのかもしれません。
めっちゃ可愛くないですか?
ますます愛着湧きますよね!
不器用でおっちょこちょいな若造トリコをいそ~いそ~しつつ共に旅をしましょう。
11. Final Comment
長くなりましたが、最後までお付き合いありがとうございました。
人喰いの大鷲トリコ考察は、他にももっと書きたいなぁと思っておりますので、宜しければそちらでもまたお会い出来れば光栄です。
それでは、あなたとトリコの旅に幸の多からんことを。
P.S.
タイトルに関しての疑問が寄せられたのでお答えします。
Cryptozoologyとは、英語で未確認動物学という意味で、接尾辞-istをつけたCryptozoologistは北米版トリコのトロフィー:すべての大鷲にあたります。
その意訳的な英訳がとても気に入ったので、記事の内容もトリコの生態に関することですし、タイトルと致しました。分かりづらくて申し訳ないですが、良い英訳だと思いませんか?(気に入りすぎ)。