こんばんは、茅野です。
マルチェッロ・ジョルダーニ氏の訃報にくるしめられています。この間のパレルモ・マッシモ来日の『トスカ』が神回すぎたので……そうおもいませんか……。お陰様で一時期トスカ沼に堕とされて原作翻訳して遊んでたくらいなんですけど……。トスカは時代考証とか好きな面倒くさいオタクに世界一優しいオペラです。しかしあれが最初で最後になるとはおもわなんだ。人間界こわいよ……RIP.
トスカ関連の記事はまた後日書くとして、オネーギンです。今日も相変わらずオネーギン日和です。新国三日目でした。今日はこれまでで一番よかったとおもってます。というわけで今回もガッツリネタバレ有りでレビュー書いていくのでお付き合い宜しくお願い致します。
初日のレビューはこちらから↓
二日目のレビューはこちらから↓
席は一階のド真ん中のド真ん中でした。つよい。最強でした。今日が特に響きがよく聴こえたのは席のせいもあるかもしれません。又、オペラ通の父と、オペラ初見の後輩ちゃんを連れてました。
今日は幕間にメモが取れたので、初日・二日目と、書こうと思って忘れていた細々としたことをメインに書いていこうとおもいます。
キャスト
エヴゲーニー・オネーギン:ワシリー・ラデューク
タチヤーナ・ラーリナ:エフゲニア・ムラーヴェワ
ヴラジーミル・レンスキー:パーヴェル・コルガーティン
オリガ・ラーリナ:鳥木弥生
グレーミン公爵:アレクセイ・ティホミーロフ
ラーリナ夫人:森山京子
フィリピエヴナ:竹本節子
トリケ:升島唯博
大尉:細岡雅哉
ザレツキー:成田博之
指揮:アンドリー・ユルケヴィチ
合唱:新国立劇場合唱団
演出:ドミトリー・ベルトマン
第一幕 第一場
序曲の時点で、オッ今日はオケの鳴りがいい~~! と直感しました。事実、全体を通して今日が一番よかったとおもってます。ラジオ録音、今日入ればよかったのにな~~とおもいつつ……。心なしか、歌手陣もいつもよりずっとよかった気がします。日曜だし気合い入ってたのかな……。観客の反応も今日が一番よかったです。
オリガがハープ弾くのどんどん上手くなってて笑いました()。連続公演、細々とした演技が上達していく様を観るの超たのしいんですよね……よりリアルになってる……。
ラーリナ夫人のКорсет, альбом...の言い方、好き嫌い分かれそうだなあとおもってました。まあやりたいことはわかるんですけど、ここでそこまでやるつよいインセンティヴはない気もする……。
並べてあるジャムの年代が1821,1823, 1824など、如何にもわざとらしい数字が記載してあるのですが()、これは何の数字なんでしょうね。年号なのはまあそうなんだろうとおもいますが、まさか保存料入れてないジャムが4年も5年も持つとはおもえないのですが……。
ところで、第一幕の年は主に1819年説と1820年説があって、某ロシア文学研究者にお尋ねしたところ、1820年説が有力なようです。まあ、紹介でも大体「1820年代、」って書かれますしね……。
合唱は二日目より断然良かったです! ただ、インストルメンタルもそうなんですけど、なんとなく1フレーズの中で不必要な緩急がある気がします。緩急というか、急緩なんですけど……。最初がちょっとはやくて、だんだんゆっくりになっていくことが多かったと思います。リズムは揃えてもよいかもしれない。
真ん中の席だったので舞台後方がよく見えました。このセット、お洒落でいいんですけど、特に第一幕第一場では端の席座っちゃうと奥で何してるのか全然見えないんですよね。なんか角度とかもうちょっと調整してみてもよい気がします。
というわけで今日はよく見えたんですけど、レンスキーとオリガを招き入れる前、ラーリナ夫人とフィリピエヴナが協力してサモワールとかの準備してたのが可愛いなぁと。
又、二日目のときの読み当たってそう! とおもってちょっとガッツポーズ。
最後の歌唱が終わったあと、フィリピエヴナが既に主要人物が集まっている後方へと向かうのですが、そこで座っているオネーギンが立ち上がってフィリピエヴナに席を譲るんです。
現代の感覚でいうと、「お年寄りに席を譲る好青年」みたいな目で見ちゃいそうなものですが、ちょっと待って下さい! フィリピエヴナは農奴、オネーギンは若旦那様です。時代考証的に言って、普通だったらちょっと有り得ないです。
でも、わたしちゃんとそれで解釈出来ないかちょっと考えてみたんですよ。つまり、オネーギンって自由主義者なわけでしょう。ということは、農奴解放というか、人権の尊重というか、人類皆平等みたいな思想を持っているわけじゃないですか。だからオネーギンは若旦那にして年老いた農奴に席を譲った、って考えられませんか? だからこそ、周りの地主貴族たちに「あいつは変人だ」って言われるのではないでしょうか? えっこれ、割といい読みじゃないですか?
↑二日目の読み(二日目レビュー記事から抜粋)
レンスキーが詩を朗誦してるのがまたそれらしくてww 挿絵で見たことあるぞこのポーズ()。ラーリナ夫人は可愛いオリガにべったりうっとり見とれているし……。やっぱり演技細かくていいですね。
第一幕 第二場
序曲。チェロも日々進化している~! 響きが甘くなっていて、アンサンブルが凄くよかったです。息ピッタリ。え、今日ほんとオケいいですね……。
これも真ん中の席だから見えたシリーズですが、手紙の場の前、フィリピエヴナは上手側のイコンにお祈りしてるんですね。柱の後ろにあるので凄く見辛いんですけど……。四回十字を切っているのを視認しました。
又、これ前々から思ってたんですけど、聖水の掛け方が完全に「鬼は外、福は内」でちょっと面白い()。めちゃくちゃそれらしいんですけどね!!ww
「手紙の場」。オケの鳴りに触発されてか、歌手もみんな今日は絶好調です。ターニャも勿論よかった……。高音ほんと柔らかく綺麗に伸びますね! 好き。
で、件の風ですけど……。改善されてません。やっぱり公演中になんとかするの無理なのかなぁ……。歌劇なのだから(ここで「叙情的情景です」という屁理屈は不要です)、音を最優先するべきだとおもうのですが……。音が出てしまう演出ならいっそのこと切ったら? っておもっちゃうんですけど、だめですか。
ただ、今日はここ(Вообрази: я здесь одна!~)でターニャが窓のほうではなく、割と正面を向いていてくれたので、比較的よく聴こえたとおもいます。なるほどそれは正解かもしれない。演出が変えられないならそういう改善方法があるか……って感心してしまいました。なるほど。
最後手紙を差し出しながら訴えかけるようにИ смело ей себя вверяю! ってされるともうBrava!!って言いたくなりますよね。事実今日はいっぱいBrava出ました。よかった……。
朝。やっぱりラーリナ夫人とオリガが気になって気になって全く歌に集中出来ない()。なんであの親子は娘・姉の部屋をストーカーも青くなるくらいまじまじと覗き込んでいるんですか()。気になりすぎる。そしてフィリピエヴナはどうしてふたりを隠しているのか。なんか三人で裏で取り決めがあったんですかね、全然分からん……。
第一幕 第三場
オネーギンのアリアもよくなっている……響きが良い……ってか今日全体的にめっちゃよくないですか?(それしか言ってない)(語彙力がない)
Еще, еще нежней!
もっと、もっと優しい愛かもしれない……
の高音の伸びとか最高じゃないですか?? 今日めちゃめちゃ溜めてくれたし……。
気付いたんですけど、タチヤーナが夢ボケしてることに対して、ラデューク氏のオネーギンはドン引きっていうよりガチ困惑ってかんじですね。なんか滲み出るいい人感。従来のオネーギンっぽさはないかもですが、オネーギンという役は解釈の揺れが尋常ではないので、わたしはこれも大変よいとおもいます。というか、わたしはオネーギンは冷血漢ではないとおもっているので、これくらいがいいです……。
あ、でも、松本の大西氏のわざとらしく恭しくターニャに腕を貸すオネーギンもめっちゃ好きです。甲乙付けがたい。
そして、オネーギンの最後の憮然とした表情が堪らんですな。独り立ち去ろうとして、「おっと、そうだ、」という声が聞こえてきそうなほどわざとらしく振り返り、タチヤーナに手を差し伸べる。彼女は半ば呆然としながらその手を取り、例によってわざとらしく差し出された腕に機械的に手を掛けて、反対の後ろ手で自身の手紙を握り潰す……。堪らん……。
↑当方が書いた松本レビューの当該部のコピペ
オネーギンのアリアではじめて拍手が出ました。ほんとよかった。初手一階前方中央からのBravo。
二日目はパチリとも拍手がなくて逆に引いちゃいましたもん。ここで拍手しなかったらどこでオネーギンに拍手すんの!? オネーギン役って拍手貰えるところめちゃめちゃ少ないんだよ!? とおもって……いや、かく言うわたしもこの時の彼の表情が気になってオペラグラス覗いてて両手が塞がっていてタイミング逃したので全然人のこと言えないんですけど……(すみません……)。みんなオペラグラス覗いてたのかもしれないですね、そういうことにしましょう。
第二幕 第一場
どうも、時代考証うるさいおじさんです。ふと思ったのですが、名の日の祝いの招待客には脚を怪我している方が一人いますが、矯正ギプスはまだ発明されていないのでは? 実用化されるの、クリミア戦争くらいじゃなかったでしたっけ。ニコライ・ピロゴフですよね? 気になっちゃいました。
余談ですが、今日一緒に来てくれたチェロ弾きの父は喜劇好きで、オネーギンでの推しはトリケらしいです。よりによって感がすごい。よく考えたらベルトマン演出、トリケ推しに優しいですね。観劇後に「今日はトリケがMVPってことでいい?」って言われたんですけど、「いい?」って言われても困るよ……()。
トリケのクプレは元々ふざけてるので()、最後の「ТАТЬЯНА!」の伸ばすところでしゃっくりが入るのめっちゃいいじゃないですか。好き。
あと寄りかかられたレンスキーが本気で困惑してるのも好きです()。
細かい演技といえば、決闘いざこざの時、オネーギンが指を組んで親指を合わせたり離したりしてるのがいいですね。オペラグラスでずっと見ちゃいました。
それから、「В вашем доме(貴女の家で)」の前なんですけど、大体
О Боже! В нашем доме!
Пощадите, пощадитеああ、神様! わたしたちの家で!
お慈悲を、お慈悲を!
っていうところ、本当に泣きそうになりながら言う人が大半なところで、森山京子氏の夫人は「マジでクソ迷惑だからやめろ、ふざけんな(ガチ切れ)」みたいなテンションで来るのがいいですねwww この演出に於いてレンスキーに慈悲はないのであった。
それから、細かい話なんですけど(今更)、この夫人の台詞とレンスキーの「В вашем доме(貴女の家で)」の歌い始めはもうちょっっとだけ離してほしい……。ほぼ被せるように言うので……。わたし В вашем доме めちゃめちゃ好きなので、始まる前にもうちょっと心の準備の時間が欲しいというか、聴かせどころなので「これから名曲歌いますよ」ってかんじで一拍置くと尚良いとおもいます。
オケが鳴ってます(n回目)。二幕一場ラストは合唱も相俟って大変盛り上がるので凄くよい! しかし、オケが鳴ることによって一番割を食うのは音域が似ているレンスキーですね。がんばれ……がんばれ……。
しっかし、
Ах, Ольга. Ольга! Прощай навек!
ああ、オリガ オリガ! さようなら、永遠に!
の良さですよ! 綺麗に決まりましたね。最高。
二日目のレビューで、
オネーギンとレンスキーのオリガを巡っての掛け合いでの、レンスキーの
Со мной? Ничего.
僕が? 別に……
がめっっちゃめちゃよかったんですけど、わかります??? いやたぶん今日聴いてた人わかってくれると思うんですけど、「いやそんなまた細かいこと言って……」ってお思いかもしれませんが、なんか知らないけどここが一番声出てたんだって。レンスキーのアリアより出てたまである、この一言。仰け反った。真剣に共感を得たい。
とか、訳分からんことを書いたんですけど、今日はちゃんと聴かせどころが一番響いてたので安心しました。でも今日のСо мной? もよかった。なんかここ声域的に出しやすいんでしょうね。なんかそんな気がする。
第二幕 第二場
今更ですけど、レンスキーのアリアって第二場はじまってすぐにくるので、休憩中に相当スタンバっておかないとですよね。そう思いました。
レンスキーのアリアがこれまたよかったんですよ~~。特に最後の方、
Я жду тебя, желанный друг.
Приди, приди; я твой супруг!僕は君を待っている 友よ
来てくれ 来てくれ! 僕は君の婚約者だ!
の高音の伸び最高じゃないですか。
しかも二日目のレビューで指摘した嗚咽なくなってたし……。顔覆うだけで十分伝わるので大丈夫ですよ! しかも、ザレツキーの声に涙拭う動作が入るのがいいですよね。
ついでに、Весны моей златые дни?で顔覆う件についても直して欲しいですかね……。いやだってここに関しては好み云々じゃなくてシンプルに勿体ないじゃないですか……。
相変わらず書いた詩を燃やしてしまうのが有り得ないくらい切なくてエモいんですけど、今日は燃える手紙が切り株から落ちていって凄い焦りました。オネーギンの舞台で手紙が落ちるのは凄いあるあるなんですけど(昨年バレエ版でも手紙落としててハラハラしました……)。
そういえば、「婚約者」で想い出しましたけど、この演出では、レンスキーのアリオーソのシーンで婚約したことになってるんですかね? 指輪渡してますよね?
オリガが右手の薬指に填めてるので(ロシアでの結婚指輪は右手の薬指)、このタイミングなのかなぁっておもうんですけど……。なんというか、ほんとこの演出だと哀れですよねヴラジーミル・レンスキー……。
トリケの件は二日目のレビューで散々検討したのでもういいかなっておもってるんですけど(二日目のレビュー記事を参照してください)、今日は達観してなんかもう可愛いなって目で観てましたよ。ええ。ズッコケたときに、オネーギンが立たせてあげて胸元直してあげるの可愛くないですか? オネーギンさん、保護者かよ。身長差も相俟って親子みたい。しかもトリケの動き見てオネーギンさん笑ってるじゃないですか。可愛いかよ。可愛いです。
細かいことを言うシリーズ続行します。
オネーギンとレンスキーの二重唱、柱に手を置くという同じポーズでカノン歌うのめちゃめちゃエモいですよね。ところで、
Нет! Нет! Нет! Нет!
だめだ! だめだ! だめだ! だめだ!
って四回言って終わるわけですけど、ここにもうちょっと表情付けてあげてもよいのかなって気がしないでもない。これは好みの問題ですけど……。
言い方が決意を固めるようにだんだん強くなっていくタイプと、だんだん弱く消えゆくように言うタイプの二種類あるとおもうんですけど、楽譜を見てみると、
と、オケはだんだん弱くなっていくので、それに合わせるのが作曲家の意図するところなのかなぁという気もします。逆に台詞を目立たせようとしているという解釈も出来るかも知れませんけど……。
まだまだ続く細かすぎて伝わるか不安選手権。
ОНЕГИН: Убит?
オネーギン「死んだのか?」
ЗАРЕЦКИЙ: Убит!
ザレツキー「殺されました!……」
ってところなんですけど、ザレツキーがレンスキーをチラ見しただけで死亡宣言を出すので、「まだ息してたらどうすんだよ~!」 というなんか無駄な心配をしてしまうオタクであった。ちょっと気になるのでちゃんと看取ってあげてほしいです()。
第三幕 第一場
ポロネーズの初っ端のファンファーレ、やってしまいましたなあ!()。
今日は全体的にほんとにオケよかったので「おっ」ってなっちゃいましたけど()、その後全然よかったのでよく持ち直したとおもいます。そういうこともある。
ポロネーズで、オネーギンが出て来るのはチェロが旋律を弾くパート。
↑ここ、甘美でいいですよね……。
やっぱオネーギンって低い弦の音が似合いませんか? バレエ・クランコ版でも、オネーギンの初登場シーンはImpromtu in A flat majorって曲なんですけど、チェロがメロディライン持っていくんですよね……。
疑問なんですけど、何故合唱はオネーギンの「Как Чацкий」で手を挙げるんでしょうか。チャーツキーになにか思い入れでもあるんですかね。考えたけどよくわからんかったです。
さて、昨日保留したオネーギンを前にしたターニャの反応ですが、彼女、オネーギンを見て笑うんですね……。それは斬新な解釈すぎる……はじめて見ました。大体、ここは恐怖に震えたり、押さえつけて毅然と振る舞うかの二択なので……。
「逢えて嬉しい」という念が一番最初に来たんでしょうか……夢ボケだ……すごい……。
グレーミンのアリアでの拍手がフライングしましたね。まあグレーミンは最高だからな~~気持ちはわかりますけど、そこではまだ終わらないのよ。もうちょっとだけ続くんじゃよ。拍手は指揮者が腕を降ろしてからにしましょう。オケピだと見辛いけど。
グレーミンのアリアのとき、オネーギンがちょろちょろする()じゃないですか。で、オネーギンどこ?って話なんですよ。これ同行した人みんな言ってるんですけど、オネーギン燕尾服で、第三幕第一場、みんな衣装が黒じゃないですか。オネーギン溶けちゃうんですよね。席によってはほんとに間違い探し級ですよ。群衆の服の色を変えるなりして、オネーギン目立たせてあげるとよいとおもいます。
相変わらず、スペイン大使と謎の夫人がめちゃめちゃ目立ちますね。なんだろう、彼らの主催の舞踏会って設定なのかな……。というか、スペイン大使、スペイン大使にしては勲章とかめっちゃロシアな気が……わからん……どういう設定なのかがわからない……。
最後のオネーギン氏、また演技がちょっと変わりましたね。今日はニコライ大公の肖像にお辞儀、アレクサンドル一世の肖像に嘲笑でした。
思ったんですけど、ここでニコライ・パーヴロヴィチ大公の肖像掛かってるのおかしくないですか? 第三幕第一場って恐らく1823年だか1824年なわけじゃないですか。その頃ってまだ皇太子コンスタンティン・パーヴロヴィチじゃないんですか? ニコライ・パーヴロヴィチ(後のニコライ一世)の肖像掛かってるのはおかしいのでは?
しかも後にデカブリストの乱に参加するオネーギンが(この後日談は没になったのでどうだかわかりませんが)、嫌味とはいえ彼の肖像にお辞儀するのはマズいでしょう。せめてアレクサンドル一世の肖像と逆だったらよかったとおもうんですけど。
時代考証おじさんがうるさくてどうもすみませんが、オネーギンは政治・社会とも密接に関係しているので、やっぱり気になるかも。
オネーギンとタチヤーナが話しているとき、グレーミン公爵は後ろ姿を見せているんですけど、その堂々たる姿やもう絵になる。そして、恋文を書き終えたオネーギンは最後手紙を持って膝を突いちゃうんですが、その惨めな後ろ姿は先程のグレーミン公爵の堂々たる後ろ姿と上手い対比になっていて非常によいです。第二場の暗示。
第三幕 第二場
早速ですけど、ここのオーボエの溜めめっちゃよくないですか?
超酔えます。
ターニャが「少女の頃に戻ったよう……」と言いながら本当に昔の姿に戻っていっちゃうのはエモの極みなのですが、それでも大人であることを示す黒いショールが良い味を出しています。しかしこのショール、コアなオネーギンラヴァーの皆様は見覚えがあるかもしれません。
二年前、バレエ・シャンブルウェストさんが「タチヤーナ」というオネーギンを原作とした新作バレエを上演していたのですが、そこでグレーミンとの関係の象徴として黒いショールが使われていました。
又、黒いショールの演出はとてもよかったですね。オネーギンとの思い出の象徴の手紙。これは破り捨てられてしまう。しかし、グレーミンの象徴であるショールを手に取るのは、観ていてとてもわかりやすいと感じました。
↑当方の書いた当該公演のレビューのコピペ
このベルトマン演出、この「タチヤーナ」と黒いショールの件であったり、決闘の場にオリガとラーリナ夫人が現れることはクランコ版の「オネーギン」に近かったり、バレエ版の演出に近いところが多くて、マルチな媒体展開がある「オネーギン」の良いところどりという感じがして大変よいですね。まあ、幾つか指摘しているように、引っかかる点も結構あるのですが……()。
死ぬほど細かい選手権を続行します。二重唱、オネーギンの
Что слышу я?
私は何を聞いたんだ……?
の最後の方が消えかかってたような気がするんですけどあまりにも細かすぎるのでいい加減黙ろうかなとおもいますそうします。
二重唱、今日は特に音楽に集中出来た気がします。わたしが観慣れてきたっていうのもたぶんあるんでしょうけど、今日は本当にオケも歌手も絶好調だったし、音楽が心にすとんと落ちてくるかんじ……。いやほんとになんで録音今日にしなかったんです?? 永久保存版にしようよ……。なんか、漸く「ああ、オネーギンを観た!」って感じがしました。
従来の演技と違って、ターニャの全身から溢れるオネーギンへのラヴですよ。オネーギンが一瞬立ち去ろうとするときに引き留めるのは寧ろタチヤーナだし、最後は笑顔で走ってきてキスして逃げ去るんですよ。歌詞と表情の差に違和感感じるレベルにオネーギン好きじゃないですか。その違和感がいいんですけど。これそういう話なんで……。だからこそ悲劇的。面白い解釈だなとおもいます。
これは今回オネーギン初見だった同行者複数人から出た意見なんですけど、どうもオネーギンが最後凄い自信過剰に見えるのがどうしてもキモいらしい。「どうしてそんな自信過剰なのかわからない」と言われたので、彼らの協力を仰ぎながら検討してみました。
この意見、実は別の公演だとあまり見かけません。ということは、演出の問題……或いは歌手……字幕……? など、議論しながら色々要素を検討した結果、どうやら字幕の問題らしいということがわかりました。
Не правда ль, вам была не новость
Смиренной девочки любовь?
の字幕が、確か「地味な少女の愛に興味などなかったのでしょう?」みたいな感じだったとおもうんですが、オネーギンの字幕で多いのは「慎ましい少女の愛など珍しくもなかったのでしょう?」だとおもうんですね。どうやら、この微妙な言い回しの違いが大きな差を生んでいるらしいのです。
と言いますのも、オペラのオネーギンでは第一章がごっそりカットされている上、舞台上で描かれるエヴゲーニー・オネーギン氏というのが、どうも空回りばかりであまり魅力的に描かれていないのは事実として存在します。ですので、「どうして冴えないオネーギンがそんなに自信過剰なの?」という思考になってしまうらしいのです。
ここで、「珍しくもない」という言い回しにすると、即ち「オネーギンは女性にモテる」という含意があるので、問題無いとのこと。
細かいひとつの言い回しでそんなに印象が変わるのか! と非常に驚きました。やはり初見の人の意見は勉強になる……。参考にさせて頂きます。
これ毎回言ってるんですけど、最後のオネーギンのソロなんであんなにいいんだ。ありがとう世界(毎度言ってるしいい加減語彙がないのでこれで勘弁して欲しい顔)。
最後に
今日も元気に1万字書いたのでこれで許して頂けますか!
ちなみにバックステージツアーは外れました!! あれ、当たったことないんですけどどうなってるんですか。噂によると当選確率5倍くらいって聞いたんですけど本当ですか。無理やんそんなん……。いいもん……松本のカーセン演出のとき入れたからいいもん……(負け惜しみ)。前日に「運命に身を委ねます」とか宣言出したのがフラグだったのかな……オネーギンの文脈で言ったら完全に負けフラグだもんな……そうでした……。まあそういうわけで、裏事情については当方詳しいこと書けませんので、悪しからず。
今日は幕間にメモを取れたので、これまで書き忘れたことなどをベースに細々と書いてみました。演奏は今日がダントツでよかったとおもっています。このペースであと二回、頑張って頂きたい! 最終日行かれるかわかりませんが!
それでは、次はまた9日にお会いしましょう~。